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今日、舞ちゃんは18歳になった。
舞ちゃん、18歳の誕生日おめでとう!!

僕が初めて舞ちゃんに誕生プレゼントをあげたのは、あれは舞ちゃんの14歳の誕生日だったっけ。懐かしいな。
そうそう、あの日は舞ちゃんに会えなくて、プレゼントのぬいぐるみを舞美さんに託したんだったっけ。
舞美さんに声を掛けたのもあのときが初めてだったから、とてつもなく緊張したことを今でもよく憶えているよ。
あれからもう4年も経つのか・・・ 


そして今日、18歳の舞ちゃんに贈るプレゼント。
18歳の誕生日って、何か特別な感じがしませんか?
そんな18歳の舞ちゃんにプレゼントすることにしたのは、2月の誕生石、アメシスト。
その紫色の宝石をあしらったネックレスを、今日これから舞ちゃんに渡すんだ。

それを買いに行ったときは緊張した。
僕にとって勝負が懸かっているその買い物を、決して誰にも邪魔されたくなかったから。
だから過去の事例を参考にしつつ、知ってる人(例:M子さんとその一味)に決して会ったりすることのないように、わざわざ電車を乗り継いで都心のなかでも滅多に行かない街まで行ったりして。
ここまで来ればさすがに大丈夫だろうとは思うが、念には念を入れて。最後まで気を抜かずに。
目的の駅で降りるときも、発車メロディーが鳴り終わって扉が閉まるその寸前に飛び降りて。
ファッションビルに入ってからも、エレベーターを一往復半してしっかりと確認。よし、大丈夫だ。尾行もされてはいない。
細心の注意を払った甲斐あって、誰にも邪魔されず無事に舞ちゃんへ渡すプレゼントを用意することができた。

紫水晶特有の、その高貴な色合い。
この美しさ、きっと舞ちゃんに似合うはず。

そして、そのプレゼントを渡すのにこの駅前のテラスを選んだのも、もちろん意味があるんだ。

いま僕が立っている、この駅前のテラス。
ここからは眼下にショッピングモールを見下ろすことができるんだ。
もうすぐ5時になると、目の前に真っ直ぐに延びているこのモール全域に設置されたイルミネーションが一斉に点灯する。
それはそれは見事なイルミネーションなんだ。

女の子っていうのは、こういうキラキラしたものが大好きらしい。
きっと舞ちゃんもこの美しいイルミネーションを見て心をときめかすことだろう。
そして、それを見た僕ら2人はきっといい雰囲気となるに違いない。
ひょっとしたら、今日この場で僕らの間には、何か進展があるのかもしれないぞ。
進展ってなにさ? 何って、それはですね、ロマンティックなムードに包まれた僕と舞ちゃん。
見つめ合った2人の顔は、そこから徐々に近づいていき・・・・ 僕らの初めてのKi

ゴホン、、、思わず妄想が止まらなくなってしまう。
もうすぐ舞ちゃんが僕の前に現れると思うといても立ってもいられない気分なんだ。
でも、まぁ、とりあえず落ち着こう。


僕が舞ちゃんを待っている、イルミネーションを見渡せるこのテラス。
この場所には、まことしやかに言われている噂があるんだ。雑誌とかでもよく紹介されているその噂。
それは、ここからこのイルミネーションが点灯する瞬間を一緒に見た男女は、必ず結ばれるようになるという伝説。

そう、僕は舞ちゃんとそれを見る!

そのために点灯時間の5分前となるその時間に待ち合わせにしたんだ。

今日のこの出来事が僕らにとって、とても大切な思い出のヒトコマとなることは間違いない。
なんと言っても、今日は舞ちゃんの18歳の誕生日。その特別な日に一緒に眺める特別な言い伝えがあるイルミネーション。
これをきっかけに結ばれた僕と舞ちゃんは、これから毎年このイルミネーションを見るたびに今日のこの日のことを思い出して・・・
「あの日のことを思い出しましゅね・・・・」「舞ちゃん、、いや、、、舞・・・・」、、、とかいってw


4時55分。
舞ちゃんは来ない。

まぁ、女の子が多少の遅刻をしてくるのは想定の範囲内。
もうあとちょっとすれば舞ちゃんがやってくる。
その瞬間を想像するだけで、自分の表情が緩んできてしまうよ。
舞ちゃんと向き合うその瞬間まで、あともう少し。そう、あと少しだ!

もうすぐ会える舞ちゃんのことで頭が一杯になっていて、すっかり周りのことが見えなくなってしまう。
あぁ、早く舞ちゃんに会いたい。会いたい会いたい会いたいな。
何だろうこの感じ。胸がぽっと熱いな。あぁ、好きすぎる!!
舞ちゃん、生まれてきてくれてありがとう!!

・・・おっと、さっきからもう自分の世界に入りすぎちゃってるかもw
気が付けばついつい気持ちが先走ってしまう。その繰り返しだ。
でも、別にいいじゃないか。今だけは舞ちゃんのことだけを考えさせて欲しい。


舞ちゃんはまだ来ない。
いいさ、いいさ。女の子って、いつだって遅れてくるものだから。それを待つのだって楽しみのひとつってものさ。
僕の方が年上なんだし、ここは悠然と構えていないとな。

