kk8_579-581

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//579-581 BI+bFD+U 霧「苗木君ちょっと手伝って欲しい事があるのよ」 苗「何かな?いつもお世話になってるし、僕に出来ることなら何でも手伝うよ。」 霧「来月とある事件の潜入捜査に行かなくちゃ行けないの、危険はほとんど無いから。」 苗「いいよ、霧切さんが僕を頼ってくれて嬉しいし。」 霧「ありがとう。それでね…あなたには私の彼氏役をやってもらいたいの」苗「えっ!!僕が霧切さんの彼氏役を!?」 霧「……嫌なら無理にとは言わないわ………。」 苗「嫌なはず無いよ!…本当に僕なんかが彼氏役でいいの?」 霧「……(アナタだからいいのよ)……」 苗「えっ何か言った?」霧「いいえ別に何も」 霧「危険は無いとはいえそれなりに難しいの、苗木君のように私の助手としてある程度経験を積んでる人じゃないと」 霧「万全を期す為にも普段から恋人のフリを練習する必要があるの」 苗「えぇぇ!そういうものなの?」 霧「そういうものなの!」苗「…はい」 霧「早速だけれど私達は恋人同士という設定で潜入するの」苗「さっきも聞いたよ」 霧「……とにかくそのためにも普段からお互いを名前で呼ぶ必要があるの」苗「うん…普段から?」 霧「そうよ、アナタはバカ正直だからしっかり練習しておかないとすぐ見破られてしまうわ。だから早速練習よ」 苗「う、うん……き、きょう、……響子さん」 霧「…彼女をさん付けで呼ぶ人がいないとは言わないわ、けれど私達は男らしく強気な彼氏と女の子らしいか弱い彼女って設定なのよ」 苗「……えぇぇそんなの聞いてないよ!」 霧「『僕に出来ることなら何でも手伝う』なんて嘘だったのね…」 苗「いや嘘なんか吐いてないよ、だからそんな裏切られたみたいな顔をしないで。」 霧「じゃあ呼べるはずよね」苗「…分かったよ、…響…子」 霧「もっとハッキリと」苗「響子…これでいいだろ」 霧「はい…そういう風にお願いしますね誠君」 苗「!!(ヤバい…そんなしおらしくされたら………)…って僕の事は君付けなんだ…」 霧「そうですよ…私は大人しい彼女で…誠君を立てる女です……こんな所かしら」 苗「僕にはすごく難しいな…でも霧切さんはこんな風に演じるのは慣れてるんだね」 霧「…そうかしらね(…好きな人の前でこんな役を演じるのに慣れてるはずないじゃない)」 苗「でも変に演じるている霧切さんよりいつもの霧切さんの方が僕は好きだな」 霧「(っ!好きって!!)――それは女の子らしい私は変って事かしら?」 苗「いやそれは違うよ!僕はいつもの霧切さんが好きで、女の子らしい一面も勿論好きって事さ。」 霧「急に告白なんて苗木君のクセに生意気ね…でも嬉しいわ」 苗「えっ……い、いやそんなつもりで言ったんじゃ…霧切さんが」霧「響子よ…誠君…」 苗「え…あぁぁ!これも練習の一環だったの?」 霧「ふふふ…さぁどうかしらね(…せっかくいい雰囲気だったのに自分で壊してどうするのよ)」 霧「けれどもっと練習しないといけないようね、今日から二人きりの時はカップルの練習よ誠君!」 苗「…分かったよ……響子。」 ―――――― それから僕達の(主に僕の)特訓が始まった。 彼女曰く「普段から恋人って空気を出せば演技には見えない、まずは自分を欺くのよ。」らしい だから二人きりの時は名前で呼んでいる「響子」「誠君」って それでもまだ完璧じゃない、「霧切さん」って呼ぶのもたまにある――それだけじゃなくこの前なんかクラスの皆の前で「響子」って呼んで皆にからかわれた……。 彼女も事情を説明してくれたらいいのに「誠君」なんて呼ぶからますますヒートアップして大変だった………。 もうすっかりクラス公認(?)のカップル扱いだ、その所為か更に二人きりの時間が増えたんだ。 