kk7_138,139,141,151,154,156

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薄暗い中、ぼんやりと目が覚める。 まだ重い頭を動かして枕元の時計に目を向けた後、僕はゆっくりと身体を起こした。 いつもは、もう少しだけ、と寝ている時間なのだけれど、 今日ばかりはそうもいかないだろう。 一月一日。 そう、今日は元日だ。 本当はいつも通りなんだろうけど、何かが変わった、新しくなったような、そんな朝。 その空気を感じながら隣を見やると、彼女はまだ眠っていた。気持ち良さそうに寝息をたてている。 その頬に軽いキスをし、僕は顔を洗いに洗面所へ向かう。 目覚まし代わりに顔に浴びせた水をタオルで拭きながら、僕は頭の中で今日の計画を立てていた。 なにしろ、やらないといけない事が多すぎるからだ。 まずは御節。どこかに注文するという案もあったけれど、どこも予約がいっぱいだったのと どうせ二人しかいないのだから、ということで家で簡単にこしらえることにした。 仕込みはすませてあるし、そう長くはかからない。 その次は初詣。着物に着替える予定だが、それは時間によるだろう。 ただでさえ道が混む。早めに出かけなければ。 その後、一旦家に帰って支度、そして新年のご挨拶。 忙しい日々の中、僕も彼女も実家に帰る機会はほとんどない。 今日はそう遠くない僕の実家に行くことになっている。 そんな感じで軽く予定を反復していく。 過密スケジュールだが、事務所のことを考えるとあまり正月休みをとるわけにもいかない。 今日やれることはすべてやっておかなければならないだろう。あとは……… 彼女の寝顔を覗き込む。が、起きる様子はない。 年末に仕事納めやら事務所の整理やら何やらで忙しかった。通常業務ですら大変疲れる仕事であるのに、その総まとめならなおさら。 特に昨日は朝から晩まで動いていたから、翌日に響くのは当然だ。 早く起きれないのは、仕方ないこと、なのだけれど。 願わくば、二人一緒に初日の出を拝みに行きたかった。もちろん、そんな些細なこと、といわれるのは承知だ。 新年初めての太陽を、新たな年に希望を抱きながら二人で望むのもいいんじゃないかな。 ただそれだけの、僕の思いつき。そのために彼女を起こすわけにはいかない。 少しだけ落ち込んだ自分に、年初めなんだから暗い気持ちじゃだめだ、と言い聞かせ、 台所に立つ。そして、何から始めようかと考え、「あ、年賀状。まだ来てないかな。」と思い至った時。 「あ、」 「新年、開けましておめでとう、誠君。」 彼女(ひどく眠そうだ、眼はほとんど閉じてるし、立ちながらふらふらして今にも倒れそうだ。)が起床したようだ。 「うん、明けましておめでとう、響子さん。」 意外に早いお目覚めだ。座ったらそのまま寝ちゃいそうだけど。 「大丈夫?まだ寝ててもいいんじゃないかな。」 そう聞いてみると、彼女は寝ぼけまなこを擦り(この動作でもたっぷり十数秒は要した)ながら、 そうもいかないわよ、と 「見に行くんでしょう、初日の出。」 どうやら、わざわざそのために、無理して身体を起こしてくれたようだ。 彼女のその行為が嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。 「日の出まであまり時間がないわ、誠君。今すぐ準備を……何をにやにやしているの?」 それから急いで支度を整えて(彼女は顔を洗い、その間に僕は彼女の着替えをすべて用意した) 僕たちは家を出た。 初日の出を見る所といっても有名なスポットとかじゃない。 僕らが選んだのは、近所にある小高い丘のような場所。それでもここから望める景色は ここら一帯では一番いいらしく、ちらほら人がカメラなどを持って集まっていた。 