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舞園さんとの早朝の秘事を霧切さんに目撃されてから数日が経った。 あれから霧切さんとは一度も口を聞いてもらえず、それどころか目さえ合わせてもらえない状態が続いていた。 それとは反対に舞園さんの機嫌は妙に良いようで、お弁当を作って来てくれたりする。 それはそれで嬉しいのだけど、やっぱり霧切さんに無視された状態と言うのは辛いわけで… 仲直りをしたいとの旨を伝え、クラスの女子数人にアドバイスしてもらうと 「そんなのドーナツ持って行けば機嫌治してくれるよ‼どうせ苗木が悪いんでしょ?」 と朝比奈さん。 「何故それをわたくしに言いますの?少なくとも人に聞いたことを実行するだけでは誠意に欠けますわよ。」 とセレスさん。 「はぁ?あんたら喧嘩してんの?あはは。苗木はお弁当作ってくれるアイドルだけじゃ満足できないんだね。」 と江ノ島さん。 「我は男女の機微には疎いので的確なアドバイスはできぬ。しかし、人間関係の修復は素直になることから始まると思っている。」 と大神さん。 そんなみんなのアドバイス(?)を受けて、僕はやっぱり素直に霧切さんに謝罪するべきだと考えた。 そこで、確実に自室に居るであろう夜時間に彼女の部屋を訪ねようとしたところまではいいのだが… 「……インターホンを押す勇気がない。」 もう30分近くも彼女の部屋の前で立ち往生していた。 途中、自分の部屋へと帰るセレスさんに哀れな物を見る目で見られたりもしたが、霧切さんを呼び出すためのその小さなボタンを押すことができないでいた。 「…よし‼大丈夫、霧切さんなら話しを聞いてくれるはず。そう信じるしかない。前向きなのが僕の取り柄なんだから。」 そんな意気込みと共にやっとの思いでインターホンを押した僕だったが、10秒経っても、20経っても中からの返事が無かった。 「えっと…まさかもう寝ちゃったってことは無いと思うんだけど…。」 再度インターホンに手をかけてみるも反応は無く、意気消沈しながら押した3回目でさえ虚しい静寂が返ってくるだけだった。 理由を考える余裕も無い程に頭は真っ白になり、立ち尽くす僕に後ろから声がかかった。 「…人の部屋の前で何してるの。」 久しぶりに聞く霧切さんの声。 少し冷たいような、それでいて優しい彼女の声。 いきなりの予想外の出来事に僕の心臓は跳ね上がり、身体もまた跳ね上がるように振り向いた。 そこには普段のきちんと制服を着こなした姿では無く、あきらかにお風呂上がりな霧切さんが立っていた。 白い肌が薄く桜色に上気しており、長い髪の毛もまだ少し湿ったままのようだ。 そしてなにより霧切さんの部屋着をはじめて見た。 丈の短いTシャツにホットパンツをはいただけのその姿は、普段の彼女のイメージと違って、どこか無防備さを感じさせた。 そんなギャップに僕が見惚れていると、彼女の一層険しい声がとんできた。 「何をしてるのと言ったのよ、 苗木君。部屋に入れないから退いてちょうだい。」 「あ、いや…その…き、霧切さんは何を…?」 テンパって質問を質問者で返してしまった僕を睨みつけ、霧切さんは僕の身体を押しやり部屋の鍵を開けながら言った。 「見てわからない?大浴場に行ったのよ。」 「そ、そうだよね。夜時間はシャワーが使えないし…そ、それにしても霧切さんもそう言う格好するんだね。何て言うか…普段の凛々しい感じと違ってかわい…」 「じゃあね。」 不意打ちで訪れた会話の機会に、珍しく饒舌になる僕の口上を彼女はあっさりと聞き流し、部屋の中へと入ろうとする。 「ちょ、ちょっと待ってよ霧切さん‼ほんとは君に謝りに来たんだ‼この前のこときちんと話そうと思って…。」 ……バタン。 あまりにもあっさりと、取り付く島もないほどにしっかりと扉を閉められた。 予想以上に霧切さんの頑なな態度に、久しぶりに喋ってもらえたしもういいかと言う考えが浮かんだが、それは違うと思い直す。 