先週なんか一緒に食堂でご飯を食べてたらアレをされた――そう“アーン”だ……さすがに恥ずかしかったから断ろうとした、けれど彼女が下から覗き込んできて「誠君は…嫌なの?」なんて可愛らしく訊いてくるから断る事なんて出来なかった。 そして今またもやアーンをされている―しかも公園のベンチで彼女のお手製のお弁当をだ。 ハッキリ言ってこの作戦は今の所上手くいっている。 だって彼が鈍感なのがイケナイのだ。 私としてはこんな強硬手段はとりたくなかった。 けれど彼を狙う恋敵がいる以上積極的になるのが必要なのだ。 兵は拙速を尊ぶ、先手必勝が肝なのである。 彼が鈍感なのは仕方ない、今に始まったことではないのだから。それにその天然さ故にこうして人を惹き付けて止まない。 彼を私に振り向かせるために私は外から埋めることにした。――正直言って卑怯な作戦だと思う。 彼を騙して恋人のフリを強要して、周りに私達が付き合っているかの様に錯覚させる。 そして彼を皆から遠ざけ私を見つめる時間を増やす――それも擬似恋人として接することで彼に意識をさせる。 少しどころかかなり回りくどい作戦だ。 けれどそれが功を奏しているようで、彼女以外には効果は覿面だった。そう舞園さん以外には…。 彼女は自身をエスパーとうそぶくように、私に匹敵するぐらいの洞察力と観察力を持ち合わせている。 けれど私は誠君の事が好き。彼も間違いなく私に好意を抱いている。―これは彼を観察し続けていて分かったことだ。 だから彼女は半信半疑だったのだ。だから私は皆の前で「誠君」と彼の名前を呼んだのだ。 それだけで諦める程彼女は手ぬるい相手ではなく、私は羞恥心を抑え込んで食堂で―他の生徒もいる中であんな思い出すだけで顔から火が出そうな暴挙に出た。 彼も私の事を好いていると実感した。 そして今日ここに来るまでに確信した。 私から誘ったデート――彼には「訓練の成果を確認するため」とだけ伝えていたのだが、彼が――彼から手を握ってくれたのだ。 ―――――― 最近僕は不思議なことにいつも彼女といる。 二週間ほど前には考えられない頻度で、決して短くない時間をだ。 最初に彼女に声をかけたのはいつも彼女が一人でいたからだ。僕は平凡な人間で少しだけ前向きなのが取り柄。 だからそれぞれの分野の才能を持つ人達に憧れ、友達になれたらいいな――そんな考えで積極的に話しかけていたんだ。 僕の何が気に入られたのかは分からないけど僕は皆と仲良くなった。 そうして皆と仲良くしている時にふと気になったんだ…いつも一人でいる彼女が。 ほとんど必要な事以外喋らない、表情も面に出さない彼女の事がどうしてか気になって積極的に関わりを持とうとしたんだ。 結果時間はかかったけれど彼女の抱えてる複雑な事情や秘密の一部を知り打ち解ける事ができたんだ。 そうして成り行きで彼女の助手のような事をして今に至る。 ――そう今に至る………。思えば一体いつからだろう彼女の事を意識し出したのは、少なくとも潜入捜査の件よりももっと前だろう。 気がつけば彼女の事を目で追っていた、彼女の事を考えていた。 そこであの訓練である。 お陰様でもう意識せずとも彼女の事を名前で――「響子」と呼べるようになっていた。 そして訓練の成果がどうこう言っていたが、これはデートの誘いであろう。 本来なら僕の方から誘わなければならない所を彼女にさせてしまった。 だから僕はせめてものエスコートをと思い、彼氏として響子の手を握ったのだ。 そんな慣れない事をした所為なのか いくら知り合いに会わなさそうな遠くの公園に来ているとはいえ、外で――しかも公衆の面前でこんな羞恥プレイをされるなんて……。 誠君は顔を真っ赤にしながら私のお弁当を食べてくれていると。 勿論彼がされるがままのハズもなく、私の顔も彼に負けじと真っ赤だ。 