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お姉ちゃんが待っているんだ。
だから、もちろん僕は言われた通り、授業が終わると真っ直ぐにこの学園の通学路へとやって来た。

さほど待たされることもなく、お姉ちゃんと落ち合うことができた。
大学帰りのお姉ちゃんは、僕の姿を認めるなり話しを切り出してきたんだ。

「ちゃんと桃には連絡しておきましたから!」
「え? まさか本当に桃子さんに連絡しちゃったんですか?」
「もちろん! 私たちだけで会ったりして桃に変な誤解をされても困りますし」
「変な誤解って・・・・ そ、それで何か言ってましたか、桃子さん?」
「よろしくね♪って言ってくれて。全てを任せてくれるそうです。張り切っていきましょう!」
「・・・・・・」

見るからに楽しそうなお姉ちゃん。その様子に僕は絶句するばかり。

・・・・・やっぱりそうなんだ。
お姉ちゃん、未だにあのときの誤解された認識のままだったのか。


あれは卒業式を前にしたときのこと。
あのときお姉ちゃんは、僕のことである盛大な勘違いをされていた。(※下記参照)
何をどうしたらそんな勘違いになったのか今でも分からないんだけど、お姉ちゃんの中では僕は桃子さんと「いい関係」ということらしい。

こうやって目の当たりにすると、あまりにも誤解の規模が大きすぎて、どこから訂正すればいいのか見当もつかない。
だいたい、桃子さんも桃子さんじゃないか。お姉ちゃんのするそんな話に乗ったりしてさ・・・
軍団長の楽しそうな笑顔が目に浮かんだ。
ネタがまた一つ増えるね♪、と言うことなんだろうな。間違いない。


「ここで待ちましょう!」
「・・・あ、はい」
「初等部の子達が帰り始めましたね。もうすぐ来ますよ」

次々と通り過ぎていく初等部の女の子たちを目を細めて見つめているお姉ちゃん。

お姉ちゃんのその視線。
良く言えばとても暖かみを感じるような視線なんだけれど、その視線は何となく意味ありげにも見えるような気が・・・


そうやって待っていると、割とすぐにあの子はやって来た。
遠目にも一目で彼女だと分かる。
大きな熊さんのように外観からして迫力を伴っている容姿というわけでもないのに、その姿は圧倒的な存在感だった。
何かオーラのようなものを纏っているようにも見えるんだ。その小柄な体の全身に。
やっぱり、この子、普通の小学生じゃない・・・

さっきの香音ちゃんという子が教えてくれた彼女のその名前。


宮本佳林。


その名前、一度聞けば十分だ。僕は決してその名前を忘れないだろう。
カワイイ子は名前までも可愛い。
これは僕の経験則から導き出したひとつの定理。
今この彼女もまた、その定理を強力に裏付けてくれた。

「来た!!」

パッっと明るい表情になったお姉ちゃん。
ためらうことなく飛び出して行き、その子の前に立ちはだかると大きな声をかけた。


「こんにちは、佳林ちゃん!!」
「えっ? あ、ハイ、こ、こんにちは」

いきなり声を掛けられて、びっくりした表情で目を白黒させる佳林ちゃん。
まぁ、そうなるよね。

声を掛けてきたのは妙にハイテンションな女子大生。
そしてその後ろには学ラン姿の男子高校生。
そんな2人連れに呼び止められたんだ。そりゃびっくりもするだろう。
彼女の見開かれた目、その視線がお姉ちゃんと僕の間を往復している。

呼び止められた佳林ちゃん、いきなりのことに警戒したようだが、声を掛けてきた人の姿を認めると、その表情がやや和らいだ。
どうやら、佳林ちゃんはお姉ちゃんのことを知っているようだ。

「高等部の元生徒会長さんが私に何か御用ですか?」
「私が生徒会長だったって知ってるんだ!」
「それはもちろんです。伝説の生徒会だって初等部でも噂の的でしたから」
「えー!そうだったんだ!! すごいね、なっきぃ!!」

えっ?なかさきちゃん??
ここに彼女が現れたんなら、それは面倒くさいことになるだろ!
その単語にテンパった僕が周りを見回してみても、この場に彼女の姿などどこにも無かった。

一方の、彼女がしたその落ち着いた受け答え。
その立ち居振る舞いからしても、彼女が模範生であることが見て取れる。
香音ちゃんは彼女のことを「優等生」と言っていたが、なるほどその通りのようだ。
落ち着いた表情を保ったままチラと僕を見ると、お姉ちゃんへの言葉を続けた。

