kk7_862-865

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民法第817条第2節、特別養子縁組の成立――。 その内容は戸籍上で実の親との関係を断ち切って、引き取った里親との間には実の子と同じ扱いになる養子制度だ。 先ほど喫茶店で父さんと別れたその足で市役所に行き、戸籍謄本を取り寄せた。 そして市内の図書館で六法全書を片手に、父さんの言っていた宿題の詳細を調べていたところだ。 しかし、見つけ出した単語を見て僕は思わず凍り付いてしまった。 戸籍上では僕の欄には「続柄:子」と書いていたけど、"817条に2による裁判確定に基づく入籍である旨"という言葉も含まれていた。 もし、これが本当の話だったら前述した特別養子縁組を成立させるには、いくつかの条件があるらしい。 一つ目は養親となる霧切家の両親は25歳以上の夫婦であり、僕を引き取ることに同意していること。 二つ目は僕が養子になった時の年齢。原則6歳未満で、物心ついた頃から僕の傍に姉さんがいたからこれも成立している。 最後に家庭裁判所に審判を請求すること。 それらの条件を満たしていれば、法的に僕は霧切家の長男として扱うことになっている。 「……あんまり実感が湧かないな」 自動販売機コーナーで一息していて、調べ物の"宿題"をやった感想だ。 "衝撃の事実"というレベルも大きすぎると、事の重大さを認識するまで時間がかかるかもしれない。 ある日突然、僕の元に"私があなたを産んだ父さんと母さんだよ"って見知らぬ夫婦が訪ねてきても感動の再会になるだろうか――? 答えは、Noだ。 物心ついた頃から僕の傍には姉さんがいたし、僕は父さん似で姉さんは母さんに似ていると思っていたほどだ。 だけど見た目はそっくりでも、中味の方は明確な違いが出てしまったけれど。探偵の質があるか否かで……。 血が繋がってない事実が本当だとしても、僕にとっては霧切家の人達が家族だと認識している。 その理由を述べるとしたら――やはり、姉さんが関係している。 一緒にいた頃は外を走り回る姉さんの後を追いかけてばかりだったし、離れ離れになったら誕生日やクリスマスなどのメッセージカードを送りあっていた。 それでお互いの近況報告はしていたし、疎遠になったという実感はそんなになかった。 僕の唯一の取り柄であるほんの少しだけ前向きなところが、この時ほどありがたいとは思わなかった。 自分の築き上げてきたものが足元から崩れ落ちるような感覚に陥りそうだけど、何とか踏みとどまれていけそうだ。 「それに……この話は僕と父さんだけの秘密にしておけばいいじゃないか」 たとえ血の繋がりがない姉弟という関係であっても、霧切響子という女性は僕の姉さんだ――。 そんなことを考えていたらマナーモードにしていた携帯電話が震える。 確認してみると噂をすれば何とやら、姉さんだった。 ----------------------------------------- 【From】 響子姉さん 【Sub】 早く帰ってきなさい -----------------------------------------  誠、これ以上寄り道しないで  帰宅することを勧めるわ。  それと、夕飯の献立は  昨夜と同じ煮込みハンバーグを希望するわ。  今すぐ用意しなさい。   ----------------------------------------- 僕はいつから姉さんのおさんどんになったんだろう。 姉さんは僕を「MACO'sキッチン」か何かと勘違いしてないだろうか……? ----------------------------------------- 【To】 響子姉さん 【Sub】Re:早く帰ってきなさい -----------------------------------------  あのねぇ、姉さん…    「煮込み」っていうのは  出来上がるのに時間がかかるから  「煮込み」って言うんだよ?  そんな無茶苦茶なお願いしてると夕飯は  オリーブのオリーブオイル揚げ  (カルパッチョ風)になるよ? ----------------------------------------- 確かに姉さんがやって来るということで、昨夜の夕食は奮発して手間隙のかかった料理だった。 仕上がりも上々で二人して完食したにも関わらず、また同じものを作ってほしいだなんて……。 ついつい悪態をついてしまう。 ----------------------------------------- 【From】 響子姉さん 【Sub】 ちょっと -----------------------------------------  そんなふざけた料理を  一度でも出してみなさい。  タダじゃ済まないわよ?  誠の作るおいしいご飯が食べたいの。  だからお願い、早く帰ってきて。 ----------------------------------------- 僕の冗談を真に受け止めたのか、煽り耐性がないのかはわからない。 それに、何だか僕が道草を食っていることに罪悪感を感じてきそうだ。 