苗木君が縮んでしまったようです(前編)

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「霧切さん!」  呼ばれて振り向く霧切さんですが、そこには誰もいません。  確かに苗木君の声がしたはずなのに。 「ここ! ここだよ!」  何故か声は足元の方から聞こえてきます。  霧切さんが視線を下に落とすとそこには……。 「……苗木君?」 「よかった……やっと気付いてくれた……!」  苗木君がいました。  ですが、いつもの苗木君ではありません。  ちょうど霧切さんの膝丈ほどのちっちゃい苗木君が、霧切さんの足元で手をパタパタさせていたのです。  霧切さんはしゃがみこんで、ちっちゃい苗木君に目線の高さを合わせてあげます。 「これは……一体どうしたの? 何か変な物でも食べた? それともモノクマの秘密道具的な何かで小さくされたとか?」 「わかんないよ! 朝起きたらこうなっててさ」 「……妙なこともあるものね」 「相変わらず冷静だね霧切さん……」  ただでさえ小さい苗木君が、なんと服もろとも更に小さくなってしまいました。  果たしていかなる理由かは窺い知れませんが、残酷な仕打ちというほかありません。  「それにしても、どうすればいいんだろうこれ。この先ずっとこのままなんてことは無いよね……?」  ちっちゃい苗木君はいつになく不安げな様子です。 (かわいい……)  内心そんなことを思いつつも、霧切さんは努めて冷静に振舞います。 「超常的な現象……それも原因が分からないとなれば、何とも言いようがないわね」 「そ、そんなあ……」 「そう落ち込まないで。とにかく、解決の手掛かりを捜してみましょう。協力してあげるわ」 「うん……そうだね。ありがとう、霧切さん!」  ちっちゃい苗木君の顔がぱあっと明るくなります。 (くぅっ……かわいい……!)  霧切さんは思わず緩みそうになる頬を必死で引き締めるのでした。  ------------------------------------------------  捜索に入る前に、まずは朝食をとるべく二人は食堂へとやって来ました。  ちっちゃい苗木君では調理台に背が届かないので、今日は霧切さんが二人分の食事を用意します。  自分の分と、ちっちゃい苗木君の分を取り分けた小皿。  二人分の食事をトレイに乗せ、霧切さんはキッチンを出てちっちゃい苗木君の待つ食堂に向かいます。 「待たせたわね苗木君。……?」 「あ、霧切さん」  霧切さんが見たもの。  それは椅子の上によじ登ろうと四苦八苦するちっちゃい苗木君でした。  ぴょんぴょん跳ねたり、どうにか足を引っ掛けようと頑張っていますが、上手くいかない様子です。 「うぅ、背が低いとやっぱり不便だ……。個室のドアを開けて、外に出るのも一苦労だったもんなあ」  見かねた霧切さんはまずトレイをテーブルに置くと、ちっちゃい苗木君を両手でひょいと抱え上げます。 「まったく……世話が焼けるわね」 「いっ……!?」  そしてなんということでしょう。  そのまま椅子に座ると、自分の膝の上にちっちゃい苗木君を乗せてしまったのです。 「あ、あの……霧切さん、これは……?」 「その背丈では、椅子の上に座れたとしてもテーブルまで手が届かないでしょう?」 「そ、それはそうだけどさ……。あ、僕がテーブルの上に座ったらいいんじゃない?」 「衛生の面でもマナーの面でも、褒められた提案ではないわね」  そう言うと霧切さんはそのまま食事を始めてしまいます。  膝の上のちっちゃい苗木君にはもはや反論する余地もありません。やむなく自分も食べ始めます。  うっかり後ろにもたれ掛かるとそこには霧切さんの……。  考えまいとしても意識せざるを得ません。  そんな状態では背後の霧切さんが幸せそうな微笑を抑えきれていないことに気付けなかったのも、無理からぬことでしょう。  ちっちゃい苗木君にとっては、どうにも落ち着かない朝食タイムとなってしまいました。 [[【続く】>苗木君が縮んでしまったようです(後編)]] ----
