ms3_628-631

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2月14日 希望ヶ峰学園にて 「うおぉぉ!?ついに俺にも愛の女神が降りてきたんだべか!?」 「もう…義理チョコ位で大げさですって!」 「いやぁ~やっぱりあのオッサンからオーパーツをしこたま買っといてよかったべ!あれさえあれば俺の人生は今後ウハウハらしいからなぁ!」 「…聞いてませんね…まぁ、いつも通りですか」 朝から舞園さんはあんな風にクラスの男女問わずチョコを配っている。 その度に今のみたいな面倒な絡みがあるんだけど、その全てを華麗に躱しているあたり、彼女のスルースキルは相当のものだ。 …とか何とか客観的に評価を下してみてはいるものの、ボク―苗木誠―も内心非常に穏やかでは無かった。 と言うかむしろ、どんなチョコなんだろう、とか、ホワイトデーにはお返しをした方がいいのかな、とかを妄想してしまう程度には荒れ狂っていた。 「あ、十神君!バレンタインのチョコです、どうぞ!」 「チッ…貴様は俺にそんな粗末なシロモノを喰わせるつもりなのか?冗談も大概にしてもらいたいな…」 「むぅ…そんなこと言わずに受け取って下さいよ…確かに十神君にとっては粗末な安物かも知れないですけど…仕方ないじゃないですか。一応、義理なんですし…」 「何ッ!?貴様、まさかこの俺へのチョコレートが『義理チョコ』でしかも『安物』だと!?どういうことだ!説明しろ!!」 「十神君の本命は腐川さんだけで十分ですよ♪」 「クッ…!言わせておけば貴様…!!」 あの十神クンまでいいようにあしらってる…これが芸能界を生き抜いてきた人の強かさってヤツだろうか。…いや、今のは十神クンが勝手に墓穴を掘っただけか? それにしても舞園さん、いつボクにくれるんだろう…無難に昼休みとかかな…?あぁぁ…待ち遠しい… なんやかんやで待ちに待った昼休みがやって来た。 ボク等のクラスは大概皆仲が良い。とはいえ、やっぱりその中でも特に仲のいい連中とのグループ昼休みは過ごすわけで。 例えば不二咲クン&大和田クン&石丸クン&桑田クンとか、セレスさんon山田クンとか。 ボクは基本、舞園さんとか霧切さんとかと一緒なんだけど…それは流石に今日はちょっと躊躇われる。 何となくだけど、スゴくチョコ欲しがってる人っぽく見えちゃうんじゃないかな、と思ったからだ(まぁ、別に間違っちゃいないんだけど)。 というわけで、今日は大和田クンたちと席を共にさせてもらった。 「いや~マジでアレだよな~!モテる男はこの時期ツラいよなぁ~!」 「む?ツラい、とはどういうことだね桑田くん!まさかキミは毎年のようにチョコレイトを貰っているんじゃないだろうな!  今日のように!もしそうなのだとしたら、僕はキミと戦わねばならなくなってしまうぞ!!」 「大袈裟だなオイ!…にしても、イインチョはマジメだねぇ…けどよぉ…テメーだって今日、舞園ちゃんからチョコ貰ってるよなぁ?それって校則違反なんじゃないんスかぁ~?」 「な…!?ち、違う!これは舞園くんが僕に押し付けてきただけで…つまりこれは舞園くんがだな………えぇい!」 そんな感じでチャラ男vs委員長のバトルが白熱してきた頃、大和田クンと不二咲クンの話もなかなか興味深くなってきていた。 「なぁ、不二咲…」 「ん?なぁに?」 「前から思ってたけどよ…お前、今までこの時期どうやって過ごしてたんだ?適当に友チョコでも作ってたのか?」 「うぅん…僕って機械操作以外のことはあんまり得意じゃなくって…僕も舞園さんみたいに上手に作れたら、日頃の感謝とか込めて皆に作ってあげたかったんだけどぉ…」 「やめとけ…ゼッテー、お前からチョコ貰った奴の過半数がお前の性別を忘れちまうぜ…」 「そうかなぁ…う~ん、残念…」 …ん?『舞園さんみたいに』なんて言えるってことは… 「ねぇ…ちょっと、いいかな?」 「ん?どーしたよ、苗木?」 「大和田クンも不二咲クンも、もう舞園さんからチョコ貰ったの?」 「うん、貰ったよぉ。ねぇ、見て見て!このチョコ!凄くカワイイよねぇ!」 「わざわざ見せなくても、皆一緒だろ…流石に全員に違うの作れるほど超高校級のアイドルはヒマじゃねえって」 「あ、そっか…ていうか、苗木君はまだ貰ってないの?」 