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「あぁっ! びゃくやさまっ、びゃくやさまあ!」

「……ッ」

十神の体の下で肉付きの薄い、細い肉体が襲い来る快楽にうねりつつも彼の肉棒を優しく、それでいながら激しく扱き上げる。
ベットの上で上半身は俯せて、瑞々しい尻を突き出すように四つん這いになった腐川に対して、十神は同じくベットの上で膝立ちになり腰を彼女の尻たぶへと力強く打ち付けていた。
さながら獣のように荒々しい、羞恥心を刺激する体位に腐川の興奮は燃え上がるように高ぶる。
彼女の幸福と快楽に火照った背中のラインには幾筋かのほつれた髪が薄くかいた汗で張り付き、妖しく官能的な魅力をぐっと高めていた。

「ぁああっ! びゃくやさま、もっと! もっとぉお!」

もはや呂律の回っていない腐川は、それでも自らの肉襞を断続的に、休むことなく穿つ衝撃を貪欲に求め続けている。
腐川の肉壷から十神の肉棒が出し入れされる度にくちゅくちゅと淫猥な水音が響いた。
空気と混ざり合った微かに白く泡立つ愛液が溢れ、糸を引きながら彼女の恥丘から脚の付け根、やがては太股を伝ってシーツへと落ちる。
純白かと思われたシーツには既に小さな染みが幾つか形作られており、彼女が快楽に溺れている様子を言葉もなく、それでいながら如実に表していた。

「びゃくやさまっ! ああ、きもちっ、きもちいいですっ、びゃくやさまあっ!」

彼女の乱れきった嬌声を聞きながら一心不乱に突き出された小振りなヒップへと激しく腰を振り続けている内に、十神の表情が何かを堪えているかのようなものに変わり、腰の動きがラストスパートだと言わんばかりに加速していく。
ぎしぎしとベットが軋み、スプリングが二人の体をリズミカルに押し返すと、腐川の体が快楽に耐え切れず、強い弓のようにしなった。


「くっ、出るぞッ……!」

「はいぃっ! 出してぇっ、出してください! びゃくやさまああぁっ!」

腐川が喉の奥から空気を裂くかのような高い声での絶叫が飛び出す。
それに呼応するように十神も限界を迎える寸前に、彼女の肉壷よりギリギリの所で抜け出した陰茎から、力強さすら感じる勢いで一息に白濁液を吐き出され、彼女の尻から背中へのラインを白く汚した。

「あああああっ! ああっ……ぃくぅっ……!」

ぱたぱたと己の背へと浴びせられた熱く、粘り強い精液。その感触を存分に味わいつつ、腐川は両手の指でシーツを強く握りしめながら絶頂した。

「くっ……あぁ」

一方の十神も射精後特有の倦怠感に襲われ、堪らず腐川を下にしたまま、折り重なるようにマットレスへと倒れ込む。

「……ぅぐぇっ」

スプリングが一際大きく軋み、二人分の体重をまともに受け止めた腐川が奇妙な声を上げながら潰れるのを聞きつつ、彼は胸一杯に空気を吸い込む。
腐川の首筋から香る、二人が初めて体を重ねた『あの日』から妙に漂うようになった石鹸の香りが十神の鼻孔を優しく満たした。

.....

...

.

「…………」

「…………」

事後特有の言葉にできないような、どこかぎこちない雰囲気の中、ダブルベットの上で並び合うように座した二人はピロートークを交わすどころか沈黙したまま目線を合わせようともしない。
十神はそっぽを向き、所在無さ気に人差し指で自らの膝頭をこつこつと叩き、腐川はシーツに体を包んで顔を紅潮させたまま、おどおどとした様子で右手と左手の指同士を絡め合わせている。
二人の行為の後はいつもこの有様だった。
腐川が『絶望のコロシアイ学園生活』中、半ば無理矢理に十神へと純潔を捧げてから、二人は度々このような行為に没頭していた。
二人も超高校級とは言え若さ溢れる高校生であり、閉鎖した空間に鬱屈とした感情を持ったまま閉じ込められる事は多大な苦痛になっていた。
その上、いつ殺人が発生するとも知れない状況下でのストレスは性欲という形で変換、蓄積され、その結果からの逃避ともとれる情交である。
監視の目を気にすることもなく、十神と腐川、お互いの個室は勿論のこと。
果てには、いつ他の生徒に発見されるともしれないや浴場でも昼も夜も問わずに二人は交わっていた。
その行為も十神が一方的に主導権を握り、己の欲を吐き出すようなロマンやムードなど欠片もないものだった。
だが、腐川も十神が彼女の体を使って性欲を処理すること自体は嫌ではなかった。むしろ自分のような人間が十神の情欲の掃きだめになることに喜びと誇りすら感じていたほどである。