「霧切さん!」  呼ばれて振り向く霧切さんですが、そこには誰もいません。  確かに苗木君の声がしたはずなのに。 「ここ! ここだよ!」  何故か声は足元の方から聞こえてきます。  霧切さんが視線を下に落とすとそこには……。 「……苗木君?」 「よかった……やっと気付いてくれた……!」  苗木君がいました。  ですが、いつもの苗木君ではありません。  ちょうど霧切さんの膝丈ほどのちっちゃい苗木君が、霧切さんの足元で手をパタパタさせていたのです。  霧切さんはしゃがみこんで、ちっちゃい苗木君に目線の高さを合わせてあげます。 「これは……一体どうしたの? 何か変な物でも食べた? それともモノクマの秘密道具的な何かで小さくされたとか?」 「わかんないよ! 朝起きたらこうなっててさ」 「……妙なこともあるものね」 「相変わらず冷静だね霧切さん……」  ただでさえ小さい苗木君が、なんと服もろとも更に小さくなってしまいました。  果たしていかなる理由かは窺い知れませんが、残酷な仕打ちというほかありません。  「それにしても、どうすればいいんだろうこれ。この先ずっとこのままなんてことは無いよね……?」  ちっちゃい苗木君はいつになく不安げな様子です。 (かわいい……)  内心そんなことを思いつつも、霧切さんは努めて冷静に振舞います。 「超常的な現象……それも原因が分からないとなれば、何とも言いようがないわね」 「そ、そんなあ……」 「そう落ち込まないで。とにかく、解決の手掛かりを捜してみましょう。協力してあげるわ」 「うん……そうだね。ありがとう、霧切さん!」  ちっちゃい苗木君の顔がぱあっと明るくなります。 (くぅっ……かわいい……!)  霧切さんは思わず緩みそうになる頬を必死で引き締めるのでした。  ------------------------------------------------  捜索に入る前に、まずは朝食をとるべく二人は食堂へとやって来ました。  ちっちゃい苗木君では調理台に背が届かないので、今日は霧切さんが二人分の食事を用意します。  自分の分と、ちっちゃい苗木君の分を取り分けた小皿。  二人分の食事をトレイに乗せ、霧切さんはキッチンを出てちっちゃい苗木君の待つ食堂に向かいます。 「待たせたわね苗木君。……?」 「あ、霧切さん」  霧切さんが見たもの。  それは椅子の上によじ登ろうと四苦八苦するちっちゃい苗木君でした。  ぴょんぴょん跳ねたり、どうにか足を引っ掛けようと頑張っていますが、上手くいかない様子です。 「うぅ、背が低いとやっぱり不便だ……。個室のドアを開けて、外に出るのも一苦労だったもんなあ」  見かねた霧切さんはまずトレイをテーブルに置くと、ちっちゃい苗木君を両手でひょいと抱え上げます。 「まったく……世話が焼けるわね」 「いっ……!?」  そしてなんということでしょう。  そのまま椅子に座ると、自分の膝の上にちっちゃい苗木君を乗せてしまったのです。 「あ、あの……霧切さん、これは……?」 「その背丈では、椅子の上に座れたとしてもテーブルまで手が届かないでしょう?」 「そ、それはそうだけどさ……。あ、僕がテーブルの上に座ったらいいんじゃない?」 「衛生の面でもマナーの面でも、褒められた提案ではないわね」  そう言うと霧切さんはそのまま食事を始めてしまいます。  膝の上のちっちゃい苗木君にはもはや反論する余地もありません。やむなく自分も食べ始めます。  うっかり後ろにもたれ掛かるとそこには霧切さんの……。  考えまいとしても意識せざるを得ません。  そんな状態では背後の霧切さんが幸せそうな微笑を抑えきれていないことに気付けなかったのも、無理からぬことでしょう。  ちっちゃい苗木君にとっては、どうにも落ち着かない朝食タイムとなってしまいました。 [[【続く】>苗木君が縮んでしまったようです(後編)]] ----

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