苗木の受難?

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「や、やめてよ皆! 正気に戻って!」  僕、苗木誠は、今寄宿舎の脱衣所の壁に追い詰められている。  目の前からじりじりと僕を追い詰めているのは、山田君、不二咲さん、葉隠君、腐川さ…もとい、ジェノサイダーさんの四名。  その瞳はどこか狂気を孕んでいるようにすら感じられ、僕はさながら肉食獣に狙われる鹿、もしくはジェノサイダーさんに狙われる被害者だ。  まあ、後者に関してはあながち間違っていないのだが。  そんなことを考えているうちにも、皆は僕に迫ってくる。  手にはそれぞれ思い思いの得物。それを見る僕の、意外と芯の方は冷静みたいで、これはもう逃げられないな、なんて覚悟を決めていたりする。 「うわあああぁぁぁぁ!!」  そして僕は、四人の魔手に絡め取られてしまったのだった――。 「苗木君!? 一体何が――」  ああ、どうやら僕の悲鳴を聞きつけて霧切さんが来てくれたみたいだ。  でも時既に遅し、というやつだ。僕はもはや、変わり果てた姿になってしまっているのだから。  自分でも、こんな姿を霧切さんに見せたくはないけど、仕方ないよね。僕は自分の姿を隠しきることも出来ないのだから。  霧切さんの目が驚きで見開かれているのが分かる。こんなことになって、もしかしたら嫌われてしまうかな。 「苗木……君…?」  僕をこんな姿にした張本人である四人は、まるで自分達の芸術作品を見せびらかすかのように、ただ立っていた。  霧切さんが僕に向ける視線を遮らないように、ご丁寧に僕の横に並ぶようにして、にやにやと笑いながら。  舞園さんじゃないけど、エスパーじゃなくても四人の考えていることが分かるようだ。「どうだ」ってね。 「……っ!」  霧切さんは顔を俯かせると、きびすを返して走り去っていってしまった。  どんな表情をしていたのかは僕には分からなかったけど、もしかしたら本当に嫌われてしまったかもしれないな。  無理もないだろう。だってこんな……こんな―― 「酷いよ皆。なんだってこんな……」  僕にこんな、女装なんてさせるんだ!  髪をストレートに梳かして、服は女子生徒用の制服(葉隠君が購買で買ってきた)、顔には軽くメイク(監修:江ノ島さん)を施され、山田君の要望で、なぜか袖が余って手が半分隠れるくらいのカーディガンを着せられた。  こんな格好を見られたりなんかしたら、霧切さんが走り去るのも当然だろう。 「はぁ……あ、ちょ、写真はやめてよ!」  溜め息をついて失望に浸る暇すら与えられずに、山田君が様々な角度から写真を撮ってくる。  それを止めさせて、周りの皆から揉みくちゃにされ、着替えて部屋に戻る頃にはもう一日が終わろうとしていた。 「つ、疲れた……」  あまりの疲労感にベッドに倒れこんだ僕は、部屋の鍵をかけるのも忘れ、そのまま眠り込んでしまった。 「ん……」  妙な圧迫感というか、不思議な感覚を感じて目が覚めた。  目を閉じていてもまぶたの裏に感じる明るさ。そういえば、電気をつけたままで寝てしまったんだっけ。  ガタガタガタッ! 「え、な、何!?」  と、いきなり大きな音が鳴り響き、寝ぼける間もなく飛び起きる。すると、部屋の中には人影が。 「き、霧切さん!? ど、どうして僕の部屋に? それも、カメラなんて持って……」 「そ、それは……」 「そ、それより大丈夫? なんか、転んだみたいな音が……?」  起き上がって霧切さんに駆け寄ろうとするが、なにか違和感を感じて立ち止まる。  腕が動かしづらいような気がしてふと見てみると、僕はなぜか女子生徒用制服を身に纏っていたのだった。 「え、ええ!? な、なんで?」 「……ぃ」 「え?」 「……しょうがないじゃない、似合ってたんだもの。ふ、深い意味はないわ。ただ、ファッション的な興味というか、マネキンを観察するのと似た種類の興味というか……」  しどろもどろに話し始める霧切さん。こんな霧切さんを見るのは初めてかもしれない。 「え、っていうか、霧切さん、僕のこと嫌って逃げてったんじゃなかったの?」 「あれは、どうしたらいいかわからなかったから……。それに、この程度で苗木君のこと嫌うわけがないじゃない。どんな格好をしていても苗木君は苗木君だもの」 「……ちょっと複雑だけど、ありがとう」 「それで、一つお願いがあるのだけれど」 「あ、大丈夫。霧切さんが部屋に入ったこととか、この服着せたこととかは誰にも言わないよ」 「そうじゃなくて……その、よかったらまた今度、女装……してくれないかしら?」 「え゛?」 ----
