4_392-401,403-407

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苗木(チョコレート……14人みんなからこんなにも貰っちゃった。まあ、ボクからも渡したし、お互い様なんだけど。    流石に腕一杯溢れんばかりのままって訳にも行かないし……一端自室に戻ろう) 黒幕「……苗木誠クン!バァー!」 苗木「!?あ……。いきなり姿を現してビックリさせるなよ!みんなから貰ったチョコレート、床にぶちまけちゃったじゃないか!    ………ふう、良かった。潰れてもないし、割れてもいないみたい」 黒幕「うぷぷ、今回は驚かし具合をちゃんと計算したからね。まあ、今日はバレンタインデーだし?    今日に限っては色々と大目に、寛大に行こうと学園長は思ってますからね!」 苗木「……………。………そんなことよりも、モノクマ。お前、ボクに用があるんじゃないのか?だから、こうして出てきたんだろう?」 黒幕「キラーン☆その通り!」 黒幕「苗木クン、手を出して。はい、コレ」 苗木「………これは……何?」 黒幕「何って、見ればわかるでしょ。チョコレートだよチョコレート」 苗木「……………」 黒幕「もうっ!何でそんな疑惑の目で見るの!!   理由はわからなくもないけど、コレに変なモノなんて混入してないよ!!」 苗木「チョコレートは……他のみんなにも?」 黒幕「……モチのロン、他の生徒にも配布するつもりだよ。…………って、え?……苗木クン??何でボクが渡した奴のリボン解いてるの?」 苗木「何でって……それは、中身を食べる為だよ」 黒幕「え、こんな所で食べちゃうの??よりによってボクからのを!」 苗木「校則に引っ掛かる訳でもないし、ボクが何処でお前のを一番に食べようがそんなの勝手だろ?    ……それとも……お前の反応からして……やっぱり……」 黒幕「な、ないない!異物混入なんてそれだけはない!!」 苗木「じゃあ、問題ないだろう。……さて、お前が用意したチョコレートはどんなものかな。 ……………。………!」 苗木(一見、何処かの高級店に置いてありそうな様々なチョコレートの詰め合わせ。でも、よく見ると……これって………。………食べてみよう) 黒幕「あわわわわ、ドキドキ!」 パクッ……ポリ……ポリ…… 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「………お味の方は……?」 苗木「――― 美味しい………」 苗木「このチョコレート……美味しいよ!」 黒幕「……………!………えっへん。あったり前でしょ!   だってボクは希望ヶ峰学園の学園長だよ!!   生徒を喜ばせるチョコレートを用意出来るのは当然!!   ………キミがこんな反応を示すなんてことは、予め想像はついてた………って、え………?何してるの、苗木、クン……?」 苗木「お前の前にしゃがみ、キミの頭、モノクマの頭の上に自分の手を置いている。そして……撫でている」 黒幕「何で……」 苗木「本当はボクからも渡せれば一番良いんだろうけど……生憎、14人分しか用意してなかったからね。……ボクの撫でるで我慢して」 黒幕「………そうじゃなくて……!」 苗木「?」 黒幕「なんで……なんで……普通にボクの頭を撫でていられるの?」 苗木「『オマエラ15人をこの学園に閉じ込めた、そして、この状況に陥らせた張本人、黒幕』   『これとは真逆なことをされるのならまだしも、こんなことをされる筋合いはない』……とでも考えてるのかな。    ………大丈夫……忘れてないから。お 前 の お か げ で 忘 れ ら れ な い か ら」 苗木「勿論、ボクがオマエに抱いてる感情だって変わってない。    今でも結構きてるけど……これ以上のことがあったら……ボクは……―――     何、正義感抱いてるのなんだのお前は言い捨てそうだけど……ボクの取る行動は変わらない」 黒幕「…………それなら、尚更だよ。