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「っ…!!セレス、ちゃん…?」  浴場から尾を引くようにして、おそらく風呂上がりであろう千尋の体から湯気が立つ。  それは、本来なら人が来る可能性が極めて少ない、夜時間のほんの少し前の出来事だった。  こんな時間に入っているのは誰か、と、興味本位でこっそり脱衣所を覗いたセレスは、  目の前の光景に呆然と立ち尽くしてしまっていた。  ばっ、と、手にしたバスタオルで、千尋は自らの体を隠した。一見するとそれは、羞恥から来たものだろう。  しかし、セレスティア・ルーデンベルグがその数秒の間に目にした光景は、それとはまた別の真実を導き出した。  彼女の…いや、彼の顔は、羞恥の赤ではなく、絶望の青に染まっている。  まるで、死刑宣告でも受けたかのように。 「…不二崎さん」  動揺していたのは、セレスも同じだった。もちろん、努めてそれを表に出さぬよう心掛けていたけれど。  超高校級のギャンブラーのポーカーフェイスを見破れるはずもなく、千尋は冷たく響くセレスの言葉に立ちすくんだ。 「いえ、不二崎くん、と呼んだ方が、正しいのでしょうか」 「っ…」 「まずは、故意でなくとも、突然に入ってきてあなたの体を見てしまったことは、謝りますわ」  不二崎の顔が、いびつに歪む。額には脂汗が。 「…や、やだな、セレスちゃん」  それは、セレスが幾度となく目にしてきた、何かをごまかそうとする者の顔だった。 「不二崎くん、だなんて…確かに私は胸も小さいし、全然女の子っぽくないけど、さ…男の子なんかじゃ、ないよ」 「あら、では先ほど私の目に映ったのは、もしかして幻想だったりするのかしら」 「…な、なんのこと?」  ぞくり、と背中に攻め立てることへの恍惚感が走った。不二崎の動揺は、目に見えて明らかだった。  捕食者を背にして、一歩一歩崖に向かって逃げ続ける小動物のような、そんな絶望に満ちた表情を、藤崎は見せている。 「その、女の子であればついているはずのないものが…あなたについていたように思ったのですが」 「そっ…!」  ああ、この手の追いつめられた局面が苦手だったのだな、と、セレスは半ば憐れみながら、不二崎に向かって歩を進めた。  少し会話を交わした程度だが、なぜか彼らのことは、旧知の仲のように知っていた。 「違うというのなら、大変申し訳ないのですが、バスタオルを取って見せていただけませんか?私もあなたを疑うのは心苦しいのですが…」  そう言って、セレスは不二崎に詰め寄った。 「これから共に生活していく仲間への疑惑を、少しでも薄めておきたくて。でないと私、何かが起きた時、あなたを真っ先に疑ってしまうかも」  一歩、また一歩、セレスが足を進め、同じ数だけ不二崎が退く。  やがて壁にぶつかると、不二崎の顔に浮かぶ絶望の色は、なおさら濃くなった。  風呂上がりだからか顔を上気させ、瞳に涙を浮かべた不二崎は、背徳と官能の入り混じった偶像のようだ。  目の前の少女/少年とは対比的に、いや、むしろそんな不二崎を前にしたために、どうしようもない興奮に、セレスは見舞われていた。 「や、セレスちゃ…許して…っ」  バンっ、と、大きな音を立てて、不二崎の背の壁に、セレスは左手をついた。 「ひっ!」  不二崎はビクリと体をちぢこませる。セレスは彼の耳元で、わざと吐息を耳に吹きかけるような話し方でささやく。 「大丈夫…危害を加えたりはしませんわ」 「う…んっ…!」  耳に息をかけるたびに、体を震わせる。  壁についた左手を、するするとあごや首筋へ動かし、触れるか触れないかのギリギリでなでてやる。  不二崎は面白いように体をくねらせ、しかし恐怖からか、けっして声をあげぬように耐えていた。  そして彼が、セレスの愛撫に気を取られている瞬間に、 「え…っ、あ、わぁっ!」  空いていた右手が、バスタオルを奪い取った。  あらわになる、彼の裸体。女子のようなふくらみはすくなく、かといってごつごつもしていない。  