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お姉ちゃんの行きつけらしい店の小上がり席で、湯気の立つ鍋が置かれたテーブルを囲んでいる僕ら3人。
超絶美人さんに、可愛らしい女子小学生、そして男子高校生の僕。
何とも不思議なこの状況。
今更ながら、なんでこういう展開になっているのか、僕自身不思議でそこにとまどいを隠せない。

まして、強引に連れて来られたこの佳林ちゃんの心境を察すると・・・
と、若干の同情を抱きつつチラッと彼女を見ると、佳林ちゃんはその円らな瞳を輝かせて周りを眺め回していた。
いきなりのこの展開にも飲み込まれたりすることもなく、それどころか好奇心で一杯のその様子。
この子、案外肝の据わった子なのかもしれないな。


今この子の目には、ここにいる僕のことはいったいどのように映っているのだろう。
なぜ男子がずっと付いて来て一緒に同席しているのか。そのあたり、彼女にはどう理解されているのかな。
まぁ、聞かれたところでそれをどう説明すればいいのか・・・・
当の僕にだって、今のこの事態についてよく分かっていないんだからさ。

そんな佳林ちゃんが僕に向けている表情は、(なかさきちゃんが僕によくする)疑惑の眼差しみたいなジトッとした視線などでは全く無かった。
こんな僕のことも澄んだ瞳で真っ直ぐに見てくれていた。
とっても素直な子なんだろうなー。その透明感あふれる表情に彼女の性格がにじみ出ている。

あぁ、本当にかわいい・・・・

目に入ってくる彼女の姿に、僕はすっかり夢見心地になってしまっていた。
一方のお姉ちゃんはといえば、そんな彼女のことをひたすら温かい微笑みで見つめている。
さっきからもうずっとその視線は佳林ちゃんをロックオンだ。

「さぁ、食べよう!」

大きな声でそう言うと、張り切ってもつ鍋を取り分けてくれるお姉ちゃん。

「は、はい。それではいただきます」

学園の大先輩、しかも伝説の生徒会長、その人がわざわざ手を焼いてくれているのだ。
たぶんそのことでだろうけれど、お姉ちゃんに対してはやや緊張気味になっている佳林ちゃん。

彼女の箸を持つその姿からしてですね、もう僕には眼福以外の何者でもなく・・・
そんな何をしても可愛らしい彼女が、お姉ちゃんが小鉢に取り分けてくれた料理を口にした。そ、その可愛らしい、く、く、口許!!

咀嚼する彼女のその姿。
ほっぺたを膨らませて。
円らな瞳をキラッキラに輝かせて。

・・・・・カワイイ。

可愛すぎる!!
彼女のその姿に、僕は湧き上がる感情のままに叫びだしそうになったが、なんとかそれをこらえる。
それでも、僕は箸を持ったまま固まり、顔面にあっては完全に崩壊してしまったが、これはもうどうしようもない。
僕の目の前にあるこの素晴らしい光景は現実なんだろうか? 信じられない!!

もつ鍋を一口食べた佳林ちゃんだったが、その輝いた表情で感想を口にした。

「うわぁ、美味しい!!」

彼女のその表情。
パァッと明るく輝いたそのお顔は、見ているこちらまでも一瞬にして幸せにしてくれた。

・・・・・カワイイ。(再掲)

可愛すぎるだろ!もう、本当に!!
まるで時間が止まってしまったかのような非現実感。もう僕はどうすればいいのか・・・
どこまでも可愛すぎる彼女の姿に、なおも僕は箸を持ったまま固まっていた。

そんな後輩の姿を、僕以上に真っ直ぐな視線で見つめていた人がいた。
目を細めて見つめていたお姉ちゃんが、頷きながら佳林ちゃんに優しく語りかける。

「美味しい?」
「はい! もつ鍋って初めて食べたんですけど、とても美味しいんですね」
「気に入ってもらえたんだ。それは良かった! さぁ佳林ちゃん、たくさん食べて!」
「ありがとうございます」
「うん、そう。いっぱい食べるんだよ。佳林ちゃんはカルシウムをしっかり取らないとね!!」