なんで、そんな感情を抱く苗木誠がボクの頭を撫でていられるの」 苗木「それは――――――――――― 今日が、バレンタインデー……『聖なる日』だから」 苗木「詳しい起源とかは知らないけど……この日に込められた意味とか想像してみると、こんな時までこんな張りつめた関係でいるなんて、嫌だな……そう思ったんだよ。    …………別に、お前とボクは親しい間柄じゃない、感謝するされる筋合いもないけれど。今日くらいは……こんなのも良いと思って」 黒幕「……………つまり、簡単に言えばそんな訳だから、今日は休戦、みたいな?」 苗木「そういうことになるね」 黒幕「……………」 苗木「どうだ、モノクマ。この理由、ボクがこの行為をしてる根拠になるだろう?」 黒幕「……………。………うぷぷ、うぷぷぷぷ……それは面白いね。良いーでしょ。苗木クンの言い分を認めましょう。    ………じゃあ、今日はお互いに休戦ってことで!    この日に限ってはボクが苗木誠クンに撫でられてるこの状況も何もおかしくない訳だね!」 苗木「………うん」 黒幕「うぷー、うぷぷぷぷぷぅ♪」 苗木「何だよ、凄い上機嫌みたいだな」 黒幕「………こらこら、手の動きが止まってるよ……!ボクの分、用意してなかったんでしょ?だから、その分ちゃーんと撫でないと!!」 苗木「はいはい……ほら――――」 黒幕「……………。………………………。………………………………………」 苗木「さっきからずっと撫で続けてるけど、その間、無言だね…………気持ち良いの?」 黒幕「気持ち良い?『ボクはモノクマだよ』、そんな訳ないじゃん。    ……………ただ、ちょっと考え事してただけだって    ……まあ、どうでもいいでしょ、そんなこと!!えい!」 苗木「って、うわっ!!」 黒幕「うぷぷぷぷ、油断したね。見事、ボクに押し倒されちゃった苗木クンにはおしおきです!!」 苗木「……!?」 黒幕「はい、ぎゅーーの刑!!」 苗木「……………。………………―――――」 黒幕「………どしたの?唖然としちゃって」 苗木「え?い、いや……何でも……ないよ…………」 黒幕「…………?」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………ふふ」 黒幕「……………うぷぷ」 苗木「ふふふふふ、あはは……」 黒幕「うぷぷ、うぷぷぷぷぷぷぷ!」 二人「「―――――あははははは!!」」 *********************** 黒幕「結局、ボクと丸一日過ごしちゃった訳だけど良かったの?」 苗木「今日は特別な日とはいえ、みんなとは、贈り物を送ったり貰ったりした以降は、各自がいつもと変わらない時間を過ごすことにしたからね。    ………モノクマと、黒幕と、一緒に過ごすなんて、こんな時じゃなきゃ……出来ないし」 黒幕「……………」 苗木「モノクマは、ううん……『キミ』はどうだった?ボクと一緒に過ごしてみて……」 黒幕「『――― 最悪だった』」 黒幕「『ボクを、俺を、私を……楽しませることが、良い気分にさせることが出来たとでも思った?……苗木誠如きが自惚れるな』」 苗木「……………」 黒幕「『いかにもオマエらしい、どこにでも溢れていそうな普通の光景を、普通の一日を、普通の幸せを演出して……凄い不愉快だった』」 苗木「……………」 黒幕「『最悪、最低、本当に救いようのない不運。苗木誠。オマエと過ごした時間は本当に無駄だった』」 苗木「……………」 黒幕「――― なんて……ね。まあ、感想はこんな所――――― 今日以外の日なら、ボクは純粋にこう感想を抱くよ」 苗木「……………それって」 黒幕「解釈はどうとでも。そのまま受け取るも良し、疑るも良し」 苗木「――――― ………。 今日くらい……いや……。そっか……そうだな……」 苗木「自室まで送ってくれるなんて……今日が終わるその時その時まで、お前は最悪な状況に身を置くんだな」 黒幕「まあね、うぷぷぷぷ」 苗木「……………。……そういえば……モノクマはボクと一緒に過ごしたせいで、ボク以外の14人にチョコレート配布、出来てないよな。    