「…………」

「…………」

そして、そんな希望ヶ峰学園から脱出した現在でもその関係は続いていた。
抑圧も監視も軟禁もされているわけでもない。にも関わらず十神は腐川の体を求め続けていた。
十神が己の持つ経営力やカリスマを惜しみ無く用いて世界再建の為に様々な活動に勤しみ、色事に現を抜かしている場合ではないとは言っても、わざわざ腐川と体を重ねる理由など無いにも関わらず。

「あ……あ、あのっ、あの……白夜様……。
ひ、一つだけ、お、お聞きしたいんですが……」

俯いたままの腐川が恐る恐るといった様子で口を開くと、裏返った声が飛び出し、苛立たしそうに膝頭を叩いていた十神の指の動きが止まる。
それを肯定の証と取った彼女は横目で明後日の方向を向いた十神の横顔を盗み見ながら更に言葉を紡ぐ。

「な、なんで白夜様は、わわ、私みたいなブスを、その……えっと、だ、抱いて下さるんですか……?」

「…………」

投げ掛けられた質問に十神は答えず、ただ、不愉快そうに眉間のシワを深くしただけだった。
横目でそれを捉えた腐川は再び口を開くのを躊躇ったが、思い切ったように一気に吐き出す。

「わ、私はびゃ、白夜様に抱いて頂けるのは嬉しい、って言うより、あの、その、す、すごい光栄なんです……。
で、でも……白夜様なら私みたいなブスな鉄板女より、あの、もっと美人で胸も大きくて明るくて……え、えっと。
それに、あの、わ、私は『超高校級の文学少女』ですけど、ど、同時に『超高校級の殺人鬼』で、そ、そんなのと、こ、ここ、こういう関係って事がバレたら、白夜様の、じゃ、邪魔になっちゃう……」

腐川の中に眠る『超高校級の殺人鬼』、ジェノサイダー翔。
ジェノサイダーが犯した罪は永遠に消えはしない。ジェノサイダーが行動している内は腐川に意識はないと言っても彼女に責任がないかと問われれば、そうではないだろう。
罪人である自分の存在が十神の足を引っ張る足枷となってしまう事を彼女は何より恐れていた。

「だ、だから……こ、こういうのはちょっと、その、あの……よ、良くないんじゃふぁいっ……!?」

突如、十神はぶつぶつと呟いていた腐川の頬を片手で挟み込むように鷲掴み、下を向いていた彼女の顔を強制的に自分の顔へと向けさせる。

「いつまでもぐだぐだと……欝陶しい事この上ないな」

「びゃ、びゃふやしゃま?」

十神がずいと彼女の顔を覗き込み、彼の澄んだ灰色の瞳が腐川の潤んだ目の中を探るように見つめる。
裸のまま抱き合っているかのような近距離で互いの目を見つめ合う二人の姿。
それは十神が苛立ちを抑え切れない様子で腐川の顔を鷲掴んでいるというただ一点だけを除けば、一枚の絵画のように芸術的でロマンチックなものだった。

「お前ごときが俺に対して意見だと? ……おこがましいにも程があるとは思わなかったのか?」

「ふぉ、ふぉふぇんははい……しゅみまへん」

「ふん……」

つまらなそうに鼻を鳴らしながら眉間にシワを寄せたまま腐川の頬を離した十神は、そのまま彼女の薄い上半身をぞんざいに、しかし、怪我をしないように最低限の注意を払いながら仰向けに押し倒す。
ベッドの読書灯しか照明が存在しない薄暗い部屋の中では、十神の表情は些か窺いにくい。
それでも、いつもとはどこか違う様子の彼に腐川はほんの少しの興奮と戸惑いを覚えた。

「お前のような馬鹿がゴミさながらの役立たずな脳みそであれこれ考えるだけ時間の無駄だ。
俺に迷惑が掛かるだと? ハッ! あまり調子に乗るなよ、粗大ゴミが。
たかだかお前と忌ま忌ましい殺人鬼程度の存在が及ぼす微々たる重圧で潰されるほど俺をやわな存在だとでも思ったのか?
笑わせてくれるな。この俺を誰だと思っている」

「で、でも白夜様……」

「黙っていろ」

その一言と共に十神の顔がついと少しだけ突き出され、二人の唇が音も無く重なった。

「……ッ!?」

予期せぬ接吻に腐川の口からは驚きの声が洩れそうになるが、直前の十神の言い付けを守り、なんとか声を押さえ込む。
先程よりもより近距離に迫った彼の表情には、未だに少々の険しさが残ってはいた。
しかし二枚のレンズ越しに覗くアッシュグレーの瞳には、どこか柔らかさが秘められているように見えなくもない。
二人の唇が、ほんの僅かに触れ合った素肌が、火傷しそうな程に火照った体温を朧げに伝え合う。