もつ鍋ってカルシウムを含んでるんだろうか?
そんな素朴な疑問を感じつつも、鍋奉行のお姉ちゃんが僕にも取り分けて下さったもつ鍋をいただくことにする。

これは美味しい! うん、本当に美味しいな!!
僕ももつ鍋というものを初めて食べたけど、これは病みつきになりそうな味だ。


ひと段落ついたところでお姉ちゃんが僕らに言った。

「佳林ちゃんたちは面識が無いんだよね」

隣り合って座る僕と佳林ちゃんが同時に頷く。
僕らのその反応に、お姉ちゃんはまず佳林ちゃんに向けて話しを始めた。

「うん。そうか。佳林ちゃん、この少年はね・・・・・」

そこで笑顔のまま言葉が止まってしまったお姉ちゃん。

「えー、なんて説明すればいいんだろう、あははは。考えてみれば私もよく知らないんだよねw そうだ、自己紹介してもらえますか?」

いまさら、ですか・・・ お姉ちゃん。
でもまぁ、初めて顔を会わせたこの佳林ちゃんに対してもあるんだし、ここはちゃんと名乗るところから始めるべきだろう。

だから、僕は自分の名前・高校名・学年・その他の個人情報を自分の口から明らかにした。我が校の渉外部員として他校との交流にも積極的であるというアピールも忘れずに。
僕が言ったことを真っ直ぐな視線で聞いてくれた佳林ちゃん。その至極真っ当な反応を見て僕はちょっとホッとした気分になっていた。
だって、この間の遥ちゃんのように「さてはお前だろ、生徒会から配られたプリントで指名手配されていた(ry」などとまたまた言い出されたりしたらどうしようと怯えていたのだ。
そんな僕の自己紹介を受けて、お姉ちゃんが話しを継いでくれる。

「で、そう、寮生のみんなとも知り合いなんですよね。なっきぃなんかよく話題にしてるし。やっぱり同じ学年だし仲がいいのかな? だから熊井ちゃんとも仲がいいってことか。
栞菜もね、あなたのことをよく話してますよ、とても楽しそうに。あとは愛理!例の桃とのことは愛理が教えてくれたんだし・・・おっとこれはオフレコだ・・・・」

次々と寮生さんたちの名前が出てきたが、その内容は必ずしも僕を狂喜させるものではなかった。
だって、そこに出てきた寮生の人たちはさ・・・ あの、僕に厳しい風紀委員長さんと、いつだって僕を見下している有原さん、ですよ。
いまお姉ちゃんが言った彼女たちの僕に対する認識。それは、僕が彼女たちから受けている現実とは明らかにズレがあるんですが。

まぁ、そこら辺は今更どうでもいい。
それよりも、いま一番最後に出てきた名前の方が重要だ。その名前を僕は決して聞き逃さなかった。
愛理ちゃん? 彼女が僕の事を何か言ってたのか? 愛理ちゃん、僕のことそんなに興味を持ってくれているのかな。ムフフフ。
ちょっと気になるのは、お姉ちゃんが最後に言ったその言葉の意味がよく分からなかったことだけどさ。
言おうとしたことに対して慌てて口をつぐんで飲み込んだように見えたのも何か気になるし。

ま、いいや。それよりも次々と出た寮生さんたちの名前。
僕はそこに舞ちゃんの話題が出てくることを大いに期待したんだけど、お姉ちゃんの口からその名前が出てくることは無かったんだ。とても残念・・
でもその代わり、僕にとってもう一人の大きな存在であるあのお方のお名前が出てくることになる。

「それに何といっても、千聖お嬢様とも面識があるんだって」

唐突に出てきたその人の名前。
まるで、直前の自分の言葉をウヤムヤにするために、わざわざ大物人物の話題を出して話しをそらしたようにも聞こえたんだけど、それは僕の気のせいか。

そんな流れで今お姉ちゃんの言葉に出てきたのは、学園生なら誰もが知っている超有名人物。
その名前が出てくるのは予想外だったのか、佳林ちゃんは大いに驚いた様子だった。
今のその反応から、彼女もお嬢様のことはよく知っているんだということが見て取れた。そんな彼女が、円らな瞳で僕のことをじっと見つめてくる。
佳林ちゃんの眼差しが余りにも真剣なものだったから、僕は彼女を見つめ返すことも出来なかった。彼女の鋭利な視線に緊張した僕は思わず背筋をシャキっと伸ばすのだった。

僕の素性を見抜こうとでもするかのような佳林ちゃんの意外なほど鋭い視線。
その意味が分からず戸惑いを感じていると、再びお姉ちゃんの声が耳に入ってくる。僕らとは対照的にニコニコ顔で話すお姉ちゃんのその口調はとても滑らかだった。
僕の紹介に続いて、お姉ちゃんは佳林ちゃんの紹介をしてくれた。

「そして、この佳林ちゃん。彼女はですね、何と!あの千聖お嬢様の妹として認められた特別な子なんですよ!!」

はい??
なんだって??

お姉ちゃんの言ったその言葉の意味が、僕にはすぐに理解することができなかった。

「佳林ちゃんは、千聖お嬢様の妹なんです!」

お嬢様の妹?
この子が?

