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攪拌


僕には、彼女への愛情表現の仕方が分からなかった。不慣れ、というのも当然あるだろうけど…それ以前に、彼女という人間についての理解があまりに乏しいのだ。
それを知るにはどうすれば良いか、それさえも僕には分かりかねた。コインランドリーに備え付けられた若者向け雑誌を読んでみても、彼女のような女性の攻略方法など無い。
だから、僕は、


「苗木君。…この状況、説明してくれるかしら。」
「見ての通りだよ、霧切さん。」

彼女の表情に、困惑の色は見えない。依然として平生を保っている。服を着たまま寝台に大の字で縛り付けられ、その手足首には痛々しい縄の跡。どうやら僕がいない間に色々と試したらしかった。その事実が、僕を一層情欲へと駆り立てる。
恍惚と緩む口許を一瞥した彼女は、憂鬱げに鼻から呼気を逃した後、ゆっくりと瞳を閉じた。

「もう諦めちゃうんだ。僕としては、もう少し抵抗してくれた方が良いんだけど。」
「いいのよ、もう。――…貴方の歪んだ嗜好に付き合うのは少し骨が折れそうだから、遠慮したいの。」
「歪んでなんかないよ。僕は、君が好きなんだ。」
「…無自覚だなんて、救えないわね。」

何気無く触れた白い頬は、微かに汗ばんでいた。そのまま目蓋の方へと指先を滑らせると…僅かに身体が震える。

「へえ、怖いんだ。霧切さん。」
「…その指、噛み千切ってもいいのよ。苗木君。」
「それ、いいね。」

彼女が言うなら、実際にそうするのかもしれない。でも、そんなことはどうでも良かった。
懐から取り出した注射器を、有無を言わせず首元に打ち込む。恐怖からか、今度は露骨に震える身体を慰めるように、後から滲んできた血を丁寧に舐め取った。

「…今の、…貴方…」

何か言いたげにもごつく口許へ、指を四本ほど突っ込む。喉奥まで入れてしまったせいか、苦しげな嗚咽が漏れたが、歯を立てられるようなことはなかった。
彼女にとって、この状況は焦眉の急に満たないのかもしれない。けど、それで良い。
そのまま片手で優しくネクタイを下げ、シャツのジッパーを降ろす。覗く純白の下着は、彼女の真っ白な肌と同化さえしそうな、艶やかな色合いだ。

「うっ、え…っ、なえ、ぎ……――」

最早呻き声に近い悲痛な声に、全身の神経が歓喜で伸縮するのが分かる。
先の薬の効果だろう、次第に紅潮する頬とふやける目許は、薄らと開かれ――僕に鋭利な視線を送る。冷やかであれば尚よかったが、そう取り繕うだけの余裕はないらしい。明らかな怒気が孕んでいる。

「ねえ、霧切さん。…君は、僕のことをどう思ってるの?…なんて、僕は聞かないよ。だって、意味のないことだから。」
「…―――っ、げっ、うぇ…――最低、ね。あな、た…。」

口許から引き抜いた指先に纏わりつく唾液が、淫靡に糸を引く。

「一つだけ聞きたいんだけど…前戯っているのかな?僕、経験ないからよくわからなくて。」
「…っ、ここまで一方的な行為に、前戯も何も…」
「そっか。」

もう、待ちきれない。荒々しく捲り上げたスカートの下には、先のブラジャーと同色の肌着が覗く。…けど、少し湿っているような印象を受ける。

「へえ…濡れちゃってるね。こんな状況下で興奮するなんて…」
「いいから、早く…――っ、」
「厭らしく、ねだってみてよ。…今は自分を偽る理由も無いじゃない。」
「…、…。」

わなわなと震える唇は、自分のプライドとの葛藤を露骨に表していた。…別に、今のが啓発だったわけではなさそうだ。
彼女は一度下唇を強く噛み締めた後――その無意味な反芻を止め――"生物"としての欲求を露わとした。

「…っ、挿入、…―――しなさい。」
「ごめんね、聞こえない。」
「挿入して、くだ…さ…―――」

僕は、従容めいた嘲笑を無言で浮かべた後――見た目と反して凶悪な"それ"を取り出した。こんな物でも、今の彼女なら慰藉になり得るだろう。

「ね、これ。何か分かる?」
「そんなっ、こと…、んっ、どうでも――…こけ、し…?」
「よく分かったね。…はい、ご褒美。」
「え、嫌っ、ちょっと…―――あっ、んあああああああああ!!」

対してほぐしてもいない彼女の恥部には、些か無理のあるサイズだったのだろうか。予想通り、そこから流れ出る微量の血液は、彼女がたった今"女"と成り下がった事を意味していた。
至極悔しげに歯軋りをする彼女の瞳からは、一粒、二粒と、涙が零れ出る。これが忸怩による物なのか、快感による物なのか。そんなことはどうでも良い。
僕は手近なコンセントとそれを、手際よく接続した。

「あ、あ、…っ、おえっ、…―――貴方の、こと…っ、少しでも、…好きだった私が…馬鹿、だったの…?」
「そうかもしれないね。」
「い、嫌、あう…―――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、や゛め、でええええええっ……!!!」

電源を入れるなり、彼女の身体は、陸に揚げられのたうち回る魚の様に、溌剌と跳ねた。しかし、縄の束縛のせいで、腹部のみが天へと高く突き上げられる。
そんな彼女のことなど一切意に介さないそれは、無慈悲なまでに震動を加え続ける。

「まあ、とりあえずは…このままにしとこうかな。安心してね、霧切さん。それ、電池式じゃないから、途中で切れちゃうこともないよ。」
「あっ、あ、あああああ、あああ…っ、ああああ…」
「…ははっ。なんて、聞こえてないか。じゃあね、霧切さん。」


僕はゆっくりと、その場を後にした。下劣な欲望のままに身を捩らせる、彼女一人を置いて。