そして、本日四度目になるインターホンを押す僕だったが、今度は霧切さんが中にいるのにも関わらず、またもや返ってくるのは静寂だった。 そこから更に三回インターホンを押し、三回とも無言の拒絶が返ってきて、呆然と立ち尽くしていた僕だったが、ここまでくると流石に希望を保てず、絶望に浸るしかなかった。 「…もう八回目か…これで最後にするしかないな…流石に霧切りさんに迷惑かけ続けるわけにもいかないし。ちょうど七転び八起き。」 そう呟き、八回目のインターホンを押そうと手を上げた時だった。 ……ガチャ 急に扉が開き、霧切さんが顔を覗かせた。 相変わらずの無表情を装ったまま、僕を見て溜息をついた。 「入って。何回もインターホン鳴らされて迷惑よ。」 その時の僕は飼い主に従う子犬だっただろう。 尻尾があれば全力で振りながら彼女の後ろに従ったはずだ。 思いが通じた気がしてホクホク顔で霧切さんの部屋に入った僕だったが、霧切さんは容赦無く僕の笑顔を奪っていく。 「女の子の部屋に入ってきてニヤニヤしないで気持ち悪い。」 「…ゴメン。」 霧切さんの部屋らしく、綺麗に整理整頓され、女の子の部屋としては物が少ないながらも、女の子特有の香りがする部屋を見ながら、ぼくはあることに気づいた。 霧切さんがさっきの部屋着とは違い、いつもの私服に着替えていたのだ。 「あれ?霧切さん着替えたの?もう寝るだけなのにネクタイまで締めてるし。」 「……別に。で、謝るって何をかしら?苗木君は私に謝らなきゃいけないことをしたの?」 「え…と……こ、この前の舞園さんとのことなんだけど、アレは何と言うか…その…と、とにかく欲望に負けた僕が悪くて、」 「ちょっと待って。」 静止をかけた霧切さんの声は今までとは違って冷たいわけでもなく、只々無機質なものだった。 例えるなら、死人のように。 「それについてだけど、私は苗木君に謝られる必要があるのかしら。貴方がどこの誰と何をしようと私には関係ないはずだけど?」 「いや、でも霧切さん急に目も合わせてくれなくなったし、やっぱり…」 「それは早朝から公衆の場で破廉恥な行為を行う輩に対する軽蔑なだけよ。別に苗木君だからどうとかは関係ない。」 「それは…そうかもしれない…けど…。」 その無機質な声はまるであらかじめ決められているセリフを言っているだけのようで それでいて、彼女の自身の気持ちであるような気もして、僕は言葉に詰まってしまった。 「…ただひとつ言わせてもらえば、彼女…舞園さんは貴方が思っているほど純粋でも無邪気でもないわよ。それだけは気をつけなさい。」 霧切さんのそんな言葉に舞園さんの妖艶な、行為の最中に僕だけに見せるエロティシズムが頭をよぎる。 しかし、それも一瞬のことで、目の前の霧切さんの無機質な表情が僕を現実に引き戻した。 「…やっぱりきちんと謝るよ。あの時は本当にごめんなさい。霧切さんの机を使っちゃってたってこともあるし…。」 僕のその言葉に当時の様子を思い出したのだろうか、霧切さんはその端正な眉を跳ね上げ、僕を睨みつけた。 「そんなことはどうでもいいわ。それにもう一度言うけど、私には関係のないことでしょ?別に苗木君が舞園さんと付き合っていようが…。」 「ちょ、ちょっと待って、別に舞園さんとは付き合ってるわけじゃないんだ。ただ…」 「身体だけの関係とでも言いたいの?」 「……そうなる…のかな…。」 霧切さんはまた元の感情の読めない表情で少し何かを考えているようだった。 何かを言いたそうに僕の顔を見ては、また何かを考え込む素振りを見せていた霧切さんだったが、次第に、彼女らしく無く、僕から目を逸らしながら少しずつ言葉を紡いでいった。 「……私…なら…?」 「へ?霧切さんなら…何?」 「私ならどうしたって聞いてるの‼」 「えっと…どう言う…?」 