kk9_25-30

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「んっーー」 腕を突き上げて伸びをする、背中の筋が伸びた。それと同時に少しだけ眠気が覚める。 「どうしたの霧切さん?腕を伸ばしたりして、なんだか眠そうだね」 まだ教室には私達しかいないようで、私の隣に座る苗木君が話しかけてきた。 「寝不足なのよ。――最近どうしても解けない謎があって、ね」 「霧切さんでも解けない謎があるんだ?」 「えぇ、その謎について知れば知るほど謎が深まっていくのよ」 何せ今まで経験したことの無い問題なのだから 「……すごく難しい問題みたいだね。僕で良かったら少しは手伝うよ」 「霧切さんの助手だし、役に立ちたいんだ」 「……助手、ね……。結構よ」 そんな義務感で手伝うなんて、言わないでほしい 「――あなたに手伝ってもらう方が余計にややこしくなるもの」 「そんなー」 「気持ちだけ受け取っておくわ、ありがとう苗木君」 私の悩み事の原因が分かってて言ってるのかしら ――翌日―― 「おはよう霧切さん」 「……おはよう、苗木君…」 また教室には私達しかいないようだ 「ふぁ~……ごめんなさい…だめね…全然寝付けないわ」 「霧切さんがあくびしてるところ初めて見たよ」 そりゃ私だって人間だ、あくびくらいするわ 「ふぁ~~ごめんなさい…どうしても眠くて」 「やっぱり、例の謎が解けないの?」 「……そうなの、本当にごめんなさいね」 「こんな恥ずかしい事、普通ならしないのだけれど」 こんなだらしない姿は人には見せられない。 でも苗木君の前では不思議と落ち着く 「そんなこと気にしなくていいよ。…だって僕と霧切さんの仲じゃないか」 「!……あなたはよっぽど私の事を睡眠不足にしたいようね……」 「え?どういうこと?」 「苗木君のクセに生意気ね」 私がアナタの事で悩んでるって、知ってるのかしら……今日も眠れそうにないわね…。 ―さらに翌日― 「おはよ…!霧切さん…目の下のクマが」 「………あぁ、苗木君…おはよう」 今日は教室に入る前に苗木君に出会った…… 「もう諦めなよ……どんなに大切な謎なのかは僕にはわからないけど」 「それで霧切さんが体調崩したら意味がないよ」 「いいえ……この程度の…謎を解け…なくて…何が探偵よ…必ず…解いて……みせるわ」 「もう限界じゃないの!?」 確かに限界が近い…… 「苗木君…ごめんなさい、15分だけ仮眠を取らせてもらうわ」 「いい…?きっちり15分よ……」 「分かったよ」 霧切さんは空き教室に机に伏せっている。 …何でも仮眠をとるには寝転ばない方がいいらしい …15分じゃどう考えても少ないな、もうちょっと寝かせてあげよう それにしても霧切さんの寝顔 「カワイイな……」 つぶやいた途端、急に悪戯したい気にかられた。 ……ダメだ、霧切さんは僕を信用してくれてるんだから ……でも本当にカワイイな。――多分僕しか知らない霧切さんの寝顔。 見てたらどんどん引き寄せられる。 キレイな白い肌、艶やかなまつ毛、目鼻立ちが整った顔。 いつもは感情を押し殺して、たまに険しくなる顔も、今は穏やかになっている。 さっきから時計の針の音と霧切さんのわずかな寝息しか聞こえない。 ……僕の激しく高なる心音を除けば。 約束の15分はとうに過ぎた。 ダメだ、ダメだ。待て、早まるな、落ち着け苗木誠。 寝ている霧切さんに今から行おうとすることは、酷い裏切りになるんじゃないだろうか 構わない。 どうせグッスリ眠っているんだ。起きやしないさ。 いつも助手をやっている正当な報酬だって。 これくらいの役得があっても別に罰は当たらないよ。 僕の中の陳腐な天使と悪魔が争っている。 普段の僕なら天使が勝つはずだった。 けれど、今回勝利したのは…… 「ごめんね、霧切さん。……でもアメとムチって言うでしょ?たまにはご褒美も必要だと思うんだ」 自分に都合のいい解釈をして…… 霧切さんの唇に、あたかも誘蛾灯に吸い寄せられる哀れな蛾の様に フラフラと吸い寄せられていった…… 後30cm……もう自分の心音しか聞こえない。 20㎝……耳がキーンとする。視界を占めるのは霧切さんの唇だけ。 10㎝……頭がクラクラする、血が頭に集まりすぎているのだろう。 興奮しているのに冷静だ。僕も目を閉じた。