「こちらの方は? 生徒会長さんのご友人の方でしょうk

そんな佳林ちゃんの問いかけは、テンション高いお姉ちゃんによって遮られる形となる。
逆に、張り切っている御様子のお姉ちゃんから次のような提案を受けることになったんだ。

「佳林ちゃん! これから私と一緒について来て!!」
「これから、ですか?」
「そうだよ!!」
「え? 今すぐに?」
「そう!!」

「でも、下校中にどこかに立ち寄ったりするのは校則で禁止されていますから・・・」
「いいじゃないか! さぁ、行こう!! あはははは」

一方的に話しを進めていくお姉ちゃんにとまどいを隠せない佳林ちゃん。

「あ、あの、行くって、何をしにどこへ行かれるんですか?」
「そっか。そうだよね。まだ決めてなかったんだ」

「何をしようか!?」

楽しそうなお姉ちゃんがニコニコ顔で佳林ちゃんに聞いた。

「え? 私は別に何も・・・・」
「そっか! じゃあ、走ろう!!」

あっけに取られている佳林ちゃん。
その様子が、これまたとても可愛くて。
でも、困惑している佳林ちゃんを見て、これは僕が彼女を助けてあげなければという義務感が湧き上がってくる。
僭越ながら、お姉ちゃんの言ったことに僕が口を挟ませていただく。

「いや、走るっていっても彼女だって今は何の用意もしてないでしょうし・・・」
「そっか。うーん、、、じゃあどうしようか・・・」

思案顔になる超絶美人さん。
いつまでも見とれていたいほどのその美しい顔が、パッと輝いた。
なにか閃かれたようだ。


「よし! それなら、もつ鍋を食べに行こう!!」
「・・・・・」
「・・・・・」


・・・何故もつ鍋なのか。
どうしてそのような結論になったのかはよく分からないが、ご自分の出した結論にお姉ちゃんは御満悦の御様子。
そのテンションから察するに、もう僕らの言うことを聞いてはくれなさそうだった。

そんな張り切っている様子のお姉ちゃんに、目の前の佳林ちゃんの困惑は増すばかりのようで。
ドン引きされてますよ、お姉ちゃん。

「あの、、、私も行かなくてはいけませんか・・・?」
「もちろんだよ、佳林ちゃん。たくさん食べないと大きくなれないよ?」
「でも・・・・」
「あれ? ひょっとして、ステーキハウスで1ポンドステーキの方が良かった?」
「いえ、そうじゃないです・・・」

困惑する佳林ちゃんとは見事に対照的なお姉ちゃんのテンション。
そんなお姉ちゃんが佳林ちゃんに温かい笑顔で語りかける。

「思い出したよ。あの有名な写真の子、あれが佳林ちゃんだったんだね」
「え? 写真、ですか?」
「そうだよ。あの去年の学園祭のとき学園新聞に載ってた写真。えりと熊井ちゃんに挟まれてるちっちゃい初等部の子。あれ、佳林ちゃんだったんだ!」


「小さい子ってカワイイよね!」


またまた危ないことを言い出したようにも聞こえる。
だが目の前の美人さんは至って真面目な顔で言葉を続けた。

「でも、佳林ちゃんはもっとビッグになるべき人だと思うんだ」
「はい・・・」

そこで再びニカッとした笑顔に変わるお姉ちゃん。

「だから、大きくなるためにもこれからもつ鍋を食べに行こう!」

お姉ちゃんの中では、たぶんそれは完璧な理屈なんだろう。

だが、僕には今の会話を聞いても、それが何故いまもつ鍋に行くことになるのか今ひとつ釈然とはしなかった。
それでも、この美人さんが真顔でした今の力説は、それなりに謎の説得力を持っていたことも確かだったわけで。
美人さんっていうのは本当に得だと、つくづくそう思う。

佳林ちゃんはと言えば、自分に向けられている全力笑顔を見て、それ以上なにも言えなくなってしまったようだ。


「さぁ、行こうか!!」

先頭を切って歩き出すお姉ちゃん。
このようにして、学校帰りの佳林ちゃんに声をかけ半ば強引に連れて行くことに成功したのだった。

でも、いいんだろうか。

下校途中の小学生に声をかけて連れ去るというこの行為。
もしかして、これって未成年者略取ってやつの構成要件を満たしているんじゃないのかな。
下手したら警察沙汰・・・



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