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「苗木、く…うぁっ…ま、待って!待ってくださ…んっ!」
『これ、アナルワームって言うんだ。たこの足みたいにグネグネしてるでしょ?』
「ふっ、う、ん!…ぐっ…!」
『あ、そんなこと言っても目が見えないんじゃ伝わらないか。それともお尻の穴で感じてる?』

 ずるずると容赦なく入り込んでくる異物感を、舞園は必死に耐えた。
 耐えることしか、出来なかった。
 苗木の声に支配され、力を入れて踏ん張ることも出来ない。
「苗木君…っ、う…やめ、て…くださ…っ!」
『やめないよ。舞園さん、気持ちいいんでしょ?』
「そんな、こと…っ、あ゛ぁっ!!」

 無抵抗な肛門に、弾力のあるゴムの紐が押し込まれていくのを、他人事のように感じているだけ。
 ふと気を緩めると、コブが入口を出入りするたびに頭がおかしくなりそうだ。

「ふっ、も、もう、入らない、です…っ、う、んっ…」
 小刻みに口から息が漏れ、まともに喋ることもままならない。
『大丈夫、まだ入るよ。もう半分だから、頑張ってね』
「やだ、っふ、あ…やめ、て…!苗木君、お願いです…!」

 舞園の中では、既に自分の相手はセレスではなく愛しの苗木誠であり、そしてその効果は見るに明らかだった。
 口ではどれほど抵抗の意を示しても、体は火照って汗ばみ、女の部分は刺激を求めてひくひくと震えている。

 苗木にされていると思うと、体は抗えない。
 苗木にされていると思うと、期待してしまう。

「お願い、もうやめて…!」
 お願い、もっとして。

『こんなんで気持ちよくなっちゃうなんて…エッチだね、舞園さん』
「違う、違い、ます…うぐ、っあぁ…!」

 何を言おうとも、何を思おうとも、それが彼の意に介するはずなどなくて。
 舞園の喘ぐ声など、まるで耳に入っていないかのように。
 動物の命をもてあそぶ残酷な幼児のように、苗木の声は舞園を凌辱し続けた。


「か、はっ…は、はぁ、ふぅう…っ」
『すごいね、全部入ったよ、舞園さん』
 彼がそうはしゃぐ頃には、腹で息をするのが苦しいほどに圧迫されていた。
 少しでも肛門に力を入れてしまうと、息苦しさは倍増する。
 体中から力を抜いた無防備な状態で、舞園はベッドに伏していた。

『ねえ、胸さわっていいかな…?』
「う…ふぅ、っ…ふ、う…っく…はぁ、はぁ…」
 答える余裕は、残されていなかった。考える余裕すらも、今の舞園にはないかもしれない。
 セレスの用意した胸専用のローターのせいで、さっきまで埋もれていた彼女の乳首は外気にさらされている。



 目隠しの向こうでは、心底愉快そうにセレスが嘲笑っていた。
 苗木の声を真似ただけで、こうも露骨に反応が変わる…それは、セレスの目論見通りだった。

 朝日奈の時と同様、セレスは今回も催眠暗示を用いていた。

 人には、それぞれ最適な催眠内容というものがある。
 スポーツ選手として体を動かす機会の多かった朝日奈には、「身体の自由を奪う催眠」をかけたように。
 苗木に憧れる舞園には、「苗木によって凌辱される催眠」が効果的なのである。

 なぜならこの「苗木によって凌辱される」という設定は、過去に舞園が頭の中で再現したであろう映像だからだ。
 きっと妄想の中で、苗木の手によって犯される自分を思い、もしかしたら自慰に耽ったこともあるかもしれない。
 だからこそ舞園の脳内は今、より忠実な「苗木によって犯されている自分」を作り上げ、認識してしまっている。


 アナルワームの全てのコブが彼女の中に入りきった後、セレスはあえてそれを弄らずに、再び胸に手を伸ばした。
 直腸がワームの形に馴染むまで、そこには手をかけない。
 アナルの管轄は朝日奈に任せ、セレスは再び敏感すぎる舞園の胸を弄ぶことに決めた。

「胸っ、やぁ…!許してぇ…もう胸で…っく、ふ…イきたく、ないです…」

 舞園の懇願をも嘲笑い、セレスの――舞園にとっては苗木の手が、指が、焦らすように彼女の肌を這いまわる。
 尻を撫でまわしたかと思うと、腰から脇腹を伝い、背中へ、脇へ。
 触れるか触れないかのフェザータッチが、それでも確実に胸に近づいてくる。
 舞園は、その快感と恐怖に、身を震え上がらせた。

