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そんなことを考え込んでいた僕だったが、不意に問いかけられたことで顔を上げることになる。
僕に向き直ったお姉ちゃんが、こんな質問をしてきたのだから。

「あなたにも誰か大切な人はいますか?」


いま僕は、佳林ちゃんの感動的な告白を聞いて胸が熱くなっていた。
だから、僕も自分の胸のうちをストレートにさらけ出したい気分になっていたみたいだ。

僕の気持ちをこの人に聞いて欲しい。
彼女のお姉ちゃんである、この人に。


ついに身内の方に対して正式に告白するときが来たようだ。
僕は居住まいを正すと、真剣な態度でもってお姉ちゃんに対して返答した。


「はい。僕にも大切に思ってる人はいます」


「その人とは2歳の歳の差がありますけど。でも、そんなのは関係ないです。それぐらい僕にとって彼女は・・・!!
「そうか。そこまで思ってるんですね」
「はい。僕にとって彼女の存在、それこそが全てなんです」

「ひょっとして、将来のことなんかも考えてたりするんですか?」

お姉ちゃんが真顔でしたその質問。
もちろん僕は舞ちゃんとの将来について具体的なゴール地点まで既にイメージしている。
この機会に、お姉ちゃんには僕の覚悟を知っておいて欲しい。

キリッとした美人顔のお姉ちゃんが僕のことを真っ直ぐに見ている。
そして、佳林ちゃんもいきなりのこの展開に持ち前の好奇心を刺激されているのか、とても興味津々といった様子。
そんな二人を前にして、聞かれたことに答える僕の言葉にも自然と力がこもる。

「はい! 僕にとってその相手は彼女しかいないと思っています。この気持ちは今後なにがあっても絶対に変わりません。それぐらい僕は・・・!」
「そこまで考えているんですか。すごい!」
「はい。僕にとって何よりも一番のとても大切な人とのことですから」
「そうですか・・・ うん、何か感動しました。いつまでも続いてゴールインできるといいですね。応援してますから!桃とのこと!!」


・・・・・なんでここで桃子さんの名前が出てくるんだろう。


あっけにとられた僕は絶句してしまう。


「もものこと、よろしくお願いしますね」


今のやりとりを興味津々で聞いていた佳林ちゃんもまた、お姉ちゃんの言ったことにびっくりしたような表情を浮かべた。
ただ、お姉ちゃんとは何か違うことを思い浮かべているような様子だけど。

「嗣永さん・・・・」

その名前を口にした佳林ちゃんは、その両手で一瞬自分の髪の毛に触れた。
そして、何か遠くを見るような目になった。
彼女のその呟きにどんな思いが込められているのか僕にはよく分からないが、いま彼女は確かに何かを感じているようだ。

透明感あふれる円らなその瞳。
純真な彼女を現しているかのように、どこまでも真っ直ぐなその視線。

ハッとしたように顔を上げてお姉ちゃんを見た佳林ちゃん。次に僕へと視線を移す。
そのように視線を往復すると、佳林ちゃんはそこで小さく呟いた。

「あ、なんか私勘違いしてたみたい。生徒会長さんと一緒にいるから、てっきり・・・」

佳林ちゃんのその独り言のような呟きはとても小さく、僕の耳には聞き取ることができなかった。
じっと僕を見つめる佳林ちゃん。その澄みきった円らな瞳から向けられる視線が、今の僕にはとても痛かった。

ノリ・ 。・リ<この男の人が嗣永さんの・・・・ 嗣永さんってやっぱり変わってるんだなぁ。


彼女が内心で考えてるそんなことなど、もちろん僕に分かるはずも無く。
ドン引きしているようにも見える彼女が、次に僕に向かって言った言葉。
今日初対面の僕に対して、佳林ちゃんの方から初めて掛けてくれた言葉が、これだ。

「あの、、、嗣永さんとお付き合いされているんですか?」
「それはですね、大いなる誤解なんですy
「うん!そうなんだって。佳林ちゃん、これは誰にも言っちゃダメだよ。桃は秘密にしてるみたいだからね」

