kk13_258-261

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「ふぅ…今日も疲れたなぁ…そうだ、霧切さん、何か飲む?」 「そうね…じゃあ、いつも通りでお願いするわ」 ジャバウォック島での事件の後処理に追われた日の終わり、霧切さんとボクはそんな会話を繰り広げていた。 「はぁ…酷い目に遭った…。まさか本部の人たちがあんなにしつこく聞いてくるなんて…」 「あのね、苗木君…そのしつこい本部の人たちを振り切れたのは誰のおかげだと思ってるの?」 「うん、それは感謝してるって…ありがとう、霧切さん」 「まったく…あなた1人だと心配だったから付いて行ってあげたけど…案の定、だったわね。そのせいで寝不足気味だわ…。少し、仮眠を取らせて…」 そう言うが早いか、霧切さんはソファの上で寝息を立て始めた。 (ホントにありがとう…霧切さん…) いつもなら見られない彼女の無防備な寝顔を覗きこみ、コーヒーの準備を始めた。が、 「あっ、インスタントしか無いや…」 どうやらドリップは在庫切れのようだ。インスタントで済ますしか無い…本格派の霧切さん的には不満かもしれないけど、まぁ、そこは我慢してもらおう。 ヤカンを火にかけて、暫くは暇になる。 (はぁ…暇だ。何か時間つぶしになるモノないかな…) そう思い、部屋をグルっと見回す。そして、最終的にボクが目をつけたのは… 「霧切さんって…いつもは頼り甲斐のある人だけど…やっぱり、こうやって見てみると同い年の女の子、って感じだなぁ…」 霧切さん、だった。 そもそも、動機なら前からちょっとはあったはずだ。 今日だって、ボクが1人で未来機関の上層部の人たちと会談をしに行くのを『心配だ』とか言って付いてきたし……まぁ、それでボクが何とか助かったのも事実なんだけど。 兎も角、霧切さんは多分、ボクを『頼れる男として』信用してくれてないんだ。 だから、いつかどうにかして霧切さんにボクだってやれば出来る子なんだって、思い知らせてやりたかった。 けど…霧切さんの寝顔を見てたら、何て言うか…背徳心的なものが心のなかに芽生えて…えっと…それで、ボクは今、彼女にこんなことを―イタズラを―している。 イタズラって言っても、そんな大それたことはしていない。中学生とかがよくやる、瞼のとこに眼を書く、いわば『寝てるのに起きてる人』状態の落書きをしてるだけだ。 (…これって、更にボクって頼りない―しかも、なかなかにクズな―男になってる…?…いや、ここまで来たらやり通そう!希望は前に進むんだ!大丈夫、洗えば落ちる!) 持ち前の前向きで自分を鼓舞して、いざ!一筆入魂…ッ! 「………ぅ…うぅ…ん…」 ペンを瞼の上に置いた瞬間に霧切さんがそんな声を出すもんだから、ボクは異常に焦った。 しかし、それは杞憂だったみたいだ。起きる気配も、ボクに気づいている気配も無い。 「…やれやれ、だ…」 そのまま慎重に眼を書き進めていき、右眼は完全に書き終わった。 「予想以上に面白く出来ちゃったな…」 思わず漏らしてしまったその言葉の通り、寝てるのに起きてる人状態の霧切さんの顔は、いつものキリッとした表情とは似ても似つかない、実に滑稽な仕上がりになった。 (写真とっとこ…) ケータイを探すため、霧切さんに背中を向ける。その直後、背後で何かが動く気配がした。 (……!!) 恐怖のあまり、ボクの脳は『硬直する』以外の選択肢を全て捨ててしまった。 が、いつまでたっても彼女はそれ以上のRe:アクション…もとい、リアクションを示してこない。 それどころか、微かに寝息まで聞こえてくる始末だ。 (よかった…寝相か、寝返りかだったんだな…) 安心して振り返る。すると、バッチリ霧切さんと目があった。 「………………アポ…?」 