ただただ、中性的だった。正直、「彼」という代名詞を使うのをためらうほど。  そしてその体の持ち主が、心地よい愛撫に陶酔していたために、何が起きたかを把握するまでの数秒。  無防備に開かれた足の付け根の間にあるそれを、確かにセレスは目撃していた。  まぎれもなく、自身の体が雄だと主張する、彼の「それ」。  けれども、セレスがかつて見たことのあるそれ(現実か模造のものか、はたまた瞥見か注視かは、ここでは伏せる)とは全く違うものだった。  毛は生えそろわず、地の肌より少しだけ黒ずんだ皮に覆われている。  まるで見たことのない生命体のような、気味の悪さと愛くるしさの入り混じったモノ。 「~~~~っ!!」  途端に両足を閉じ、手でそれを隠そうとする。けれど、それは無駄な行為だ。  不二崎の小さな手では、隠れきれていない。別に巨根だったとかそういう話ではない。  どちらかというと、かなり小さい部類に入ってしまうだろう。  しかし、それは必死に充血し、大きく上を向いていた。  勃起、していたのである。  セレスは思わず言葉を発しないまま、彼が必死に体を隠そうと悶えるのを熟視していた。  ふと、我に返り、 「あらあら、不二崎「くん」。女の子の私に見られて、興奮してしまったのですか?」  など、口早に言葉を紡いだ。  少なからず、欲情している。彼も、私も。それは認めよう。  別にそういった感情に、嫌悪感があるわけではない。  しかし、動揺はしていた。 「さて、どうしましょうか」  少しの間、セレスは思索を巡らせた。  彼からこの秘密を得たことは、今日からの生活で明らかなアドバンテージになるはず。  しかしそれ以上に、秘密の内容に、セレスの鼓動は早鐘を鳴らす。  そんなことに気を取られていた、次の瞬間、 「セレス、ちゃ……セレスティアさん…」  足元から響いた声に、セレスは虚を突かれた。  目を離している間に、不二崎は裸のまま、体を小さく丸めて、地面に臥していている。  あまりにも可愛らしいその姿に、それが土下座だとわかるまで、かなりの時間を要した。 「お願いします、このことは…っ、誰にも言わないでください…!」  声が震えている。顔は見えないけれど、泣いているのだろう。  それだけこの秘密の露呈が、彼にとって致命的なのだ。趣味や酔狂で女装していたわけではないのだろう。 「な、なんでもします、からっ!私、いや…ボクにできることなら…」  そういって、不二崎は顔を挙げる。赤く染まった頬。目からは、羞恥と絶望の涙。  ああ、極限状態だと、性欲が滾るというのはよく聞く話だけれど… 「なんでも…」  こんな場所におかれて、自分もおかしくなってしまったのか。  そんな思いを頭の片隅で手繰るセレスの顔は、欲情と狂気に塗り固められていた。 「なんでもしてくれる、のですね?」  不二崎の言葉を、鸚鵡のように繰り返す。 「は、はい…」 「なんでも、させてくれるのですね?」  セレスは足をかがめて、不二崎のあごに指を這わせ、くい、と顔を向けさせた。 「…っ、はい」  ぶるり、と、今度はセレスが体を震わせた。  じわり、と、脇や膝から汗がにじむ。  なんと素晴らしい言葉の響きだろうか。  体が熱い。 「じゃあ、まずは立ち上がってくださるかしら」  言われた通り、不二崎は従順に立ち上がる。  手を股の前で組み、見られたくないという意思表示か、くねくねと指を動かしている。 「手は頭の後ろに回して、組んでおくこと。それと、足を肩幅に開いてくださる?よく見られませんわ」 「は、はいぃ…」  力なく、不二崎が返事をして、囚人が身体検査をされるようなポーズをとった。  セレスは、今度はより時間をかけて、その勃起したモノをしげしげを観察した。  大きさは、セレスの細い指で二本ほど。  皮を冠ったそれは、ほとんど無臭。彼から漂う石鹸の香りに、かき消されている。  時々、きゅう、と、力を入れているかのように、上に反る。 「あの、セレスティアさん…」 「今まで通り、セレスに「ちゃん」づけで構いませんわ」 「さっきから…い、息が…当たってて…」  ふるふると、不二崎が震える。