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千聖に連れられて18歳の最初の日に訪れたのは、隠れ家的なロケーションに建つフォーマルな感じのレストラン。
その大人びた雰囲気、舞にはとても新鮮で刺激的だった。
そしてそれは、もう自分がそういう大人といえる歳になりつつあるということを実感させてくれるものでもあった。
お嬢様の千聖にとっては慣れたものみたいで、上品な仕草で舞のことをエスコートしてくれる。
寮生の前での子供っぽい姿のちしゃととは全く違う、落ち着いた大人の女性を感じるその立ち居振る舞い。
千聖って、(あんなんだけど)やっぱりお嬢様なんだな。その伴侶となるマイもこういう世界に早く慣れていかなくちゃ。
一皿ずつ出てくる料理は、舞には馴染みのないようなものばかりだったけれど、どれもとても美味しかった。
なんといっても、最愛の人を前にしているのだ。それこそが最高の調味料(ry


千聖との素晴らしい時間を満喫した私は、千聖と一緒に車で屋敷へと帰る途中だった。

「楽しかったわね、舞」
「うん。本当に」

時刻は20時55分。

そのとき、車は駅前を通りがかる。
瞬間的に意識の中で何かが引っかかった。
何か気になることが浮かんだような気がしたんだ。

ん? 何だろ? 駅前?


あ・・・・・


すっかり忘れてた。いっけね。


・・・・思い出したよ。


そういえば、駅前で会う約束をしていたんだった。


・・・・・・・


でも、さ、、、、しょうがない、よね。

そうだよ!
しょうがないじゃん!!
千聖からあんなお誘いがあったんだから。
そこはさ、やっぱりプライオリティーが違いすぎるでしょ。


しょうがないじゃん、、、



急に黙ってしまったマイの様子に、千聖が声をかけてくる。

「どうなさったの? 舞?」
「ちしゃと、ちょっと駅前に寄ってくれる?」
「駅前に? いいけれど、何か?」
「いや、ちょっとね。用事を思い出して。大したことじゃないんだけどさ」

千聖が運転手さんに駅前に車を寄せるように伝えている。

「ごめん、先に帰ってて、ちしゃと」

そう言い残して、ひとり車を降りた。
駅前のデッキへと階段を上っていく。

約束してたのは5時前なんだ。
もういるわけがないに決まってるんだけど、でもまぁ一応、ね。
そこはやっぱり、ちょっと悪かったかなぁとは思うわけで。
遅れたけれど、ちゃんと顔は出しましたよって事にしておこーかなーと。


でもさ、、、この舞様との約束なんだから、舞が少しぐらい遅れたからって、それぐらいは待ってるべきじゃない?
だいたい、マイはちょっと遅れただけじゃん。現にこうやってちゃんと来たんだからさ。
そうだよ、普通は待ってるもんでしょ。女の子がやって来るまで。それぐらいは男だったらさ、当然でしょ。
うん。そうだ。マイが悪いんじゃない。


階段を上ってデッキに出ると、そのテラスの上の光景が目の前に広がる。

もういないよね、いくらなんでも。
そう思いながら、そこをぐるりと見渡すと・・・


「いた・・・・」

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ぼうっとしながら僕は眼下のイルミネーションを眺めていた。
もう何時間、僕は一人でこの幻想的なイルミネーションを眺めているんだろう。

次々と色調が変化していき、見ていても飽きることはない。
綺麗だなー。
特に寒色系の色合いになったとき、その色味は今の僕の心情に染み入るようだよ。


もうすぐ21時になる。
終了の時間だ。

ここのイルミネーションは、毎時00分から5分間、幻想的な光によるページェントが行われる。
もうすぐ21時からの5分間が、本日最後のそのショータイムなのだ。
そして、それを最後にイルミネーションの営業時間は終わりとなり消灯されてしまう。


もう終わりの時間か。
いいかげん諦めて帰ろう。
体もすっかり冷え切ってしまったし。

冷えて感覚の鈍くなってきたその手で持っている小箱をじっと見つめる。

これ、渡せなかったな。

さて、もう踏ん切りをつけて帰ろうと、うつむいていた視線を上げた。
そのとき、白い息の向こうから僕の目に飛び込んできたもの。

それは・・・・

舞ちゃん!!!