「ふッ…あ――!!」
 ただでさえ敏感になった肌が、苗木の指に触れられている。
 催眠は時間を追って、深く深く舞園を浸食している。
 目隠しによって覆われた彼女の眼には、既に鮮明な姿となって、自分の体を弄ぶ苗木の像が浮かんでいる。
「苗木、君ッ…あ、ん……っ!!」
 口が名前を紡ぐたびに、苗木の幻は穏やかに頬笑み、舞園の背徳を煽る。
 舞園は、自分自身の妄想に犯されている状態にあった。

「は、や…ぁ、あ、…ひぅっ…!」
 ようやく胸に辿りついたかと思えば、その指はけっして乳首を責めずに、舞園の豊かな乳房を撫でるばかり。
 果実のように、張りを保ちながらも垂れ下がるたわわな胸を、セレスは玩具のように弄ぶ。
 肌を撫で、軽く握って形を歪ませ、双房を別の方向へ引っ張り、かと思えば急に手を離す。
 直接触れられているわけでもないのに、もう止めてほしいのに、
 舞園の乳首はそれだけで、意思と反して膨らみ、柔らかな弾力を帯びる。

「んっ、ひ、う……ふぁっんっ…!」
 時々乳首がシーツと擦れて、それだけでも甘い声が漏れてしまう。
 刺激に弱い上に、この状況も相まって、彼女の乳首は今はクリトリス並の性感帯となってしまっている。
 そしてそんな反応を、目ざといセレスが見逃すはずもない。

『あははっ、舞園さんってば、胸をシーツに擦られて気持ちいの?』
 乳房の根元を掴まれ、シーツを洗濯板のようにして、ごしごしと胸の尖端をこすりつけられる。
「ひぁっ、あ、あぁっ…!!」
 再び訪れる、純粋な快楽。膣が締まり、それと連動して肛門も締まり、ワームがゴムの弾力を訴えてくる。
 苦しさと性感の狭間に舞い戻され、舞園はうめき声をあげた。

『シーツに乳首こすりつけて興奮して感じちゃうとか…
 まるで小学生が初めてオナニーを発見したみたいなシチュエーションだよね。
 アイドルの舞園さんにも、そういう時期はあったのかな?』

 苗木の問いは届いているのかいないのか、舞園は少しでもシーツと距離を取ろうと、背筋をピンと反らせた。
 ジンジンと、摩擦による熱と快楽が胸の尖端から脳を焼き切ってくる。
 このままでは、頭がおかしくなってしまう。
 しかしそんな抵抗も、もはや無意味。
 苗木の手は胸を絞る様にして、シーツに向かって乳房を押し出し、その先端を擦りつけてくる。
 すぐに舞園の体から力が抜け、ピクピクと小刻みに震えながらシーツに再び伏すこととなった。

「らめ、乳首、らめぇえぇ…ふゃあぁ…」

 擦られて、ものの数分。
 様々な刺激の波濤が押し寄せ、もう呂律も回らない。
 幾度目かの乳首での絶頂に、否応なしに押し上げられつつあった。

 胸全体に走る、痺れと熱を帯びた快楽が、どんどん下腹部に溜まり、溢れだしてくる。

「いやぁ、っ、んっ!…い、イっちゃう…苗木君の、前で…イっちゃうぅ…!」

 先の二回の、電気がほとばしるような鮮烈な絶頂とは対照的に、

「んぁ、ふあ、あぁああああぁぁぁあああぁぁぁ――っ!!」

 まるで泥沼に倒れ込むように、ねっとりとした絶頂に、舞園は達した。


「――-っ!!…っ、っあ、っ!……あぁあ……あぅ…」
 強烈な余韻が、まとわりつく泥のように、絶頂に達した後の彼女の体をむしばむ。
 イった後も、貪欲に刺激を欲しているのか、花を散らした秘部がヒクついている。

