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あの子に会えるかな・・・・?

高まる気分の一方でちょっとした緊張感も感じつつ待っていると、今日もまたいつもと全く同じ時間に彼女がやってきた。


来た! あの子だ!!

一気に心が浮き立つ。
相変わらずの可愛らしいその姿。
初めて見たときと同じような衝撃を今日もまた感じて。

当然のことながら、僕はそんな彼女にすっかり見とれてしまった。
目の前の光景に心を奪われると、もう次の瞬間には彼女以外のものが全く見えなくなってしまう。

そのあまりの眼福さに思わず顔を綻ばせていた僕だったが、事態はここから思ってもいなかった方向へと展開する。
それは、僕にいきなり大きな声を掛けてきた人によって幕が開けられた。


「あははは。お久し振りですね!!」


うわぁ! びっくりした!!
だ、誰?

慌てて振り向いた僕の目に入ってきたのは、予想外の人だった。


そこには、ブルージーンズに白いシャツも爽やかな、超絶美人さんが立っていた。

舞ちゃんのお姉ちゃん!!

目の前に突然現れた和風顔の美人。
この予想外の事態。

僕は一瞬にしてテンパってしまい、その瞬間に記憶がちょっと飛んだし、その場ですっかり固まってしまう。
だって、とてつもない美人さんが僕に声を掛けてきてくれたんだ。そりゃ固まりますって!


目の前のお姉ちゃん、その美しいお顔には満面の笑みを湛えていた。(な、なにがそんなに楽しいんだろう・・・・)
この日差しに汗を浮かべているお姉ちゃんが、僕に対して続けて問いかけてくる。

「ん? 何に見とれてたんですか?」


その質問。
もちろん、正直に返答をすることなど出来ない僕だった。
そんな僕の視線の先を追ったお姉ちゃんが言葉を続ける。

「あの子のことですね。学園の初等部の子だ」


バレバレでした・・・
そんなストレートな指摘をされると、とてつもなく恥ずかしい。

そう。
僕が見とれていたその彼女は、確かに学園の初等部の生徒さんなわけで。
初等部の子に見とれているなんてことを、よりによって元生徒会長さんにモロバレしてしまうなんて。
実に気まずいじゃないか。

でも、お姉ちゃんは僕の感じていたそんな羞恥心など全く関知していない御様子だった。
僕の行動に対してとりたてて問題を感じてる風でもなく、今はただ、その美しい瞳でじっと彼女のことを凝視していた。

「えー、でも、誰だろう、あの子?」

小首を傾げるお姉ちゃん。
どうやらその子のことは知らないようだ。


その時たまたま、この場にまた一人の初等部の生徒さんが通りがかった。


その子の姿を認めると、またまた楽しそうなお顔になったお姉ちゃん。
今度はどうやらお姉ちゃんのお知り合いの生徒さんのようだ。
明るい声で、その通りがかった女の子に声を掛けた。


「おはよう!」
「うえぇっ? お、おはようございますっ」
「ちょうどいい所に来た!観音ちゃん!」
「香音です」
「ねぇ観音ちゃん、あの子のこと知ってる?」


突然話しを振られて目をパチクリするその子。
そんな彼女がビックリした表情になりつつもお姉ちゃんの指差した先に目をやった。
その眼差しがまた、いかにも小学生らしい純粋さを感じる素朴感あふれるものだった。
またずいぶんと素直そうな感じのする子だなー。

「あの子って、あのショートカットの子ですか? あー、宮本さんですね。初等部きっての優等生です。知ってますか?宮本佳林ちゃん。有名人ですよ」
「カリンちゃん?」

名前を聞くと、お姉ちゃんは何か思い当たることがあるのか、ポンッ!と手を打った。


「そうか!あの子が佳林ちゃんか!! 例の!お嬢様の!!」


どうやら名前だけは聞いたことがあるようだ。
そして、どういう訳かテンションがとても高まった御様子のお姉ちゃん。

「とってもかわいらしい子じゃないか!すごいね!本当にかわいい!! えー、どうしよう!!あははは」


何か危ないことを言い出したようにも聞こえる・・・
まぁ、この人は学園の生徒会長だった人だ。あの人たち(←)とは違うんだ。
お姉ちゃんに限って、そこに危ないことなんか何も無いだろう。
そんな、今すぐにでも彼女のことを追いかけて行って確保しかねないテンションだったお姉ちゃんだけれど、残念そうな表情を浮かべるとこう言った。


