kk4_373

「kk4_373」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

kk4_373」(2011/07/15 (金) 19:35:31) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

体育の時間、ふとした弾みで足を挫いてしまった私は、自分が連れて行くと言ってきかない苗木君に背負われ、保健室を目指していた。 冷やかしていたクラスメート達には後ほど個別に制裁を加えるとして、当面の問題は―― 「苗木君、その……重くない?」 「な……!そんな訳ないよ!霧切さん一人くらいなら軽いもんだよ。心配しないで」 「そう……」 彼はそう言い、私を安心させるように笑う。 本当はそんな訳ない。 彼より私の方が身長が高いのだし、彼もそんなに体力に自信があるタイプではない。 その証拠に、私を支える腕は痙攣し、足取りも時折ふらついている。 ……それでも、彼が私を落とすことは決してないだろう。 そう信じられるだけの力強さを、その背と両腕に感じていた。 「……苗木君は、いいお父さんになるわね」 彼に負ぶられる子供は、きっと安心してその背に身を任せることが出来るだろう。 ――遠い昔、既に記憶にも定かでない、私を乗せる広い背中を思い、そんな事を言っていた。 「この歳でお父さんっていうのは複雑だけど……でも、そうなれたらいい、かな」 苗木君はそう言って笑う。 きっといつもの子供のような……でも人の心を穏やかにさせてくれる笑顔を見せているのだろう。 「…………」 私は眼を閉じると、彼の華奢な身体を抱くようにそっと手を回す。 「き、霧切さん!?」 「どうかした?」 「う、ううん。別に……」 背中から見える、彼のうなじと耳が真っ赤になっているのがわかる。 少し意地悪だったかもしれない。 ……私らしくないことをしているのはわかる。 それでも今は、何も考えずこの背中に身を任せていたかった。 「苗木君」 「うん?」 ――ありがとう 言葉の代わりに、こつんと額を背中に当てる。 少しだけ――ほんの少しだけ、子供の頃に戻ったような、そんな気分に浸りながら。 ----
体育の時間、ふとした弾みで足を挫いてしまった私は、自分が連れて行くと言ってきかない苗木君に背負われ、保健室を目指していた。 冷やかしていたクラスメート達には後ほど個別に制裁を加えるとして、当面の問題は―― 「苗木君、その……重くない?」 「な……!そんな訳ないよ!霧切さん一人くらいなら軽いもんだよ。心配しないで」 「そう……」 彼はそう言い、私を安心させるように笑う。 本当はそんな訳ない。 彼より私の方が身長が高いのだし、彼もそんなに体力に自信があるタイプではない。 その証拠に、私を支える腕は痙攣し、足取りも時折ふらついている。 ……それでも、彼が私を落とすことは決してないだろう。 そう信じられるだけの力強さを、その背と両腕に感じていた。 「……苗木君は、いいお父さんになるわね」 彼に負ぶられる子供は、きっと安心してその背に身を任せることが出来るだろう。 ――遠い昔、既に記憶にも定かでない、私を乗せる広い背中を思い、そんな事を言っていた。 「この歳でお父さんっていうのは複雑だけど……でも、そうなれたらいい、かな」 苗木君はそう言って笑う。 きっといつもの子供のような……でも人の心を穏やかにさせてくれる笑顔を見せているのだろう。 「…………」 私は眼を閉じると、彼の華奢な身体を抱くようにそっと手を回す。 「き、霧切さん!?」 「どうかした?」 「う、ううん。別に……」 背中から見える、彼のうなじと耳が真っ赤になっているのがわかる。 少し意地悪だったかもしれない。 ……私らしくないことをしているのはわかる。 それでも今は、何も考えずこの背中に身を任せていたかった。 「苗木君」 「うん?」 ――ありがとう 言葉の代わりに、こつんと額を背中に当てる。 少しだけ――ほんの少しだけ、子供の頃に戻ったような、そんな気分に浸りながら。 ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。