裸で抱き合っているにも関わらず、不思議と劣情を感じさせない静かで美しい接吻。
十神の指がじりじりとたどたどしく動き、腐川の細くて小さな指を重ねるように握る。
緊張と驚愕のあまり彼女は思わず、きゅっと十神の指を握り返してから、彼の指が僅かにふるふると震えていることに、はたと気付いた。
何故、彼が今までにないほど柔らかい光を瞳に宿しながら自分と熱い口づけを交わして、ほんの少しだけ怯えたように震えているのか。腐川には彼の行動が全く理解できない。
それでも、この瞬間だけは誰よりも十神の側に心も体も置かせて貰っているように感じて、彼女はただただこの幸福を味わう為にぎゅっと目を閉じて、十神との甘くて狂おしいキスに溺れるように身を任せた。
互いの口腔内をゆるゆると穏やかでいながらどこか不器用でぎこちなく舐め合う。
柔らかい舌を執拗に絡め、つやつやとした歯を丁寧になぞり、熱い唾液同士を喉へと次々に流し合う。
ゆったりとした口付けは唾が擦れる音すらしない、互いの心音とシーツが立てる絹擦れの音だけが聞こえる静粛なものであることを二人は初めて知った。
心身共に焦がし尽くさんと言わんばかりに高まっていく互いの体温に浮かされた二人の体は徐々に、しかし大胆に重なり合っていく。
十神が身動きした際に二人の太股が微かに擦れて、腐川の体に甘い疼きが生まれる。
彼女が身じろぎした際に互いの胸が僅かに触れ合い十神の灰色の瞳が微細に揺れる。
二人が繋ぎ合った指がほつれかけては手繰るように動いたかと思うと再び絡み合い、決して一定以上離れないように握り合う。
十神に指を握り直される度に腐川はきつく瞼を閉じたまま僅かに身じろぎを繰り返し、柔らかなシーツに幾筋ものシワを寄せる。

十神はその様子をじっくりと見ていた。
瞼を閉じている腐川と違い、十神はその両目をしっかりと見開き、五感の全てを用いて腐川の存在を明確に、感じとっている。
自分のそれと絡みついている今にも折れてしまいそうな繊細な白い指と、幸福そうに震える薄い桃色に染まった頬と、きつく閉じられた瞳から伸びた意外に長い睫毛に付着した透明に光る涙を見ていた。
弱い鼻腔呼吸によって鼻孔へと侵入してくる、首筋から香るほのかな石鹸の残り香と甘美かつ淫靡な雌の薫りが混ざり合った芳香を嗅いでいた。
今も尚、昏々と湧き出る傍から吸い尽くしている彼女の温かで、肉と蜜が混じり合ったかのような甘さを秘めた唾液を味わっていた。
指、腿、胸、そして唇と。触れ合っている箇所、全てから伝わる体温と柔らかな肌を感じ取っていた。
耳を澄ませば微かに聞こえる、彼女の相当に高まっている心音と自分と同じように、いつもよりも控えめな呼吸音を聞いていた。

既に十神の表情からは険悪さ剣呑さが溶けるように掻き消えて、朗らかとは言えないものの、いつものような眉間に深いシワを寄せて不機嫌そうにしている普段の彼とは似ても似つかない、どこか安らいでいるかのような表情をしている。
そう、それはまるで目の前で瞳を閉じて怯えるようにキスをする彼女が愛しくて堪らないとでも言いた気に。

そんな静謐で情熱的で、何よりも幸福な至福の時間が一体どのくらい経過しただろう。ほんの刹那か、それとも永遠か。
時間の感覚すら薄れそうな興奮と安寧のキスもやがてゆっくり終わりを迎え、十神の顔が緩慢な動作で腐川のそれから離れていく。
二人の瑞々しい唇と唇の間には所々が雫になって膨らむ透明な唾液のアーチが別れを惜しむかのように細く長く伸びている。
お互いが止めていた呼吸を再開し、灼けつくような息が肺から口へと漏れ出すと、二人の口から伸びた銀色の掛橋は熱い吐息に煽られ、部屋の静寂に倣ったかのように静かに切れたかと思うと、薄く開いた腐川の唇の間から彼女の喉へとするりと侵入した。

「ふん、愚民らしい下賎な味だ」

腐川が瞼を僅かに震わせながら半目を開くと十神のアップが視界に飛び込んでくる。
その顔からは既に先程の優しい表情が剥がれ落ち、瞳にも極限まで研ぎ澄まされたナイフのような鋭い光を宿しながら、いつも通りの冷徹な表情と尊大な態度で腐川に冷たい言葉を投げ放った。
その勢いのまま、彼は次々と鋭利で冷徹な言の葉を紡いでは腐川へと突き立てていく。

「いいか、これ以上お前が俺に対して、あれこれと勝手なことを言う権利は無い。
お前は永遠に俺の所有物だ。逃げることも死ぬことも、ましてや警察を含む全ての存在に捕縛されることすら、お前には許されない。
お前は俺の為だけに食べ、眠り、喋り、動き、書き、罪を償い、生きろ。
分かったら黙って頷け、この愚図が」

