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「なっきぃ、落ち着いて。だって、この吹雪だもん。どうしようもないじゃん。
まぁ、明日の朝には止んでるだろうから、ここで過ごすのも今晩だけだよ」
「・・・・・・・」

黙り込んでしまったなかさきちゃん、窓辺に立つと荒れ狂う外の風景をじっと見つめた。


「きっと、帰ってこない私達のことをゆりなちゃんは心配していると思うんだ・・」

猛吹雪が叩きつけてくる窓に向かって、なかさきちゃんが小さな声で呟く。
なかさきちゃんはきっと、熊井ちゃんにきっと心配を掛けてしまっていること、それに対して申し訳ない気分なんだろう。

「ゆりなちゃん・・・・」

泣きそうな声を出すなっきぃ。
(か、かわいいんですけど!!)


でも、そうなんだろうか・・・

なかさきちゃんがいま言ったこと。僕にはそうとも思えないんだ。
想像すると、ある光景が僕の脳裏には浮かんでくるんだよね。

「そうかなぁ? 今ごろ一人ホテルのバーにでも行って、止まり木で若いバーテンダー(イケメン)を眺めながら一杯やってる姿が想像つくんだけど・・・
川*^∇^)||<あれ? 何か忘れているような・・・? とか言いながら」

夜が更けても状況は全く変化しなかった。

何もすることが無い避難小屋の夜。

唯一の話し相手となるべきなかさきちゃんは、僕が話しかけても殆ど会話を続けてくれない・・・
今もぼんやり(ところどころで妄想)しながら座っている僕。
その僕が座っているところから5メートルの距離で、体育座りしているなかさきちゃんが僕をじっと見ている。
僕が立ちあがると、即座に彼女も立ち上がる。
そして、僕が暖炉へ薪を入れるかと歩き始めたりすると、はじかれるように彼女も反対側に歩き始める。

徹底されているその動き。
そう、彼女は僕との間に常に5メートルの距離を保つように動いているんだ。

そんなに警戒しなくても・・・



「さて、もう寝ようよ。なっきぃ。」
「どうぞ先に休んでください(棒読み)」
「何も机でバリケードを作らなくても。だいたい、その積み上げた大量の枕はいったいどこから・・・」
「これが境界線だケロ。絶対に入ってこないで!」
「そんな怖い顔で睨まないでよ・・・」
「とにかく、明日になったら日の出とともにすぐにここを出るんだケロ!」

ところが、なっきぃも僕も知らなかったのだ。
テレビがあればニュースで知ることが出来たんだけれど、もちろんそんなものはここには無いわけで。
この爆弾低気圧の速度は異常に遅くて、この吹雪はこの後2日間に渡って猛威をふるい荒れ狂うということを。

そのあいだ僕らはずっとここに閉じ込められることになるのであった。

閉ざされたこの狭い空間。
そこには僕となっきぃの2人っきり。
この状況。過酷な環境を共有する僕らの間に、いつの間にかある感情が芽生えたとしても不思議じゃない。

若い男女が2人、ずっと一つ屋根の下・・・・
ふ、二晩ものあいだ、ずっと・・・・

僕らの間を照らしているランプ。
その暖かくも柔らかい灯りによって高まるムード・・・

なっきぃがその潤んだ目で僕を見て・・・


* * * *


「あー、あー、助けに来たかんなー! これでもう大丈夫だかんなー!!」

そんな妄想を僕が延々と育て上げていた間に、この場にはもう一人見知った人が増えていたのだった。
その彼女が僕の妄想の中に入り込んできたことで、長かった妄想は強制終了させられてしまう。
なんだよー・・・ これからクライマックスってところだったのに!
せっかく盛り上がった僕となっきぃの物語に水を差さないでほしい!!
と憤ったりしても、目の前のこの人に僕がそんなことを言えるはずもないのだ、もちろん。
目の前の彼女、栞菜ちゃんが呆れたように言葉を続ける。

「ホンの一瞬でそこまで長々と妄想できるなんて、さすがだなオメー、本当に尊敬するかんな、逆に」

他人の妄想のなかにフツウに入り込んでくるあなたのその才能にこそ尊敬しますけどね。
でも、まぁ栞菜ちゃんにはバレバレにもなるか。やっぱり。
僕が長い長い妄想の世界に行っていたことぐらい、この栞菜ちゃんには全部お見通しになるに決まっている。
そして彼女のことだ。僕の今の妄想の細部のディティールまで把握されてるのかもしれない。