お前、これから配布するつもりなんだろ?ボクも手伝おうか?」 黒幕「……………。それには及ばないよ、苗木クン。ボクのチョコレート配布はね。一人でやらなくちゃ、まったく意味がないの。だから、大丈夫」 苗木「………そうか?なら、良いんだけど」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………配布頑張って。そして、その後は願わくば、今日に限っては良い夢を」 黒幕「じゃあ、ボクからは……キミがとびきり最悪な夢を見ることを願うよ」 苗木「意地悪。最後は素直にいってくれると思ったんだけどな」 黒幕「うぷぷ、他の14人が用意したチョコレートくらい、甘いね!!………ボクは、黒幕なんだから」 苗木「……………」 苗木「…………それじゃ、おやすみ」 黒幕「はい、おやすみなさい」 パタン 黒幕「……………」 黒幕「……………ふう」 ガタッ 苗木「あ、そうそう!!」 黒幕「ク、クマ―!?な、何さ!急に驚かさないでよ!!」 苗木「…………言い忘れてたことがあった」 苗木「今年のSt. Valentine's Day。今日一日、楽しい時間を過ごさせてくれて、そして、格別に美味しい手作りのチョコレートをボクに送ってくれて―――」 苗木「――――― ありがとう ―――――」  ………パタン  「…………………………」 *********************** 黒幕「…………………………」 黒幕「『うぷぷぷぷ、嘘つき黒幕がー』『本当は他の14人分のチョコレートなんて用意してないだろう?』『オマエが用意したのは苗木誠の分だけ』    『最初こそはハチャメチャにするつもりだったのに、どういった気まぐれ!?』」 黒幕「さあ……何でかな。自分のことなのに、ね」 黒幕「………苗木誠……オマエは本当に最悪だ、最低だ、本当に救いようのない不運だ。        ………アタシにこんな感情を抱かせるなんて。        オマエがアタシに感謝、するなんて………」 黒幕(なんて――― 希望めいた絶望で――絶望めいた……希望……) 黒幕「…………………………」 黒幕「――― こちらこそ、どういたしまして ――――」 黒幕「…………アタシがオマエにこんな言葉を贈るなんて。ああ……なんて―――― 絶望的……うぷぷぷぷぷ………」 *********************** 苗木「…………………………」 苗木(ボクは黒幕に感謝の言葉を贈った。    普通ならば、こんな状況にボク達を陥れた黒幕に、ボクが……感謝することは、今日した行いは……ボク自身に、絶望を抱かせるものなんだけれど) 苗木(今日に限っては、別) 苗木(チョコレート、本当に美味しかったな。…………あれを作るには……相当手間をかけてることは、ボクにだって理解できる。あの黒幕が手作りを……) 苗木「……もしかして………………。……………あはは。いくらなんでも、そんな訳ないか」 苗木(まあ、そんな感情は別として。…………今日、黒幕がモノクマを通してボクに現した内面、あれは素だと考えて良いのか。    素直に素だと考えるならば………黒幕にこんなことをやめさせる、ボクが止める意味はある) 苗木(ボク達15人、危ない橋を渡ってきたけど、ボク達の間でコロシアイはまだ起きてない……まだ、まだ……ボクにとっては、黒幕は……許せる範囲にいるんだ) 苗木(でも、もし、これ以前に黒幕が殺しを行っていたとしたら……。……………。    ……………ううん、やめよう。最悪なことを想定することも大事だけど、ここはポジティブに考えよう) 苗木(黒幕は殺しを行っていない。ほんの僅かな希望かもしれない……ちっぽけな希望かもしれない、けれども……) 苗木(――――― ボクは、希望を捨てない) The black curtain × Makoto Naegi    Despair × Hope My 「St. Valentine's Day/2011」story FIN. ----