空いているスペースを探し、持参していた折りたたみ椅子を設置して、僕と彼女はそこに腰掛ける。 「なんとか間に合ったみたいだね。」 ほっと一息ついて、僕は口を開いた。 「…起こしてくれれば良かったのに。」 「響子さん、昨日は夜遅くまで頑張ってたからさ、無理に起こすのもどうかと思って。」 「そんな気を利かせなくてもいいわ。あなたとは…恋人同士、のような関係でしょう。」 恋人。確かに世間一般的にいうと、僕らはそういう関係だった。一つ屋根の下で、共に暮らすようになって しばらく経つし、仕事上でも大切なパートナーと呼べる。 それでも、恋人、という響きは何となく恥ずかしくて。僕は別の話題で話をそらしてしまう。 「そういえばさ、初日の出にはその年の決意や願い事をするよね?」 「ええ、そうみたいね。」 「『そうみたい』って響子さん、初日の出を見たことは無いの?」 「海外ではそのような習慣が無かったから…。太陽を拝む、という習慣があるのは おそらく日本くらいじゃないかしら。」 「日本に帰ってきてからも見なかった?」 「そうね、あなたに誘われるまでは考えたことがなかったわ。」 それならさ、と 「今年は響子さんも、何か願い事を」 「待って、誠君…あれを。」 僕は、どうしたの?、と彼女の顔を覗き込む。 彼女の目線の先にはーーー いつもと変わらない日の出、のはずなんだけれど。 どうしてかその景色は、「綺麗だね。」なんて陳腐な言葉で表すのが憚れるほどで。 僕は静かにその特別を眺めながら、確かに新たな時の始まりを実感した。 ーー今年はどんな年になるだろう。 来るであろう「これから」に思いを馳せ、希望に胸を膨らませる。不安は、無い。 そんな気持ちになれたのはきっと 「今年もよろしくね、響子さん。」 「ええ、こちらこそ。」 彼女のような人と一緒なら……この先何が待っていようと、僕はむしろ楽しみだ。 ちなみに、僕は「願い事」のことなんてすっかり忘れていた。 だから彼女の願っていたことなんて知らなかったし、 その内容そして、それが今年中に実現することも、想像だにしてなかったんだ。 「そういえば誠君。あなた、『願い事』の話をしてたわね。」 正月の慌ただしい日々が一段落した後、 自宅でようやくほっと一息ついた時、彼女が唐突にそう切り出した。 「あ…そういえばそうだったね。」 すっかり忘れていた。 「あなたは何をお願いしたのかしら?」 もちろん願い事なんてしてない。 でも、その話題を振った手前、忘れてました、なんて言えないし。 「き、響子さんは何か願い事、したの?」 「私……?…もちろん、…したわ。」 何だろう。言葉と言葉の間に、ものすごく間隔があるような気が…。 「…教えて、ほしい?」 彼女がそう問いかけてくる。若干頬を赤らめて視線をそらしている。 心なしか辛そうに見えるんだけど。 「いや、言いたくないんだったら別に、」 「いえ、言うわ。」 「いやその、だから、無理して言うことでも」 「誠君。口に出さなければ叶わない願い事、というのもあるわ。」 口に出さないと叶わない、願い事…? そんなもの、あるのだろうか。 頭の上に「?」を浮かべる僕をジト目で見た後、彼女は諦めたようにため息をつき、 やがて大きく息を吸いーー決心したようだーーこう言った。 「子供が欲しいわ、誠君。」 あぁ、そういえばーー 学園長が、孫はいつできるのか、なんてことを冗談半分で言ってた気がする(響子さんは 無表情で聞き流していた)。 時々言われるんだよなぁ、高校の同級生にも。 ーーー二人の間にできる最初の子供は……女の子とでたべ!俺の占いは三割当たる!ーーー そんなことを他人事のように思っていると。 「子供が欲しいわ、誠君。」 二回も言わせるな、とばかりに彼女が繰り返す。 「えーーっと、つまり…?」 「誠君、ここまで言えばわかるわね?」 ----