か細い声で訴え、隠すことのできない恥ずかしさから、顔を真っ赤にさせている。  本当に、このモノがなければ、女の子にしか見えないだろう。  つん、と、先端を優しく指で撫であげてやる。 「い、ぅんっ…」  また、ビクン、と体を震えさせた。  セレスの声よりも遥かに高い嬌声が、脱衣所で響く。  更に容赦なく、しかしあくまで優しく、セレスの指が先端をなぞる。 「はぅ、っあ、セレスちゃ…そこ、だめ…んっ!」  かくん、と膝が曲がり、不二崎は腰を引いた。  そしてモノをかばうように、自分の後頭部でとどめていた手を、モノの前で覆う。  すると、一端セレスは手を止めて、じとり、と不二崎をにらんだ。 「あら、先ほど『手は頭の後ろに』と言いませんでした?」 「で、でも…」 「まあ、従いたくないのなら、私は強制しませんけれど」  涙ぐんだ不二崎は、それでも再び頭の後ろに手をやる。  そして次に来るセレスの攻撃に備えて、ギュっと目をつぶった。 「良い子ですわ…」  セレスは今度は、ひざまづいたまま不二崎の後ろにまわり、左腕で彼の膝をキツく抱きよせた。  これで不二崎は、腰も引けなければ、崩れ落ちることも出来ない。  手でセレスの攻めを払いのけない限り、避けようのない攻撃を受け続けてしまうことになる。  セレスはちら、と不二崎を見上げたが、相変わらずキツく目を閉じたままだ。  可愛い子。 「ふふ…」  思わず笑いがこぼれる。そして先ほどと同じように、彼のその先端を、器用に右手の指先で弄ぶのだった。 「あっ…ん、ふぅっ……はぅっ!…ん…んぅ……ん、ぁ、あ、やぁっ…!!」  逃げ場のない、微細で断続的な快楽に、彼のそれは、ぴくんぴくんと、跳ねるように反応するしか出来なかった。  不二崎は、肩で息をしている。この小さな体に、快楽はどれほどの負担になるのか。  間もなく、その先端から、わずかに白い粘液がでて滴をつくり、セレスの指を汚した。 「あら…気持ちいいのですか?不二崎くん」 「ふ、ぅうっ、んん…」  セレスは不二崎自身というよりも、彼のそれに話しかけているようだった。 「応えてくださる?裸に剥かれて、身動きを取りたくても取れない状況で…」 「ん、んんっ…やぁあっ!あっ!」 「勃起したお○ん○んの先っぽを、同い年の女の子にクリクリされて、気持ちいいですかと聞いているのです」  ひっ、ひっ、と荒い呼吸を洩らしながら、精いっぱいに不二崎は応える。 「…な…なんとも、ないです…」 「気持ちよく、ないのですか?」 「ふっ…別に…ん…」  こんな状況で、意地を張るだなんて。  お馬鹿さん。 「あら、そうですか…」  セレスは人差し指と中指を、それの先端にかけると、 「手は頭の後ろから、絶対に離しちゃ駄目ですわよ」  軽く力を込めて根元に引き、一気に皮を剥いた。 「…っひゃぁああっ!!?」  ぎゅっと、彼の足に力がこもった。抱きしめている左腕から、それが伝わる。  外気に触れ、露わにされた彼の真っ赤な恥肉は、おそらくとても敏感で、  当然セレスは、間髪いれずに、その敏感な棒に手を伸ばした。  シュッ、シュッ。皮膚の擦れる音がする。 「あっ、あっぁ、やぁ、んんぅ!」  先ほどの、じれったくなるような攻めとは打って変わって、今度は激しくあからさまに責め挙げる。  細い肉棒をしごき、指の腹で先端を撫であげ、爪の先で鈴口をほじる。  激しく、いやらしく、陰湿に。 「ふぅううぅっ、うあ、あっ!いや、やだぁああぁあっ!!」 「私、あなたが気持ちよくなったところを見たいのですけれど」 「あぅっ、や、いやぁああっ!あ、はぁああっ、ひぃいっ!」 「男の人って、気持ちよくなると、どうなってしまうのでしょうか?」  知っていることを、白々しくもセレスは尋ねる。  羞恥と快楽で、耳まで赤くした不二崎に。  襲いかかる刺激のせいで、言葉にまともに反応できそうもない。 「許して、セレスちゃんっ!!うぁぁああっ、だめぇっ!」  