「…………」

腐川は彼の言葉に絶句せざるを得ない。
彼の傲慢さに憤慨し、あまりの怒りに言葉すら出ない、のではない。感動するあまりに彼女の思考回路はショートを起こしかけていた。
本来ならば自分が十神のような天上の存在に寵愛を受けることができるような人間ではないと考えていた所に、この宣言は正しく救いの一言と言っても過言ではない。
十神白夜に所有される。それは腐川冬子という一人の女にとって、彼女が持つ途方もなく膨大なボキャブラリーをもってしても表すことができないであろう、奇跡としか感じられない幸福。
罪深い自分に突如降って湧いた、そんな幸福に思わず、一滴の涙を流してしまいながらも、彼女は口の端を笑みの形にひくひくと歪めながら必死で何回も何回も、首を縦に降りたくった。

「フン……」

その反応に対して、十神は素っ気なく鼻を鳴らし、

「…………」

「ぃっ……!」

腐川の首へと唇を寄せたかと思うと、その白くて柔らかい首筋へと蛭のように強く吸い付いた。
彼女は突如、首に走る痒みにも似た多少の鈍い痛みに小さな声を漏らしてしまう。それは十神の耳にも確かに届いていただろうが、彼は首筋から唇を離さない。

「………っ」

数秒の間、十神は腐川の首へと吸い付き、喉と舌と唇を巧みに動かしながら、やや強く吸い上げるようにした後に、ようやくそこから口を離した。
処女雪のように純白で滑らかな腐川の首筋に、ほんの少しの赤みを帯びた虫刺されのような小さなキス痕が十神の唾液に濡れてうっすらと光りながら浮かび上がっている。

「……これはお前が俺のものだという証の烙印だ。消すことは許さん」

「は、ははは、はひ! 消しません! 絶ッ対に!」

十神から投げ掛けられる一つ一つの言葉が本当に夢じゃないだろうかと思うも、首筋に感じる疼くような痛みがその考えを否定する。
ただ、腐川はがくがくと首を降りたくりながら舌と喉の筋肉をできる限りに総動員して精一杯の言葉を紡いだ。
己が彼女に刻んだ小さな証と彼女の反応を満足気に眺めていたかと思うと十神は腐川の瞳を詰め寄るように覗き込み、『その言葉』を宣った。

「腐川」

「は、はひ。な、なんでしょうか白夜さま!?」

「……俺の子を産め」

.....

...

.

つい先程、時間にしてみればほんの半刻ほど前に行為を終えたばかりだと言うのに、腐川のそこは既にしっとりと濡れそぼり、彼の熱く激しい寵愛を受け入れる準備を完全に終えていた。

「ぁ……」

十神の細い指がほのかに盛り上がった腐川の恥丘をするりと滑るように撫でると彼女の口からは溜息とも取れそうな弱く、切な気な吐息が体の芯からほろりと漏れ出る。
その勢いのまま、十神の指は彼女のひっそりと潤む淫唇を絶妙の力加減で弄ぶと、そこからはちゅぐちゅぐと淫らな水音が響く。
その度に腐川は夢でも見ているかのような蕩々とした表情で小刻みに震える唇から吐息を連続して吐き出していた。

「ふぁっ……! んっ、ぁ……びゃくや、さまぁっ!」

愛しい彼の名前を弱々しく囁きながら、腐川は十神に愛撫されるのは今回が初めてであることを、薄ぼんやりと靄が掛かったような意識の中で思い出す。
最初に体を重ねた『あの日』には十神はジェノサイダーの手によって拘束されていて手を動かすこともできなかった。
それ以降の行為でも彼が二、三話し掛けるだけで腐川のそれは瞬く間に潤い、愛撫の必要性などありはしなかった。
今回も腐川の女陰は十神に触れられる前から潤っていたが、それでも彼は今回に限り、敢えて彼女の敏感なそこにそっと触れたのだ。
その行動が彼なりの気遣いか、それとも単なる気まぐれの産物なのか。腐川に判断することはできない。

「…………」

「んんっ……はぁあっ!」

彼女にとって最大限の幸福と取れる十神の命令と現在進行形で行われている最高の至福と取れる愛撫の両方によって、浅く短い絶頂を連続的に迎え続けているせいか、びくびくと痙攣するように跳ねる腐川の体。
それを十神は片手で執拗に愛撫を続けながら、もう片方の手で抑え込むように抱きしめる。
ほんの少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうなほどほっそりとしているのに、筋肉が少ない女性特有の肉感的な柔らかさを持ち、そんな柔らかさの中に若さと張りを秘めた腐川の婀娜っぽい体。
それを自らの腕一本の中に納めている現状に、十神の体の奥で仄かに滾る情欲がゆるりと首を擡げた。
耳障りな程に脈動する心臓から猛烈な勢いで次々に送り出される興奮を乗せた血液は十神の体中をあっという間に駆け巡り、彼の分身へと辿り着くと、男の象徴たるそれをじくじくと屹立させる。
色白な彼の肌の中でそこだけが赤黒く充血した太い血管に覆われてびくびくと脈打ち、グロテスクでいながら、どこか目を背けられない魅力を持ちながら淫靡に光を反射していた。