あまりの寒さに僕はついに幻覚を見るようになってしまったのだろうか・・・


いや、違う。違うよ! 本物の舞ちゃんだ!!
舞ちゃんが来てくれたんだ!!

「やっぱり舞ちゃん!! 来てくれたんだ・・・ ありがとう、舞ちゃん!!」
「舞のこと、待っていたんでしゅか? 今までずっと?」
「だって、舞ちゃんが約束してくれたんだもん。そりゃあ、いつまでも待つよ」


黙って僕をじっと見つめる舞ちゃん。
そんな舞ちゃんが何かを僕に言おうとしたこと、それに気付くことが出来ないぐらい僕の心は一気に高まってしまった。

「あ、あのさ、、、ゴ、ゴメn
「舞ちゃん! 18歳の誕生日おめでとう!!」

だから、結果的に彼女の言葉を遮る形になってしまったけれど、僕は高ぶった気分のままにその言葉を勢い良く口にした。
だって、舞ちゃんが来てくれたことが嬉しくて! 
とにかく、いま僕は舞ちゃんに自分のこの気持ちを急いで伝えたかったから。

そんな僕の言った言葉に、舞ちゃんは一瞬ちょっと照れたような表情を浮かべてから、こう言ってくれた。

「あーがとごじゃいましゅ」
「こ、これ! 舞ちゃんに誕生プレゼント!!」
「舞に?」

そのぶっきらぼうな反応がもうたまらない!
あぁ、プレゼントを無事に渡すことが出来て本当に嬉しいよ。


舞ちゃんにプレゼントを渡したそのとき、時刻は21時になった。
その瞬間、目の前に広がるイルミネーションが一斉に瞬き始めた。次々と変化していくその色合い。
ダイナミックな7色の輝き。まるで光の渦に包まれたかのようだ。

「キレイ・・・・」

幻想的な雰囲気を前に、舞ちゃんが呟いた。
珍しいな。舞ちゃんがそんな素直な感想を述べるなんて。
きっと、舞ちゃんの心に届くぐらい、そのぐらい目の前のこの光景は綺麗なものなのだろう。
でも・・・ 僕はそんな舞ちゃんを見つめる。

ま、舞ちゃんの方がキレイだよ・・・・ 


僕がそう言おうとしたとき、舞ちゃんと目が合った。
その大きな瞳。一瞬にして僕はその瞳に捕らわれてしまう。

メイクのせいなのかな。今日の舞ちゃんはとても大人っぽく見えて。
舞ちゃんのその可愛いお顔を間近で見ていると、もう今にも意識が飛びそうだ。
一本一本まで見えるその美しい髪。
ふっくらと柔らかそうなほっぺた。
そして、その艶やかな、く、く、くちびる・・・・

ま、舞ちゃん・・・・!!

反射的に、吸い込まれるように顔が近づいていきそうに・・・


そのとき、僕の耳にある声が聞こえてきたんだ。

それは、あの甲高いアニメ声、ではなく、ほぇーっとしたクマクマ声でもなく、フワフワとした耳に心地いいお声だった。


「まぁ、なんて綺麗なイルミネーションなのかしら!」
「ちしゃと!」
「お嬢様!」

現れた千聖お嬢様、目を輝かせてイルミネーションを食い入るように見つめている。


千聖お嬢様がどうしてここに!?
僕はこの状況がどういうことなのか把握できず、思わず頭の中が混乱してしまった。
パニクった僕ほどではないが、舞ちゃんも現れたお嬢様を見て少なからず驚いているようだ。

