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今年も近づいて来た2月7日。
そう、舞ちゃんの誕生日だ。
今年、ついに舞ちゃんは18歳になる。
舞ちゃんが18歳!!
やっぱり、18歳の誕生日っていうと何か特別な感じがしませんか?
だから、僕はある計画を立てたんだ。
僕と舞ちゃんにとってその日がとても大きな意味を持つ一日となるように。
誕生日まであと一週間となった日の放課後。
舞ちゃんのアポイントを取るべく、下校時間に合うように学園の通学路へと僕はやってきた。
彼女を待っているあいだ、しみじみと考えてしまう。
あと一週間で舞ちゃんも18歳か・・・
早いものだ。僕が彼女を初めて見たときから、もうすぐ5年が経つわけで。
そんな舞ちゃんも今では最上級生。あとわずかで高等部も卒業だ。
すっかり大人っぽくなられた舞ちゃん。その姿はもう美しすぎて・・・・
僕なんかが、そんな舞ちゃんの過ごしてきた5年間を見守ることが出来たなんて。これはもう奇跡と言ってもいいだろう。
そこには何か見えざる神の意思が働いているのかもしれないな。
だいたい、地球上には70億人以上もの人がいるんだ。
それなのに、僕ら2人が出会ったというのは決して偶然なんかじゃ無(ry
舞ちゃんを待っているという時間をしみじみと楽しんでいた僕だったが、突然その視界がパァッと明るく開けたような気がして顔をあげる。
そう、舞ちゃんがやって来たんだ。
来た! 舞ちゃんだ!!
天才舞様。
学園において、その歴史に名を残すであろう人物。
しかも、伝説中の伝説であるあの人ともとりわけ関係が深いから、そんな二人にまつわる数々の逸話が更に彼女の神話性を高めている。
そんな舞ちゃんだから、どの学園生からも、それどころか同級生からも恐れ多い存在と思われているのは相変わらずみたいで。
最上級生となった舞ちゃんが学園において孤高の存在となるのは、これはもう仕方が無いことなのかもしれない。
やってきた舞ちゃん。今日もお一人での下校のようだ。
高等部に通う寮生が舞ちゃんだけとなった今、学校への行き帰り、舞ちゃんはお一人のことが多いんだ。
寮生さんたちで賑わっていた昔の通学路を思えば、今のその光景には少しばかりの寂しさを感じる。
そして、舞ちゃんも心の中ではそう思っているのかもしれない。
でも、もちろんそんな寂しさなど微塵も感じさせない。その貫禄あふれる姿。
昔からそうだったけど、年齢以上にしっかりとしている舞ちゃんだもん。さすがのオーラだよ。
そんな学園随一の天才さんが、存在感たっぷりに通学路を歩いてくる。
そのように、一人でやって来た舞ちゃん。
でも、僕にとってそれは好都合。
だって、今から僕は舞ちゃんにとても大切なことを話しかけるんだから。
他の人がいないところで、舞ちゃんには僕の気持ちを真っ直ぐに聞いてもらいたい。
意識してグッと集中を高め、自分の中に気合を一発入れる。
そして、目の前までやってきた舞ちゃんに話しかけた。
「あの、舞ちゃん!」
「なんでしゅか?」
話しかけてきた僕に対して、驚くでもなく普通に見返してくれる舞ちゃん。
そうは言っても、その冷たい口調に鋭い眼光。一瞬で気持ちが負けそうになる。
でも、大丈夫! 僕にはちゃんと分かっている。
舞ちゃんは不機嫌ゆえにそんな対応をしてきたという訳ではない。
むしろ、これは全くいつも通りの変わりない舞ちゃんだということ。
だから、今のその反応、僕にとってはむしろチャンスだ!
それでも、その目力はとてつもなく力強いもので。
分かっていても思わず怯みそうになるが、ここは強い気持ちで!
僕は腹にグッと力を込め、ありったけの勇気を振り絞って話を続けた。
「あ、あの、舞ちゃん、来週の7日のことなんですけど、その日の夕方に少し時間を取っていただけませんか?」
「7日、でしゅか?」
「そう、7日です。本当に少しの時間でいいから! あの、その、渡したいものがあるんです!」
「まぁ、遅い時間じゃなければ別にいいけど」
「やった! ありがとう!! じ、じゃあ、その日、夕方に駅前のショッピングモールのテラスの上に来て欲しいんです! 4時55分に!」
「4時55分?」
「はい! 4時55分、その時間にお願いします! お時間は取らせませんから。ほんの少しだけ!」
「はいはい。わかったでしゅよ」
僕のテンションに半ば呆れ気味、そしてちょっと怪訝そうな顔をした舞ちゃんだったけれど、僕の言ったことに頷いてくれた。
やった!!
