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そのロッジには人の気配は無かった。
でも、僕らにとって幸いなことに、そこにカギはかかっていなかったんだ。
なかさきちゃんと2人でその中に入る。

「これ、避難小屋なんだよ、きっと。助かった」

カーペット敷きになっている簡素な小屋だけれど、清潔感は保たれていた。
さすがお嬢様のお父上のグループの所有されている建物だけのことはあり、しっかりと管理されている。

電気は通っていないようだ。
代わりとして置いてあるランプがあったので、それに火を灯す。
明かりが点いたことで安堵感に包まれつつ、小屋の中を見回してみる。

「暖炉がある! とりあえず暖を取ろうよ。なかさきちゃん、暖炉に火を点けておいて。僕はホテルに戻る道を探してくる」

そう言って、再び外に出てみたけれど。
もうすっかり真っ暗だ。雪明りのおかげで足元が暗くて見えないってことは無いが、どの方向に歩けばいいのか皆目見当がつかない。
滑落したときに方向感覚が失われてしまったので、どちらの方角が麓なのかも全く分からないんだ。
周りの樹木のせいなのか、麓の明かりも全く見えず、完全に闇の中になってしまっているし。
その上、この降りしきる大粒の雪が、不気味な音を響かせはじめたこの強い風によって、狂ったように雪煙となって舞い上がっている。

まいったな・・・

これ、僕らは完全に遭難したんじゃないか。
頼みの熊井ちゃんに連絡を取ろうにも、ケータイは圏外だし。
これはもう動かない方がいいと判断した僕は、ロッジの中へと戻った。

「完全に吹雪いてきちゃったよ。だから、もう動かないでここにとどまっていた方がいいと思う」

体中に纏わり着いた雪を払いながら、大きく息を吐いた。
目に入ったなかさきちゃんが申し訳無さそうな顔をして僕を見ている。

「ん? どうしたのなかさきちゃん?」
「暖炉なんて初めてだから使い方が分からなくて。スイッチはどこなの?」
「スイッチって・・・ 薪に火を点けるんだよ」
「火の点け方なんて分からないケロ」

ぷっくりと膨らんだくちびる。
泣きそうにも見えるその表情がまた。

・・・・カワイイ。

うわー、なっきぃ、かわいいなー!!
こんな状況なのに、僕のテンションは一気に高まってしまったんだ。


ゴホン。
まぁ、でも落ち着こう。

暖炉に火をおこすことが出来ず、申し訳無さそうな顔をしているなかさきちゃん。
あのおしとやかな学園の生徒さんだもんな。
そんな女の子が暖炉に火を起こすことなんて出来なくてもおかしくないよな。
ひょっとしてマッチで火を点けるなんてことすらしたことないのかも。

「いいよ。僕がやるから」
「出来るの?」
「こういうのは結構好きなんで。アウトドアならまかせておいてよ、なっきぃ。ワイルドだろぉ?」

今の彼女がしているその表情を見て、つい調子に乗ってしまう僕。
なんか、けっこう楽しい気分になってきたんですけどw
まず種火をつくってから、だんだんと大きな薪に火を移していく。

「やっと暖かくなってきた。こういう時は、やっぱり火があると落ち着くね。え?なに?僕の顔に何かついてる?」
「初めてあなたのことをちょっと見直しました」

そう言って僕を見るなっきぃ。
その表情は、いつも僕に向けられている蔑むような表情とはかなり違っていて。

しかも、なんだって?
「あなたのこと見直しました」(意訳→「あなたのこと、好きになったかも・・・」)

なかさきちゃんから初めてそんなことを言われて、思わず得意の妄想の世界へと・・・(※注・既に妄想の中です)


揺らめく炎。
その赤い光が彼女の姿を照らし出している。

僕はその瞳をじっと見つめる。そして彼女も僕のことを真っ直ぐ見返してくる。
なかさきちゃんの丸くて大きい黒い瞳。なんという大きな瞳だろう。
その瞳に引き込まれ、僕の顔は彼女へと吸い込まれ行く。
目の前のなっきぃの顔がだんだんと近づいきて、そして・・・