一分と経たないうちに、彼の膝が、抱えたセレスの左腕ごとがくがくと震え、 「うぁ、んっ!!」  いっそう大きく痙攣すると、しごきあげた棒の先から、勢いよく射精した。 セレスの左腕から解放されると、不二崎は前のめりに崩れ落ちた。 「あっ…んっ…」  おそらく、よほどの刺激だったのだろう。プルプルと体を震わせ、動けないでいる。 「これが…不二崎くんの…」  一方でセレスは、掌についた精子を、まじまじと見つめた。  可愛らしく、現実味のない魅力の彼から出たものにしては、随分と生々しい匂いを放っている。  ぺろり、と、なめとる。  匂いの割には、味はほとんどしない。  二人は少しの間、地面に突っ伏して恍惚としていたが、  突如として鳴った鐘の音が、終わりを告げる。 『えー、校内放送、校内放送――』  胸糞の悪くなるような声が、夜時間の始まりを教えてくる。  セレスが先に立ちあがり、不二崎の腕を引いて無理矢理に起こした。 「ほら、起きて不二崎くん。これで終わりじゃありませんのよ」 「え…?」 「秘密をばらされたくないのでしょう?なんでもさせてくれるのでしょう?」  再び、セレスの指が股間へとのびる。  むき出しにされたままの、真っ赤な亀頭を、彼女の爪がなぞる。 「やぁあっ!?」  あまりの感覚に、不二崎は大きくのけぞって腰を引いた。  彼の意思とは無関係に、射精したばかりの棒は、再び硬さを取り戻していく。 「やぁっ、いやぁあっ!!」  絶頂したばかりで敏感な先端を責め挙げながら、耳元でセレスは囁いた。 「ここでは声も響きますし、私の部屋へ向かいましょう。もちろん、この姿のままで」 「やっ、見られ、ちゃうよ…!」 「黒幕はあなたの性別を知っているはずですし、見られても問題ありませんわ、そうでしょう?  夜時間ですし、私たち以外は基本的には部屋の中に戻っているはず。  まあ、これから部屋に戻るまで敏感な先端をいじられ続けながら歩くことになるあなたが、  よほどの大声を出してしまえば話は別ですが…」 「いっ…いやぁああああぁあっ…!!」
「っ…!!セレス、ちゃん…?」  浴場から尾を引くようにして、おそらく風呂上がりであろう千尋の体から湯気が立つ。  それは、本来なら人が来る可能性が極めて少ない、夜時間のほんの少し前の出来事だった。  こんな時間に入っているのは誰か、と、興味本位でこっそり脱衣所を覗いたセレスは、  目の前の光景に呆然と立ち尽くしてしまっていた。  ばっ、と、手にしたバスタオルで、千尋は自らの体を隠した。一見するとそれは、羞恥から来たものだろう。  しかし、セレスティア・ルーデンベルグがその数秒の間に目にした光景は、それとはまた別の真実を導き出した。  彼女の…いや、彼の顔は、羞恥の赤ではなく、絶望の青に染まっている。  まるで、死刑宣告でも受けたかのように。 「…不二咲さん」  動揺していたのは、セレスも同じだった。もちろん、努めてそれを表に出さぬよう心掛けていたけれど。  超高校級のギャンブラーのポーカーフェイスを見破れるはずもなく、千尋は冷たく響くセレスの言葉に立ちすくんだ。 「いえ、不二咲くん、と呼んだ方が、正しいのでしょうか」 「っ…」 「まずは、故意でなくとも、突然に入ってきてあなたの体を見てしまったことは、謝りますわ」  不二咲の顔が、いびつに歪む。額には脂汗が。 「…や、やだな、セレスちゃん」  それは、セレスが幾度となく目にしてきた、何かをごまかそうとする者の顔だった。 「不二咲くん、だなんて…確かに私は胸も小さいし、全然女の子っぽくないけど、さ…男の子なんかじゃ、ないよ」 「あら、では先ほど私の目に映ったのは、もしかして幻想だったりするのかしら」 「…な、なんのこと?」  ぞくり、と背中に攻め立てることへの恍惚感が走った。不二咲の動揺は、目に見えて明らかだった。  捕食者を背にして、一歩一歩崖に向かって逃げ続ける小動物のような、そんな絶望に満ちた表情を、不二咲は見せている。 「その、女の子であればついているはずのないものが…あなたについていたように思ったのですが」 「そっ…!」  