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学校帰り、僕はいつものようにもぉ軍団の席取りに向かうべくいつもの道を歩いていた。

途中、とあるパン屋さんの前を通りかかる。
店先に掲げてある黒板。そこに書いてあった商品紹介が目に入った。

「焼きたて 抹茶メロンパン」

これか。熊井ちゃんが言ってたすぐに売り切れになる抹茶メロンパンって。
もうすぐ焼き上がる時刻らしく、それを求める人の列が既に店先に出来ている。
なるほど、確かにとても人気のある商品のようだ。


ちょうどいいや。買って行ってあげよう。
こうやって、たまには恩を売っておかないとね、とかいってw

そう思った僕は、その行列の最後尾に並んだ。


待つことしばし。
お一人様4個限定抹茶メロンパンを無事ゲット。
甘い香りを放つ抹茶メロンパンの入っている紙袋を手にすると、僕は熊井ちゃんにメールを送って報告をした。

(おー、たまには使えるじゃん! 逆に言うとたまにしか使えないってことだけどさ。ま、よくやった。じゃあ待ってるから)

熊井ちゃんからそんなレスが返ってきたとき、店のドアが開き一人の女子高生が足早に入ってきたのだ。
その見慣れた気品ある制服。
入ってきた学園生の姿を見て、僕の体は固まることになる。

その人はなんと、愛理ちゃんじゃないか。

あ、あ、あ、愛理ちゃん!!!?

可愛らしい彼女の姿。
いつものように、僕の体から全ての動きは失われて完全に固まってしまう。
だって、彼女は僕にとって別の世界の人なんだ。僕のような単なるBuono!の一ファンが関わることを許される人では無いのだ。
自主規制モード発令。


一線の向こう側の人の姿を認めたことで、思考までもすっかり停止してしまったが、いやいや、待てよ?

別にそこまでしなくてもいいのでは・・・?

そうだよ、その可愛らしい姿をちょっと目に入れさせてもらうくらいはいいだろ。
愛理ちゃんが間近にいるなんて、こんなラッキーなことはめったにないんだ!
そうと決まれば固まってる場合か、もったいない!!
僕の目の前に愛理ちゃんが現れてくれてるんだ。気持ちを強く持て!

気力を振り絞った僕は、見るだけでも緊張を要するそのあまりにも可愛らしい天使さんへと視線を向けるのだった。


一方、僕のことにまだ気付いていない愛理ちゃん。
にこやかな笑顔の彼女、クネクネとした動きもまたとても独特で。
どうやら愛理ちゃんは何かテンションがとても高まっているようだ、ということがそこからは見て取れた。

・・・・・カワイイ。

もう本当にかわいすぎるよ、愛理ちゃん!!
脱力しそうになるほど眼福なその光景に、僕の意識はすっかり支配されてしまった。
もはや今となっては頭の中にあるのは目の前のこの愛理ちゃんのことだけ・・・

急いでやって来た様子にも見えた愛理ちゃんだったが、その割にはのんびりとした口調で店の人に尋ねた。
(その彼女特有のふわふわした口調のかわいいことと言ったら!!)

「あのー、抹茶メロンパンまだありますかぁ?」
「すみません。ちょうど今売り切れてしまったところなんです」
「ガーーーーン!!」

ショックを受けた場面でよく入る、この効果音。
それを実際口に出している人というのを、僕は初めて見たような気がする。
しかも、体全体を使ったオーバーなリアクションもまたとてもユニークなものだった。

自らの体で今の心情を表現した愛理ちゃん。
お目当ての抹茶メロンパンが売り切れていたことで大変ショックを受けた様子というのがありありと分かる。
次の瞬間には、その可愛いお顔がしょんぼりとしてしまった。

そ、そんな顔をしないで! 愛理ちゃんにそんな表情は似合わないよ。
彼女が受けているそのショック。今ここにいる、ぼ、僕がそれをを消し去ってあげなくては!

