kk12_935-937

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私、霧切響子にとってこの手袋の下の傷痕は誰にも見せたくないものだ。 あまりにも酷く醜いこの火傷を、何も知らない他人は目を背ける。 彼だけ――苗木君だけは違った。 ――僕は霧切さんが好きなんだ! あの人によって希望ヶ峰学園に入学させられて半年ほど…… 季節が秋へと移ろうそんな時期に苗木君から受けた告白。 嬉しかった。 同時に悲しかった。 何も言わず静かに手袋を外して彼に右手を見せた。 一瞬、言葉を詰まらせた苗木君がそこにいた。 (これでいいの……) この手は探偵という裏の世界の住人である私と何も知らない彼との境界線。 助手として色々と手伝ってもらっているとはいえ本格的に浸かるには苗木君は優しすぎるから。 その優しさを、その笑顔を曇らせたくなかった。 だけど苗木君は私の右手を握り締めていた。 ――僕には霧切さんのこの傷の痛みや背負ってるものを完全に理解することはできない。 誰も彼もが目を背けてきたこの手を握り締めて彼が放った言弾は私を撃ち抜き…… ――でも一緒に分け合うことはできると思う……だから泣かないで 私は久しく流さなかった涙を流し彼を受け入れた。 授業もない休みの日 私は探偵としての依頼もないので食堂でセレスさんと紅茶を飲んでいた。 ここにはテレビもあるため桑田君や大和田君がチャンネル争いをしている。 今日は珍しく石丸君も参加していた。 「むっ、桑田君。ちょっと今のニュースを見せてくれたまえ」 「はぁっ?ニュースなんていいだろ別に」 少しでいい、という条件で戻されたチャンネルでは火災のニュースがちょうど読み上げられていた。 ――された少女を救助した希望ヶ峰学園の生徒である男子生徒が怪我をし――病院に運ばれました その場にいた全員が息をのんだ。 今日出かけた生徒は一人だけ。 特定するのは簡単だった。 「っ!」 走る。 幸い近くの病院であり走って行ける距離だ。 駆け出した私の耳にもうクラスメートの声は入っていなかった。 病院に着いた私はすぐに受付を済ませ彼のいる病室へと向かう。 「あっ、霧切さん」 ベッドから体を起こす苗木君は多少の擦り傷あどはあるが軽傷であった――その両手以外は。 「ははっ、大した怪我じゃないんだけど検査が……」 彼が話している内容が耳に入らない。 私はその手だけしか目に入らない。 「霧切さん……?」 私の視線に気づいた苗木君はその先を追い気づく。 「……何があったの?」 「……買い物途中で火災に気づいたんだけど逃げる途中で家族とはぐれた女の子がいたんだ」 苗木君は超高校級の幸運と呼ばれている。 「助けなきゃ!って思ったらその子の手を握って、ただひたすら歩いてた」 しかしその裏でもうひとつ呼ばれている名前がある。 「何とか防火扉までたどり着いてこの子の為に早く開けようと」 今回のような事故などに巻き込まれやすい事から…… 「真っ赤に焼けたドアを握って開けたんだ」 超高校級の不運、と 彼の包帯の巻かれた両手を握る。 この包帯の下には私と同じような火傷の傷痕。 「辛くないの……?」 思わず苗木君に聞いてしまっていた。 辛くないはずないのに…… 「辛くないって言ったら嘘になるかな……でも後悔はしてないよ」 そう言った苗木君を直視できず握ったその手を撫でる。 「……どうして?」 「不謹慎かもしれないけどさ……霧切さんと同じになれたんだなって」 「苗木君……」 「僕たちだけにしか分かり合えない絆のカタチ、そんな風に考えたら悪い事でもない気がするんだ」 本当なら怒るべきところだと分かっている。 でも怒れなかった。 だって私はその言葉に安堵してしまっていたから。 「……なら手袋、選ばないといけないわ」 「そうだね。霧切さん、選ぶの手伝ってくれるよね?」 選ぶ、といってももう私たちの間でどんな手袋にするのか決まっていた。 それは目に見える新しい絆なのだから。
