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まだ梨沙子たちは医務室にいるだろうか。
少し重い足取りで歩いていると、曲がり角からちょうど中2トリオが歩いてきた。
「あっももぉ!」
梨沙子が嬉しそうな顔で飛びついてくる。
「お腹、大丈夫?」
「うん!愛理と千聖が看病してくれたよ。・・・それより、もも。ごめんね。私約束破っちゃった。」

約束?ああ、

「いいよ。梨沙子が話しておきたいって思ったなら、それが正解だよ。」
「え・・・もも、すごいね!まだ何のことか言ってないのに!」

うん、それはさっき立ち聞きさせてもらったからなんだけど。

「みんなのとこ、戻るの?」
一歩下がったところから、愛理が話しかけてくる。
「そうだね。みんな心配してるし、コメ撮りの残りがまだあるから。」
「舞美ちゃんたちも、みんなに会いたがってたよ。終わったらどっか空き部屋でまったりしよう。」

そんな愛理の提案をすぐみんなに伝えた効果なのか、その後再開した撮影は異例と言っていいほどスムーズに進んだ。ベリーズのこの団結力はたまらない。

「終わったー♪ほらほらみんなさっさと着替える!早く行こう!」

テンションの高くなってるまぁがみんなを急かして、着替えが終わった人からご指定の部屋へとバタバタ駆けていく。

「ちょっとぉ~脱ぎ散らかしてるし。」

一人でモタモタしていた私は、何となくすぐに向かう気になれなくて、散らかっている楽屋を片付けはじめた。

「駄目だなあ、私。駄目だ。駄目ももだ。あぁ~もぉ~だってさぁ・・・」

私はやたらと独り言が多い。今日の自分の至らなかった点をおさらいして「キャー」と絶叫する羞恥プレイをしばらくやった後、ふと振り返ると気まずそうな顔をした千聖が立っていた。

「うっわびっくりしたぁ!いつからいたの!」
「あ・・・えと・・・だ、大丈夫です、だよ!何にも聞いてな、ませんよ!」

千聖は私がどこまで把握してるのか忘れてしまったらしく、キャラを決めかねてあわあわしている。


「無理すんなって、千聖お嬢様。」
私がからかうと、千聖は顔を赤くして「ごめんなさい。」と呟いた。

「私、桃子に隠し事して。」
「そんなことどうでもいいよ。ももと千聖の仲じゃない。謝らないでよ。」

私も千聖に余計な負担をかけてしまったことを謝りたかったのだけれど、ここでごめんねを言うと確実に謝り合戦になってしまうのでやめておいた。

「みんなのとこ、行かなくていいの?」
私の横に座り込んで一緒に作業を始めた千聖は、
「桃子さんがいないから、なんだか寂しくて。」
とはにかんだ。

「またまたぁ~。」
私は照れ隠しもあって、軽く千聖に体当たりをしてみた。
「本当ですよぉ。私、桃子さんが大好きです。いつも私のこと、優しく守ってくれて。」
「私は優しくなんかないよ。すぐムキになるし、今日もメンバーとケンカ中。こんなんだから浮くんだよね。何年ベリーズやってんだって感じだけど。」
このキャラの千聖には、何だか甘えたくなる。少し大人びて、落着いた顔をしているからだろうか。
千聖を相手にこんな気持ちになるなんて、思いも寄らなかった。

「・・・皆さん、桃子さんがいらっしゃらないのを心配なさってたわ。何か悩んでるみたいだともおっしゃってた。」
千聖は体を私の方に完全に向けると、私の頭を撫でるようにして胸に押し付けてきた。

私の方が3つも年上なのに、ちょっとこれは恥ずかしい。
でも千聖の暖かい体温はとても心地がよくて、このまま甘い香りのする胸で休ませてもらうことにした。

「ねえ、千聖。どうして千聖は、私と一緒にいてくれるの?
キッズの時からそうだったよね。
私が、一人ぼっちになりやすいから心配してくれてるの?本当は千聖、もっと舞ちゃんや他のみんなと一緒にいたいのに、もものせいで我慢してたとか?
私はずっと、寂しくて押しつぶされそうな時に千聖が近くにいてくれて嬉しかった。今もこうやって、私が一人にならないようにわざわざ来てくれて、嬉しいけど何でもものためにここまでするの?」

17歳にもなって、何が一人ぼっちだ。ばかもも。
理性ではそう思っているけど、私の口からは自然に言葉がでてくる。

千聖は人の心を裸にしてしまう。

一人でも平気だったはずの私は、こうやって思いがけない形で、本当の意味での自分の本心の対峙させられてしまった。



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