かような使命感を持って僕は彼女に声をかけたのだ(キリッ

「あの・・・・・」

突然声を掛けられたことで多少ビックリした様子の愛理ちゃん。
だが彼女は僕の姿を認めると、なんと目尻を下げて微笑んでくれたのだ。

「あらー」

僕ごときが彼女にそんな反応をしていただけるなんて・・・・
分不相応としか言いようが無いその光景。

一瞬にして記憶が飛びそうになったが、そんな僕に愛理ちゃんが語りかけてくれる。

「えっと、確かももの軍団の人」

僕という人間は、愛理ちゃんにはそういう認識で捉えられているのか・・・
僕個人の存在の前に、常に枕詞として付くその団体名。
これが現実だ。

なるほど、いま僕に向けられた愛理ちゃんの微笑みの意味はそっちの方だったのか。つまり、微笑というより失笑・・・
若干ちょっと不本意なところもあるが、でもまぁ愛理ちゃんが僕のことを見て微笑んでくれた事実に変わりは無い。


だから、僕は浮き立った気持ちの勢いのまま彼女に話しかけた。

「抹茶メロンパン、売り切れ、だったんですか?」
「そうなんですよぉ~。わたし抹茶味のモノが大好きなんですけど、しばらく食べてないなぁと思ったら、そのとたんにどうしても食べたい気分になっちゃって。
だから、もう今日は朝からずっとそのことばっかり考えていたんですね。授業中も上の空になってたぐらいにして。
で、ホームルームが終わったらすぐに教室を飛び出して急いで来たんですけど、やっぱり間に合わなかったかぁ~」

とても可愛らしい表情の愛理ちゃんが身振り手振りも交えながら(カワイイ・・)早口で何か説明してくれたんだけれど・・・・

そのカツゼツ・・・
愛理さん、ちょっとなに言ってるのか分からないです。


でも、愛理ちゃんが情熱を持ってここにやってきたことは、お目当てのメロンパンが買えなかったことで心底ガッカリとされているその様子からもよく分かる。
しょんぼりとした彼女のそんな姿を見るのは忍びなかった。

だから、僕は突き動かされるように愛理ちゃんにこんな提案をしていた。

「あの、これ抹茶メロンパン、たぶん最後に買ったのが僕だったんですけど・・・」

そう言って手にした紙袋を掲げてみせると、愛理ちゃんの視線がその紙袋に注がれる。

「これ、良かったら食べてみませんか。そこにイートインコーナーがありますから」
「えー!いいんですか?」
「えぇ、良かったら是非」

僕がそう言うと、心から嬉しそうな顔になってくれた愛理ちゃん。
でも奥ゆかしい彼女は、まだどこか遠慮がちな様子を崩さなかった。

「本当にいいんですか?」
「えぇ、もちろん」
「でも、、、これ買うのに並んだりしたんですよね?」
「それぐらいのこと。逆に、愛理ちゃんに食べていただけるなんてこの上ない光栄です!」
「そんな・・・ あ、じゃあ私飲み物を買ってきますね。何がいいですか?」
「・・・えっ?」
「メロンパンのお礼です。買ってきますから飲みたいものを教えてください」

微笑む愛理ちゃん。
その笑顔の破壊力は抜群だった。
再び一瞬にして記憶がすっ飛びそうになるのを何とかこらえる。

「え、あ、あ、あの、、、じ、じゃあ、僕はカフェラテを・・・」
「カヘリャテですね。わかりましたぁ」

テーブル席に一人座っていると、カウンターで飲み物を注文する愛理ちゃんの後ろ姿が見える。
ストレートの黒髪の、なんと艶やかなことか! 本当に美しい。
愛理ちゃんの醸し出している上品さ。これこそ正に僕がイメージする私立のお嬢様校の生徒さんの姿だ。
清純なその姿は、こうやって見ているだけでも心が洗われるような清清しい気持ちにさせてもらえる。

彼女が向こう側を向いているのをいいことに、僕はしばしその美しい後ろ姿をガン見してしまった。

注文した品を揃うのを待っているあいだ、小刻みに体を左右に揺すっている愛理ちゃん。
その動きがまた、とてつもなくカワイイ・・・
品があって、可愛くて。そのうえ、聞いたところでは彼女はとても頭もいいそうだ。
あぁ、この人は何でこんなに完璧なんだろう・・・


「お待たせしましたぁ」

お盆の上に飲み物を載せた愛理ちゃんがテーブルに戻ってきた。
そして、僕の目の前に座った。

あの愛理ちゃんが僕の目の前に。



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