私、霧切響子にとってこの手袋の下の傷痕は誰にも見せたくないものだ。 あまりにも酷く醜いこの火傷を、何も知らない他人は目を背ける。 彼だけ――苗木君だけは違った。 ――僕は霧切さんが好きなんだ! あの人によって希望ヶ峰学園に入学させられて半年ほど…… 季節が秋へと移ろうそんな時期に苗木君から受けた告白。 嬉しかった。 同時に悲しかった。 何も言わず静かに手袋を外して彼に右手を見せた。 一瞬、言葉を詰まらせた苗木君がそこにいた。 (これでいいの……) この手は探偵という裏の世界の住人である私と何も知らない彼との境界線。 助手として色々と手伝ってもらっているとはいえ本格的に浸かるには苗木君は優しすぎるから。 その優しさを、その笑顔を曇らせたくなかった。 だけど苗木君は私の右手を握り締めていた。 ――僕には霧切さんのこの傷の痛みや背負ってるものを完全に理解することはできない。 誰も彼もが目を背けてきたこの手を握り締めて彼が放った言弾は私を撃ち抜き…… ――でも一緒に分け合うことはできると思う……だから泣かないで 私は久しく流さなかった涙を流し彼を受け入れた。 授業もない休みの日 私は探偵としての依頼もないので食堂でセレスさんと紅茶を飲んでいた。 ここにはテレビもあるため桑田君や大和田君がチャンネル争いをしている。 今日は珍しく石丸君も参加していた。 「むっ、桑田君。ちょっと今のニュースを見せてくれたまえ」 「はぁっ?ニュースなんていいだろ別に」 少しでいい、という条件で戻されたチャンネルでは火災のニュースがちょうど読み上げられていた。 ――された少女を救助した希望ヶ峰学園の生徒である男子生徒が怪我をし――病院に運ばれました その場にいた全員が息をのんだ。 今日出かけた生徒は一人だけ。 特定するのは簡単だった。 「っ!」 走る。 幸い近くの病院であり走って行ける距離だ。 駆け出した私の耳にもうクラスメートの声は入っていなかった。 病院に着いた私はすぐに受付を済ませ彼のいる病室へと向かう。 「あっ、霧切さん」 ベッドから体を起こす苗木君は多少の擦り傷あどはあるが軽傷であった――その両手以外は。 「ははっ、大した怪我じゃないんだけど検査が……」 彼が話している内容が耳に入らない。 私はその手だけしか目に入らない。 「霧切さん……?」 私の視線に気づいた苗木君はその先を追い気づく。 「……何があったの?」 「……買い物途中で火災に気づいたんだけど逃げる途中で家族とはぐれた女の子がいたんだ」 苗木君は超高校級の幸運と呼ばれている。 「助けなきゃ!って思ったらその子の手を握って、ただひたすら歩いてた」 しかしその裏でもうひとつ呼ばれている名前がある。 「何とか防火扉までたどり着いてこの子の為に早く開けようと」 今回のような事故などに巻き込まれやすい事から…… 「真っ赤に焼けたドアを握って開けたんだ」 超高校級の不運、と 彼の包帯の巻かれた両手を握る。 この包帯の下には私と同じような火傷の傷痕。 「辛くないの……?」 思わず苗木君に聞いてしまっていた。 辛くないはずないのに…… 「辛くないって言ったら嘘になるかな……でも後悔はしてないよ」 そう言った苗木君を直視できず握ったその手を撫でる。 「……どうして?」 「不謹慎かもしれないけどさ……霧切さんと同じになれたんだなって」 「苗木君……」 「僕たちだけにしか分かり合えない絆のカタチ、そんな風に考えたら悪い事でもない気がするんだ」 本当なら怒るべきところだと分かっている。 でも怒れなかった。 だって私はその言葉に安堵してしまっていたから。 「……なら手袋、選ばないといけないわ」 「そうだね。霧切さん、選ぶの手伝ってくれるよね?」 選ぶ、といってももう私たちの間でどんな手袋にするのか決まっていた。 それは目に見える新しい絆なのだから。 ----

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