苗木(チョコレート……14人みんなからこんなにも貰っちゃった。まあ、ボクからも渡したし、お互い様なんだけど。    流石に腕一杯溢れんばかりのままって訳にも行かないし……一端自室に戻ろう) 黒幕「……苗木誠クン!バァー!」 苗木「!?あ……。いきなり姿を現してビックリさせるなよ!みんなから貰ったチョコレート、床にぶちまけちゃったじゃないか!    ………ふう、良かった。潰れてもないし、割れてもいないみたい」 黒幕「うぷぷ、今回は驚かし具合をちゃんと計算したからね。まあ、今日はバレンタインデーだし?    今日に限っては色々と大目に、寛大に行こうと学園長は思ってますからね!」 苗木「……………。………そんなことよりも、モノクマ。お前、ボクに用があるんじゃないのか?だから、こうして出てきたんだろう?」 黒幕「キラーン☆その通り!」 黒幕「苗木クン、手を出して。はい、コレ」 苗木「………これは……何?」 黒幕「何って、見ればわかるでしょ。チョコレートだよチョコレート」 苗木「……………」 黒幕「もうっ!何でそんな疑惑の目で見るの!!   理由はわからなくもないけど、コレに変なモノなんて混入してないよ!!」 苗木「チョコレートは……他のみんなにも?」 黒幕「……モチのロン、他の生徒にも配布するつもりだよ。…………って、え?……苗木クン??何でボクが渡した奴のリボン解いてるの?」 苗木「何でって……それは、中身を食べる為だよ」 黒幕「え、こんな所で食べちゃうの??よりによってボクからのを!」 苗木「校則に引っ掛かる訳でもないし、ボクが何処でお前のを一番に食べようがそんなの勝手だろ?    ……それとも……お前の反応からして……やっぱり……」 黒幕「な、ないない!異物混入なんてそれだけはない!!」 苗木「じゃあ、問題ないだろう。……さて、お前が用意したチョコレートはどんなものかな。 ……………。………!」 苗木(一見、何処かの高級店に置いてありそうな様々なチョコレートの詰め合わせ。でも、よく見ると……これって………。………食べてみよう) 黒幕「あわわわわ、ドキドキ!」 パクッ……ポリ……ポリ…… 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………」 黒幕「………お味の方は……?」 苗木「――― 美味しい………」 苗木「このチョコレート……美味しいよ!」 黒幕「……………!………えっへん。あったり前でしょ!   だってボクは希望ヶ峰学園の学園長だよ!!   生徒を喜ばせるチョコレートを用意出来るのは当然!!   ………キミがこんな反応を示すなんてことは、予め想像はついてた………って、え………?何してるの、苗木、クン……?」 苗木「お前の前にしゃがみ、キミの頭、モノクマの頭の上に自分の手を置いている。そして……撫でている」 黒幕「何で……」 苗木「本当はボクからも渡せれば一番良いんだろうけど……生憎、14人分しか用意してなかったからね。……ボクの撫でるで我慢して」 黒幕「………そうじゃなくて……!」 苗木「?」 黒幕「なんで……なんで……普通にボクの頭を撫でていられるの?」 苗木「『オマエラ15人をこの学園に閉じ込めた、そして、この状況に陥らせた張本人、黒幕』   『これとは真逆なことをされるのならまだしも、こんなことをされる筋合いはない』……とでも考えてるのかな。    ………大丈夫……忘れてないから。お 前 の お か げ で 忘 れ ら れ な い か ら」 苗木「勿論、ボクがオマエに抱いてる感情だって変わってない。    今でも結構きてるけど……これ以上のことがあったら……ボクは……―――     何、正義感抱いてるのなんだのお前は言い捨てそうだけど……ボクの取る行動は変わらない」 黒幕「…………それなら、尚更だよ。