KK7_132-134

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新年会と称して皆でドンちゃん騒ぎをしよう―― そう山田くんが提案してきて、寄宿舎に今いるメンバーで集まったんだ。 男性陣は言いだしっぺの山田君、桑田君、葉隠君、そして僕。 女性陣は江ノ島さんと戦刃さん、霧切さん。 食堂でジュースとお菓子を食べてテレビを見るだけだったけど、思いの外騒ぎすぎて寮長からストップの声がかかった。 突然のお開き宣言で「はい、そうですか」と納得できるわけもなかった。 「だったらカラオケに行かない?」と僕が提案したらあっさり承認された。 そこに紅白・カウントダウンライブ・正月番組の生放送を終えて帰ってきた舞園さんも加わって、近所のカラオケ店で新年会の続きが行われたんだ。 新年早々、舞園さんの生歌が聞けるなんて幸先のいいスタートだなぁ、その時の僕は思っていた。  ----- 「でっかい花火、打ち上げさせてもらうわ」 「レッツゲェツゥザトォゥップ!」 「行ったるべーー!!」 「「「「Let's Get to the top!!」」」」 「舞園さやか殿ーーーッ!!」 イントロと同時にギャラリーの江ノ島さん、桑田君、葉隠君、山田君がMCと化した。 戦刃さんもリズムに合わせてマラカスを振っている。 舞園さんの歌とコラボしているのか、はたまた邪魔しているのかわからない情熱的な合いの手。 でも観客と歌手が一体となっているのは確かな構図だ。 そんな光景を見て呆気にとられていると左半身がユサユサと揺れる。 「? どうしたの、霧切さん?」 隣に座っていた霧切さんが僕の体を揺すっていた。 「苗木君、少しいいかしら?」 周りの音に負けないように会話をする対策だろう。 か、顔が近いよ……! 「私自身、カラオケって初めてだからよくわからないけど……」 「え、霧切さんってカラオケに行ったことなかったの?」 「この学園に来るまでは海外での生活がほとんどだったし、"稼業"もあったから行く機会がなかったわ」 「あ、そうだったんだ」 「歌謡曲を模倣するように歌うっていう予備知識はあったけれど、あんな光景がいつも繰り広げられているの?」 目線を僕からスタンドの方へ向ける。僕もそれにならう。 頭お堅い\L・O・V・E!ラブリーさやかー!/ 誰かが 決めたルール\そんなルールはBreak!/ ぶち壊して 今日\ハーイ!/から\ハーイ!/ Try again\GO!GO!GO!GO!/ 別れ告げよう いつ\ハーイ!/もの\ハーイ!/トラウマへ\Let's Get to the top!!/ 「……それは違うよ。僕の知っているカラオケと違う」 「そう……。それを聞いて少し安心したわ」 家族や学校の友達とカラオケに行く機会はあったけど、こういうことは一度もなかった。 きっと超高校級の高校生たちが集まったことで、規格外の超高校級のカラオケに変化したんだ。 「ところで苗木君、あなたの持ち歌って何かしら?」 「うーん、そうだなぁ……」 僕の好きな歌って大抵はメジャーな歌だし。 「せっかくの機会だから苗木君の歌を聞かせて欲しいわ」 「え、僕の歌を!?」 「あら、人前で披露できない音痴だったりするのかしら?」 「それは違うよ! ただちょっと恥ずかしいんだ、みんな上手だし」 「そう、憧れの舞園さんの前で失態を晒すのが怖いのね。苗木君は」 うっ、霧切さんの挑発が僕の確信を衝いてくる。 「だったら僕も霧切さんの歌を聞いてみたいな。そうすれば僕も歌うよ」 「えっ、私の……?」 僕の苦し紛れの反論が意外な要求だったのか、霧切さんが呆然とする。 目の前には輝く Shining Gate\夢のShining Gate!イェーイ!/ 夢のゴールへ\Hey!/ 走り出そう\カモーン!/ 昨日より\オーイ!/ 高い\オーイ!/ 場所へ\イェーイ!/ Get to the top!\All right!!/ 舞園さんが歌い終わったようだ。 合いの手をしていた皆で歓声と共にハイタッチを交わしている。 「うぅ……。歌いにくかったです……」 「お疲れ様、舞園さん」 舞園さんが僕の右隣に座る。 「ところで苗木君と霧切さん。さっきからお二人で何をお話していたんですか?」 「私が苗木君の歌を聞きたいと言ったら彼、なかなか交渉に応じないの」 「え、苗木君の歌ですか!? 私も聞きたいです!」 「や、やっぱり恥ずかしいから歌いにくいよ」 目を爛々と輝かせる舞園さんに思わずたじろいでしまう。 『私様の歌を聞けーーーーッ!!』 「盾子ちゃーん」\シャカシャカシャカシャカッ/ 江ノ島さんの一声に注意が逸れた。 その隙を突いて、戦刃さんの隣に席移動する。 