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挨拶を終えた熊井ちゃんは、袖に下がることなくステージから客席に降り立った。
ゆっくりと通路を歩きだした熊井ちゃん。
威風堂々としたその姿。どうすればこんな素晴らしい貫禄が身に着くんだろう。

どうやら熊井ちゃんはステージの上からなかさきちゃんの姿を見つけていたようだ。
なかさきちゃんの座っているこの列まで真っ直ぐにやってくると、迷わずその彼女の隣りの席に腰を下ろした。
一斉に背後から突き刺さってくる会場中の視線が感じられる。それはもう痛いぐらいに。
しごく上機嫌な熊井ちゃんは、元気溌剌としたこの上なく明るい声でなかさきちゃんに話しかける。

「なかさきちゃん! どうだったー?うちの挨拶?」
「じ、実にゆりなちゃんらしかったケロ。でも、どうして成人式で挨拶をすることに?」
「そりゃ今年成人になる人の代表なんだよ。うちしかいないでしょ!!」

その達成感あふれる充実した表情。
いい顔してるなあ、このイケメンさん。


熊井ちゃんのスピーチ。
プログラムにも載っていなかった今のこの出来事。
果たして、それは乱入劇だったんだろうか。
それとも本当に熊井ちゃんが新成人代表だったんだろうか。
恐ろしくて聞くことが出来なかった。

まぁ、彼女の次にまた新成人の人がもう一人スピーチをした(この人は実にまともな人だった)ところを見ると、まぁそういうことなんだろう。
真実がどうだったのかなんて、そんなことは些細なことだ。
この成人式で熊井ちゃんがスピーチをしたこと。それだけが事実なんだから。
それ以上のことを知る必要もないだろう。

ただひとつ、事を荒立てず穏便に進行してくれた実行委員の人たちのオトナの対応には心底感謝した。
彼女の無茶振りに対しては、下手に抵抗するよりも、さっさと終わらせてもらい気持ち良く去ってもらった方が、はるかに得策だということ。
これは熊井ちゃんを知っている人なら誰でも知っていることだけど、初めての対応だとそこがなかなか分からない。
彼女の言い出したことに抵抗するということが、どれだけ面倒くさいことを招くのか。
初めてだとそこが分からないから、彼女の言う無茶苦茶な要求に対してつい抵抗してしまいがちなんだよね。

そんな難しい判断を迫られたであろう今の大きな熊さんへの対応で、正解と思われる対応が出来たとは大したものだよ。
結果として、今日の成人式もどうやら素晴らしい式典としてその幕を閉じることが出来そうなわけで。


周りの人たちがどれだけ振り回されているのかなんて、全く分かって無さげな熊井ちゃん。
この展開にぐったりした様子のなかさきちゃんのその表情にも全く気付いていないみたいだ。
なかさきちゃんとは見事に対照的な、ご機嫌クマさんの至って呑気そうなお顔。

「新成人ってこんなにいるんだねー。だいたい25列は入ってるから、一列が40人として、25×4で、、、?? えーと、それを10倍すると???」
「ゆりなちゃん、そんな簡単な掛け算ぐらいで目を回さない! ってことは1,000人ぐらいってことだケロね」
「すごくない!? それだけの人がうちの話にあんなに感銘を受けてたんだよ?」
「感銘を受けてたって・・・」


「いい成人式になって良かった!!」


「これでうちらももう大人だからね。大人のオンナとして、何か新しいことをやろうと思うんだ」


熊井ちゃんのその発言に、なっきぃはまた反射的に緊張感に包まれたようだ。
そしてそれは、僕がそれを最初に聞いたときの反応と全く同じ。
熊井ちゃんが新しいことを始めると宣言するたびに、僕らはある種の緊張感に襲われる。

「何か新しいことって、何をやるつもりなの?」
「今度ね、うちスノボデビューすることにしたんだ」
「スノーボード? ゆりなちゃんが?」
「うん、そうだよー!!」
「スノボって・・・ なんでまたスノボ?」
「もうさっそくやろうと思って。思い立ったら吉でっせ!!」
「聞かれたことに答えろや・・・ さっそく行くって、どこに行くの?いつ?いったい誰と?」
「なかさきちゃん、質問ばっかりだーw」
「そんな予定があるなんて私は聞いてなかったんだけど。誰と行くの?」
「こいつとだよ!」

ビシッっと指を指される僕。

「こいつね、スキーなら出来るっていうから。だから、こいつを連れて行くことにしたんだ」


そう、一緒に行くのは、僕です。

熊井ちゃんがスノボをやる!と言い出したときはびっくりした。
だって、彼女のイメージとはあまりにもかけ離れてるような気がしたから。

こう言ってはなんだけど、熊井ちゃんってそっち方面はちょっとドンくさそうだかr
(こんなこと思ってるのがバレたら○される。)
なんでも、そういう自分にかけられているイメージを打破したかったそうだ。

そんな彼女の思いつきだけれど、それに関わる諸々の手配を請け負わされたのはもちろん僕な訳で。
いつものように熊さん付きのマネージメント係として、もちろん荷物係兼任として彼女に御一緒することになったんだ。

「その話しをお嬢様にしたらー、リ*・一・リ<あら、それならお父様のグループ会社のホテルを使うといいわ、って言って紹介してくれてー」
「お嬢様の・・・・」
「うん。格安でそこのスキーリゾートに行けることになったんだぜ」
「スキーリゾート・・・ ふ、2人っきりで・・・・?」
「そうだよー。あははは」
「絶対にダメだケロ!!」

ものすごーく怖い顔をしているなかさきちゃん。
彼女のとてつもなく強い意志を感じる。


そんな彼女に対して、あっけらかんとした熊井ちゃんがある提案をした。

「えー、、、じゃあさ、なかさきちゃんも一緒に行こうよ」


とてもいい提案です!!
熊井さん、素晴らしい!!

なかさきちゃんも一緒なら熊井ちゃんの暴走だって抑えてもらえそうだし。
それだけでも助かるのに、何といってもなっきぃとスキーリゾートですよ!!
こんなカワイイ子とスキーに行くのが楽しみじゃない奴なんているんだろうか(反語)。

なっきぃ、スキーはやったことあるのかな。
初めてなの?
じゃあ僕が手取り足取り(ry

おっと・・・
妄想スイッチがオンになってしまうところだったw
焦るな焦るな。落ち着こう自分。

でも、なかさきちゃんが一緒かぁ・・・・
ムフフフ、楽しみすぎる!!
なっきぃ、スキーはやったことあるのかな。
初(ry


ループに陥りそうになった僕だったが、目の前のなかさきちゃんはと言えば何とも困ったような表情を浮かべていた。
(その表情を見て、僕の脳内では更に妄想が加速されそうに(ry

なかさきちゃんにとって、熊井ちゃんのその返しは予想外のものだったのだろう。
熊井ちゃんの言った一緒に行こうという提案、それはなかさきちゃんを脱力させるのに十分すぎるものだったようだ。
さっきまでの険しいお顔がウソのように、困惑した顔になって熊井ちゃんを見ているなかさきちゃん。

だが僕にとっては、その提案はこの上なく素晴らしいものだったわけで。
そして、熊井ちゃんが言い出したってことは、それはこの時点で既に確定事項ってことだ。
やった!!

熊井ちゃんになかさきちゃん、そして僕。
3人で行くスキーリゾート。

なんと素晴らしい!!

特筆すべきは、なかさきちゃんが一緒ということだ!
あ、なんかとてつもなく楽しいことになるような気がするぞ。

きっと、こういう展開になるような予感がするんだ・・・・・



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