「っびゃ、くや、さまぁ……」

ふるふると頼り無さ気に震える唇から愛しい十神の名前を搾り出すように呼ぶ。
今だけは誰よりも近くに居る、永遠に誰よりも愛しい彼の名前を呼ぶ。
十神はそれに応えない。ただ彼女の青みがかった灰色の瞳の奥を澄んだ、それでいながら深遠なグレーの眼差しで見詰めるだけである。
それだけで彼女は幸福であった。
あまつさえ、これから始まるのは鬱屈したストレスを吐き出すためのものでも、情欲に突き動かされたためのものでもない。子を成すためのものだ。
彼の子を授かるというこの上ない幸福を享受できることに、腐川の眼から溢れた一雫の嬉し涙が頬を走る。彼女は心より安らぎながら、そんな泣き笑いのような表情を浮かべていた。

「……来て、ください。白夜様」

「っ……」

くにゅり、と赤黒く、はち切れんばかり怒張した十神の亀頭が腐川の淫唇に押し付けられると、彼女は僅かに身じろぎしながら小さな声を漏らした。

「んっ……あっ……」

腐川が堪えるような声を鼻から漏らす度に、彼女の女陰はあてがわれているだけの彼の肉棒をほんの少しずつ、自らの力で吸い寄せるように誘っていく。
くにくにと淫らに波打つ媚肉が徐々に徐々に、十神の亀頭を引き寄せながらくわえ込む。
腐川の意識はまどろみの中で漂っているように曖昧でいながら、脳の奥をやんわりと締め付けられるような興奮と息苦しさを感じていた。

「っあぁ……」

亀頭の先端が半分ほど肉壁に埋まった辺りで腐川は瞼を閉じる。
その身は快感によってふるふると弱々しく、生まれ立ての小鹿のか如く小刻みに震えており、閉じられた眼の淵にはうっすらと涙が溜まっていた。
彼女は何かを堪えるように緩く噛み締めた歯の間から細く、長く、息を吐く。

「…………」

妙に婀娜っぽいその様は十神の快感を加速させるに足るものだったようで、

「っ!」

「ひぐぅっ!?」

焦らしに耐え兼ねたように力強く腰を前に押し出し、先端の半ば辺りまでしか挿入されていなかったそれを一息に彼女の肉壷の最奥へと侵入させた。

「っい、ひ、っああああああああああっ!!」

己の体を押し分ける今までとは段違いの快感が一息に彼女へと襲い掛かり、まどろみの中から一気に引き戻された腐川が取った最初のリアクションは絶叫と一瞬の硬直。
続いて体を限界までのけ反らせるようにしながら全身を尋常ではない速度で痙攣させ始めた。

「っぐぁ、ぁっあひ、あああああああああぁっ!」

普段から感じやすく、アクションも大きい彼女ではあるものの、些か激しすぎるその動きと叫び声に流石の十神も不安と戸惑いを抱いた。次の瞬間。

「ぐっ……!?」

「い、いやぁっ! 見ないでぇ! 見ないで下さひぃ! っひ、いやあぁ!」

腐川が顔を背けたと同時に、彼女の秘所が十神の陰茎を食いちぎらんばかりに締まり、二人が結合した部位から暖かく湿った感触が広がっていく。
その感触の正体は彼女の尿道口から発された、ぬめりのある愛液とも、アンモニア臭のある尿とも違う、透明な液体。

「し……潮、だと?」

「~~ッ!」

未だにがくがくと震える腐川の尿道から勢い良く吹き出す潮流は十神の下腹部を汚し、己の恥毛を濡らし、シーツの染みをじんわりと広げていく。
量にしてコップ一杯ほどの大量に吹き出していた潮がその勢いを失い、ぎしぎしと緊張して十神に喰らい付いていた肉壁達がゆっくりと解きほぐれた頃になっても、腐川の全身はひくひくと弱々しく痙攣を続けていた。

長風呂に茹だったように真っ赤な顔を背けながらぐすぐすと鼻を啜りながら腐川はブツブツと呪詛のように呟く。

「ご、ごめんなさい。び、白夜様の、その、い、い入れられただけで……。
やっ、あっ……いやらしい女でごめんなさい……。し、シーツを汚してしまって……んんっ!?」

ぼそぼそと呪詛の如く紡がれる謝罪を遮ったのは、彼女の首筋に吸い付く柔らかい痛みと下腹部で疼く甘い圧迫感。
腐川が顔を背けていた為に丁度彼の目の前に位置していた彼女の白い首筋に十神は唇を当てながら、びしょ濡れの下腹部同士を打ち付け、彼女の膣内の撹拌を始めていた。