「あ、逃げられました」 「……苗木君のクセに生意気ね」 そのまま戦刃さんの隣でタンバリンを打ったりするなど、盛り上げ役に徹して歌わないように逃げの一手を打った。 その後は山田君のアニソン、桑田君のヴィジュアル系バンドの歌、葉隠君のこぶしをきかせた演歌。 舞園さん→江ノ島さん→山田君→桑田君→葉隠君→舞園さん……という一定の歌うサイクルが出来たまま利用時間は終了を告げた。 混雑しているということで延長も出来ないから新年会もお開きとなった。 みんなが満足な顔を浮かべる中、一人だけ物足りない顔を浮かべているのを僕は気づかなかった。 だって、彼女は表情を隠すことに長けているから――  ----- 翌日。 僕はまたカラオケ店にいた。 「ほら、苗木君。早く歌ってちょうだい」 霧切さんと二人っきりで。  どうしてこうなった。 推理小説を読むかのように選曲本のページを捲る霧切さんが言う。 「苗木君の場合、場数を踏めば羞恥心を克服できるはずよ」 「だからって開店からフリータイムってどうなのさ? さすがの僕でも喉が潰れるよ?」 「その心配はないわ、私も歌うから」 「え?」 「昨日あなたの口から言ったでしょ? 私の歌を聞けば自分も歌うって」 た、確かに……。 「私は苗木君の歌を聞きたいがために時間と場所を提供した。  あなたはこの機会を利用して羞恥心を克服すればいい。  そう、これは利害の一致よ。ここまで言えばわかるわね、苗木君?」 「わかりました、霧切さん……」 僕も腹を括って端末を操作し、選曲をする。 こうして僕と霧切さんの「利害の一致」と称したカラオケ大会が幕を開けた。 7時間という長丁場だったけど、おかげで僕は人前で歌うことに抵抗感がなくなった。 そして初めて聞く霧切さんの歌声にドキドキしながら聞いていたのはここだけの秘密だ。 1位 デスペアージュンコ 1000点 2位 センターサヤカ 960点 3位 キングヒフミン 950点 4位 クイーンキョウコ 945点 5位 キャプテンレオン 930点 余談だけど、カラオケの得点ランキングに霧切さんの名前が入っているが、実は僕とデュエットした時に叩き出したスコアだったりする。 今年の一年も、こんな霧切さんに振り回されていくんだろうと確信めいたエピソードだと思う。 霧切さんと一緒に過ごした。 終 ----
新年会と称して皆でドンちゃん騒ぎをしよう―― そう山田くんが提案してきて、寄宿舎に今いるメンバーで集まったんだ。 男性陣は言いだしっぺの山田君、桑田君、葉隠君、そして僕。 女性陣は江ノ島さんと戦刃さん、霧切さん。 食堂でジュースとお菓子を食べてテレビを見るだけだったけど、思いの外騒ぎすぎて寮長からストップの声がかかった。 突然のお開き宣言で「はい、そうですか」と納得できるわけもなかった。 「だったらカラオケに行かない?」と僕が提案したらあっさり承認された。 そこに紅白・カウントダウンライブ・正月番組の生放送を終えて帰ってきた舞園さんも加わって、近所のカラオケ店で新年会の続きが行われたんだ。 新年早々、舞園さんの生歌が聞けるなんて幸先のいいスタートだなぁ、その時の僕は思っていた。  ----- 「でっかい花火、打ち上げさせてもらうわ」 「レッツゲェツゥザトォゥップ!」 「行ったるべーー!!」 「「「「Let's Get to the top!!」」」」 「舞園さやか殿ーーーッ!!」 イントロと同時にギャラリーの江ノ島さん、桑田君、葉隠君、山田君がMCと化した。 戦刃さんもリズムに合わせてマラカスを振っている。 舞園さんの歌とコラボしているのか、はたまた邪魔しているのかわからない情熱的な合いの手。 でも観客と歌手が一体となっているのは確かな構図だ。 そんな光景を見て呆気にとられていると左半身がユサユサと揺れる。 「? どうしたの、霧切さん?」 隣に座っていた霧切さんが僕の体を揺すっていた。 「苗木君、少しいいかしら?」 周りの音に負けないように会話をする対策だろう。 か、顔が近いよ……! 「私自身、カラオケって初めてだからよくわからないけど……」 「え、霧切さんってカラオケに行ったことなかったの?」 「この学園に来るまでは海外での生活がほとんどだったし、"稼業"もあったから行く機会がなかったわ」 「あ、そうだったんだ」 「歌謡曲を模倣するように歌うっていう予備知識はあったけれど、あんな光景がいつも繰り広げられているの?」 目線を僕からスタンドの方へ向ける。僕もそれにならう。 頭お堅い\L・O・V・E!ラブリーさやかー!/ 誰かが 決めたルール\そんなルールはBreak!/ ぶち壊して 今日\ハーイ!/から\ハーイ!