そうなの、か? お顔立ちだって、あまりお嬢様と似てるという感じでは・・・

だいたい、千聖お嬢様の妹といえば僕は一度お会いしたことがあるんだけど。もちろんこの子じゃなくて。
いつだったかみずきちゃんと一緒のときに、妹様のそのお姿を一度だけ拝見したことがあった。
そう、みずきちゃんに教えてもらったその人の名前。岡井明日菜お嬢様。
あの明日菜さんの他にも千聖お嬢様にはまだ妹さんがいたってことか。

でも・・・ なにかおかしくないか?
おかしいって言うか、普通じゃないでしょ。

だってさ、千聖お嬢様とこの子は苗字が違うじゃないか。
そうだよ、この子は「宮本」さんなんだから。
千聖お嬢様の妹なのに、岡井姓じゃないなんて。

そのことが意味することといえば、ただひとつ・・・・

お嬢様のような方の家系。想像を絶するほどのセレブリティな家柄。
上流階級っていうところは、やっぱり僕のような庶民とはその世界が全く違うんだ。
由緒ある家系だからこそ色々と複雑怪奇なこともあったりするんだろう。僕にはまるで想像もつかない世界がそこにはあるってこと。

お姉ちゃんは今、この子のことを「妹して認められた」という表現をされた。それってつまり、あれだ。
ちょっと心苦しいけどあえてストレートな表現をしてしまうと、「認知された」ってことだよね、きっと。

そういうこと、か。

つまり、この子は千聖お嬢様のお父上がお妾さんに産ませた子供とか、そういうことなんだ。

その生い立ちから苦難の連続の末にようやく認知してもらえたってことか。
な、なんという・・・・ 僕のような平凡な一般人にはまるで縁の無い世界。
そんな僕の想像を絶する世界が、いま僕の目の前にあるなんて。事実は小説よりも(ry

お姉ちゃんの話してくれたことを聞いて、いま僕の横に座る佳林ちゃんのことを思わず二度見してしまった。
その明るい表情からは、とてもそんな数奇な生い立ちだということなど全く想像もつかなかった。
非嫡出子ゆえのつらい思いをすることもあったんだろうな、きっと。こんな愛らしい子なのに。
あぁ、何と言うその澄んだ円らな瞳。その瞳の中に憂いが隠されているのかと思うと、僕は胸が張り裂けそうな思いになった。

そんな彼女の立場を、さっき僕は「普通じゃない」なんて表現をしてしまったこと。そのことを僕は深く深く反省した。
軽い気持ちで思ったそんなことを、思ったままに口にしたりしなくて本当に良かった。間違ってもそんなことを言ったりしてはダメだ。
そんな心無い一言、もし口にしていたら彼女をどれだけ傷つけてしまったことだろう・・・ つい数分前のことだけど、思い返すだけで冷や汗が出てきそうだ。何でそんなことを思ってしまったのか、僕は思わず唇を噛んだ。

この可愛らしい佳林ちゃんが背負っている人生。

・・・・・重い。
重すぎる。

聞かされた身の上に、僕は視線を落とすこととなった。テーブルの上を当て所なく彷徨う僕の視線。
口を挟むことのできる立場では無い僕なんかが、あまり深く首を突っ込んだりはしないほうがいいだろう。そう思って、僕は余計な発言をせず黙り込むことにした。

お姉ちゃんがそんな佳林ちゃんの紹介をし終わると、テーブルを囲む3人の会話がしばし途切れた。
それでも、佳林ちゃんを終始ニコニコ顔でじっと見つめている超絶美人さん。きっと佳林ちゃんに安心感を抱かせるため、ことさら明るい表情を保っているんだな。

そんなお姉ちゃんは、会話が途切れたこの場を繋ぐのが年長者たる自分の使命だと思われたのであろう。
お姉ちゃんが話題を変えるように、おもむろに佳林ちゃんに質問を切り出した。

「佳林ちゃん、最近どうなの初等部は?」
「学校ですか? 楽しいですよ」
「そうかー、楽しいか。それは良かった!!あははは」

お姉ちゃんがことさら明るく聞いたことに、佳林ちゃんの答えは短かった。
まるでその質問の真意を図るような彼女の答え方。

どことなく異なる2人のテンション。
佳林ちゃんのある意味ぶっきらぼうなその答えにも、お姉ちゃんの明るい表情は全く変わらない(汗の量だけは凄いけど)。
お姉ちゃんのその様子は、まるで娘とぎこちなく会話を試みる父親のようだった。
そして、それは平気で地雷を踏むところなんかもまた同じだった。

「初等部のお友達にはどういう子がいるの?」

その質問に、佳林ちゃんが固まった。彼女の口は真一文字に結ばれたままだ。
強張った表情になったように見えた彼女が、ちょっとの間をおいてその顔をあげると、真っ直ぐにお姉ちゃんに視線を向ける。そんな彼女の瞳。本当に綺麗な、見ていると吸い込まれてしまいそうな瞳だ。
一瞬言葉に詰まったように見えた佳林ちゃんだったが、聞かれたことに答えてくれた。

「わたし、友達は少ないんです・・・」

佳林ちゃんの言い出したことに、若干空気が凍った。
またもや重くなりそうなこの場の雰囲気に、僕はどういう反応をすればいいのか判断に困ってしまった。
とまどいながらお姉ちゃんをちらっと見ると、その佳林ちゃんを見つめるお姉ちゃんの視線は真剣そのものだった。
真っ直ぐな瞳でじっと見返しているお姉ちゃん。そのとてつもない美人顔で佳林ちゃんを見つめている。



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