ああ、この手の追いつめられた局面が苦手だったのだな、と、セレスは半ば憐れみながら、不二咲に向かって歩を進めた。  少し会話を交わした程度だが、なぜか彼らのことは、旧知の仲のように知っていた。 「違うというのなら、大変申し訳ないのですが、バスタオルを取って見せていただけませんか?私もあなたを疑うのは心苦しいのですが…」  そう言って、セレスは不二咲に詰め寄った。 「これから共に生活していく仲間への疑惑を、少しでも薄めておきたくて。でないと私、何かが起きた時、あなたを真っ先に疑ってしまうかも」  一歩、また一歩、セレスが足を進め、同じ数だけ不二咲が退く。  やがて壁にぶつかると、不二咲の顔に浮かぶ絶望の色は、なおさら濃くなった。  風呂上がりだからか顔を上気させ、瞳に涙を浮かべた不二咲は、背徳と官能の入り混じった偶像のようだ。  目の前の少女/少年とは対比的に、いや、むしろそんな不二咲を前にしたために、どうしようもない興奮に、セレスは見舞われていた。 「や、セレスちゃ…許して…っ」  バンっ、と、大きな音を立てて、不二咲の背の壁に、セレスは左手をついた。 「ひっ!」  不二咲はビクリと体をちぢこませる。セレスは彼の耳元で、わざと吐息を耳に吹きかけるような話し方でささやく。 「大丈夫…危害を加えたりはしませんわ」 「う…んっ…!」  耳に息をかけるたびに、体を震わせる。  壁についた左手を、するするとあごや首筋へ動かし、触れるか触れないかのギリギリでなでてやる。  不二崎は面白いように体をくねらせ、しかし恐怖からか、けっして声をあげ咲ように耐えていた。  そして彼が、セレスの愛撫に気を取られている瞬間に、 「え…っ、あ、わぁっ!」  空いていた右手が、バスタオルを奪い取った。  あらわになる、彼の裸体。女子のようなふくらみはすくなく、かといってごつごつもしていない。  ただただ、中性的だった。正直、「彼」という代名詞を使うのをためらうほど。  そしてその体の持ち主が、心地よい愛撫に陶酔していたために、何が起きたかを把握するまでの数秒。  無防備に開かれた足の付け根の間にあるそれを、確かにセレスは目撃していた。  まぎれもなく、自身の体が雄だと主張する、彼の「それ」。  けれども、セレスがかつて見たことのあるそれ(現実か模造のものか、はたまた瞥見か注視かは、ここでは伏せる)とは全く違うものだった。  毛は生えそろわず、地の肌より少しだけ黒ずんだ皮に覆われている。  まるで見たことのない生命体のような、気味の悪さと愛くるしさの入り混じったモノ。 「~~~~っ!!」  途端に両足を閉じ、手でそれを隠そうとする。けれど、それは無駄な行為だ。  不二咲の小さな手では、隠れきれていない。別に巨根だったとかそういう話ではない。  どちらかというと、かなり小さい部類に入ってしまうだろう。  しかし、それは必死に充血し、大きく上を向いていた。  勃起、していたのである。  セレスは思わず言葉を発しないまま、彼が必死に体を隠そうと悶えるのを熟視していた。  ふと、我に返り、 「あらあら、不二咲「くん」。女の子の私に見られて、興奮してしまったのですか?」  など、口早に言葉を紡いだ。  少なからず、欲情している。彼も、私も。それは認めよう。  別にそういった感情に、嫌悪感があるわけではない。  しかし、動揺はしていた。 「さて、どうしましょうか」  少しの間、セレスは思索を巡らせた。  彼からこの秘密を得たことは、今日からの生活で明らかなアドバンテージになるはず。  しかしそれ以上に、秘密の内容に、セレスの鼓動は早鐘を鳴らす。  そんなことに気を取られていた、次の瞬間、 「セレス、ちゃ……セレスティアさん…」  足元から響いた声に、セレスは虚を突かれた。  目を離している間に、不二咲は裸のまま、体を小さく丸めて、地面に臥していている。  あまりにも可愛らしいその姿に、それが土下座だとわかるまで、かなりの時間を要した。 「お願いします、このことは…っ、誰にも言わないでください…!」  