しばらくして――お弁当の食べさせあいが終わり、他愛のない話をしていると彼が突然「膝枕をして欲しい」と言ってきた。 私は驚いて彼を見つめて見たが、彼が「恋人同士なら普通にするよね」なんて言うものだから。 彼の望むままに膝枕をしてあげた。 すぐに可愛らしい寝息が聞こえてきて、私は幸せを感じると共に罪悪感を覚えた。 このまま時が止まればいいのに―そうすればこの幸せをずっと味わっていられる。そうすれば彼を騙している罪悪感から逃れられる。 そんな複雑な胸中を知ってか知らずか誠君が「好きだよ響子」なんて寝言を言うから。 ……彼が悪いのだ。 それといつの間にか彼の唇が目の前にあるのが。そうして私は誘われるままにキスをした……。 ―――――― 響子に膝枕を頼んだのは別に眠かったからでも、恋人っぽく振る舞おうと思ったからではない。 彼女の本当の気持ちを知りたかったのだ。 だから僕は狸眠りをし、薄目を開けて様子を観察していたんだ。 そうしたら切なそうな顔をした彼女の顔が見えて「好きだよ響子」って寝言のフリで本心を伝えた。 薄目を開けて響子の唇が近づいてくるのを見て、目を閉じたんだ。 ―――――― チュ 響「んっ……んむ…ちゅぱ……」――ぷはっ……ちゅ…くちゅ…… 誠「ん~~!?んむむっ」――ハァ…ハァ……ちゅ…ぴちゅ…… 誠「……ハァ…ハァ…響子」響「……誠…君………」 誠「…何でこんな濃厚なキスを?」響「恋人同士なら普通でしょ」 誠「いやこんな白昼堂々舌は入れないでしょ」 響「だってアナタが可愛いからいけないのよ」 誠「いやその理屈はおかしいよ、それに僕初めてのキスだったのに…。」 響「あら?私もよ。だから初めては本当に好きな人にって決めてたの」 誠「それって…演技じゃなくて本心……?」 響「そもそも何とも思ってない人に恋人のフリをしてくれ――何て頼まないわ、仮に頼んだとしてもこんな練習する必要無いもの。」誠「じゃあやっぱり……」 響「ここまで言えばわかるわね?……それじゃあさっきの続きを」誠「ちょっと待って、さも当然の様にキスしようとしないでよ」 響「いいじゃない、私は誠君の事が好き。誠君は私の事が好き。何も問題ないでしょ」 誠「僕が好きってキチンと言ってないでしょ」 響「…何を言っているのかしら、アナタが寝たふりしていたなんてすぐ分かったわ。」誠「バレてた?」 響「あら本当に起きてたの…てっきり無意識下で私を求めているのかと」 誠「カマをかけたのか……」響「私を騙そうなんて生意気よ」ガバッ 誠「ちょ本当にアグレッシブ過ぎるよ!」 響「自分の気持ちに素直になるって決めたの。誠君の寝顔を見てたら誰かのモノになる前に私のモノにしなきゃって」 誠「僕の意思は?」響「……嫌なの?」 誠「嫌じゃないよ」響「ならちゃんと言って」 誠「僕は霧切響子さんのことが好きです。」 響「よく言えました。……さて言質もとれたことだしキスの続きを――」誠「だから積極的過ぎだって――――んんんんっ!」 ――後日――とある一室のベッドで 誠「…そう言えば潜入捜査はいつ行くの?今なら一分の隙もなく恋人だよ」 響「潜入捜査?……あぁそう言えばそんな事言ってたわね」誠「え…?」 響「あれは嘘よ。気づいてなかったの?」 誠「嘘なの?……そんな騙すなんて酷いよ」 響「ごめんなさい、でも誠君を手に入れるために仕方なくついた嘘なの。許して頂戴」 誠「ずるいよ、そんな事言われたら許すしかなくなるじゃないか。」 誠「(でもいつも響子に甘いのはいけないな。これからの事を考えるとたまには僕の威厳も見せないとな)」 誠「いいよ。響子の事は許す。その代わり足腰立たなくしてあげるから――」 響「え!まだするの!?もう限界―――」

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