kk7_585

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二つのマグカップに出来立てのコーヒーを淹れる。 猫のイラストが描かれた白いカップは響子さんのもの。 犬のイラストが描かれているのは僕の方。 「はい、どうぞ」 「ありがとう」 「どういたしまして」 僕のカップにはスティックシュガーとコーヒーフレッシュをそれぞれ注ぐ。 ティースプーンでゆっくりかき混ぜ、響子さんが手にしているコーヒーとは違う色彩になる。 「それにしても今夜は冷え込むよね。お風呂も少し熱めにしたんだけどな……」 「その効果が持続しなかったから、こうして別の方法で暖を取るんじゃないかしら?」 「……ごもっともです」 自分の吐く息で少しだけ温度を冷ます。 香りを少し堪能してから一口。 熱が唇から舌へ、そして喉へと流れていく感覚だ。 「……子供の頃の話だけど、コーヒーの匂いだけは好きだったんだ」 「匂い、だけ?」 「そう。パック飲料のコーヒーは甘くて飲めたんだけど、父さんが飲んでいたインスタントは苦過ぎて飲めなかった」 「コーヒーとコーヒー入り乳飲料では違いがあるのも当然ね」 「それでも飲んでみたい気持ちがあったから砂糖を入れたり、牛乳を入れたりして苦さを克服しようとしたんだ」 「……だったら今、この場で努力の成果を試してみる?」 そうして、自分の持っていたカップを僕の目の前に差し出す。 僕のカップにある液体より黒く、そして香ばしいブラックコーヒー。 「では、早速……」 白いカップに口を付けると、響子さんが持っているカップを飲みやすいよう傾けてくれる。 熱い。 最初に出てきた感想は「苦い」ではなく「熱い」だった。 それはそうだ。録に冷まさず飲んだからだ。 そして口の中で転がすように味わっても、舌の味覚は苦さしか訴えてこない。 飲み込んだところで、まだ舌にコーヒーが残っているような感覚だ。 「……ブラックの良さがわかるのは当分先のようね」 僕が感想を言う前に、響子さんは溜め息雑じりに判定していた。 「……ごもっともです」 ----

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