薄暗い中、ぼんやりと目が覚める。 まだ重い頭を動かして枕元の時計に目を向けた後、僕はゆっくりと身体を起こした。 いつもは、もう少しだけ、と寝ている時間なのだけれど、 今日ばかりはそうもいかないだろう。 一月一日。 そう、今日は元日だ。 本当はいつも通りなんだろうけど、何かが変わった、新しくなったような、そんな朝。 その空気を感じながら隣を見やると、彼女はまだ眠っていた。気持ち良さそうに寝息をたてている。 その頬に軽いキスをし、僕は顔を洗いに洗面所へ向かう。 目覚まし代わりに顔に浴びせた水をタオルで拭きながら、僕は頭の中で今日の計画を立てていた。 なにしろ、やらないといけない事が多すぎるからだ。 まずは御節。どこかに注文するという案もあったけれど、どこも予約がいっぱいだったのと どうせ二人しかいないのだから、ということで家で簡単にこしらえることにした。 仕込みはすませてあるし、そう長くはかからない。 その次は初詣。着物に着替える予定だが、それは時間によるだろう。 ただでさえ道が混む。早めに出かけなければ。 その後、一旦家に帰って支度、そして新年のご挨拶。 忙しい日々の中、僕も彼女も実家に帰る機会はほとんどない。 今日はそう遠くない僕の実家に行くことになっている。 そんな感じで軽く予定を反復していく。 過密スケジュールだが、事務所のことを考えるとあまり正月休みをとるわけにもいかない。 今日やれることはすべてやっておかなければならないだろう。あとは……… 彼女の寝顔を覗き込む。が、起きる様子はない。 年末に仕事納めやら事務所の整理やら何やらで忙しかった。通常業務ですら大変疲れる仕事であるのに、その総まとめならなおさら。 特に昨日は朝から晩まで動いていたから、翌日に響くのは当然だ。 早く起きれないのは、仕方ないこと、なのだけれど。 願わくば、二人一緒に初日の出を拝みに行きたかった。もちろん、そんな些細なこと、といわれるのは承知だ。 新年初めての太陽を、新たな年に希望を抱きながら二人で望むのもいいんじゃないかな。 ただそれだけの、僕の思いつき。そのために彼女を起こすわけにはいかない。 少しだけ落ち込んだ自分に、年初めなんだから暗い気持ちじゃだめだ、と言い聞かせ、 台所に立つ。そして、何から始めようかと考え、「あ、年賀状。まだ来てないかな。」と思い至った時。 「あ、」 「新年、開けましておめでとう、誠君。」 彼女(ひどく眠そうだ、眼はほとんど閉じてるし、立ちながらふらふらして今にも倒れそうだ。)が起床したようだ。 「うん、明けましておめでとう、響子さん。」 意外に早いお目覚めだ。座ったらそのまま寝ちゃいそうだけど。 「大丈夫?まだ寝ててもいいんじゃないかな。」 そう聞いてみると、彼女は寝ぼけまなこを擦り(この動作でもたっぷり十数秒は要した)ながら、 そうもいかないわよ、と 「見に行くんでしょう、初日の出。」 どうやら、わざわざそのために、無理して身体を起こしてくれたようだ。 彼女のその行為が嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。 「日の出まであまり時間がないわ、誠君。今すぐ準備を……何をにやにやしているの?」 それから急いで支度を整えて(彼女は顔を洗い、その間に僕は彼女の着替えをすべて用意した) 僕たちは家を出た。 初日の出を見る所といっても有名なスポットとかじゃない。 僕らが選んだのは、近所にある小高い丘のような場所。それでもここから望める景色は ここら一帯では一番いいらしく、ちらほら人がカメラなどを持って集まっていた。 空いているスペースを探し、持参していた折りたたみ椅子を設置して、僕と彼女はそこに腰掛ける。 「なんとか間に合ったみたいだね。」 