kk3_654

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「ひっ、く……ママ、のおてて、こわい、よぅ…っく…」 「っ……怖くないのよ?」  まさか、こんな事になるなんて……少しばかりうたた寝したせいか…  事の発達は推測だけど、恐らく娘が寝ている私の手袋を外したのだろう。その証拠に、傍らに手袋が落ちている  そして火傷の痕がある右手を見て恐怖を抱き泣いてしまった……しかし、右手の傷がこんな形で子供に知られるなんて迂闊だった。  いずれは説明するつもりだったけど、それはあくまでもこの娘が大きくなってからだ。しかし、今説明しようにも幼さ過ぎる……困った 「大丈夫だから、ね? ママの怖い所なんてないのよ?」 「ひ、ぐ…ふぇぇええっ!」  とうとう声を上げて泣いてしまった……しかも、この娘の外見が私によく似ているものだから少し宥め難い  ほとほと困り果てて、どうするか悩んでいた所…後ろから優しげな声が耳に届いた 「どうしたの、響子さん? ……あぁ」  誠君……だった  泣いている娘と困惑気味の私を察したのか、柔和に微笑んだまま娘の前で屈んだ 「どうしたのかな?ん?パパに言ってごらん」 「あの、ね、マ、マのおてて、怖い、の……」  途切れ途切れに嗚咽しながらも誠君に視線を外さずに告げる  その事を予感していたのか表情を崩さない誠君。それどころか、娘に笑いかけ頭を撫でつつ唇を開いた 「それは違うよ。ママのお手ては怖くなんかないよ。ママの傷はね…大切な物を守る為に出来ちゃったんだよ」 「っひ…くぅ…それ、ってわたし、も?」 「うん。そうだね……それにねこの傷のお陰でパパはママと一緒になれたんだ。だからね、君が生まれたのもこれのお陰なんだよ」 「それ、じゃ、ママのおてて、はこわく、ない、の?」 「勿論! ママのお手ては凄いだからね。ママも凄いけど」 「誠君……」 「だからね、泣いちゃだめだよ?せっかくのママ似の可愛い顔がぐしゃぐしゃだから」 「んっ…うん!」  確かにある意味この火傷で誠君と一緒になれたのかもしれない。あの日も、誠君の家に来て……それで一緒に  ……私にとってこの火傷は忌々しい過去でしかなかった。しかし、思い返せば誠君と繋ぐ橋になったのかもしれない  何だか……今になって誠君も救われた気がした  私の全てを包み込んでくれたから、幸せも火傷に遮れなかったのだろう  今更だけど……ありがとね、誠君 ----
「ひっ、く……ママ、のおてて、こわい、よぅ…っく…」 「っ……怖くないのよ?」  まさか、こんな事になるなんて……少しばかりうたた寝したせいか…  事の発達は推測だけど、恐らく娘が寝ている私の手袋を外したのだろう。その証拠に、傍らに手袋が落ちている  そして火傷の痕がある右手を見て恐怖を抱き泣いてしまった……しかし、右手の傷がこんな形で子供に知られるなんて迂闊だった。  いずれは説明するつもりだったけど、それはあくまでもこの娘が大きくなってからだ。しかし、今説明しようにも幼さ過ぎる……困った 「大丈夫だから、ね? ママの怖い所なんてないのよ?」 「ひ、ぐ…ふぇぇええっ!」  とうとう声を上げて泣いてしまった……しかも、この娘の外見が私によく似ているものだから少し宥め難い  ほとほと困り果てて、どうするか悩んでいた所…後ろから優しげな声が耳に届いた 「どうしたの、響子さん? ……あぁ」  誠君……だった  泣いている娘と困惑気味の私を察したのか、柔和に微笑んだまま娘の前で屈んだ 「どうしたのかな?ん?パパに言ってごらん」 「あの、ね、マ、マのおてて、怖い、の……」  途切れ途切れに嗚咽しながらも誠君に視線を外さずに告げる  その事を予感していたのか表情を崩さない誠君。それどころか、娘に笑いかけ頭を撫でつつ唇を開いた 「それは違うよ。ママのお手ては怖くなんかないよ。ママの傷はね…大切な物を守る為に出来ちゃったんだよ」 「っひ…くぅ…それ、ってわたし、も?」 「うん。そうだね……それにねこの傷のお陰でパパはママと一緒になれたんだ。だからね、君が生まれたのもこれのお陰なんだよ」 「それ、じゃ、ママのおてて、はこわく、ない、の?」 「勿論! ママのお手ては凄いだからね。ママも凄いけど」 「誠君……」 「だからね、泣いちゃだめだよ?せっかくのママ似の可愛い顔がぐしゃぐしゃだから」 「んっ…うん!」  確かにある意味この火傷で誠君と一緒になれたのかもしれない。あの日も、誠君の家に来て……それで一緒に  ……私にとってこの火傷は忌々しい過去でしかなかった。しかし、思い返せば誠君と繋ぐ橋になったのかもしれない  何だか……今になって誠君も救われた気がした  私の全てを包み込んでくれたから、幸せも火傷に遮れなかったのだろう  今更だけど……ありがとね、誠君 ----

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