これも姉さんの策略の一つだろうか? ----------------------------------------- 【To】 響子姉さん 【Sub】…ごめん -----------------------------------------  昨日の煮込みハンバーグには  及ばないけど、手早く出来る  オムそばなら用意できるよ?  スーパーで食材を購入して帰るから、  もう少しだけ待っててもらえる? ----------------------------------------- オムレツ用の卵は冷蔵庫の残り物で問題ないな。 後は焼きそば、具のキャベツと豚バラ肉は使いきれる量で買うとしよう。 ----------------------------------------- 【From】 響子姉さん 【Sub】 わかったわ -----------------------------------------  期待して待ってるから。  それと、お風呂の準備は私にまかせて。 ----------------------------------------- ----------------------------------------- 【To】 響子姉さん 【Sub】Re:わかったわ -----------------------------------------  ありがとう、姉さん。  助かるよ。 ----------------------------------------- ----------------------------------------- 【From】 響子姉さん 【Sub】 礼なんて -----------------------------------------  いらないわ。  私は借りを返しているだけだから。 ----------------------------------------- そんなメールの遣り取りをしながら、スーパーで食材選びをする。 夕方ということもあり、見切り品のコーナーで1/4カットのキャベツを取る。 明日から寄宿舎生活だから食材は使い切らないといけないし。 でも姉さんが義理のお姉さんか……。 今までと違って一人の女性として接することが僕に出来るか? 「……いや」 豚バラ肉のパックを片手に、ゆるりと首を振った。 「いやいや」 傍から見たら、このお肉の鮮度はないだろうと否定しているように見えるだろう。 「いやいやいやいやいやいや……」 うん、確かにまぁ姉さんは顔を含めてスタイルは抜群だ。 でも問題は中味の方。 姉さんは猫のような属性で、懐いている人には遠慮しないが初対面の人には警戒する習性がある。 やっぱり"怪我"の一件が尾を引いて、友人といった信頼関係を築くのは大変時間が掛かるだろう。 一方で僕のように信頼できる人には思ったことをズバズバ言って、遠慮がない。 昨日の今日で姉さんの特徴を把握できた僕の結論だ。 そんなものだから、姉さんと結婚する人は余程の物好きかもしれない。 猫のように振り回されて、おまけに探偵だ。 たとえ家の中にいて疚しいことをしていなくても、盗聴や家宅捜索などの身辺調査をするかもしれない。 ……着いて早々、エッチな本を捜索されて没収された被害者の僕が言うから信憑性はあると思う。 嫁ぎ先の相手がいないまま独身で過ごす事になるであろう姉さんに、昨日まで弟の僕は頭を抱えていたけれど――。 父さんの言っていた"超高校級の希望"になったら結婚相手が見つかりそうだ。 でも、姉さんのことだから父さんの話なんて聞く耳持たないだろうなぁ……。 "だったら立候補するか? お前も超高校級の希望に――" それに義理の家族と知った今、僕もその"超高校級の希望"の候補に名乗っても問題ないことがわかった。 仮に僕と姉さんが父さんの計画通りに"超高校級の希望"になったとしよう。 そのまま大人、大人から夫婦になって"超高校級の希望"育成計画なんてものを想像してみる。 『姉さん、僕の子供を産んでほしいんだ!』 『誠のクセに生意気ね。……でも、スナオなのは嫌いじゃないわ』 ツンとした態度を浮かべながらも、満更でもなさそうな姉さんの姿が浮かんだ。 「それはないよ……」 言葉で否定しても顔が真っ赤になるくらいドキドキしていた。 結局、帰宅してオムそばを作ったけれど、買い物中に想像した姉さんの姿がチラチラと過ぎってしまう。 その度にオムそばを食べている姉さんが訝しげな視線を向けて、僕は顔を赤らめてしまうという悪循環に陥る。 「……食事中の相手をジロジロ見るのはマナー違反よ」 「そ、そんなわけじゃないよ! 姉さんが美味しそうに食べているから嬉しいなって、ハハ……」 「? そう。ならいいわ……」 お互い気まずい沈黙の中で食事が終了し、食器を浸け置き洗いにして先にお風呂をいただいた。 そして入れ替わりで姉さんがお風呂に入っている間に、手早く洗い物を済ませて自分の部屋に引きこもっていた。 メールでの遣り取りは問題ないのに、目の前にいるとなると途端にギクシャクしてしまう。 やっぱり僕は、姉さんを一人の女性として意識してしまっているらしい――。 続く
