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行ってらっしゃい、と生徒会長さんに見送られながら、私たちは生徒会室を後にする。

「じゃあ、ここからは別行動だね。いろいろとありがとう、遥ちゃん」
「あ・・・うん、別に」
「花音ちゃん」

律儀に私に頭を下げた後、ユウカさんはカノンさんのほうを振り返った。

「花音ちゃん、ありがとうね。これで、またお嬢様とお話するチャンスが出来たかもしれない」
「・・・ね、無理することないんだよ?マロも一緒に」
「ううん、ここからは私が一人で頑張らなきゃ。ふふ、花音ちゃん、生徒会の皆さんのライブが気になってるんでしょう?そっち、行ってきちゃっていいよ。」

なんだかわからんけど、やはり、ユウカさんは相当な理由あり参加者さんのようだ。
ちさとちゃんのことだから、それはすごく気になるんだけれど・・・それは聞いていいことなのか、どうにも判断かできない。
好きならば、何でもしていい。そんな風には私は考えられないし、第一、それは私が一番恐れている事・・・つまり、ちさとちゃんに嫌われてしまうってことに繋がってしまうだろう。

「うおおおおまーちゃんやったるちゃん!さらば愛しき友たちよ!!!」

マサキは威勢よく叫び、またとっととどこかへ去っていってしまった。

「えーと・・・憂佳がそう言ってくれるなら、私、ライブ行ってきていいかな」
「うん、あとで感想教えてね」
「まかせて!一人で行く学園クリスマス会に音源をうんたらかんたら」

そうこうしているうちに花音さんも体育館へ戻っていき、私と憂佳さんは二人きりになってしまった。


「あー・・・当てとか、あるんすか」
「うん?」
「何か、この条件だと、ハルのほうが結構有利になっちゃうと思って、ユウカさん的にはどうかなって」

「あはは、優しいなあ」

目を細める横顔には愁いがあって、視線を外せなくなってしまう。

「じつはね、今日は用事があって来れなかったんだけど、私の学校の友達が、千聖お嬢様と親しいから」

憂佳さんは、その人からの情報を元に、1つ決めた場所があるらしい。

「みんな、私とお嬢様の間に起こったことを、真剣に聞いてくれて、絶対に解決しようって言ってくれたんだ。
嬉しかったなあ」
「あのさ、ユウカさん・・・」

もし、どうしてもっていう事情があるなら、ハル、辞退してもいいよ、と言いかけて、私はハッと口をつぐんだ。
・・・違う、そうじゃない。ユウカさんが望んでいるのは、そういうんじゃないんだ。
この人は・・・戦っている。それは過去の自分とであり、うちの学校のクリスマス会に参加したことでもあり、ちさとちゃんと向き合おうとしてることでもあり、そして、今、“誰かと競う”ことで、その権利を手にすることでもある。
だから、私がライバルになっているのは、むしろ望ましい状況なんだろう。

「ハル、本気で探すから。恨みっこなしだぜ」

そう宣言すると、ユウカさんはにっこり笑ってうなずいた。


*****
「しかし・・・探せるのは1回、となるとなぁ」

数分後。
ひとまず高等部の昇降口まで下りてきた私は、ちさとちゃんの下駄箱を見つめながら、ため息をついた。
大好きな人のことだ。心当たりがないわけじゃない。だけど、逆に絞るのが難しい。
大好きなラーメンの出る学食?合唱が楽しかったと言ってたから、音楽室?力いっぱい走れるグラウンド?
どれも合ってるようで、正解じゃないような・・・。

「きえええ!すどぅー!」
「うわっ!」

突然、足元から人間の顔がニョキッと出現した。

「マサキ!ま、まさかお前・・・」
「まーちゃん終了のお知らせ!佐藤優樹かわいそすぎワロタ!まさ哀れざまあああ!」
「落ち着け!見つからなかったんだな?カード!」

ほんのちょっとだけ、「よかった」なんて思ってしまったことに自己嫌悪。
案の定マサキはこくこくとうなずいて、またスンスンと鼻をすすりあげた。

「泣くなってば・・・」
「ちさとーなら、あそこだと思ったのに。・・・3階東階段の手前のトイレ、奥から2番目」
「なんでだよ!」
「ちさとーはだいたいそこを使います」
「へ、へー・・・3階東・・・って、なんでそんなこと知ってんだよ!」
「えっへん」

有益な情ほu、じゃなくて、ウソかホントか知らんけどほんと恐ろしいわ、こいつってば。
だけど、玉砕を隠さずにすぐ私を探しに来て報告してくれたってのは嬉しい。素直なとこもあるじゃんか。今度お小遣い入ったら、駄菓子でも奢ってやろうかな。


「すどぅは?」
「まだ探してないよ。迷ってんだ、今」
「ふーん・・・」

マサキは私の視線に合わせるように、しばらく黙って、昇降口の低い天井を見つめていた。

「はー、これでハルもユウカさんも見つけらんなかったらどうすんだろ。やりなおしかー?」
「すどぅ、すどぅ」

私の言葉を遮るように、マサキがスカートのすそを引っ張ってくる。

「どうした?」
「えーっと、まーちゃん、ちさとーのプレゼントを探してる間、ずっと、ママ生徒会長の言葉のことを考えてました」
「言葉?」
「ママ生徒会長は言いました。“ちさとーのことをしっかり考えてくれる人に、プレゼントを渡したい”」
「そうだな」

ふと、マサキが真顔に戻る。散々ふざけた後の、コイツのいつもの癖。何を言い出すのかと、思わず身構える。

「まーちゃんは、ちさとーの眠たそうな顔が好き。ぼーっとしてる顔も好き。ちさとーが落ち着いて安らげていたら嬉しいなって思います。そういう場所を選んで探しました」
「・・・・・それでトイレを選ぶっていうセンスはどうかと思うぞ、マサキ」

だが、場所はともかく、マサキのその考えは、1つのヒントとなって胸にスッと入ってきた。

「安らげる場所、か」

これで、私の探索候補はかなり絞られることになった。
その中でも、選ぶとしたら、・・・そう、多分、あそこだ。だが、出来れば避けたい場所でもある。だってさ、あそこは・・・

「すどぅ。もう行く」

いきなり、マサキが私の腕を掴んでぐいぐい引っ張ってきた。

「どこに行くんだよ」
「すどぅが今考えてる場所。まーちゃんも一緒にいく」
「ハルが何考えてるか、わかんのかよ」
「わかる!友達!」

ヒートアップしてるのか、マサキの手の力と、声のトーンがどんどん強くなっていく。
相変わらず、宇宙人な奴だけど・・・とりあえず、今この瞬間、コイツが私を鼓舞しようと必死になってるのはわかる。
そして、自分が“友達”として、それに答えるのは当然だってことも。

「そうだよな・・・ここまできて、見つけなけりゃしょーがないしな」
「イエス!誰のためでもない、すどぅのしたいようにいきていくだーけねー!」

無駄に質のいい、マサキの歌声に後押しされるように、私はついに“あの場所”へ足を向けることにしたのだった。



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