なんで、そんな感情を抱く苗木誠がボクの頭を撫でていられるの」 苗木「それは――――――――――― 今日が、バレンタインデー……『聖なる日』だから」 苗木「詳しい起源とかは知らないけど……この日に込められた意味とか想像してみると、こんな時までこんな張りつめた関係でいるなんて、嫌だな……そう思ったんだよ。    …………別に、お前とボクは親しい間柄じゃない、感謝するされる筋合いもないけれど。今日くらいは……こんなのも良いと思って」 黒幕「……………つまり、簡単に言えばそんな訳だから、今日は休戦、みたいな?」 苗木「そういうことになるね」 黒幕「……………」 苗木「どうだ、モノクマ。この理由、ボクがこの行為をしてる根拠になるだろう?」 黒幕「……………。………うぷぷ、うぷぷぷぷ……それは面白いね。良いーでしょ。苗木クンの言い分を認めましょう。    ………じゃあ、今日はお互いに休戦ってことで!    この日に限ってはボクが苗木誠クンに撫でられてるこの状況も何もおかしくない訳だね!」 苗木「………うん」 黒幕「うぷー、うぷぷぷぷぷぅ♪」 苗木「何だよ、凄い上機嫌みたいだな」 黒幕「………こらこら、手の動きが止まってるよ……!ボクの分、用意してなかったんでしょ?だから、その分ちゃーんと撫でないと!!」 苗木「はいはい……ほら――――」 黒幕「……………。………………………。………………………………………」 苗木「さっきからずっと撫で続けてるけど、その間、無言だね…………気持ち良いの?」 黒幕「気持ち良い?『ボクはモノクマだよ』、そんな訳ないじゃん。    ……………ただ、ちょっと考え事してただけだって    ……まあ、どうでもいいでしょ、そんなこと!!えい!」 苗木「って、うわっ!!」 黒幕「うぷぷぷぷ、油断したね。見事、ボクに押し倒されちゃった苗木クンにはおしおきです!!」 苗木「……!?」 黒幕「はい、ぎゅーーの刑!!」 苗木「……………。………………―――――」 黒幕「………どしたの?唖然としちゃって」 苗木「え?い、いや……何でも……ないよ…………」 黒幕「…………?」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………ふふ」 黒幕「……………うぷぷ」 苗木「ふふふふふ、あはは……」 黒幕「うぷぷ、うぷぷぷぷぷぷぷ!」 二人「「―――――あははははは!!」」 *********************** 黒幕「結局、ボクと丸一日過ごしちゃった訳だけど良かったの?」 苗木「今日は特別な日とはいえ、みんなとは、贈り物を送ったり貰ったりした以降は、各自がいつもと変わらない時間を過ごすことにしたからね。    ………モノクマと、黒幕と、一緒に過ごすなんて、こんな時じゃなきゃ……出来ないし」 黒幕「……………」 苗木「モノクマは、ううん……『キミ』はどうだった?ボクと一緒に過ごしてみて……」 黒幕「『――― 最悪だった』」 黒幕「『ボクを、俺を、私を……楽しませることが、良い気分にさせることが出来たとでも思った?……苗木誠如きが自惚れるな』」 苗木「……………」 黒幕「『いかにもオマエらしい、どこにでも溢れていそうな普通の光景を、普通の一日を、普通の幸せを演出して……凄い不愉快だった』」 苗木「……………」 黒幕「『最悪、最低、本当に救いようのない不運。苗木誠。オマエと過ごした時間は本当に無駄だった』」 苗木「……………」 黒幕「――― なんて……ね。まあ、感想はこんな所――――― 今日以外の日なら、ボクは純粋にこう感想を抱くよ」 苗木「……………それって」 黒幕「解釈はどうとでも。そのまま受け取るも良し、疑るも良し」 苗木「――――― ………。 今日くらい……いや……。そっか……そうだな……」 苗木「自室まで送ってくれるなんて……今日が終わるその時その時まで、お前は最悪な状況に身を置くんだな」 黒幕「まあね、うぷぷぷぷ」 苗木「……………。……そういえば……モノクマはボクと一緒に過ごしたせいで、ボク以外の14人にチョコレート配布、出来てないよな。    お前、これから配布するつもりなんだろ?