「ぁあっ、ダメ、ダメです! び、びゃくやさま!」

「なんだ、っ、何か不満でもあるのか?」

「い、今はぁっ、そのっ、ぁっ! び、敏感になっててぇ! やっ、はぁっ、んんっ!」

「っ、知るか、馬鹿め」

戯れに握ればたやすくへし折れてしまいそうな程に細い彼女の首筋へと熱心に吸い付きながらも、十神は冷たい言葉を投げ掛けながら腰を前後させていく。
腐川から吹き出した体液によってたっぷりと濡れたお互いの下腹部がぴちゃぴちゃと妙に瑞々しい音を立てながらぶつかり合う。

「んんっ! あぁっ、はっ、っ!」

それは先程の接吻とどこか似通っているようで、その実、全く正反対な、鮮烈で激しい行為だった。
あれほど静かだった室内は水音、嬌声、呼吸音などの多様な音達に支配されている。
二人はいつの間にかお互いの体をしっかりと抱き合い、お互いの感触を、体温を、鼓動を、そして何よりも存在を熱烈に渇望し、堪能していた。

「はっ、っ、っあ」

「あぁっ! ひぃっ、ひっ。やっ、あああっ!」

十神の陰茎が、亀頭にぷりぷりと弾けるように吸い付きつつも絶妙な力加減で締め付ける肉の襞を掻き分け、腐川の体内に出入りする度に彼女の体は悦こんでいるかのように震えた。
快感の限界を超え、再び潮を吹いた腐川の体を彼は遠ざけるどころかより一層強く抱き留める。

「っく!」

「っあ、ああっ、びゃ、びゃくや、しゃまぁっ!」

その腐川を抱きしめた体勢のまま十神は体を起こし、ベッドの上に腰掛けた。
必然的に彼と結合したままの腐川は十神の上に座すようになる。
俗に言う正常位から対面座位の体制になった二人は、やはり抱きしめた体勢のまま情交を交わし続ける。

「ひっ、ふぁっ、ああっ! ……やっ、びゃくや、さまぁ! びゃくやさまぁっ!」

「喧し、いっ……耳元で、騒ぐなっ! 耳障り、だっ!」

体勢を変えた為に彼女の体重による上下運動での衝撃も加わり、十神の肉刺はより一層深く腐川の中へと挿入され、体の最奥をコツコツと弱くノックする感触に彼女は、だらし無く口の端から涎を垂らしながら彼女は悦楽に溺れた。
いつの間にか腐川の長い三編みを縛る紐が切れたようで、緩やかなウェーブがかった長髪は水の中に垂らした墨汁のように妖しく広がり、ゆるゆると踊る。
微かに汗ばみ、湯にのぼせたように熱を持った彼女の薄桃色に染まった肌へと絡み付く、血管のようにも見える艶を秘めた黒い奔流達は嘆美な薫りを振るった。

「ぁあっ! やっ、ひっあっ! あっ! あっ!」

今、この瞬間に二人の脳裏には、次の国家財政予算会議の内容も、新作のアイディアも、殺人鬼も絶望も存在しない。
十神は腐川のことを、腐川は十神のことだけを想い、強烈かつ密接に交わっていた。

「ひぇっ、ぁあっ、ダメっ! ダメです! びゃくや、さま。そっ、そこは……!」

くにゅりと生暖かい音と共に、十神の舌が彼女の耳を這う。軟らかな動きをする舌は耳朶や耳の凹凸を丁寧な動きでなぞり、温かな唾液で彼女の耳と聴覚を淫らに犯していた。

「何を、言っている? 貴様の全ては、俺の、ものだろう。違うか?」

「そ、そうですけど……その、み、耳は弱いので、ちょ、ひゃあっ!」

耳の淵。その上を触れるか触れないかギリギリの力加減でいたわるように、或いは慈しむように滑る舌の感触に腐川の喉からは甲高い声が漏れ出ざるを得ない。

「びゃくやさまあっ! はっ、あっ、はぁあんっ!」

崇高で気高く、気品と誇り溢れる素敵な人。
本来ならば自分のような卑しい身分の虫が手を触れるどころか声を掛けることさえ恐れ多い、世界で一番愛しい人。
そんな素晴らしい人が不細工で、根暗で、他人との会話も上手くできない。取り柄と言えば妄想で書き上げた小説くらいしかない自分を抱いてくれる。
女性の象徴たる美しい胸もない、彼がタイプと言っていたふくよかな体型ではない貧相な体つきの自分。
うじうじとくだらないことで悩み、彼に不快な思いをさせてしまう。
彼の寵愛を受けられても、ほんの一突きされるだけで、はしたなく失禁してしまう。