「だけど、私ももう大学へ向かわないと。・・・そうだ!今日の下校のときに彼女と話しをすることにしよう!じゃあ、夕方またここで会いましょうね!そういうことで!!」

矢継ぎ早に自問自答していたかと思うと、ひとり結論を出されたお姉ちゃん。
隣りにいるこの子と僕に対して、高らかにそんな宣言をされた。
何が「そういうことで!」なのか展開がよく分からないけれど、どうやらお姉ちゃんの中ではそのように決まったようだ。

あっけに取られた僕。
かのんちゃんと呼ばれたこの子もまた同じような表情だった。

そんな僕らとは対照的に、スッキリとした表情のお姉ちゃんが純朴そうな彼女に声を掛ける。

「観音ちゃん!」
「香音です」
「また夕方に来てくれるかな?」
「いいとm、、って、放課後は無理ですよ。陸上部の練習がありますから」
「そっか! じゃあしょうがないね」
「すみません」
「いいんだよ。陸上部の練習、がんばってね」
「はい。頑張ります」
「うん! 今度また一緒に走ろう!」
「は、はい・・・」

お姉ちゃんのその言葉に、若干引きつった笑顔になったように見えた香音ちゃん。
そんな彼女が学園に向かってひょこひょこと歩いて行ってしまうと、お姉ちゃんは僕に向き直った。


「あなたは来られますよね?」
「えっ?僕ですか?・・・ 今日の放課後? いや、放課後は僕もいつもどおり軍団の席取りに行かないと、、、、
「来られますよね!? ねっ!!」

一点の曇りも無いその満面の笑顔。
この素晴らしい笑顔のお姉ちゃんの言うことを断ることなんて、僕にはとても出来るわけがない。
でも、そのお姉ちゃんの笑顔を持ってしても、それよりも恐ろしいあの大きな熊ry

「でも、本当にまずいんですよ。任務を放棄したと認識されたりしたらどんな目に会わされるか・・・ だから僕はあのカフェに行かないと」

そう思って逡巡している僕に、お姉ちゃんは僕の言うことを受けて言葉を続けた。

「そうか、今でもまだ桃と会ってるんですね! うん、じゃあ桃には私から連絡しておきます。ちょっと彼を借りるからね、って。あははは」

とても楽しそうなお姉ちゃん。ニコニコ顔だ。
でも、いまお姉ちゃんが言ったその言葉、僕にはその意味が全く分からなかった。

お姉ちゃん、“桃”って言った?

それって、桃子さんのことだろうか。
てか、文脈からすると桃子さんのことで間違いないんだろうけど。
なんだって? 桃子さんに何を連絡するっていうんだ?

だいたい、今のその言い方。
「桃に会ってる」って、おかしいでしょ。
桃子さんなんて、僕が軍団長の分まで席取りをしておいても、めったにやって来たりはしないんだから。
だから、いま僕が恐れているのはどっちかというと、来ているかどうか分からない桃子さんよりも、毎日毎日確実にやって来る大きな熊さんの方なんですが。

話しがややこしくなっていることを感じてどうにも混乱が隠せないんだけれど、目の前のお姉ちゃんの満面の笑顔を見るとそんなことはどうでもよくなってくる。
まぁ、席取りに行かなかった結果がどうなるのか・・・
それは後ほど身に染みて分かることになるのだが、それはここでは割愛する。お姉ちゃんが展開する物語の方が今はずっと重要なんだから。

いま僕の目の前にいるお姉ちゃん。
こんな正統派美女が、今日の放課後に僕を待つと言ってるんだ。
じゃあ僕のすることはただ一つじゃないか。
覚悟を決めた僕は黙って頷くのだった。


「それじゃ、大学が終わったらまたここに来ますから、またそのときに!! あははは」

バスに乗るためここにやって来たのかと思っていたら、僕にそう言い残すやいなやいきなり走りだしたお姉ちゃん。
その走り去っていく姿を、僕は呆然としながら見送るのだった。



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