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「むふー、まーちゃん負けません!」

鼻息荒く、一人やる気マンマンなマサキとは対照的に、ユウカさんは落ち着いている。
一体、何を考えているのか・・・。早くしないと、他の人も生徒会長さんを見つけちゃうんじゃないかって、そわそわしてしまう。

「じゃあ、有原さんクイズね。第1問!有原さんが、寮で出してもらう朝ごはんで一番好きなメニューは?」
「はーいっはいっはいっはいっ!!!」

身を乗り出して挙手するマサキに、超のけぞるまつげくるんくるんさん。

「ど、どぞ」
「シャケの!焼いたやつ!」

自信満々に答えるも、「ブーッ。違います」とあえなく撃沈。

「ぷひゅー。じゃあ、イカ!焼いたやつ!」
「ええ?違うよー」
「きええ!キュウリ!焼いたやつ!」
「焼かねえだろ!」

マサキは目を見開いて、鼻息荒く“焼いたやつ”シリーズを繰り出している。・・・が、全然当たらない。当然のことながら、大ハズレ。

「んんんん・・・わからぬ」

やがて、おかしなテンションで30個ぐらい挙げては撃沈を繰り返したマサキが、燃料切れとばかりに一瞬だけ黙り込む。
そのタイミングで、ユウカさんが白い手をスッと挙げた。

「はい」
「どうぞー」

マサキの攻撃にげんなり顔のまつげくるんくるんさんは、もはややる気ゼロな表情のまま、投げやりにユウカさんに回答を促す。

「エビとアボカドのサラダサンドイッチ・・・じゃないかと」

おお、いきなり具体的な答え。正解っぽくない?有原さんのこと、知ってたのかな。

「んー・・・惜しい!けど、それじゃなーい」
「はい!はい!アボカド!焼いたやつ!」
「お前はちょっと黙ってろ!」

だが、マサキの読みどおり“惜しい”ということは、そこに寄せていけば、そのうち答えが見つかるんじゃなかろうか。
よーし・・・。私もいい加減、ちさとちゃんのプレゼントのほうにいきたいんだ、ぶっちゃけ。
というわけで、急きょ参戦だぜ、どぅー!!!


「ユウカさん、ユウカさん」
「うん?」

しかし、私はカードを持っていないから、後ろからユウカさんに入れ知恵作戦だ。
一か八かだが、“アボカド”がキーワードになるなら、こういうことも考えられるんじゃないか。
前に、ちさとちゃんに好きな食べ物を聞いたところ、リ*・一・リ<アボカドは美味しいわね。ウフフ って言ってた。
あの変た・・・いや、あの人はちさとちゃんのことが大好きだったはず。
なら、好きな食べ物も、自然とちさとちゃんに合ってくるんじゃないか。・・・確か、別荘で執事さんが作ってくれた料理にも入ってたはず。ハルよ、よーく思い出すんだ。

「アボカド刺身!パフェ!ケーキ!」
「はずれはずれ!てかあなた、当てる気ないでしょ、もう!」

焦るな、落ち着けハルよ。あの状態のマサキでは当てることはできまい。
あの日…別荘の朝、ちさとちゃんがフーフーしながら食べてた料理、それは・・・

「ねえ、わかったよ!たぶんこれ!」

ユウカさんは、私のコショコショ声を聞いて、ふふふと笑った。

「OK。ハルちゃんの、ちょっと言ってみるね」

またも上品にスッと手を挙げるユウカさん。
こういう時、マサキって案外空気読んで黙ったりするんだよな。不思議な奴め。

「答えてもいいですか」
「はいどぞー」

もはやまつげくるんくるんさんは、げんなりしてるのを隠そうともしない。スマホいじりながらのテキトーな返答だ。無理もない、マサキのあのハイテンションワールドに無理やり引きずり込まれたんだから、神経だって磨り減るというもの。

「有原さんの好きな朝食ですが・・・アボカドのグラタンではないでしょうか」

――アボカドのグラタン。
私からの助言でユウカさんが回答したそれは、あの別荘に泊まった翌朝、夏だっていうのに、ちさとちゃんがフーフーしながらちょびっとずつ食べていた料理。
チーズたっぷりでおいしかったな。ちさとちゃん、3個もおかわりしてあのつえー感じのメイドに(ry

「・・・」
「ど、どうっすか」

一呼吸おいて、まつげくるんくるんさんは、ニコッと可愛い笑顔を見せてくれた。


「・・・せいかーい!え、なんでわかったのー!?すごすぎじゃない!?有原さんのことだよ!!!???」
「はは・・・」

有原さんだよ、って。その一言に、まつげくるんくるんさんの有原さんに対する見解が集約されている。

ま、それはいいか。マサキよ、悪いな。非情だが、勝負というのはこういうものなのだ。例え盃を酌み交わした友と言えど、戦の世界においては


「あれー?マサキちゃーん・・・」
仁義の世界妄想に浸っていたところ、ユウカさんの声でふと我に返る。

「おおお・・・おぐぐぐ」

すると、四つん這いになったマサキが、異様な唸り声をあげながら悔し涙に咽かえっている姿が目に入った。

「なりひら・・・うごごご」
「な、泣くことないだろ!こういうゲームなんだから」
「ぐぎぎぎ・・・」

歯ぐきをむき出しにして、野犬のように唸るマサキ。そんなに好きだったのか、有原さんのことが!
思わずユウカさんをかばうように前に立ってみるけれど、当の彼女は相変わらず涼しい顔で、ニコニコと笑っている。どっちかっていうと、まつげくるんくるんさんの方がオロオロしているみたいだ。慌てた様子で、「えーと、りぃのでよければ、何かあげるけど・・・が、学食のラーメントッピング無料券しかないけど・・・」なんて言ってくれてる。