声が震えている。顔は見えないけれど、泣いているのだろう。  それだけこの秘密の露呈が、彼にとって致命的なのだ。趣味や酔狂で女装していたわけではないのだろう。 「な、なんでもします、からっ!私、いや…ボクにできることなら…」  そういって、不二咲は顔を挙げる。赤く染まった頬。目からは、羞恥と絶望の涙。  ああ、極限状態だと、性欲が滾るというのはよく聞く話だけれど… 「なんでも…」  こんな場所におかれて、自分もおかしくなってしまったのか。  そんな思いを頭の片隅で手繰るセレスの顔は、欲情と狂気に塗り固められていた。 「なんでもしてくれる、のですね?」  不二咲の言葉を、鸚鵡のように繰り返す。 「は、はい…」 「なんでも、させてくれるのですね?」  セレスは足をかがめて、不二咲のあごに指を這わせ、くい、と顔を向けさせた。 「…っ、はい」  ぶるり、と、今度はセレスが体を震わせた。  じわり、と、脇や膝から汗がにじむ。  なんと素晴らしい言葉の響きだろうか。  体が熱い。 「じゃあ、まずは立ち上がってくださるかしら」  言われた通り、不二咲は従順に立ち上がる。  手を股の前で組み、見られたくないという意思表示か、くねくねと指を動かしている。 「手は頭の後ろに回して、組んでおくこと。それと、足を肩幅に開いてくださる?よく見られませんわ」 「は、はいぃ…」  力なく、不二咲が返事をして、囚人が身体検査をされるようなポーズをとった。  セレスは、今度はより時間をかけて、その勃起したモノをしげしげを観察した。  大きさは、セレスの細い指で二本ほど。  皮を冠ったそれは、ほとんど無臭。彼から漂う石鹸の香りに、かき消されている。  時々、きゅう、と、力を入れているかのように、上に反る。 「あの、セレスティアさん…」 「今まで通り、セレスに「ちゃん」づけで構いませんわ」 「さっきから…い、息が…当たってて…」  ふるふると、不二咲が震える。か細い声で訴え、隠すことのできない恥ずかしさから、顔を真っ赤にさせている。  本当に、このモノがなければ、女の子にしか見えないだろう。  つん、と、先端を優しく指で撫であげてやる。 「い、ぅんっ…」  また、ビクン、と体を震えさせた。  セレスの声よりも遥かに高い嬌声が、脱衣所で響く。  更に容赦なく、しかしあくまで優しく、セレスの指が先端をなぞる。 「はぅ、っあ、セレスちゃ…そこ、だめ…んっ!」  かくん、と膝が曲がり、不二咲は腰を引いた。  そしてモノをかばうように、自分の後頭部でとどめていた手を、モノの前で覆う。  すると、一端セレスは手を止めて、じとり、と不二咲をにらんだ。 「あら、先ほど『手は頭の後ろに』と言いませんでした?」 「で、でも…」 「まあ、従いたくないのなら、私は強制しませんけれど」  涙ぐんだ不二咲は、それでも再び頭の後ろに手をやる。  そして次に来るセレスの攻撃に備えて、ギュっと目をつぶった。 「良い子ですわ…」  セレスは今度は、ひざまづいたまま不二咲の後ろにまわり、左腕で彼の膝をキツく抱きよせた。  これで不二咲は、腰も引けなければ、崩れ落ちることも出来ない。  手でセレスの攻めを払いのけない限り、避けようのない攻撃を受け続けてしまうことになる。  セレスはちら、と不二咲を見上げたが、相変わらずキツく目を閉じたままだ。  可愛い子。 「ふふ…」  思わず笑いがこぼれる。そして先ほどと同じように、彼のその先端を、器用に右手の指先で弄ぶのだった。 「あっ…ん、ふぅっ……はぅっ!…ん…んぅ……ん、ぁ、あ、やぁっ…!!」  逃げ場のない、微細で断続的な快楽に、彼のそれは、ぴくんぴくんと、跳ねるように反応するしか出来なかった。  不二咲は、肩で息をしている。この小さな体に、快楽はどれほどの負担になるのか。  間もなく、その先端から、わずかに白い粘液がでて滴をつくり、セレスの指を汚した。 「あら…気持ちいいのですか?不二咲くん」 「ふ、ぅうっ、んん…」  セレスは不二咲自身というよりも、彼のそれに話しかけているようだった。 