それは、ちょっと恥ずかしい・・・・

ちらりと目の前のなかさきちゃんを見る。
その真顔のなかさきちゃんを見ると、妄想内でさんざん遊ばせてもらったことに多少の罪悪感を感じるのだった。


「楽しみだなー。白銀のゲレンデがうちを待ってるぜ!!」

テンション高い熊井ちゃんが張り切った声を上げる。

「このあとさー、飲みに行こうよ。栞ちゃんも行くでしょ?」
「熊井ちゃんのお誘いなら断れないかんな」
「よーし、みんなで飲みに行こう!」
「ゆりなちゃん、私はまだ19歳で未成年だからちょっと・・・」
「なかさきちゃん、なに言ってるの? 今日からもうオトナのオンナなんだからね。出来るオンナっていうのはー、、、」
「分かったから! しょうがない、行きます。でも、お酒は飲まないからね!」

張り切っている大きな熊さんが僕に向き直る。

「よし! じゃあ店を探して予約しておいて」
「はいはい。分かってます」
「ハイは一回。分かった?分かったら返事!」
「ハイ」

一緒に飲みに行ったとしても、どうせ僕は放置プレーなんだろう。
まぁ、いいけど。そういう扱いには慣れてるし。
そうやって一人になったら、スキーの計画のことをもう少し煮詰めることにしよう。
なっきぃと一緒にスキーだなんて、さっきの妄想ではないけど何かが起こる予感がするんだよねw
ゲレンデに2人が描くシュプール、きっと僕らの間にはそこから何か物語が始まるに違いない。
本当に楽しみだなー、ムフフフw、


ニヤけそうになるのをこらえながら、熊井ちゃんに言われた通り、検索した店に予約を入れておく。
あー、楽しみだなー、スキー。ウキウキとした気分が止まらない。
そんな僕に熊井ちゃんが声を掛けてくる。

「店は取れた?」
「え?うん。予約はもう入れておいたよ」
「よし、御苦労!! それじゃあ、もう帰っていいよ」
「えっ? 僕も一緒に行くんじゃ・・・・」

熊井ちゃんがにこやかに言ったそのセリフ。
そのフレーズ、久し振りに聞いたな。
もぉ軍団の人が、よく僕に言い放っていたそのお決まりの定型文。

『少年、御苦労さん。もう帰っていいよ』

今そのセリフを言ってきたのは、いつもの全開笑顔の桃子さんじゃなかったけれど。
聞き慣れたフレーズではあったけれど、今の僕のウキウキとした気分を固まらせるには十分だったんだ。

「同学年トリオで飲みに行ったりするのは久しぶりだかんな」
「あははは、楽しみだねー」
「もう、ゆりなちゃんったら、人の話しを少しは聞いて欲しいケロ」
「女子会 The Nightだー。今夜は思いっきり語り合おうよ!!」


楽しそうにこの場を後にする3人。
その姿はと言えば、一見すると振袖姿の美女2人を両脇に従える超絶イケメンの長身美男子なんだ。(な、なんというハーレム!)
紋付袴姿のその人が織り成すその光景、僕の目からすると何のコメディーですか?と言いたくなるようなものだけど。

でも、その3人の後ろ姿は、何かいつまでも眺めていたいような光景だった。
同い年のその3人の絆というものが、確かに目に見えるような気がしたんだ。
彼女たちの睦まじい姿を僕なんかが見ることが出来るなんて、それだけでも幸せなことなのかもしれない。

いいもの、見させてもらったな。
そんなことを考えながら、取り残された僕は夕陽に消えていく3人の凸型のシルエットを眺めながら立ち尽くすのだった。


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PS.
大熊さん主催のスキーツアーの計画は、もちろん僕の思ったような展開になんかなる訳がなくて・・・

リ*・一・リ<なっきぃ達スキーだなんて・・・(ソワソワ) やっぱり千聖も一緒に行くことにするわ!
ハo´ 。`ル<ハ、ハルも行っていいかな? 川* ^_〉^)<スキー好きー!いえええい! ハo´ 。`ル<またかよ!マサキ、てめー!!
从・ゥ・从<私も行くことにしました! あはははは!! 
       なっきぃ、何も心配いらないよ!バッチリ滑れるように私が特訓してあげるからね!!
川*^∇^)||<手配は全部済んだ? よし、御苦労!! それじゃあ、もう帰っていいよ!!