「ひぃぃい・・・なりひら・・・」
「マサキ、おい」
「このうらみはらさでおくべきかぁあああぁあ」
「あっ、おいコラ!」

マサキはその四つん這いの姿勢のまま、廊下の向こう側へ猛ダッシュで去っていってしまった。・・・と思ったら

「いただきマックス!」
「ええ!?もー・・・」

その犬のような状態でにわっせわっせと戻ってくると、まつげくるんくるんさんの手から学食チケットを奪ってまたどこかへ旅立っていったのだった。

「・・・」
「・・・」

気まずい沈黙の中、ユウカさんが「あのー・・・」とまつげくるんくるんさんの背後に目を向けた。

「はい?・・・ああ、そっか、有原さんのプレゼントね。はい、これ、大きいけど」

後ろに置いてあった大きな紙袋が、ユウカさんに手渡される。

「じゃ、私はこれで・・・。熊井ちゃんもう終わったかなあ。ラーメンでも食べて・・・」

非情に疲弊しきった声で、まつげくるんくるんさんはどこかに電話を掛けながら、この場を離れていった。

「私たちも、行く?」
「あ・・・うん」
「あはは、なんか面白かった。私の学校、あんまりこういった行事をやらないから」

ユウカさん、このマイペースというか肝がすわっているというか・・・。私が最初にイメージしていたほど、おとなしくてか弱いタイプではなさそうだ。

「プレゼント、見ないんすか?」
「うーん、千聖お嬢様のクイズが終わってからかなあ」
「そか。あと、もう1個いい?何で、いきなり有原さんの好物がわかったの?ま、料理は違ったけどさ、食材は合ってたじゃん?アボカド」
「ああ、それはね」

ユウカさんは少し歩調を緩めて、私の横に並んでじっと見つめてきた。・・・なんつーか、小悪魔っぽいよな、この人。無駄に仕草とか可愛いし。ま、ハルはちさとちゃん(ry


「多分、ハルちゃんと一緒じゃないかな」
「ハルと?」

「うん。千聖お嬢様がね、アボカド大好きって言ってたから、きっと有原さんも同じなんじゃないかって。友達の好物って、移っちゃうじゃない?有原さんのお嬢様溺愛っぷりは、花・・私の友達から聞いて知ってたからね」
「あ、そうそう。ハルもそう思ったんだよね。つか、ユウカさんの友達、情報通がいるんだ」
「可愛い女の子のデータを収集するのが好きなんだって。変わってるよねえ」
「・・・・・・・ユウカさん、付き合う友達は選んだ方がいいぜ」


しばらく階段を上がって、最上階までたどり着くと、ユウカさんは迷うことなく生徒会室の扉の前に立った。
中から人の声がする。生徒会長さんだろうか。いやしかし、キーッと逆上してるような声。そういうイメージ、ないんだけどな。なんだろ。


「あーあ、花音ったら。ねえ?」
「かのん?ああ、生徒会長さん見つけたっていう・・・」
「うん、紹介するね。入ろうか」

ユウカさんは律儀に3度ノックをすると、「失礼します」とドアを引いた。

「お待たせして申し訳・・・」

突然、言葉を切って立ち止まったユウカさんの背後から背伸びして覗くと、奥の椅子には失笑気味の生徒会長さん。そして、手前のホワイトボードの前あたりにユウカさんと同じセーラー服の生徒さん。しかし、青ざめた顔で身を捩っている。

「花音ちゃん」
「ギャー!憂佳!なんなの!どういうことなの!!!」

妙にガクガクした動きでこっちに向かってくるカノンさんとやら。眉を吊り上げて小鼻を膨らませて、結構可愛いっぽいのに、すごい顔芸だ。

「ふんがー!」
「うわあ!」

その鬼の形相のまま、私たちに見せつけるように後ろを向くと、果たして、その背中には、子泣きじじi・・・もとい、さっきまで大暴れしていた野犬が張り付いていたのだった。

「おいっ、何やってんだお前!マサキ!」

すると、マサキは私に目もくれず、器用に片手でカノンさんにしがみついたまま、ユウカさんをビシッと指さした。

「うおおお!まーちゃん、ベランダ!次はない!」
「うん、リベンジね。わかった」
「わかるのかよ!」

にっこり笑ったユウカさんは、飄々とした感じで、マサキの挑発を受け入れる。

「でも、カードないだろ、マサキ」
「くれる!」
「やらねーよ!ねーちょっと憂佳ほんと助けて!」

――おいおい、マサキの奴、生徒会長の前でカツアゲとはDQNすぎるぜ、ここはハルの鉄拳制裁をだな・・・

「はい、はい!じゃあ、カード所有者も揃ったことだし、はじめようか」

しかし、生徒会長さんはまったく動じていない様子。私が拳を握りしめるよりも早く、スッと席を立って、カノンさんからマサキを引っぺがして、赤ちゃんみたく抱っこしてみせる。

「おろ?ママ会長!」
「そうそう、ママだよ。まあ一旦整理して、公平にゲームをすすめましょう」

――おお・・・なんだこの安心感。生徒会長さんが話し始めると、自然にみんな落ち着いた表情になる。
私の燃えかけた闘志も一旦落ち着いて、3人そろって生徒会長さんからの言葉を待つ。



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