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二つのマグカップに出来立てのコーヒーを淹れる。
猫のイラストが描かれた白いカップは響子さんのもの。
犬のイラストが描かれているのは僕の方。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
僕のカップにはスティックシュガーとコーヒーフレッシュをそれぞれ注ぐ。
ティースプーンでゆっくりかき混ぜ、響子さんが手にしているコーヒーとは違う色彩になる。
「それにしても今夜は冷え込むよね。お風呂も少し熱めにしたんだけどな……」
「その効果が持続しなかったから、こうして別の方法で暖を取るんじゃないかしら?」
「……ごもっともです」
自分の吐く息で少しだけ温度を冷ます。
香りを少し堪能してから一口。
熱が唇から舌へ、そして喉へと流れていく感覚だ。
「……子供の頃の話だけど、コーヒーの匂いだけは好きだったんだ」
「匂い、だけ?」
「そう。パック飲料のコーヒーは甘くて飲めたんだけど、父さんが飲んでいたインスタントは苦過ぎて飲めなかった」
「コーヒーとコーヒー入り乳飲料では違いがあるのも当然ね」
「それでも飲んでみたい気持ちがあったから砂糖を入れたり、牛乳を入れたりして苦さを克服しようとしたんだ」
「……だったら今、この場で努力の成果を試してみる?」
そうして、自分の持っていたカップを僕の目の前に差し出す。
僕のカップにある液体より黒く、そして香ばしいブラックコーヒー。
「では、早速……」
白いカップに口を付けると、響子さんが持っているカップを飲みやすいよう傾けてくれる。
熱い。
最初に出てきた感想は「苦い」ではなく「熱い」だった。
それはそうだ。録に冷まさず飲んだからだ。
そして口の中で転がすように味わっても、舌の味覚は苦さしか訴えてこない。
飲み込んだところで、まだ舌にコーヒーが残っているような感覚だ。
「……ブラックの良さがわかるのは当分先のようね」
僕が感想を言う前に、響子さんは溜め息雑じりに判定していた。
「……ごもっともです」
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