そんな、ろくでもない自分を十神は気にかけてくれた。
彼女の中に潜む殺人鬼が引き金とは言え、結果的には己の意志で無理矢理に彼を犯した自分を許してくれた。
ぐじぐじと卑屈になり、くだらない、いらぬ気遣いをした自分に荒っぽくも柔らかいキスをしてくれた。
自分のかいた汗に濡れた首筋に甘くて切ない烙印を口で刻んでくれた。
彼の目の前で情けなく失禁して汚物に塗れた自分を抱きしめてくれた。
真っ赤になった耳たぶを優しく食んでくれた。
揚句の果てには愛しくて堪らない彼の子供を産めとまで言ってくれた。

「っ、あぁっ!びゃくやさまぁ! びゃくやさまあああ!
好きっ! びゃくやさまっ、ああっ、あっやっ! しゅき、しゅきなんですう!」

十神がとった、その行動達に腐川という一人の女に対する愛情があったかのかどうか。それが腐川には分からない。
もしかしたら。もしかしたら自分のような屑にも、ほんの少しでも愛情を抱いてくれたのではないか?
そんなものはなんの根拠もない、虚しくて寂しい幻想であるとしても、それでも。
彼女は十神に触れられているという、只それだけのことで不幸と不遇の人生に彩られた人生の中で最高の幸せを味わっていた。
愛しい、愛しい十神白夜と肌を重ねる。
例え、心を重ねられずとも、彼が自分を求めて体を重ねてくれている事実が。
更には彼の子供を産むという、腐川の想像を超える使命を他ならぬ十神自身から与えられた事が、ただただ、幸せだったのだ。
十神の肌へ触れる度、十神の息遣いを感じる度、十神の名を呼ぶ度に彼女の体は様々な感情たちに満たされていく。
快感、興奮、幸福、恐悦、安心感、高揚感。そして何よりも彼への恋心が、溢れんばかりにどんどんと膨張し、少しずつ形を変えていくのが、熱に浮かされた頭でもはっきりと理解できた。
淡くて脆く幼い恋は、情熱的で芯の通った確かな愛へとその形を変えていく。
息が詰まる。
肺が引き攣る。
心臓が怖いくらいに暴れる。
愛しくて、愛しくて。愛し過ぎて気が狂ってしまいそうだった。

十神は腐川と繋がり、抱き合いながら、細くてたおやかな首筋に唇と舌を這わせ、何度も何度もそこに吸い付いていた。
滑らかなシルクの如く白く、柔らかい肌にほんの少し吸い付くと、そこだけに血液が集まり、赤い星のような痕が滲むように点々と残されていく。いくつもいくつも形作られたそれらは、彼女が彼の所有物である証。彼女を縛る首輪にして、鎖だ。

「ぁあっ! やっ、んんっ!」

「……くっ!」

目の前の少女が十神自身の『モノ』であるという証は視覚的にも彼を興奮させ、そんな彼から与えられる微かな痛みと熱い視線、絶対的な支配に腐川の全身がじわりと甘く疼く。

「っ、はっ……はぁっ!」

「びゃくやさま! びゃくやさまあ!」

十神の呼吸音がどんどんと加速しながら乱れ、ストロークは最高速度を迎え、腐川をしっかりと抱いた両の腕に力が篭る。今まで幾度となく体を重ねた経験から、十神の絶頂と行為の終わりが近いことを腐川は薄ぼんやりと感じとっていた。

「あぁっ、そ、こ。はっ、……うっ、んんっ!」

「んっ、ふっ」

絶頂を迎える直前の速くて重い、根強い衝撃が彼女の膣内をずんずんと絶え間無く穿ち、こそばゆいような甘い痺れを体中に広げていく。
どちらからともなく執拗に唇を重ね、濃密な口づけを交わす。ぬるりとした舌を絡ませ、粘度の高い唾を掻き混ぜ、生温い吐息をどこまでも深く吸い合う。互いの何かを、形にも言葉にもならない何かを確認しあうかのような、そんなキスだった。

「んんっ! はっ……んっ! んっ……んんっ! 」

それだけで、彼女はいとも簡単に浅い絶頂を迎え、己の体に納まる十神のシンボルをきつく、それでいながらどこか柔らかく、ぬるりと締め上げ、扱く。

「っ……そろそろ、いくぞっ」

それが決定打だったのか、十神の肉棒はひくひくと弾むように脈打ち、亀頭がより一層膨れ、睾丸は競り上がり、淫らな雌の中に己の精を放つ準備を終えた。

「は、はい! 出して、出してくださひ! いっぱい、たねつけ、してぇ!」

「はっ、……あっ」

汗、愛液、潮、カウパーなど。二人の様々な分泌液がミックスした液体の洪水で、もはや結合部はびっしょりと濡れており、淫靡で馨しい毒のような薫りがゆらゆらと立ちのぼる。