舞ちゃんに会えるときまで、あと少し。
待っているこの時間だからこそ思う。あぁ、幸せだなぁ・・・


そんなリラックスした気分でいる僕の耳に、ある聞き慣れた声が、飛び込んできた。


「よっ、少年! こんなところでなにしてるのぉ?」


背後から聞こえてきたその高い声を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立った。


恐る恐る振り向いた僕の目に飛び込んできたのは、その大きなリボンと見事なふたつ結び。


桃子さん・・・・・


しまった・・
あれほど周囲への警戒を怠らないようにしていたのに。
それなのに、最後の最後ここにきて致命的なミスを犯してしまった。
あと少しで舞ちゃんに会えるというのに。あと、ほんの少しで、舞ちゃんに・・・
その至福の瞬間を目前にしたことで、思わず警戒も忘れて舞ちゃんとの世界に入り込みすぎてしまった。
最後の最後で気を抜いてしまったこと、悔やんでも悔やみきれない。
痛恨のミス。あぁ、なんてことだ・・・


「うわあぁ・・・ も、も、もっ、桃子さん!!! あ、いや、べ、べ、別に。何も?」
「ふうん?」

じっと僕を見つめる桃子さん。
その目には、幸せを目前にした浮き立つような気分をひっくり返されて狼狽しまくっている僕の姿が映っていることだろう。
一気に混乱した僕の気持ちを見透かしているかのように、殊更のんびりとした口調で話しかけてくる。

「なぁに? その手に持っている小箱は?」
「こ、これでしゅか? べ、別に何も全然特別なものではないでしゅよ?」

思わずカミカミになってしまった僕のことを、わざとらしく目をパチパチさせて見つめる桃子さん。
その可愛らしいお顔に、次の瞬間、ニヤッとした笑みが浮かんだ。

「ちょっと一緒にお話しでもしよっか」
「え? も、桃子さんとですか?」
「なに? 何か問題でも?」

急に真顔にならないで下さい。
桃子さんの真顔、すっごく怖いんです。

「な、無いです・・・」
「そうだよねー♪」


もう時間が無いのに。早く立ち去って欲しいのに。
そんな気が急いている僕の神経を逆撫でするかのように、わざとらしい微笑みになった桃子さんが僕の手にしているものを指す。

「それ、プレゼント、でしょ?」
「え、いや、まぁ、そういう感じのモノというか、その・・・」
「そっか、分かった!」

まぁ、バレバレだよね。
今日は2月7日。今日が何の日か。
そして、今日この日に僕が持っているこれが何なのか、なんて。

一目でプレゼントと分かるラッピングを施したモノを持って僕がここにいるってことは・・・・
分かりやすい僕の行動、この桃子さんにはそんなの全てが一目瞭然だったことだろう。

「そのプレゼント、そっか!もぉの卒業論文の完成祝いってことか。アリガト♪」
「・・・・・ちょ、それ全然違いm
「卒論、書き上げるまで本当に大変だったんだからぁ。大変だったといえば、教育実習のときも大変だったけど楽しかったなぁ」
「・・・・・あ、あの桃子さん、僕は今ちょっと忙しk
「え?そんなに聞きたいんだ。じゃあ少年のために、その時のエピソードをちょっとだけ。もぉ先生が受け持ったのは小学2年生のクラスだったんだけどぉ、最初のときにクラス全員でしてくれた歓迎の舞っていうのが・・・」
「も、桃子さん! その話しは今度またゆっくりと!!」
「そーぉ? じゃあ、卒業論文のこともそのときにじっくり教えてあ・げ・る♪」
「ア、アリガトウゴザイマス。それじゃ、桃子さん、僕はこれで失礼s
「でも、なんか悪いなぁ。わざわざそんなプレゼントまで用意してもらったりして。ウフフフ」
「・・・・あのですね、なんで僕が桃子さんの卒業論文にプレゼントを用意する必要g
「もうすぐ3月になったらお祝いの日がたくさんあるよ。ひなまつりにぃ、何と言ってももぉの誕生日でしょ。それから大学の卒業式。そのたびにプレゼント貰えるなんて、うれしいにゃん♪」
「そのたびにって・・・」


ダメだ・・・ どうしても桃子さんの話しを切ることができない。
ていうか、僕に決して場の主導権を握らせたりはしてくれないんだ。それこそが軍団長。
ぶりぶりしている桃子さんを見るにつけ、僕の焦りは最高潮に。

もう時間が無い!!
舞ちゃんが、もうすぐ、ここに!!


焦りが隠せないそんな僕の様子ぐらい、桃子さんには手に取るように分かっているんだろう。
僕の前に立っているのは、「ウフフフ♪」なんて言いながら、楽しそうに微笑んでいる桃子さん。

「じゃあ卒論の件はそのときにお話ししてあげるね」
「はい!是非そのときにお願いします!!だから(ry!!」
「張り切っちゃってw それって、もぉのために少年が一席設けてくれるってことでいいのかな?」
「い、いいですとも!!それでいいですから!!早く(ry!!」

焦燥する僕の叫んだ答えに満足げな表情をした桃子さん。
僕のその答えを引き出すと、のんびりと周りを見回したりしていた桃子さんだったが、ふいに小首を傾げながら呟いた。

「あれ?なんかカップルばっかりだね。でも何か、みんなずいぶんソワソワとしながら見下ろしてるけど」
「桃子さん、知らないんですか? 結構有名なのに、ここ」
「えー? この下に何かあるの?」

桃子さんがそのモールを見下ろしたそのとき、17時の鐘が鳴った。

そして・・・・


その瞬間、モール全体を包み込むように数十万個のイルミネーションが一斉に点灯していったんだ。
僕と桃子さんの目の前に、それはそれは息を飲むような美しい光景が広がっていく。


「うわぁ、すごーい!! 見て見て!すっごい綺麗だねー」


耳に入ってきた無邪気な声を、僕は呆然とした気分で聞いていた。
煌びやかな宝石箱のように燦然と輝いているこの素晴らしい光景。
僕は舞ちゃんと一緒にこれを見るはずだったのに・・・ 

いま僕の隣りには、目を輝かせている桃子さん。


どうしてこうなった・・・




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