ほっと一息ついて、僕は口を開いた。 「…起こしてくれれば良かったのに。」 「響子さん、昨日は夜遅くまで頑張ってたからさ、無理に起こすのもどうかと思って。」 「そんな気を利かせなくてもいいわ。あなたとは…恋人同士、のような関係でしょう。」 恋人。確かに世間一般的にいうと、僕らはそういう関係だった。一つ屋根の下で、共に暮らすようになって しばらく経つし、仕事上でも大切なパートナーと呼べる。 それでも、恋人、という響きは何となく恥ずかしくて。僕は別の話題で話をそらしてしまう。 「そういえばさ、初日の出にはその年の決意や願い事をするよね?」 「ええ、そうみたいね。」 「『そうみたい』って響子さん、初日の出を見たことは無いの?」 「海外ではそのような習慣が無かったから…。太陽を拝む、という習慣があるのは おそらく日本くらいじゃないかしら。」 「日本に帰ってきてからも見なかった?」 「そうね、あなたに誘われるまでは考えたことがなかったわ。」 それならさ、と 「今年は響子さんも、何か願い事を」 「待って、誠君…あれを。」 僕は、どうしたの?、と彼女の顔を覗き込む。 彼女の目線の先にはーーー いつもと変わらない日の出、のはずなんだけれど。 どうしてかその景色は、「綺麗だね。」なんて陳腐な言葉で表すのが憚れるほどで。 僕は静かにその特別を眺めながら、確かに新たな時の始まりを実感した。 ーー今年はどんな年になるだろう。 来るであろう「これから」に思いを馳せ、希望に胸を膨らませる。不安は、無い。 そんな気持ちになれたのはきっと 「今年もよろしくね、響子さん。」 「ええ、こちらこそ。」 彼女のような人と一緒なら……この先何が待っていようと、僕はむしろ楽しみだ。 ちなみに、僕は「願い事」のことなんてすっかり忘れていた。 だから彼女の願っていたことなんて知らなかったし、 その内容そして、それが今年中に実現することも、想像だにしてなかったんだ。 「そういえば誠君。あなた、『願い事』の話をしてたわね。」 正月の慌ただしい日々が一段落した後、 自宅でようやくほっと一息ついた時、彼女が唐突にそう切り出した。 「あ…そういえばそうだったね。」 すっかり忘れていた。 「あなたは何をお願いしたのかしら?」 もちろん願い事なんてしてない。 でも、その話題を振った手前、忘れてました、なんて言えないし。 「き、響子さんは何か願い事、したの?」 「私……?…もちろん、…したわ。」 何だろう。言葉と言葉の間に、ものすごく間隔があるような気が…。 「…教えて、ほしい?」 彼女がそう問いかけてくる。若干頬を赤らめて視線をそらしている。 心なしか辛そうに見えるんだけど。 「いや、言いたくないんだったら別に、」 「いえ、言うわ。」 「いやその、だから、無理して言うことでも」 「誠君。口に出さなければ叶わない願い事、というのもあるわ。」 口に出さないと叶わない、願い事…? そんなもの、あるのだろうか。 頭の上に「?」を浮かべる僕をジト目で見た後、彼女は諦めたようにため息をつき、 やがて大きく息を吸いーー決心したようだーーこう言った。 「子供が欲しいわ、誠君。」 あぁ、そういえばーー 学園長が、孫はいつできるのか、なんてことを冗談半分で言ってた気がする(響子さんは 無表情で聞き流していた)。 時々言われるんだよなぁ、高校の同級生にも。 ーーー二人の間にできる最初の子供は……女の子とでたべ!俺の占いは三割当たる!ーーー そんなことを他人事のように思っていると。 「子供が欲しいわ、誠君。」 二回も言わせるな、とばかりに彼女が繰り返す。 「えーーっと、つまり…?」 「誠君、ここまで言えばわかるわね?」 ----

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