民法第817条第2節、特別養子縁組の成立――。 その内容は戸籍上で実の親との関係を断ち切って、引き取った里親との間には実の子と同じ扱いになる養子制度だ。 先ほど喫茶店で父さんと別れたその足で市役所に行き、戸籍謄本を取り寄せた。 そして市内の図書館で六法全書を片手に、父さんの言っていた宿題の詳細を調べていたところだ。 しかし、見つけ出した単語を見て僕は思わず凍り付いてしまった。 戸籍上では僕の欄には「続柄:子」と書いていたけど、"817条に2による裁判確定に基づく入籍である旨"という言葉も含まれていた。 もし、これが本当の話だったら前述した特別養子縁組を成立させるには、いくつかの条件があるらしい。 一つ目は養親となる霧切家の両親は25歳以上の夫婦であり、僕を引き取ることに同意していること。 二つ目は僕が養子になった時の年齢。原則6歳未満で、物心ついた頃から僕の傍に姉さんがいたからこれも成立している。 最後に家庭裁判所に審判を請求すること。 それらの条件を満たしていれば、法的に僕は霧切家の長男として扱うことになっている。 「……あんまり実感が湧かないな」 自動販売機コーナーで一息していて、調べ物の"宿題"をやった感想だ。 "衝撃の事実"というレベルも大きすぎると、事の重大さを認識するまで時間がかかるかもしれない。 ある日突然、僕の元に"私があなたを産んだ父さんと母さんだよ"って見知らぬ夫婦が訪ねてきても感動の再会になるだろうか――? 答えは、Noだ。 物心ついた頃から僕の傍には姉さんがいたし、僕は父さん似で姉さんは母さんに似ていると思っていたほどだ。 だけど見た目はそっくりでも、中味の方は明確な違いが出てしまったけれど。探偵の質があるか否かで……。 血が繋がってない事実が本当だとしても、僕にとっては霧切家の人達が家族だと認識している。 その理由を述べるとしたら――やはり、姉さんが関係している。 一緒にいた頃は外を走り回る姉さんの後を追いかけてばかりだったし、離れ離れになったら誕生日やクリスマスなどのメッセージカードを送りあっていた。 それでお互いの近況報告はしていたし、疎遠になったという実感はそんなになかった。 僕の唯一の取り柄であるほんの少しだけ前向きなところが、この時ほどありがたいとは思わなかった。 自分の築き上げてきたものが足元から崩れ落ちるような感覚に陥りそうだけど、何とか踏みとどまれていけそうだ。 「それに……この話は僕と父さんだけの秘密にしておけばいいじゃないか」 たとえ血の繋がりがない姉弟という関係であっても、霧切響子という女性は僕の姉さんだ――。 そんなことを考えていたらマナーモードにしていた携帯電話が震える。 確認してみると噂をすれば何とやら、姉さんだった。  -----------------------------------------  【From】 響子姉さん  【Sub】 早く帰ってきなさい  -----------------------------------------   誠、これ以上寄り道しないで   帰宅することを勧めるわ。   それと、夕飯の献立は   昨夜と同じ煮込みハンバーグを希望するわ。   今すぐ用意しなさい。    ----------------------------------------- 僕はいつから姉さんのおさんどんになったんだろう。 姉さんは僕を「MACO'sキッチン」か何かと勘違いしてないだろうか……?  -----------------------------------------  【To】 響子姉さん  【Sub】Re:早く帰ってきなさい  -----------------------------------------   あのねぇ、姉さん…     「煮込み」っていうのは   出来上がるのに時間がかかるから   「煮込み」って言うんだよ?   そんな無茶苦茶なお願いしてると夕飯は   オリーブのオリーブオイル揚げ   (カルパッチョ風)になるよ?  ----------------------------------------- 確かに姉さんがやって来るということで、昨夜の夕食は奮発して手間隙のかかった料理だった。 仕上がりも上々で二人して完食したにも関わらず、また同じものを作ってほしいだなんて……。 ついつい悪態をついてしまう。  -----------------------------------------  【From】 響子姉さん  【Sub】 ちょっと  -----------------------------------------   そんなふざけた料理を   一度でも出してみなさい。   タダじゃ済まないわよ?   誠の作るおいしいご飯が食べたいの。   だからお願い、早く帰ってきて。  ----------------------------------------- 僕の冗談を真に受け止めたのか、煽り耐性がないのかはわからない。 それに、何だか僕が道草を食っていることに罪悪感を感じてきそうだ。 これも姉さんの策略の一つだろうか?  -----------------------------------------  【To】 響子姉さん  【Sub】…ごめん  -----------------------------------------   昨日の煮込みハンバーグには   及ばないけど、手早く出来る   オムそばなら用意できるよ?   スーパーで食材を購入して帰るから、   もう少しだけ待っててもらえる?  ----------------------------------------- オムレツ用の卵は冷蔵庫の残り物で問題ないな。 後は焼きそば、具のキャベツと豚バラ肉は使いきれる量で買うとしよう。  -----------------------------------------  【From】 響子姉さん  【Sub】 わかったわ  -----------------------------------------   期待して待ってるから。   それと、お風呂の準備は私にまかせて。  -----------------------------------------  -----------------------------------------  【To】 響子姉さん  【Sub】Re:わかったわ  -----------------------------------------   ありがとう、姉さん。   助かるよ。  -----------------------------------------  -----------------------------------------  【From】 響子姉さん  【Sub】 礼なんて  -----------------------------------------   いらないわ。   私は借りを返しているだけだから。  ----------------------------------------- そんなメールの遣り取りをしながら、スーパーで食材選びをする。 夕方ということもあり、見切り品のコーナーで1/4カットのキャベツを取る。 明日から寄宿舎生活だから食材は使い切らないといけないし。 でも姉さんが義理のお姉さんか……。 今までと違って一人の女性として接することが僕に出来るか? 「……いや」 豚バラ肉のパックを片手に、ゆるりと首を振った。 「いやいや」 傍から見たら、このお肉の鮮度はないだろうと否定しているように見えるだろう。 「いやいやいやいやいやいや……」 うん、確かにまぁ姉さんは顔を含めてスタイルは抜群だ。 でも問題は中味の方。 姉さんは猫のような属性で、懐いている人には遠慮しないが初対面の人には警戒する習性がある。 やっぱり"怪我"の一件が尾を引いて、友人といった信頼関係を築くのは大変時間が掛かるだろう。 一方で僕のように信頼できる人には思ったことをズバズバ言って、遠慮がない。 昨日の今日で姉さんの特徴を把握できた僕の結論だ。 そんなものだから、姉さんと結婚する人は余程の物好きかもしれない。 猫のように振り回されて、おまけに探偵だ。 たとえ家の中にいて疚しいことをしていなくても、盗聴や家宅捜索などの身辺調査をするかもしれない。 ……着いて早々、エッチな本を捜索されて没収された被害者の僕が言うから信憑性はあると思う。 嫁ぎ先の相手がいないまま独身で過ごす事になるであろう姉さんに、昨日まで弟の僕は頭を抱えていたけれど――。 父さんの言っていた"超高校級の希望"になったら結婚相手が見つかりそうだ。 でも、姉さんのことだから父さんの話なんて聞く耳持たないだろうなぁ……。 "だったら立候補するか? お前も超高校級の希望に――" それに義理の家族と知った今、僕もその"超高校級の希望"の候補に名乗っても問題ないことがわかった。 仮に僕と姉さんが父さんの計画通りに"超高校級の希望"になったとしよう。 そのまま大人、大人から夫婦になって"超高校級の希望"育成計画なんてものを想像してみる。 『姉さん、僕の子供を産んでほしいんだ!』 『誠のクセに生意気ね。……でも、スナオなのは嫌いじゃないわ』 ツンとした態度を浮かべながらも、満更でもなさそうな姉さんの姿が浮かんだ。 「それはないよ……」 言葉で否定しても顔が真っ赤になるくらいドキドキしていた。 結局、帰宅してオムそばを作ったけれど、買い物中に想像した姉さんの姿がチラチラと過ぎってしまう。 その度にオムそばを食べている姉さんが訝しげな視線を向けて、僕は顔を赤らめてしまうという悪循環に陥る。 「……食事中の相手をジロジロ見るのはマナー違反よ」 「そ、そんなわけじゃないよ! 姉さんが美味しそうに食べているから嬉しいなって、ハハ……」 「? そう。ならいいわ……」 お互い気まずい沈黙の中で食事が終了し、食器を浸け置き洗いにして先にお風呂をいただいた。 そして入れ替わりで姉さんがお風呂に入っている間に、手早く洗い物を済ませて自分の部屋に引きこもっていた。 メールでの遣り取りは問題ないのに、目の前にいるとなると途端にギクシャクしてしまう。 やっぱり僕は、姉さんを一人の女性として意識してしまっているらしい――。 [[【続く】>>kk7_869-878]] ----

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