 舞園自身も泥のようにベッドに臥し、目を閉じればそのまま気を失うように眠りについてしまうだろう。


 もちろん、セレスティア・ルーデンベルグを相手に、そんな甘えた考えが通じるはずもなく。


「…ひっ!!?」
 泥から引きずり出されるようにして、再び舞園が勢いよく背を反らせる。

 肛門の中に入り込み、ジュクジュクとローションを纏っていたアナルワームが、
 いきなり外側に引っ張られたのだ。

 絶頂から覚めきれない舞園の膣が、その強烈な刺激を知覚して収縮するたびに、連動してアナルも締まる。
 そしてそれが、無自覚にも舞園自身の体を苦しめてしまう。

 釣り餌に食いつく魚のように、く、く、と断続的にアナルワームが引っ張られ、
 そのたびに収縮した肛門が、緊張を緩める反動で、アナルワームを肛門に引きずり戻そうとする。
 入り口で繰り広げられる押し問答に、舞園は掠れたような喘ぎ声を出した。

『もうすっかり、アナルがワームの形に馴染んじゃってるね。もう入れてること自体は苦しくないでしょ?
 今ちょっと引っ張ったら、肛門が一緒に引きずられて、その反射でワームを内に戻そうとしてるのは分かるかな?
 そのたびに入口が擦れて、もう気持ちよくなっちゃってるよね?

 …じゃあこれ、肛門が引きずり戻す暇もないように、途中で止めずに引っ張りだし続けたら…どうなると思う?』

 カッと、熱いものが舞園の背中を駆け巡り、そして同時に、急速に血の気が引いて、寒気を感じた。
 朝日奈に指をねじ込まれ、それをねちっこく抜かれた時の、なんとも言えない快感が、頭の中に甦る。

「ダメ…!…ダメ、ですっ……頭、おかしくなって…死んじゃいます…」
 歯を噛み鳴らすほどに震えながら、舞園が訴える。
 苗木の声は、陽気にクスクスと笑うだけだった。




 目隠しとヘッドホンの外で、舞園の痴態に当てられた二人が、頬を上気させている。
 セレスは胸から手を離し、舞園の腰と、アナルワームに手を添え、朝日奈に耳打ちした。

「私が合図したら…舞園さんのおま○こを、力いっぱい吸ってあげてください」
「へ?」
 あまりの興奮からか、犬の真似事をしていたことなど、朝日奈もセレスも忘れてしまっている。

「で、でもそんなことしたら…」
「私が合図を出すのは、彼女が絶頂を迎えた時です…アナルだけでイけたら前も弄ってあげる、そういう約束ですわ」
「舞園ちゃん、死んじゃうよ…!」
「そんなに簡単には死にません。まあ、あなたが拒むのでしたら…5、4、3、2、1…『ゼロ』」

「――ひぐっ!!」

 忘れていた唐突な絶頂が、心の準備すらしていなかった朝日奈を打ちのめした。

「あ、あはッ…あ、あぁああ…」
 舞園以上に、カタカタと奥歯を噛み鳴らして、朝日奈は震える。
 短時間で強制的に味わう絶頂に快楽などなく、鈍痛にも似た衝撃が下腹部を殴りつけるだけ。
「嫌だというのなら、強制はしませんわ。3、2…」

「わ、わかった、やる!やります…っ!」
「…ありがとうございます。持つべきものは、従順なペットに限りますわ」
 妖艶に笑って見せたセレスの真意は、朝日奈にはわからなかった。



 ずるり

「――ぃぎっ!!」
 生々しい音を響かせて、アナルワームが内側ごと、外に引きずり出される。
「っ、あぁ、あぁぁぁあぁぁぁっ!!!」
 たまらずに舞園は、獣のような叫び声をあげた。

 強制的に排泄させられているような、内側の皮膚が引っ張られているような。
 痛みや苦しみとは、似ているようで違う快楽。
 あまりの感覚に肛門が勝手に締まり、それを更に増長させてしまう。

『ほら、力抜いてないとキツいよ?』
「そ、そんなっ、こと…っぐ、ふっ、ぅあああああっ…!!!」

 下手にアナルを締めてしまうせいで、コブが反動をつけて、勢いよく外側に引きずり出される。

「いやっ、いやぁあああぁあはぁあああっっ――!!!」

 二つ目のコブが、ぬぷ、と滑稽な音を立てて飛び出したところで、あまりにもあっけなく、舞園は達した。
 そしてそれは、彼女にとっては最悪な展開だった。
 なにせ、まだ『二個目』だったのだから。