舞ちゃんに来てもらう約束をしてもらえたことで、僕はもう天にも昇る気持ちだった。
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2月7日。
今日は舞の誕生日。
18歳、か。
なんか実感が湧かないけれど、もうそんな歳になったのか。
中学生のころ舞美ちゃんを見て、18歳になったら舞もあんな感じの人になれるんだろうかって思ってた。
誰からも好かれている舞美ちゃん。
生徒会長を二期もやったぐらい、生徒からも先生からも人望が厚かった人。
そんな舞美ちゃんに出会った最初の頃、私はひょっとしたら反抗的な態度をすら取っていたかもしれない。
誰からも特別扱いされることに心底うんざりしていた私にとって、寮にいた特待生さんとやらのその圧倒的な善人さを素直に受け止められなかったんだ。
でもお姉ちゃんは、子供だった私が取ったそんな態度に対してすら、いつだって優しく包み込むように微笑んでくれた。
そう、いつも変わらないあの笑顔で。
どうすれば、こんなに真っ直ぐな人になれるんだろう。
お姉ちゃんとの出会いは、いつだって自分が一番だと思っていた私にとってそれは衝撃的だった。
天才とかもてはやされていても、自分がいかに世間知らずなのかってことを、舞美ちゃんを見て思い知らされたりしたんだっけ。
果たして今の自分は、昔の自分が思っていたような18歳になることができたんだろうか。
学校から帰ると、ひとり寮の門をくぐり、玄関を開ける。
「ただいまー」
そこには誰の姿も見えなかった。
寮のみんなは、まだ誰も帰ってきていないようだ。
自分の部屋に戻ったら、しばらくすると千聖がやって来た。
「おかえりなさい、舞」
「ちしゃと・・・」
さっきの、舞美ちゃんとの思い出を考えていたからか、マイとしたことが今なにか感傷的になっているのかもしれない。
現れた千聖を見たら、反射的にまた昔のことを思い出してしまった。
・・・ちしゃと。
この天才舞様(自分で言っちゃったね)のことを、一人の友達として接してくれた最初の人。
もしこの千聖がいなかったら、この学園で自分が今までどのように過ごすことになったのか、そんなの想像も出来ないし、したくもない。
私たちが出会ったのは、もう「運命」という言葉でしか説明できない。
地球上には70億人以上の人がいるというのに、それなのに、舞とちしゃと2人が出会ったというのはこれはもう絶対に偶然なんかじゃ無(ry
そんな千聖も今はもう19歳。
舞美ちゃんを見て18歳に憧れていた自分だったけど、去年ちしゃとを見て18歳って言ってもまだまだ子供じゃん、と思うようになった。
ふん、ちしゃとって本当に舞がいないとまるでダメなんだから。
でも、そんな天真爛漫な千聖こそ舞の嫁に相応しk
「おかえりなさい、舞」
千聖がもう一度口にしたその言葉を聞いて我に返る。
舞が寮に帰ってくるなり、目の前に千聖の姿。
ってことは、わざわざ舞の帰りに合わせて部屋まで会いに来てくれたんだ!
その事実に思わず心が浮き立った。
もちろん、そんなことで一気に喜んだりしているのがバレないように、それを決して表情には出さなかったけど。
「うん、千聖ももう帰ってたんだ」
「えぇ」
にっこりと微笑む千聖。
またずいぶんと機嫌が良さそうだ。
「舞、このあとご予定はあるかしら?」
「このあと? どうして?」
「良かったら、このあと千聖につきあってもらいたいの」
願っても無い申し出に、この舞様が思わず動転してしまい言葉に詰まってしまった。
そんな私に千聖が言葉を続ける。
「恒例の2月の誕生パーティー、今年はなっきぃの誕生日にやってしまったじゃない」
そう、今年の合同誕生パーティーは、一昨日の5日に行ったのだ。
今日は舞美ちゃんが実家に帰ってしまっていて寮には不在だからだ。
お姉ちゃん、学生生活最後の誕生日ということで、今日は家族みんなと過ごすそうだ。
余談だけど、舞美ちゃん、大学を卒業してもそのままこの寮にいることにしたらしい。
学生じゃなくなってもこの寮に住み続けるのはえりが先例を作ったからね、とかいってw、とか言ってた。
そんなわけで、寮恒例の2月の合同誕生パーティーは、なっきぃの誕生日である一昨日に既に行ってしまったわけで。
だから、今日は特に何も予定が無かったのだけれど、それはやっぱりちょっと寂しいなとも思ったりもしてたところで。
まぁ、そんなセンチメンタルなのは舞様のガラじゃないから平穏を装ってたけど。
「でも、やっぱり舞のお誕生日をお祝いしたいの」
「ちしゃと・・・」
「だから、このあと舞と2人でお食事にでも行きたいのだけれど」
「も、もちろんいいでしゅよ!」
顔を赤らめながらそんな提案をしてくる俺の嫁。
何この生き物! とてつもなくカワイイんですけどw
そんなちしゃとを見ると、心が洗われるようだ。これも千聖の魔法なのか。
マイ、今日は素直になっちゃおうかな。
そんな、千聖と一緒に出かけることになったといういきなりの展開。
あまりの楽しみに、この後への期待感でもう胸が一杯になるのだった。
ん? でも何か忘れているような・・・・
ま、いっか。
忘れるってことは大したコトじゃ無いんだろうしね。
最終更新:2014年06月13日 14:33