「や、やめてよ皆! 正気に戻って!」  僕、苗木誠は、今寄宿舎の脱衣所の壁に追い詰められている。  目の前からじりじりと僕を追い詰めているのは、山田君、不二咲さん、葉隠君、腐川さ…もとい、ジェノサイダーさんの四名。  その瞳はどこか狂気を孕んでいるようにすら感じられ、僕はさながら肉食獣に狙われる鹿、もしくはジェノサイダーさんに狙われる被害者だ。  まあ、後者に関してはあながち間違っていないのだが。  そんなことを考えているうちにも、皆は僕に迫ってくる。  手にはそれぞれ思い思いの得物。それを見る僕の、意外と芯の方は冷静みたいで、これはもう逃げられないな、なんて覚悟を決めていたりする。 「うわあああぁぁぁぁ!!」  そして僕は、四人の魔手に絡め取られてしまったのだった――。 「苗木君!? 一体何が――」  ああ、どうやら僕の悲鳴を聞きつけて霧切さんが来てくれたみたいだ。  でも時既に遅し、というやつだ。僕はもはや、変わり果てた姿になってしまっているのだから。  自分でも、こんな姿を霧切さんに見せたくはないけど、仕方ないよね。僕は自分の姿を隠しきることも出来ないのだから。  霧切さんの目が驚きで見開かれているのが分かる。こんなことになって、もしかしたら嫌われてしまうかな。 「苗木……君…?」  僕をこんな姿にした張本人である四人は、まるで自分達の芸術作品を見せびらかすかのように、ただ立っていた。  霧切さんが僕に向ける視線を遮らないように、ご丁寧に僕の横に並ぶようにして、にやにやと笑いながら。  舞園さんじゃないけど、エスパーじゃなくても四人の考えていることが分かるようだ。「どうだ」ってね。 「……っ!」  霧切さんは顔を俯かせると、きびすを返して走り去っていってしまった。  どんな表情をしていたのかは僕には分からなかったけど、もしかしたら本当に嫌われてしまったかもしれないな。  無理もないだろう。だってこんな……こんな―― 「酷いよ皆。なんだってこんな……」  僕にこんな、女装なんてさせるんだ!  髪をストレートに梳かして、服は女子生徒用の制服(葉隠君が購買で買ってきた)、顔には軽くメイク(監修:江ノ島さん)を施され、山田君の要望で、なぜか袖が余って手が半分隠れるくらいのカーディガンを着せられた。  こんな格好を見られたりなんかしたら、霧切さんが走り去るのも当然だろう。 「はぁ……あ、ちょ、写真はやめてよ!」  溜め息をついて失望に浸る暇すら与えられずに、山田君が様々な角度から写真を撮ってくる。  それを止めさせて、周りの皆から揉みくちゃにされ、着替えて部屋に戻る頃にはもう一日が終わろうとしていた。 「つ、疲れた……」  あまりの疲労感にベッドに倒れこんだ僕は、部屋の鍵をかけるのも忘れ、そのまま眠り込んでしまった。 「ん……」  妙な圧迫感というか、不思議な感覚を感じて目が覚めた。  目を閉じていてもまぶたの裏に感じる明るさ。そういえば、電気をつけたままで寝てしまったんだっけ。  ガタガタガタッ! 「え、な、何!?」  と、いきなり大きな音が鳴り響き、寝ぼける間もなく飛び起きる。すると、部屋の中には人影が。 「き、霧切さん!? ど、どうして僕の部屋に? それも、カメラなんて持って……」 「そ、それは……」 「そ、それより大丈夫? なんか、転んだみたいな音が……?」  起き上がって霧切さんに駆け寄ろうとするが、なにか違和感を感じて立ち止まる。  腕が動かしづらいような気がしてふと見てみると、僕はなぜか女子生徒用制服を身に纏っていたのだった。 「え、ええ!? な、なんで?」 「……ぃ」 「え?」 「……しょうがないじゃない、似合ってたんだもの。ふ、深い意味はないわ。ただ、ファッション的な興味というか、マネキンを観察するのと似た種類の興味というか……」  しどろもどろに話し始める霧切さん。こんな霧切さんを見るのは初めてかもしれない。 「え、っていうか、霧切さん、僕のこと嫌って逃げてったんじゃなかったの?」 「あれは、どうしたらいいかわからなかったから……。それに、この程度で苗木君のこと嫌うわけがないじゃない。どんな格好をしていても苗木君は苗木君だもの」 「……ちょっと複雑だけど、ありがとう」 「それで、一つお願いがあるのだけれど」 「あ、大丈夫。霧切さんが部屋に入ったこととか、この服着せたこととかは誰にも言わないよ」 「そうじゃなくて……その、よかったらまた今度、女装……してくれないかしら?」 「え゛?」 ----

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