もう一秒もしない内に僕は霧切さんの唇を奪う。 言いようのない優越感の様なものが体を駆け巡った――その時だった。 「…なえ…ぎ……くん」 まさか目を覚ましたんじゃ!?恐る恐る目を開いた…… が、霧切さんの目は閉じられたままだった……。 冷や汗をだらだらかきながら、少し距離を取った。 ……危ないところだった。僕は危うく犯罪者になるところだった。 ――それも霧切さんを傷付ける最低の……。 思い止まれて本当に良かった。――そう安堵した瞬間! 「…なえ…くん……あなた…わた…のこと…どう…おも……」 「わたし……あな……こと………すき……」 一部聞き取れなかった所はあった。 が……もしかして、霧切さんは僕のこと……… そう思った途端、まともに霧切さんの顔が見れなくなった。 照れや気恥ずかしさではない。――激しい罪悪感だ。 僕は何てことをしようとしたのだろう。 それに仮に霧切さんが僕のことを好きであろうと無かろうと 僕を信頼してくれていた霧切さんを裏切った。 霧切さんを裏切った。――その罪悪感だけで胸が張り裂けそうだ。 さっきとはベクトルの違う胸の痛み。 ごめんなさい、ごめんなさい霧切さん。 僕は霧切さんを起こして、一目散に空き教室から逃げ出した。 ―――――― 「15分って言ったのに」 「ごめんなさい、ごめんなさい霧切さん」 「……そんなに謝らなくても平気よ…お陰で少しは体が楽になったもの」 「ごめんね。僕ちょっと体調崩したみたいで、今日は早退するよ」 「私のせいかしら?なら私も早退しようかしら」 「いや、霧切さんは授業受けなよ」 「でも苗木君は……」 「一人で大丈夫だし…とにかくごめんね」 「苗木君!……私が寝てる間に何かあったのかしら」 「霧切さん、それは私が教えてあげます!」 「舞園さん!?……あなた何か知ってるの?」 突然、開いたままの扉から級友の舞園さんが入ってきた。 「えぇ、私エスパーですから。実は……………ということでして」 「……えっ!苗木君が私に……?それは本当なの?」 「はい!だって私、一部始終…じゃなかった。エスパーですから」 何か不穏な言葉が聞こえた気がしたけれど、完全に覚めていない頭では処理できなかった。 苗木君が私に………。それってつまり……いや、確証がもてない内は断定できない。 どうやら寝不足はまだまだ解決しそうにない。 ――こうなったら直接苗木君に問いたださないと。 ―――――― どこをどう走ったか覚えてはいないけれど、僕は自室にいる。 何てことをしてしまったんだ…… 無防備な霧切さんの寝顔を見ていたらつい――なんて言い訳にもなりはしない。 今なら衝動的に罪を犯してしまった人の気持ちがよくわかる。 さっきの光景が脳裏をよぎる。……カワイイな ……って、反省しろ!この馬鹿!! 何とか踏み止まれたから良かったものの、明日からあわせる顔が無いよ……。 「ごめん霧切さん……」 思わず口をついた相手のいない謝罪 すると同時に霧切さんの顔がフラッシュバックする。 最初に会ったときは、無表情だった霧切さん。 ……次第にクラスにとけ込んでいって色んな表情を見せてくれるようになった。 ――もっとも僕にしかその違いは分からないらしいが。 罪を憎んで人を憎まず。 よほど悪意をもって犯行を行った者は別として。……霧切さんは犯人には寛容だ。 けれど僕を許してくれるだろうか。――万が一許してもらえても自分を許せそうにないが。 そんな風に、霧切さんと過ごしてきた色んな思い出達が、頭の中を縦横無尽に駆けめぐる。 ……そして今日の出来事を思い出す。――胸が苦しい、ズキズキ痛む。 「ごめんね霧切さん……ごめんなさい」 自業自得とはいえ、明日からまともに霧切さんの顔が見れないだろう。 ……辛い、今までの僕はどれほどの幸運の持ち主だったか…ようやく理解できた。 今までずっと霧切さんの傍にいれたんだ。その幸運を全て自分で台無しにしてしまった。 できる事なら、さっきの邪な考えを持った自分を殴り飛ばしたい。 オイ、よく考えろよ。霧切さんは眠っていて気付いてなかったろ? 明日からも今まで通り普通にしてれば、何も問題ないだろう。 大体あれは脈アリだって、寝言は無意識下で思ってることが―― ゴンっ……鈍い音が室内に響いた。 「っっっ!!」 今度はちゃんと殴れた。 本当は大和田クン…いや大神さんにやってもらいたいくらいだ。 