なーんてw


暖炉の熱が山小屋のすみずみまで行き渡りようやく暖かくなってくると、そこでようやくホッと一息つけた。
一方、いまだ固さが取れない様子の表情でいるなかさきちゃん。

ダメだよ、なっきぃ。暗い顔してたら気力まで萎えちゃうよ。こういう時こそ元気を出さないと!!
そう思って、ことさら明るい声で彼女に声を掛けてみた。

「暖炉があって良かったよね。これが無かったら、冷え切った体を抱き合って暖めなきゃならないところだったよw」
「・・・・・・」

不安が募りそうなこの状況。
場を明るくしようと軽く冗談を飛ばしてみたんだけど、なかさきちゃんは微笑んでもくれなかった。



スキーウェアを脱いで、ロッジ内の点検をしてみる。
しっかりと管理されている施設だということが分かる。さすがお嬢様の(ry
薪はたっぷりと用意してあるし、食料もしっかりとあることを発見。
水道は無いけど、これはもちろん周りにたっぷりとある雪を使えばいいわけで。
うん、なんとかなりそうだな。
一安心した僕は、まだ緊張している様子のなっきぃに声をかけた。

「何も心配しなくていいよ、なっきぃ」

やっぱり緊張が解けないのかな。さっきからずっと固い表情だ。
その固い表情のまま、話しかけた僕のことをじっと見つめている。

「これだけ装備が揃ってるんだもん。ぜんぜん大丈夫だから」
「いや、私が心配しているのはですね・・・」
「こういうときこそ男子の僕に任せて!なかさきちゃんは何の心配もしなくていいよ!」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「とりあえずさ、なっきぃもウェアを脱げば?」
「ぬ、脱げって、、、!!」

悲鳴のようなその声。
何を言ってるんだろう、この子?

まぁ、今のこの状況。
僕らは遭難したみたいなんだ。その事実が受け止めきれないのかもしれないな。
こういうときこそ、僕が彼女を支えてあげなくちゃ!!

「そんなに緊張してたら疲れちゃうよ、なっきぃ」
「いえ、いいですから。私には構わないで下さい」
「でも、今夜はここに泊まるしかないわけだし。もっとリラックスした方がいいんじゃ」
「ここに泊まるって・・・・ あなたと2人で?」
「そうだけど・・・・ だってしょうがないでしょ」
「い、嫌です! 絶対にイヤ!!」

嫌です!!って言われてもなぁ・・・

僕のことを、まるでケダモノを見るような目付きで見てくるなっきぃ。
なんだ、その後ずさりは。

この子は僕のことをいったいどんな人間だと思っているんだろう・・・・

でも、そのなかさきちゃんの怯えたようなお顔がまた。
何というか、その表情を見るとやっぱり男として何ともたまらないものがあって。
男の本能的なものが・・と言うか、その、あの、えーと。

なかさきちゃんがそんな反応をするから、変に意識しちゃったじゃないか。
全然そんなことなんか考えてなかったのに。

なかさきちゃんのその反応を見て思い至ったこと。
意識しはじめると、もうそのことが脳裏から離れなくなって。

この子と一晩過ごすっていうのか・・・・
こんなカワイイ女の子と?
何か間違いが起きなければいいけど・・・
大丈夫なのかな?
いや、何がって、その・・・
僕も男だからさ・・・


なーんてねw


この僕に限ってそんなことがあるはずも無い。
僕はいまどき珍しいぐらいの硬派な漢(おとこ)。
それに、僕は舞ちゃん一筋なんだ(キr
まったく安心していいよ、なっきぃ。
遭難するにしても、一緒なのがこの僕で良かったね!!




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※筆者注。まだまだ少年の妄想の中のお話です(長い・・・)
この番外編、次回で終わる予定です