「応えてくださる?裸に剥かれて、身動きを取りたくても取れない状況で…」 「ん、んんっ…やぁあっ!あっ!」 「勃起したお○ん○んの先っぽを、同い年の女の子にクリクリされて、気持ちいいですかと聞いているのです」  ひっ、ひっ、と荒い呼吸を洩らしながら、精いっぱいに不二咲は応える。 「…な…なんとも、ないです…」 「気持ちよく、ないのですか?」 「ふっ…別に…ん…」  こんな状況で、意地を張るだなんて。  お馬鹿さん。 「あら、そうですか…」  セレスは人差し指と中指を、それの先端にかけると、 「手は頭の後ろから、絶対に離しちゃ駄目ですわよ」  軽く力を込めて根元に引き、一気に皮を剥いた。 「…っひゃぁああっ!!?」  ぎゅっと、彼の足に力がこもった。抱きしめている左腕から、それが伝わる。  外気に触れ、露わにされた彼の真っ赤な恥肉は、おそらくとても敏感で、  当然セレスは、間髪いれずに、その敏感な棒に手を伸ばした。  シュッ、シュッ。皮膚の擦れる音がする。 「あっ、あっぁ、やぁ、んんぅ!」  先ほどの、じれったくなるような攻めとは打って変わって、今度は激しくあからさまに責め挙げる。  細い肉棒をしごき、指の腹で先端を撫であげ、爪の先で鈴口をほじる。  激しく、いやらしく、陰湿に。 「ふぅううぅっ、うあ、あっ!いや、やだぁああぁあっ!!」 「私、あなたが気持ちよくなったところを見たいのですけれど」 「あぅっ、や、いやぁああっ!あ、はぁああっ、ひぃいっ!」 「男の人って、気持ちよくなると、どうなってしまうのでしょうか?」  知っていることを、白々しくもセレスは尋ねる。  羞恥と快楽で、耳まで赤くした不二咲に。  襲いかかる刺激のせいで、言葉にまともに反応できそうもない。 「許して、セレスちゃんっ!!うぁぁああっ、だめぇっ!」  一分と経たないうちに、彼の膝が、抱えたセレスの左腕ごとがくがくと震え、 「うぁ、んっ!!」  いっそう大きく痙攣すると、しごきあげた棒の先から、勢いよく射精した。 セレスの左腕から解放されると、不二咲は前のめりに崩れ落ちた。 「あっ…んっ…」  おそらく、よほどの刺激だったのだろう。プルプルと体を震わせ、動けないでいる。 「これが…不二咲くんの…」  一方でセレスは、掌についた精子を、まじまじと見つめた。  可愛らしく、現実味のない魅力の彼から出たものにしては、随分と生々しい匂いを放っている。  ぺろり、と、なめとる。  匂いの割には、味はほとんどしない。  二人は少しの間、地面に突っ伏して恍惚としていたが、  突如として鳴った鐘の音が、終わりを告げる。 『えー、校内放送、校内放送――』  胸糞の悪くなるような声が、夜時間の始まりを教えてくる。  セレスが先に立ちあがり、不二咲の腕を引いて無理矢理に起こした。 「ほら、起きて不二咲くん。これで終わりじゃありませんのよ」 「え…?」 「秘密をばらされたくないのでしょう?なんでもさせてくれるのでしょう?」  再び、セレスの指が股間へとのびる。  むき出しにされたままの、真っ赤な亀頭を、彼女の爪がなぞる。 「やぁあっ!?」  あまりの感覚に、不二咲は大きくのけぞって腰を引いた。  彼の意思とは無関係に、射精したばかりの棒は、再び硬さを取り戻していく。 「やぁっ、いやぁあっ!!」  絶頂したばかりで敏感な先端を責め挙げながら、耳元でセレスは囁いた。 「ここでは声も響きますし、私の部屋へ向かいましょう。もちろん、この姿のままで」 「やっ、見られ、ちゃうよ…!」 「黒幕はあなたの性別を知っているはずですし、見られても問題ありませんわ、そうでしょう?  夜時間ですし、私たち以外は基本的には部屋の中に戻っているはず。  まあ、これから部屋に戻るまで敏感な先端をいじられ続けながら歩くことになるあなたが、  よほどの大声を出してしまえば話は別ですが…」 「いっ…いやぁああああぁあっ…!!」

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