「舞園さんなら付き合ってもないのに抱いたんでしょ⁉なら私なら⁉私も彼女と同じように抱ける⁉ それともやっぱり舞園さんだから抱いたの⁉苗木君は女の子なら誰でもいいから抱く⁉それともアイドルだから抱きたかった⁉好きだから抱くって言う選択肢は無いの⁉」 珍しく感情を露わにして僕に詰め寄って来る霧切さんは、言いたいことを言い切って我に返ったようだった。 無言で僕から離れると、背を向けてしまう。 彼女にそこまで言わせてしまった以上、僕だって後には引けない。 それなら僕だって素直に心の中の言弾を打ち出すだけだ。 「あるよ。好きだから抱きたいって気持ちはある。その気持ちが大きくなりすぎて困ってるんだ。」 相変わらず背を向けたままの霧切さんだったが、僕には彼女が僕の言葉を全てきちんと聞いてくれていると言う確信があった。 「はじめは怖かったんだ。好きな人ができて…でもどう思われてるかわからなくて…だから何もできなくて。そんな時に弱い僕が逃げた先が舞園さんだった。そして、その逃亡の結果を好きな人本人に見られてしまって…だからこそ、もう一度ちゃんと謝るよ。」 ごめんなさい。 貴女から目を逸らてごめんなさい。 もう一度きちんと貴女と向き合いたいです。 永遠にも等しい静寂が流れた。 月並みなセリフだが、そう言うに相応しいほど、その沈黙は僕にとって長いものだったのだ。 そんな僕の心境を知ってかしらずか、霧切さんは相変わらずこっちに背を向けたままだった。 そうしているうちに彼女は無言で少しぎこちない動きでベットへと近づき、脈略もなく仰向けに寝転んだ。 そして、今の僕には彼女の考えていることが手に取るようにわかった。 あれは霧切さんなりの精一杯の誘惑なのだ。 舞園さんに負けないように、僕が行動を起こしやすいように、彼女は言葉や視線では無く、その態度でもって僕に身を委ねると言っているのだ。 「霧切さん。僕は君が好きだよ。」 ベットに寝転がる彼女に近づき、上から覗き込むようにして彼女の顔を見る。 「……そう。………ありがと…うれしいわ。」 そんな素っ気ない変人とは裏腹に霧切さんの目は不安げに潤んでおり、緊張のせいか身体は少し震えているようだ。 「霧切さんは?僕のことどう思ってる?」 「……好き………苗木君のことが…好き…。」 そう言った彼女は頬を薄く染めて恥ずかしすうに顔を逸らす。 普段の大人びた雰囲気とは違い、年相応の少女の顔をした彼女に、僕は口づけた。 唇と唇が触れ合うだけのフレンチキス。 まるで中学生のような、ただ触れ合うだけのキスを続けながら、僕は彼女の頭を撫でた。 指通りの良い髪がサラサラと掌に触れる。 超高校級の探偵である彼女を支える知識が詰まった頭を優しく撫でる。 その行為に彼女は少しずつ身体の力を抜いていき、唇を離した頃には目がとろんとしていた。 そんな彼女を抱きしめ、耳元で愛の言葉を囁く。 「ほんとうに愛してる。他の誰よりも。世界で1番に。」 「私も……大好き…誰よりも、舞園さんよりも貴方の事が大好き。」 そう言ってくれる彼女の耳元から首筋へとキスを落としていく。 わざと大きな音が鳴るように、何度も何度もキスをした。 その度に霧切さんは身体をほんの少しずつ僕に密着させてくる。 「脱がすよ?」 僕のその言葉に小さく頷く霧切さんにもう一度キスをして僕は彼女の服を脱がせにかかった。 白く、透き通るような彼女の身体は、無駄なぜい肉がついて無いにも関わらず、女性特有の柔らかさをしっかり保っており、一枚脱がす度に身体が羞恥で火照るのがわかった。 彼女を一糸纏わぬ姿にした後、その身体を見ようと自分の上半身を起こしかけた時、服を霧切さんに引っ張られて逆に密着するかたちになった。 「……私だけ脱がせるのは不公平だと思わない?」 いつもと同じように注意するような口振りの霧切さんだったが、今の僕にはそれが照れ隠しだと言うことが手に取るようにわかってしまい。 さらには頬を染める霧切さんをイジメたいとの欲求が起こりつつあった。 僕が服を脱ぐ間、霧切さんは自分の身体を隠すように布団を被ってしまい、下着姿になった僕は彼女の隣りへと滑り込んだ。 