「あ、ひぐぅあっ!!?ふ、うぁあああぁあああっ!!」

 アイドルだった舞園さやかは、もうどこにもいなかった。
 ベッドの上で獣のように吠えるのは、逃れられない未知の快楽によがり狂う、ただの少女。

 舞園が絶頂しても、それでワームが終わるわけではない。
 以前として同じペースで、それは引きずり出され続ける。
 そして、

『アナルでイけた?おめでと。それじゃ約束通り、弄ってあげるね』

 何を、とは聞かずとも理解できた。
 いや、今自分の頭がそれを理解しているかどうかも定かではない。
 快楽を感じて、吠えるように喘いでいる自分は、どこか遠くの存在のように思えた。
 別の視点から、そう、まるで幽体離脱でもしているかのように、舞園は冷静に自分を見ていた。



 全てわかっていた。
 苗木の真似をしているセレスのことも、今にも泣き出しそうな顔で彼女たちを見ている朝日奈のことも。
 けれど耳に届くのは苗木の声で、だから彼女にとってはそれが現実で。

 もしかしたら最初から、自分が堕ちるのに、苗木の声など関係なかったのかもしれない。
 もうとっくに自分は堕ちていて、けれどアイドルという肩書がなんとか自分が壊れるのを堰き止めていた。
 ともすれば、苗木の声はただのスイッチ代わりだったのだろう。

 どこから自分は堕ちていたんだろう。
 アイドルを目指した時からだろうか。
 メンバーと体を合わせた時からだろうか。
 この学園に入学してからだろうか。

「いやぁあはああぁあああっ!!苗木君、ああぁああぁあっ!!」

 クリトリスを舌の上で転がされ、膣にディルドーをねじ込まれ、ワームを内壁ごと引きずり出され。
 意識が途切れるその寸前まで、舞園は吠え続けた。

 アイドル。夢。仲間。学校。苗木君。好きな人。
 もうどうでもいいや。私は最初から堕ちていたんだ。

「ん゛ぁあああっあああ!!!気持ちいい、気持ちいいですぅううっぅあああっっ――!!!」


 ブツン。








「はぁ、はぁ…っ、はぁ……」

 運動をしているわけではないのに、どんどんと呼吸が荒くなっていく。
 自分が何をしでかしたか、頭のどこかでは理解していても、それを止める術はなかった。

「あら、壊れてしまいましたわね」
 自分は、目の前のこの悪魔に屈したのだ。そして、あまつさえ舞園を巻き込んだ。
「さて、どれを使って起こしましょうか…」
 セレスが道具箱を漁る。

 朝日奈は、ベッドの上でまだ震えている舞園に目をやった。
 締まりを失くした肛門は、ずっと広がったままで、奥の内壁まで丸見えだった。
 腰は痙攣している。汗や涎や愛液が体中を濡らし、蛍光灯の光を反射している。
 ヘッドフォンと連接した目隠しを外してやると、ぐる、と上向きになった瞳が表れた。

「…何を勝手にいじっているのですか?そんなことを許可した覚えはありませんが」

 自分が何をしでかしたか、理解はしていた。
 彼女を巻き込んだのは、自分だ。
 だから、もうこれ以上はダメだ。
 これ以上、この悪魔の毒牙に、彼女を脅かさせてはいけない。

「…もう、やめてよ」
「は?」
「もういじめないでよ…」

 舞園の手錠と足枷を外し、セレスとの間に割って入ると、朝日奈はそう告げた。
 そして、意を決してセレスを睨みつける。
 温度を感じさせない冷たい瞳がこちらを見ていて、気圧されそうになる。

「ペットの分際で何を――」
「私はペットじゃない!舞園ちゃんも、おもちゃなんかじゃないよ!!」
「『ゼロ』」
「ん、あ゛っ…!!」

 冷たい瞳に、絶頂を告げられる。

 ぎゅ、と膣が収縮し、体中を慣れた快感が駆け巡り、朝日奈は前のめりに崩れた。
 悔しさで、涙が出そうだった。
 セレスに逆らえないことの悔しさ、気持ちいいと感じてしまっていることへの悔しさ。
 唇を噛みしめると、血の味が滲んだ。

 セレスは絶頂を与えたものの、何食わぬ顔で…というよりは、少し困ったような表情を朝日奈に見せた。

「…まあ、今のあなたには信じてもらえないと思いますが…舞園さんは、おもちゃ扱いしているわけではありません。
 あなたをペットと称すのも、別に何も蔑んでいるわけではありません。
 いつか言ったでしょう?あなたを見ていると、つい虐めたくなってしまう…でも、嫌っているわけじゃない。
 …私が真に敵と見定めたのは、あの忌々しい女ただ一人ですわ。あなたたちには、あの女を落とすための――」