そんな舞ちゃんを、穏かな微笑みを浮かべて見つめた千聖お嬢様。
舞ちゃんに続いて、この僕のことも見てくれた。

「ごきげんよう、ももちゃんさん」
「お、お、お嬢様! こ、こんばんは!!」

思いがけず現れたお嬢様が僕に対して微笑みかけてくれたりしたんだ。
その姿に僕が平穏でなどいられるはずもなく。お嬢様に見つめられた瞬間ちょっと記憶が飛んだ。

僕に微笑んでくれたあと、お嬢様は再び舞ちゃんに向き直る。

「ここにいたのね、舞」
「先に帰っててって言ったのに・・」
「舞の誕生日ですもの、舞とずっと一緒にいたいじゃない?」

お嬢様が天使のような微笑で舞ちゃんを見つめた。

「ちしゃと・・・」

舞ちゃんもお嬢様を見つめ返す。
ひょっとして、お嬢様の魔法がかかっているのかもしれない舞ちゃんのその表情。

「ウフフフ、見て、舞。本当にキレイなイルミネーションね」
「ち、ちしゃとの方がずっとキレイでしゅよ」
「あら、ありがとう舞。こんな素晴らしい景色を舞と一緒に見ることができるなんて嬉しいわ」


いま僕が見ている目の前のこの光景。
お嬢様と舞ちゃんのふたり。それは神聖にして不可侵なもの。

その光景に、僕はそっと後ろに下がる。
2人に気付かれないように、それぐらい、静かに、そーっと。
ふたりの絆が目に見えるようなこの光景を見れば、誰だってそう感じてきっと僕と同じようにするに違いない。

「21時を過ぎたわ。でも、今日からはもう、この時間でも大丈夫なのよね、舞」
「うん、舞ももう18だからね」
「色々な新しいことが多くなりそうなこの一年、舞にとって素晴らしい経験になるのでしょうね、きっと」
「そうなのかなー。ま、どこに行っても舞は舞のまま変わらないけどね」
「舞?」
「ん、なに?ちしゃと?」
「私、そんな舞が大好きよ。ずっと千聖のそばにいてくれて、本当に良かったわ」
「・・・・ちしゃと」
「なに、舞?」
「ちしゃと、、、、舞も、ちしゃとのことが、ダ、ダイスk・・・・
「・・・え?なんて仰ったの舞?」
「・・・・・・・」
「いま言いかけたのは何だったのかしら?」
「な、なんでもないでしゅよ!!11」
「嘘! なにか言いかけたじゃない。舞、ちゃんと最後まで仰いなさい。命令よ!」


イルミネーションを眺めている2人の後ろ姿。
仲睦まじい2人のその姿は、見ているだけで僕を幸せな気持ちにさせてくれるようなものだった。

このままずっとずっとそんな2人を見ていたい。
見ていたいけれど、でも、それはあまりにも無粋ってもの。

だから次の瞬間キッパリと、2人の背中を見送るように僕はそっとその場を後にしたんだ。
こんな形で舞ちゃんの前を去ることは予想外だったから複雑な気分だったけれど、それでも確かに僕の心の中はいま何か暖かく満ち足りていた。
だって、舞ちゃんのあんな穏かな笑顔。めったに見ることが出来ないその笑顔を見ることができたんだから。

僕は舞ちゃんのことが本当に好きだ。大好きなんだ!!
僕が一番に願っていること、それは舞ちゃんが幸せでいてくれること。
だから、だからこそ・・・

舞ちゃんが千聖お嬢様のことを想う気持ち。
僕が大好きな舞ちゃんのその気持ちなんだ。僕にそれが分からないはずがない。
舞ちゃんの隠し切れないその本心を知ってしまっている以上、僕のすることはただ一つ。
舞ちゃんのその気持ちが変わるまでは、今の舞ちゃんのその気持ちこそ大事にしてあげたいということ。
僕は本当に心からそう思っている。

舞ちゃんの気持ちが果たして今後どうなるのか、将来のことは分からないけれど・・・(ぼ、僕は何年でも待つから!)
少なくとも今はこれで正解。なんだ。きっと。
・・・・・そうですよね、チンプイさん?(←)


帰り道、僕の心の中は不思議なほどすっきりとした気持ちだった。

舞ちゃんの誕生日、このあとも舞ちゃんにとってきっと素敵な時間となるはず。
今日という日が舞ちゃんにとってこれ以上ないぐらい素晴らしい一日となりますように。
あらためて、18歳の誕生日おめでとう、舞ちゃん!


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