「……ン……ッ…」 自然とお互いの唇が重なり合い、舌を使って霧切さんの口を開く。 さっきとは違うキスに霧切さんの身体が強張ったが、徐々に僕の舌の動きに合わせて舌を絡めてくる。 「もっと舌出して。」 そんな僕の要望に戸惑いながら従う霧切さんは普段とのギャップも合間って責め気を誘うには充分だった。 ……クチュ…ピチャ……クチュ… はじめは音が響く度に動きが止まっていた霧切さんだったが、次第に僕の口内にも舌を侵入させてくる。 僕は今まで彼女の細い腰を抱いていた手を滑らせ、胸元へ持っていき、ちょうど手のひらに収まるかどうかくらいの大きさのそれを包み込んだ。 「……ッ……ン……」 普通に揉んでいる間は特に変わった反応は見せなかった霧切さんだったが、既に突起している先端を摘まんだ瞬間、声にならない吐息をもらした。 どうやら声を出すのが恥ずかしいらしい上に乳首が弱いらしい。 「ここ、気持ちいい?」 「べ、別に…わからないわ。」 「そう?じゃあちょっと続けてみるね。」 執拗に続けた先端への愛撫に、彼女は時折身体を震わせ、それでいて声は出すまいと顔を背ける。 そんな霧切さんを見て我慢できるはずもなく、僕は彼女の下半身へと手を伸ばした。 僕の手が恥丘へと到達し、そのまま降りるわけでもなく、太ももへと滑っていくのを霧切さんはわかりやすく反応してくれる。 彼女のしなやかな内太ももを優しく撫でた後、肝心な部分へと手を伸ばしかけた時、それまで耐えるために枕を掴んでいた霧切さんが口を開いた。 「ちょ、ちょっと待って、苗木君。」 「どうかした?」 「私…その……」 より一層恥ずかしそうに何かを言おうとする霧切さんを見て、 僕は彼女が何を言わんとするか想像が付いた。 これまでの彼女の初心な反応からもおそらく霧切さんはまだ経験が無いのだろう。 「…貴方、私が何を言いたいかわかっているでしょう?」 「え?照れてるってことしかわからないよ。霧切さんの顔真っ赤だし。」 「……苗木君、貴方実はサディストだったのね。」 「鈍いだけだよ。ほら、言ってみて?」 「…気づいてると思うけど…私、こう言う経験が無いわ…だから……優しくして。」 更に顔を赤く染めて結局はその言葉を口にする彼女に、霧切さんこそ本当はマゾなんじゃないかと思ったりもする。 もちろんそんなこと言わないけど。 返事の代わりにキスを返し、ぼくはようやく彼女の秘部へと手を伸ばした。 処女だと言う事だったので、先ずは指を入れずに陰核を中心に責めようと思い、そこに指を添えた瞬間だった。 「…フッ……ン~~ッ…‼」 霧切さんの足が大きく跳ね上がった。 相変わらず声を出さないように唇を硬く結んでいるが、今までで1番感じたのは間違いなかった。 僕はそれに気付かない振りをしてピンポイントにそこを触り続けた。 優しく撫でるように、徐々に振動を強く、早く。 「……ッ~‼…フッ~…‼」 霧切さんは目をギュッと瞑り、その手によって掴むシーツにシワが増えていく。 そんな彼女の様子を横目に眺めながら、僕は愛撫を続け、それに合わせて霧切さんの秘部が湿ってくる。 次第にその湿りが滴り落ちる程に濡れてくる。 触る度に鳴る音がはっきりとわかるくらいに濡れてきた時だった。 「…な、苗木君……何か…変なかん…じ…ッ~~‼」 一際大きく霧切さんの身体が跳ね上がった。 シーツを掴む手にはより一層力が入っているし、その綺麗な足はつま先までピンと延びている。 言うまでも無く絶頂に達したのだろう。 普段の感情を悟らせない彼女とは違って、それがハッキリとわかった。 「霧切さん、気持ち良かった?」 「う、うる…さい…。」 絶頂の余韻を引きずっているのか、胸を上下させながら霧切さんは僕を睨む。 そんな霧切さんの顔も今の僕にとっては可愛いものでしかなく、彼女の足を抱えてその間へと身体を滑りこませた。 その際、霧切さんは怒張した僕自身を見て少し息を飲み、これから起こる本当の意味での性交に身体を強張らせた。 