とんでもない誤解を完全否定しておきたい僕だったが、釈明の機会を与えてもらえることはなかった。
佳林ちゃんの疑問に、大きな声でとっても楽しそうに答えるお姉ちゃん。

「ちょ、、、ちょっと、あの、それは、、誤解とかそれ以前にそんな事実は全く、、、何か色々とすごーく間違ってますよ、それ」

あまりの展開にしどろもどろになりながらも修正を試みる。
佳林ちゃんはそんな僕の言うことを更に詳しく聞きたそうなそぶりだったが、もう一人の方はと言えば・・・
お姉ちゃんは、もう僕の言うことなんか全く聞いていなかった。

なにか高まられた御様子のお姉ちゃん。
佳林ちゃんに向き直って話しを続けるのだった。

「佳林ちゃん、聞いたでしょ」
「え?? 何がですか?」
「自分が大切にしたい人のことを想う気持ちっていうのは、こんなに素晴らしいことなんだ!」
「は、はい・・・」
「佳林ちゃんがお嬢様を想う気持ちだって同じじゃないのかな?」
「はい。私がお姉さまに抱くこの気持ちは、決して誰にも負けません。それは自信があります」
「うん、佳林ちゃん素晴らしい!きっとお嬢様も全く同じ気持ちだと思うよ!」
「お嬢様も? わ、私のことを?」
「そうだよ、佳林ちゃん! お嬢様は佳林ちゃんのことが本当に大好きなんだから!」
「お姉さま・・・」
「小さい子ってかわいいよね! 佳林ちゃん、自信を持って進もう!!」


ご自分の頭の中で何がどのように展開したのか、そのように話しをまとめられたお姉ちゃん。
凡人の僕にはよく分からない展開だけれど、目の前の頭の良さそうな佳林ちゃんには何か感じ取れるところがあったようで。

「ありがとうございます。生徒会長さんだった方にそう言って頂けると、なんだか安心しました」
「いいんだよ、佳林ちゃん!」
「今日はお話しを伺えて本当にためになりました。ありがとうございました」

そう言って、頭を下げる佳林ちゃん。
本当に素直な子だ。
かわいいなあ。

お姉ちゃんの力技で場がまとまった頃になると、テーブルの上の料理の方もあらかた片付いた。

「おいしかったね!」
「はい」

そう返事をする佳林ちゃん。
温かい鍋料理を食べて体が温まったのか、その赤みがかった頬がとてつもなく可愛くて、もう僕は叫びだしそうに(ry

いや、でも本当においしかった。
僕も初めてもつ鍋というものを食べたのだが、確かにそれはクセになりそうな味だった。
聞けばお姉ちゃんはこのもつ鍋が大好きで、一人でも食べに来たりすることがあるぐらいだそうだ。
(そういうときは、ぜひまた僕を誘ってくらさい!!)


お会計のときになると、お姉ちゃんが言った。
その言葉はもぉ軍団のしきたりに慣れている僕からすると、大変に新鮮な言葉だった。

「じゃあ、ここの支払いは私がしますね」
「え? あ、いや、そういう訳には・・・・」
「私がお誘いしたわけだし、ここは年長者でもある私に任せて下さい!」

聞き慣れないそのセリフは、かえって僕を混乱させる。
そうは言っても、奢ってもらったりするなんて、そんな親切に甘えるわけにもいかない。

「あの、でも、せめて自分の分ぐらいは自分で払いますから」
「そうですか。桃が前に言ってた通りだ。本当に払いたがりなんですね!」

・・・払いたがりって、僕がですか?
あの、お姉ちゃん・・・ 何かたぶん色々と間違ってますよ、それも含めて全てのことが。
桃子さんがどういう顔でお姉ちゃんにそれを言ったのか、僕にはその表情が目に浮かぶようだった。(ウフッ♪)