「うん…そうなんだよね…」 「意外だな。舞園のことだから、てっきり朝イチにテメーには渡し終わってんのかと思ってたぜ」 「うぅ~ん…」 地味に傷ついた。結局この昼休みでボクが得たものは、胸に刻まれた傷だけだった。 「はあああぁぁぁぁぁ………」 ボクは夕焼けに染まる教室で1人、大きめの溜息をついていた。 あれから結局舞園さんがボクにチョコを渡そうとしてくることもなく、放課後を迎えてしまった。 (何か嫌われるようなことしちゃったかなぁ…全員配布で貰えないなんて…) 「ああぁぁぁぁ……………期待してた頃のボクを全力でぶん殴りに行きたいよ……」 「『期待してた頃』って何を期待してたんですか?」 「そりゃ、バレンタインデーなわけだからチョコの一つくらいはさ…って」 「?」 「ええぇぇ!?ま、舞園さん!?いつからそこに!?」 「今来たばっかりですけど…どうしたんですか、そんなに驚いて?」 「いや、別に何でもないよ!」 「ふぅ~ん、そうですか…」 「そうそう…何でもないんだって」 微妙に気まずい空気が流れる。…素直に「チョコ下さい!」とか「何でチョコくれなかったの?」とか言っといたほうが良かっただろうか? 「ところで、苗木君。今日が何の日か、知ってますか?」 「知ってるも何も…バレンタインデーでしょ?何でまたそんなことを…」 「そうです。バレンタインです!バレンタインデーに女子が男子に話しかける…それはつまり、何を意味しているでしょうか?」 「え…?そりゃ普通、チョコをあげる…とか?」 「大正解です!ハイ、どうぞ。苗木君!」 舞園さんはそう言うとおもむろに、ピンク色の包装紙に包まれた小さな箱をバックから取り出して手渡してきた。 「え?これってまさか!?」 「ハイ。多分、苗木君が期待してたものであってますよ」 ボクが期待してたもの…要は、チョコレートだ。それにしても… 「あ、ありがとう…でもさ、舞園さん。何でボクには皆と一緒のタイミングでくれなかったの?てっきりボクだけハブられてるのかと思ったよ…」 「え?……苗木君、女の子にそんなことを言わせるなんて…卑怯ですよ」 「ひ、卑怯って…!」 「じゃあヒントです。その①・苗木君にあげたチョコをよく見てみて下さい。その②・私が苗木君にチョコをあげるタイミングを他の皆とずらしたのにはちゃんとした理由があります。  …ここまで言えば分かりますね?」 若干不満顔の舞園さんは、どこかで聞いたことがあるような決め台詞と共に、そんな問題を突きつけてきた。 包装紙を丁寧に取り外し、ボクが貰ったチョコをよく見て…ってあれ?これ、不二咲クンたちが貰ってたのと違う!? …そういえば、妹がこの時期になると「じょーしき的に考えて、本命の人に義理と同じチョコをあげる人って、万死に値するよね~」とかよく言ってたな… …この証拠から考えられる答えは、これしか無い! ―閃きアナグラム開始! ほ ん め い ――そうか分かったぞ! ………っていうか、開始した時には既に埋まってたぞ!? 「まさかこれ…『本命チョコ』ってこと…!?」 「ふふふっ、どうでしょうね?」 「えぇーっ…ここまでやらせておいてそんな返答って…!」 「それより、苗木君…顔真っ赤ですよ?どうかしましたか?」 「えっ…?!だ、だって…」 「あ、大丈夫ですよ。言いたいことは分かりますから!私、エスパーなので」 何とか弁明を図ろうとしても、舞園さんがすぐにこんな感じの言葉を被せてくるからマトモに反論もできない。 「舞園さんの方から聞いてきたクセに…」 だからこそ、毎回ボクはこんな小言を言うことでしか彼女に反撃できないのだ。我ながら情けない。 …でも、何だかんだ言いつつもボクは、今のこの舞園さんとの距離感を気に入ってたりもする。 舞園さんがボクをからかい、対応の言葉に詰まるボクを見て、朗らかに微笑む。 そんな今日みたいな、何気ない日常が…ボクは大好きだ。 だから、そんな幸せな日常を…これからも、舞園さんの隣で過ごして行きたい。 大好きな、舞園さんの隣で。 【終】 -----

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