「びゃっ、びゃくやさまっ! 出してぇ! わ、私の中に全部っ、全部出してぇ!
びゃくやさまの赤ちゃん下さいぃ!!」

「……っ、ぐ」

彼女は懇願しながら、余り念入りに手入れされていない為か、妙に長い腐川の爪が十神の背中に強く立て、血による赤い筋を生み出した。
強く、渇望するように抱き合いながら遂に十神も長い性交の終わりを迎える。

「……ふ、かわぁっ!」

小さく呻くように名前を呼びながら彼は彼女の膣内、そこの最奥へ腰をより一層深くに自らを打ち込み、腐川の子宮口をノックした。
腐川の子宮口をこじ開けんばかりに押し当てられた十神の陰茎がびくんと一際大きく、力強く跳ね、先端から白い濁流がすさまじいまでの勢いで溢れ出す。
体内の奥深くで己の子宮をぱたぱたと打つ子胤の感触。そして温度。
腐川はそれを感じ取った一瞬、思わず硬直した。

「……っ! っ、……っ!!」

声にならない嬌声の絶叫と共に、最高潮の絶頂を迎えた彼女は酸素を求めるように口を開閉させながら、びくびくと体中を痙攣させる。
どくどくと勢い良く吐き出される子種はあっという間に腐川の子宮と膣内を蹂躙していた。

「っはぁ……はぁっ……」

「んっ、はぁっ……」

激しい行為は唐突に終わり、ぜいぜいと荒い呼吸がお互いの体へ染み入るように響く、どこか物悲しい音を聞きながら二人はゆっくりと目を閉じ、疲労によって大いに倦怠感を孕んだ意識を手放そうとしていた。
瞼を閉じて、ぼんやりと感じ取れるのは、じりじりと肌を温める熱と、緩やかになっていく呼吸音と、そして―――。

.....

...

.

目を刺すように眩しい日差しが燦々と侵入するホテルの一室。ダブルサイズのベッドの上で十神白夜はゆっくりと覚醒した。
今の今まで彼が横たわっていたそこには、昨夜の激しさを物語るように皺が寄り、妙な湿り気を帯びたシーツがへたばるように張り付いている。

「…………」

その白いシーツの中へ沈み込むように裸体の少女が眠りに落ちていた。
閉じた瞼から伸びる睫毛は朝日に照らされることで目元に形の良い影を落とし、緩くウェーブがかっているほつれた黒い長髪が純白のシーツよりも尚一層白い裸の肌に幾筋も張り付き、彼女の体を優しく包む。
それだけ見れば、臈長けた一つの芸術品のように美しい少女であるのだが、ずり落ちて顔面を斜めに横断している眼鏡や口元から垂れ落ちる涎が、彼女の寝姿から品格を根こそぎ奪い取っていた。

「……うへ、うへへへ」

おまけになんの夢を見ているかは知らないが、大変だらしの無い寝言を呟いていれば尚更である。

「…………」

十神はゆっくりと体を起こして眼鏡を掛けると、しげしげと彼女の体を観察する。
細い腕、長い爪、薄い腹、小振りな乳房、華奢な腰回り、痛々しい傷が刻まれた太腿、そして小さな赤い痣が幾つも残る首筋。
脆弱で今にも儚く消えてしまいそうなそれらは純白の中で呼吸に合わせて小さく上下していた。

「…………」

大量のキスマーク。
十神はそれを腐川への烙印と言ったが、それは同時に十神への枷でもある。
薄桃色に染まる痣達は十神の寵愛の証であり、彼が腐川と関係を持っていることの証でもあるのだ。
仮にも『超高校級の殺人鬼』をその身に宿している腐川を近くに侍らせているという事実は世間一般に見ても好印象になるわけがない。揚句には彼女が十神の子を身篭ったとなれば尚のこと。
どう足掻いても彼女が近くにいることは彼の立場からすればマイナスにしか成り足り得ない。

「……ふん」

それでも彼は目を細め、口元を吊り上げて不敵に笑う。自称『超高校級の御曹司』には丁度良いハンディキャップだと言わんばかりに。
あの『絶望の高校生活』をゲームと言い切った彼に不可能も逆境もありはしないのだ。例えば、万が一にも有り得ない仮定の話として、彼女を娶ったとしても、その自信は一寸たりとも変わりはしないだろう。

「びゃくやさまぁ……」

未だに眠り続けている腐川の口から十神の名前がたどたどしい呂律で紡がれる。
その寝顔を眺める十神の顔はどこか安らかで優しい、

「……んへへぇ、いがいとあまえんぼうなんれすねぇ、びゃくやさまぁ~」

その言葉を聞いた瞬間、十神の顔から安寧さは正に瞬く間になりを潜めて、今にも舌打ちしそうな程に歯を食いしばりつつ眉間に深い皺を刻み、忌ま忌ましいと言わんばかりの表情を浮かべながら柔らかな女体をベッドの外へと蹴り出した。