店を後にして、通りに面した歩道の上に出ると周りを見回すお姉ちゃん。何かを探しているようだ。
すると、その目に止まったものがあったようで、お目当てだったらしいその何かに向かって手で合図をしている。
程なく、スーッと一台の黒塗りの車が静かに滑り込んできた。
僕らの前で停車したその車から降り立ってきたのは・・・

「ちょうど良かったみたいね」

お、お、おじょじょ・・・!!
予想もしていなかった人物の登場に心が浮き立った。
が、今このとき僕はあくまでも脇役だ。決して出しゃばったマネはしなかった。僕は空気が読める人間なのだ(キリッ
だって、それも当然だよ。お嬢様が現れたことに気付いた佳林ちゃんのこの表情を見れば誰だって。

「お、お姉さま!!」
「ウフフ。何でまたこの3人なのかしら、可笑しいわ。かりん、楽しかった?」
「ハイ、お姉さま!」
「それは良かった。あとでゆっくりと聞かせてちょうだいね」

穏かな笑みを浮かべるお嬢様が佳林ちゃんの胸元の紐リボンを整えてあげている。
その所作のなんと優雅なことか!


「グッドタイミングですね、お嬢様!さすがです!」
「佳林、おうちまで送って行くわ」
「えっ? 私の家、ですか?」
「そうよ。遅くならないうちに帰りましょう。ウフフフ」
「え? あ、ありがとうございます。お姉さま」

「お2人は乗らないのかしら?」
「はい、お嬢様。どうぞ佳林ちゃんを早くおうちまで送ってあげてください」

お姉ちゃん、気を利かせたのかな。

「分かったわ。じゃあ行きましょう、佳林」

乗り込む直前、佳林ちゃんは改まった様子でお姉ちゃんに頭を下げた。

「今日のこと、掛けてくださった言葉はしっかりと心に刻んでおきます。本当にありがとうございました」

佳林ちゃんの言葉を聞いたお姉ちゃんが優しく頷く。


お嬢様が佳林ちゃんと共に乗り込むと、運転手さんが恭しくドアを閉める。

お嬢様の隣りに座った佳林ちゃん。
見るからにもう嬉しさを隠し切れない様子。
そしてそんな佳林ちゃんに優しく微笑み返している千聖お嬢様。
その光景はとても神聖なものに感じられて。

こうして僕は彼女のことを知ることとなった。
その後、二度とその名前を忘れたりなどしない存在となる、このときはまだ初等部の少女。

宮本佳林ちゃん。

そんな感慨にふけりつつ、走り出した黒塗りの車を見送っていた。
お嬢様たちを乗せた車が見えなくなってしまうと、お姉ちゃんが僕に振り向いてきた。

そうか。この状況、僕はとてつもない美人さんと2人っきりになってるんだ。

佳林ちゃんは帰ってしまったけれど、僕らにとってはまだ早い時間でもあるわけで。
もうちょっとこの美人さんと一緒にいたいな、と僕が思ったとしてもそれは何の不自然もないこと。
だから、次にお姉ちゃんが言ったことは僕にとって願ったり叶ったりの言葉だった。

「このあとも私と御一緒してもらえますか?」

なんと! お姉ちゃんの方から誘っていただけるとは。
とはいえ、こんな美人さんから発せられたその望外の言葉に、僕は思わずあばばってしまったわけで。

「え? あ、ハイ、も、も、もちろんですフヒヒ!!どこまでも御一緒させていただきたく!!11」
「そうですか! それは良かった!!」

僕を見つめるお姉ちゃんの表情は、それはそれは満面の微笑みだった。
まさに美の化身と言えるその姿に、もう僕は一気に昇天しそうになってしまい・・・


「それじゃあ一緒に走って帰りましょう!」
「は・・・・・・?」
「よーし、競争だ!!あはははは」
「え?競争!? あの、走るって、、、ちょ・・・僕は膝が」

高まった御様子のお姉ちゃん。
有無を言わせない目力でもって僕に宣言した。

「よし!勝負だ! 思いっきり走るよー!!あははは」



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