/ Try again\GO!GO!GO!GO!/ 別れ告げよう いつ\ハーイ!/もの\ハーイ!/トラウマへ\Let's Get to the top!!/ 「……それは違うよ。僕の知っているカラオケと違う」 「そう……。それを聞いて少し安心したわ」 家族や学校の友達とカラオケに行く機会はあったけど、こういうことは一度もなかった。 きっと超高校級の高校生たちが集まったことで、規格外の超高校級のカラオケに変化したんだ。 「ところで苗木君、あなたの持ち歌って何かしら?」 「うーん、そうだなぁ……」 僕の好きな歌って大抵はメジャーな歌だし。 「せっかくの機会だから苗木君の歌を聞かせて欲しいわ」 「え、僕の歌を!?」 「あら、人前で披露できない音痴だったりするのかしら?」 「それは違うよ! ただちょっと恥ずかしいんだ、みんな上手だし」 「そう、憧れの舞園さんの前で失態を晒すのが怖いのね。苗木君は」 うっ、霧切さんの挑発が僕の確信を衝いてくる。 「だったら僕も霧切さんの歌を聞いてみたいな。そうすれば僕も歌うよ」 「えっ、私の……?」 僕の苦し紛れの反論が意外な要求だったのか、霧切さんが呆然とする。 目の前には輝く Shining Gate\夢のShining Gate!イェーイ!/ 夢のゴールへ\Hey!/ 走り出そう\カモーン!/ 昨日より\オーイ!/ 高い\オーイ!/ 場所へ\イェーイ!/ Get to the top!\All right!!/ 舞園さんが歌い終わったようだ。 合いの手をしていた皆で歓声と共にハイタッチを交わしている。 「うぅ……。歌いにくかったです……」 「お疲れ様、舞園さん」 舞園さんが僕の右隣に座る。 「ところで苗木君と霧切さん。さっきからお二人で何をお話していたんですか?」 「私が苗木君の歌を聞きたいと言ったら彼、なかなか交渉に応じないの」 「え、苗木君の歌ですか!? 私も聞きたいです!」 「や、やっぱり恥ずかしいから歌いにくいよ」 目を爛々と輝かせる舞園さんに思わずたじろいでしまう。 『私様の歌を聞けーーーーッ!!』 「盾子ちゃーん」\シャカシャカシャカシャカッ/ 江ノ島さんの一声に注意が逸れた。 その隙を突いて、戦刃さんの隣に席移動する。 「あ、逃げられました」 「……苗木君のクセに生意気ね」 そのまま戦刃さんの隣でタンバリンを打ったりするなど、盛り上げ役に徹して歌わないように逃げの一手を打った。 その後は山田君のアニソン、桑田君のヴィジュアル系バンドの歌、葉隠君のこぶしをきかせた演歌。 舞園さん→江ノ島さん→山田君→桑田君→葉隠君→舞園さん……という一定の歌うサイクルが出来たまま利用時間は終了を告げた。 混雑しているということで延長も出来ないから新年会もお開きとなった。 みんなが満足な顔を浮かべる中、一人だけ物足りない顔を浮かべているのを僕は気づかなかった。 だって、彼女は表情を隠すことに長けているから――  ----- 翌日。 僕はまたカラオケ店にいた。 「ほら、苗木君。早く歌ってちょうだい」 霧切さんと二人っきりで。  どうしてこうなった。 推理小説を読むかのように選曲本のページを捲る霧切さんが言う。 「苗木君の場合、場数を踏めば羞恥心を克服できるはずよ」 「だからって開店からフリータイムってどうなのさ? さすがの僕でも喉が潰れるよ?」 「その心配はないわ、私も歌うから」 「え?」 「昨日あなたの口から言ったでしょ? 私の歌を聞けば自分も歌うって」 た、確かに……。 「私は苗木君の歌を聞きたいがために時間と場所を提供した。  あなたはこの機会を利用して羞恥心を克服すればいい。  そう、これは利害の一致よ。ここまで言えばわかるわね、苗木君?」 「わかりました、霧切さん……」 僕も腹を括って端末を操作し、選曲をする。 こうして僕と霧切さんの「利害の一致」と称したカラオケ大会が幕を開けた。 7時間という長丁場だったけど、おかげで僕は人前で歌うことに抵抗感がなくなった。 そして初めて聞く霧切さんの歌声にドキドキしながら聞いていたのはここだけの秘密だ。 1位 デスペアージュンコ 1000点 2位 センターサヤカ 960点 3位 キングヒフミン 950点 4位 クイーンキョウコ 945点 5位 キャプテンレオン 930点 余談だけど、カラオケの得点ランキングに霧切さんの名前が入っているが、実は僕とデュエットした時に叩き出したスコアだったりする。 今年の一年も、こんな霧切さんに振り回されていくんだろうと確信めいたエピソードだと思う。 霧切さんと一緒に過ごした。 終 ----

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