ボクも手伝おうか?」 黒幕「……………。それには及ばないよ、苗木クン。ボクのチョコレート配布はね。一人でやらなくちゃ、まったく意味がないの。だから、大丈夫」 苗木「………そうか?なら、良いんだけど」 苗木「……………」 黒幕「……………」 苗木「……………配布頑張って。そして、その後は願わくば、今日に限っては良い夢を」 黒幕「じゃあ、ボクからは……キミがとびきり最悪な夢を見ることを願うよ」 苗木「意地悪。最後は素直にいってくれると思ったんだけどな」 黒幕「うぷぷ、他の14人が用意したチョコレートくらい、甘いね!!………ボクは、黒幕なんだから」 苗木「……………」 苗木「…………それじゃ、おやすみ」 黒幕「はい、おやすみなさい」 パタン 黒幕「……………」 黒幕「……………ふう」 ガタッ 苗木「あ、そうそう!!」 黒幕「ク、クマ―!?な、何さ!急に驚かさないでよ!!」 苗木「…………言い忘れてたことがあった」 苗木「今年のSt. Valentine's Day。今日一日、楽しい時間を過ごさせてくれて、そして、格別に美味しい手作りのチョコレートをボクに送ってくれて―――」 苗木「――――― ありがとう ―――――」  ………パタン  「…………………………」 *********************** 黒幕「…………………………」 黒幕「『うぷぷぷぷ、嘘つき黒幕がー』『本当は他の14人分のチョコレートなんて用意してないだろう?』『オマエが用意したのは苗木誠の分だけ』    『最初こそはハチャメチャにするつもりだったのに、どういった気まぐれ!?』」 黒幕「さあ……何でかな。自分のことなのに、ね」 黒幕「………苗木誠……オマエは本当に最悪だ、最低だ、本当に救いようのない不運だ。        ………アタシにこんな感情を抱かせるなんて。        オマエがアタシに感謝、するなんて………」 黒幕(なんて――― 希望めいた絶望で――絶望めいた……希望……) 黒幕「…………………………」 黒幕「――― こちらこそ、どういたしまして ――――」 黒幕「…………アタシがオマエにこんな言葉を贈るなんて。ああ……なんて―――― 絶望的……うぷぷぷぷぷ………」 *********************** 苗木「…………………………」 苗木(ボクは黒幕に感謝の言葉を贈った。    普通ならば、こんな状況にボク達を陥れた黒幕に、ボクが……感謝することは、今日した行いは……ボク自身に、絶望を抱かせるものなんだけれど) 苗木(今日に限っては、別) 苗木(チョコレート、本当に美味しかったな。…………あれを作るには……相当手間をかけてることは、ボクにだって理解できる。あの黒幕が手作りを……) 苗木「……もしかして………………。……………あはは。いくらなんでも、そんな訳ないか」 苗木(まあ、そんな感情は別として。…………今日、黒幕がモノクマを通してボクに現した内面、あれは素だと考えて良いのか。    素直に素だと考えるならば………黒幕にこんなことをやめさせる、ボクが止める意味はある) 苗木(ボク達15人、危ない橋を渡ってきたけど、ボク達の間でコロシアイはまだ起きてない……まだ、まだ……ボクにとっては、黒幕は……許せる範囲にいるんだ) 苗木(でも、もし、これ以前に黒幕が殺しを行っていたとしたら……。……………。    ……………ううん、やめよう。最悪なことを想定することも大事だけど、ここはポジティブに考えよう) 苗木(黒幕は殺しを行っていない。ほんの僅かな希望かもしれない……ちっぽけな希望かもしれない、けれども……) 苗木(――――― ボクは、希望を捨てない) The black curtain × Makoto Naegi    Despair × Hope My 「St. Valentine's Day/2011」story FIN. ----

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