結局その日は一睡もできなかった。 霧切さんに対する謝罪と罪悪感、それに自分を戒めていたら……。 ピンポーン 誰だろこんな早朝に 「はい……っ!霧切さん!」ダメだ、まともに顔が見れない。 「おはよう苗木君、体調はどう?」 「うん?……あぁバッチリだよ」 自分で言ったことを忘れてた……それに昨日一睡もしていないからバッチリとは言えない。 「そう……。ね、部屋に入れてもらってもいいかしら?」 「えっ、ちょっ、ちょっと霧切さん!?」 僕の返事を待たずにズカズカと部屋に入る霧切さん 「ねぇ苗木君、どうしてあんなことしたの?」 「!!あ…あんなことって……?」 霧切さんに見えないように手を後ろにやりながら、その手をつねった。 「……とぼけたって無駄よ」 いつだって真実を見抜く霧切さんの目 ――だけどいつも頼りになるその目を今日は見ることができない。 それでもプレッシャーは伝わってくる。観念しよう。 霧切さんに嫌われても仕方ない。 「……ごめんなさい…つい出来心で…」 気の弱い犯人が言うような弁解 「つい?」 絶対怒ってるよ。…いや仕方ない。 怒られて当然、下手すれば二度と口を聞いてくれないかも。 ――それならせめて、僕の気持ちだけでも 「本当にごめんなさい。許してもらえるとは思えないけど、これだけは言わせてほしい」 「……霧切さんがカワイイから、あの無防備な寝顔がとても素敵だったから」 「だからつい……」 「………あなたは可愛い女の子が寝顔を晒していたら、キスしようとするのかしら?」 「それは違うよ!…キス、しようとしたのは霧切さんだから……」 「……好きな女の子だからだよ!!」 昨日一晩寝ずに考えて出た結論だ……。 どうして自分でも驚くような蛮行に出たのか……理由はシンプルだ。 好きだから……霧切さんのことが好きだからだ! 「!!好きだから……そう。苗木君…目をつむって……つむりなさい!」 「……はいっっ」 おそらく平手打ちがとんでくるのだろう…歯も食いしばった。 これで許してくれたら嬉しい、そんなはず無いのに。 あぁ目の前に霧切さんの気配を感じる。 ぶたれるっ――けれど僕が予想していた衝撃は一向に訪れず。 「私もよ」 代わりに唇に柔らかい感触を覚えた。 「!?○☆△!!?」 「これでやっと、グッスリ眠れるわ……」 そのまま僕を下敷きに、ベッドへ倒れ込む霧切さん 今日初めて見た霧切さんの顔は赤く染まっていて……目の下のクマも酷くなっていた。 「あなたが私の睡眠不足の原因よ…お休みなさい」 「それと、いくら好きでも眠っている時にするのは感心しないわね」 そう言って僕に覆い被さっりながら、寝息をたて始めた霧切さん。 一方僕の方も顔を真っ赤にしてはいるが、霧切さんのようには眠れなかった。 確かに僕も寝不足だが、この状況で眠れるはずもない。 文字通り目と鼻の先に霧切さんの唇があるが、正にいま釘を刺されたところだ。 僕は生き地獄というやつを体験している。 霧切さんの柔らかい体、温かい体温、とてもいい香り、予想外に軽い体、そして鼻をくすぐる吐息 理性が限界を迎えそうだ。 何とか葉隠クンのスクール水着で気を紛らわせようとするが その度に霧切さんが身をよじったり、「…なえぎくん…」と僕に囁いたり……。 もう無理、…もう無理。 僕のちっぽけな理性が今まさに敗れようとした時 「苗木くん大丈夫ですか?いくら寮内でも戸締まりくらは…」 この声は……舞園さん! 「ご、ごめんなさい!いつまで経っても部屋から出てこないんで!」 「いや、あの!」 「すいません、急いで出ますね!本当にごめんなさい」 「皆には風邪をひいて休むって伝えておきます。…お大事に」 状況を説明することなく舞園さんは出て行ってしまった。 「行っちゃった…。どうしよう、誤解…でもないのか、いやそういう問題じゃ……」 「う~ん……どうかしたの苗木君?」 「い、いや……その」 「?…まだ眠り足りないわ、おやすみなさい」 ぎゅっと僕を抱きしめた霧切さん。 む、胸が…… 「えっ!霧切さん、ちょっと…それはまずいよ……」 随分とすり減ってしまった理性の糸は、ぷちんと断ち切れてしまったのだった。 ごめんね霧切さん。

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