そんな彼女の頭を撫でる。 「ふふっ。」 「……何よ…。」 「いつもと立場が逆だね?」 「…ッ……な、苗木君のくせになまい……ンッ…」 何かを言おうとした霧切さんをキスで黙らせる。 僕の気持ちを、全てを伝えるつもりで丁寧にキスをした。 大人しくなった霧切さんに僕は今から行為に及ぶことへの合図を送った。 「霧切さん、痛かったら言ってね。僕のことはいいから自分の身体の事だけを考えて。」 緊張した面持ちで頷く霧切さん。 そんな彼女を見て、僕は自分のソレを彼女へと近づけた。 先端が触れ合い、入り易いように少し指で広げる。 少しでも霧切さんの緊張を抑えようと手と手を絡み合わせた。 「…ン……ッ…」 先端が彼女の膣内へと侵入し、暖かさが僕を包む。 まだ誰も受け入れたことのない霧切さんの中はとても狭く、それでいてとても柔らかい。 徐々に腰を奥へと近づけるに従って霧切さんは目をギュッと閉じる。 口にはしないが、痛いのだろう。 よく考えればあの霧切さんが素直に静止を申し出てくれるわけがない。 「霧切さん、痛いなら…」 「大丈夫。大丈夫だから。そのまま続けて…お願い。」 彼女自身にそう言うのだから僕が途中で辞めるわけにもいかず、それならば少しでも痛みを感じる時間を短くしようと考えた。 入り易いように彼女の腰を動かし、霧切さんの見事な括れを両手で掴む。 「痛いよ。ちょっとだけ我慢して。」 そう言うと、僕は返事を待たずに彼女の中を突き上げた。 「ッ…‼ッ~~‼」 破瓜の痛みに霧切さんは歯を食い縛り、彼女の身体は無意識に逃れようとする。 そんな霧切さんを僕は腰を掴んだ手で引き寄せ、覆い被さるようにキスをした。 痛みに耐えながら、眉間にシワを寄せながらも霧切さんは僕のキスに答えてくれて、次第に痛みも収まってきたのか、舌を絡ませる余裕が出てきた。 僕は頃合いを見て唇を離し、至近距離から霧切さんの顔を覗き込む。 「……な、苗木君…。」 「どうかした?霧切さん。目を逸らさないでよ。」 沈黙に耐えきれなくなったのか、彼女は恥ずかしそうに目を逸らせながら言葉を紡いだ。 「その…こう言うモノって動かないの?こうしてるだけなのが普通なのかしら。」 「だって霧切さんまだ痛いでしょ?」 「もうだいぶマシになったわ。我慢できない程じゃない。」 「マシになっただけで動いたら痛いからね。」 僕はそう言うと霧切さんの背中に手をまわし、腰をもう片方のてで支えて一気に起き上がった。 ちょっと胡座をかいた僕の上に霧切さんが乗る形になる。 対面座位になる際に少し擦れたのか、霧切さんは一瞬眉をひそめたが、すぐに自分たちの格好を見て頬を染めた。 「な、苗木君‼こんな…」 「セックスってこう言うことするモノでしょ?それと…」 少し見上げる形になってしまうが、僕は霧切さんの目を真正面から見る。 もう二度と彼女から目を逸らさないように。 もう二度と彼女を悲しませないように。 「僕は霧切さんとエッチがしたいから霧切さんのことを好きになったわけじゃないよ。だから霧切さんが痛がってるのに僕だけ気持ち良くなろうとは思わない。」 「苗木君…。」 チュッ 次の瞬間、霧切さんは初めて自らキスをした。 それはほんの一瞬で、しかもその後すぐに霧切さんは顔を隠すように僕に抱き付いてきたが、それでも僕にとっては… 「好きよ、苗木君。」 「僕も。好きだよ、霧切さん。」 その時、僕は文字通り霧切さんしか目に入っていなかった。 今だけは霧切さんと2人っきりの世界に浸っていたかった。 だから…… 「あ~あ。途中までは順調だったんですけど……。う~ん。少し霧切さんを挑発し過ぎたかもしれませんね。うふふ。でもこれで終わりじゃないですよ、霧切さん?さて、次はどうやって苗木君を取り戻すかを考えないと。」 部屋のすぐ外で偶像がそんな言葉を発していたとは露にも思わなかった。

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