 セレスは喋り続けていたが、朝日奈はまともに聞こうとは思わなかった。

 狂っている。目の前のこの女は、狂っているんだ。
 もうこれ以上、犠牲者を増やしちゃダメだ。

「とにかくもう、舞園ちゃんに酷いこと、しないで!私はどうなってもいいから…!」
「…あなたは何か、勘違いをしているようですわね」

 するり、とセレスの体が、ベッドの上の朝日奈にすり寄ってくる。
 脳は全力で警告音をあげていたが、絶頂を迎えたばかりの体が逃げ出せるはずもなかった。
 いやらしい手つきで、胸や足をまさぐられ、悲鳴を上げそうになるのを何とかこらえ、セレスを睨みつける。

「あなたに舞園さんの代わりが務まるわけでも無し…私が舞園さんにしているのは酷いことでも無し。
 夢の中だけでも、愛しい彼と交わらせてあげたのです。現に彼女は、最後は『笑っていた』じゃありませんか。
 …それに、その夢ももうすぐ現実に…」

「まさか…苗木まで巻き込むつもり!?」
「だとしても、あなたに何か関係があるのですか?」
「関係あるとかないとか…そういう問題じゃないでしょ!?」
「…小うるさい犬だこと」

 温度のない目に覗きこまれ、朝日奈は怖じ気づきそうになる。
 けれどダメだ。せめて気持ちだけでも、この女に屈服してはいけない。

「…では、そうですね。またあの賭けでもやってみましょうか?
 私があなたを好きなように責めるので、あなたはそれに耐えてください。
 途中であなたが『参った、降参、もうやめて』の類の言葉を発すれば、あなたの負け。
 あなたがこの勝負に勝てば、苗木君や…他の人を、巻き込まないと誓いましょう」

 それは、最初から負けるために与えられた、朝日奈へのチャンス。
 勝ちの条件が記されない、ただセレスが朝日奈を弄ぶためだけのもの。
 それでも朝日奈は、そのチャンスに縋らないわけにはいかなかった。


 沈黙を肯定と受け取ったのか、セレスの細い腕が伸びてくる。

 朝日奈の運動能力なら、それを避けることも、叩き落とすことも出来ただろう。
 けれど、意味がない。受け入れなければ、勝負にはならない。そして、腕からは逃げられても、言葉からは逃げられない。

 セレスは狩人。自分は獲物。
 セレスはその気になれば、いつでも自分を落とすことができる。
 それをすぐしないのは、強者の余裕。


 蛇のように、くねくねと腕が、手が、指が、朝日奈の体を這いまわる。
 虫に這い寄られるような怖気すらも、脳は強制的に快楽として感じ取ってしまう。


「さあ…それではまず小手調べに、『100からカウントダウン』、行きましょうか」

「――――」







 至って、容易かった。


 ベッドの上に横たわる二人を、頬を上気させてセレスは見ている。


 舞園は、セレスが手を下す前からすでに壊れていた。
 レズの気もあり、おそらくかなりのマゾヒズム、そして苗木の催眠にも屈した。
 自分の色に染めてやった今、次に目を覚ませばセレスの従順な傀儡と化しているだろう。

 そして、先ほどまで妙な正義感を振り回していた朝日奈も、身体を震わせながら泣きじゃくっている。
 二回も『100からカウントダウン』に耐えたのは、正直驚いた。それほどの決意だったのだろう。
 けれど、寸止めに弱い彼女は、その後の『1でカウント停止』には耐えきれなかった。
 しばらく触れずに放置しておけば、存外すぐに降伏してしまったのだ。


 まあ、とにかく。
 駒は準備できた。

 これで、布石は完璧だ。


「――ふ、ふふふ」

 ヘッドライトの身が付いた部屋で、セレスは独りごちる。

「あとは苗木君を引き抜けば…まあ、彼を騙すのは容易いでしょう。馬鹿みたいにお人好しなのだから…」


 あの女をねじ伏せる、人質という名の傀儡。

 一人は、肉欲に支配され、セレスの言葉には逆らえない体力馬鹿。
 一人は、レズの気もある、苗木に対して盲目となった壊れたアイドル。
 一人は、彼女たちの心をつかんで離さない、純朴な少年。


 これで、そろった。


 彼女を、あの澄ました仮面を顔から剥がし、泣き叫ばせるための道具。


「――待っていなさい、霧切響子…ふふ、うふふふふふ、うふふはははははっ…!!」


 魔女のような高笑いが、部屋の外に漏れることはなかった。