不意にそんな言葉を発してしまうくらい、ボクは状況を理解できなかった。 (あれ?さっきまで寝息立ててたのに…!?) そこに発想が至った時点で、ボクはまだ霧切さんが寝息を立て続けていることに気がついた。 「…もしかして…寝てる…?!」 そう、霧切さんは眼を開けたままで寝ていた。しかも微妙に寝相が悪いのか、ソファから身体が半分ほどずり落ちた状態で。 「アイタタタ…霧切さん…。でも、やっぱここはちゃんとソファに寝かせてあげたほうがいいよなぁ…」 さっきあんなことをしといて言うのもアレだけど、疲れてる彼女を今のうちだけでも労ってあげようとは思ったので 「仕方ないな…」口ではそんなことを言いつつ、しっかり彼女を元の体勢に戻してあげる事にしたのだが… 「…眼が開いてるから起きてるのか寝てるのか分かんないなぁ…」 ただでさえ霧切さんを起こさないように慎重に動かさいないといけないのに、寝てるのか起きてるのかの判断材料が殆ど無いわけだから、滅茶苦茶神経がすり減った。 ミスったら即死だな―。そう思いながら、少し力を入れて霧切さんの身体をソファの上に引き上げる。だがその瞬間、うっかり手を滑らせてしまった。 「あッ……!!」 彼女の身体が床に落ちないよう、慌ててカバーする。そのカバーには成功したけど… …今の一瞬に何が起きたのか、ボクの身体には霧切さんの身体が覆いかぶさっていて、ボクの手は…彼女の胸を触っていた。 (…………!?ちょっと待て!これはいつからエロゲーにジョブチェンジしたんだ…!確かにCEROはDだったけど!でもDとZの間にはどうやっても超えられない壁がある筈じゃ…!  ってボクは何を考えてるんだ?冷静になれ…こんな場面、誰かに見られたら一巻の終わりだぞ…!?) 「オイ、愚民ども…今何時だと思っているんだ!?良い子はもう寝る時間…」 「あ」 イカン、十神クンに見られた。てか何でドア開けっ放しにしといちゃったんだろう… 「イヤ、十神クン…これには深い訳があってね…」 「……………キャアアァァァァァァ!ごめんなさい!!俺何も見てないから!!全然何も見てないから!!ウワアアァァァァァン!!!」 世にも奇妙な悲鳴を上げ、十神クンは去っていった。……というかホントに十神クンか、あれ…? 「…ねぇ、苗木君…出来ればあなたのその手を退けてくれるとありがたいんだけど」 「ぅえ?」 不意に聞こえた声に、ボクはそんな間の抜けた返事しか返せなかった。 「…もう一度言いましょうか、苗木君。あなたの手を私の胸から退けてくれるとありがたい、と言ったのよ」 「き、霧切…さん…!起きてたの…?」 慌てて手を胸から離す。しかしゆっくりと立ち上がった霧切さんは、まるで養豚場の豚を見るような目でボクを見てくる。 「えぇ…さっきの珍妙な悲鳴でね…」 「あ、そう…」(よかった…落書きはバレてないみたいだ…) 「そんなことより苗木君、そろそろお湯が沸騰してる頃じゃないかしら?」 「あ、そうだね…待ってて!注いでくるから!」 「そう…じゃあお願い」 こうして、ボクは霧切さんと何とも気まずいティータイムを過ごすこととなった。 (うぅ…霧切さん、絶対怒ってるよ…なんて謝ろう…) 「ところで、苗木君」 「な、何?霧切さん…」 「あなた、どうしてこんなことをしたの?」 「こ、こんなことって…?」 「惚けないで…この落書きのことよ…」 霧切さんが自分の右瞼を指さしながら問い詰める。 「あっ…そ、それには色々とワケが…」 ……ん?苦し紛れの言い訳を言いかけたところでふと気付く。 「ね、ねぇ…霧切さん」 「何かしら?言っておくけど、言い訳なら聞き入れるつもりはないわよ…」 そう言い放つ彼女は、なんだか某多恵子さんを彷彿とさせる女王様オーラを纏っていた。 「いや、そうじゃなくてさ!…なんで霧切さん、自分の瞼に落書きされてるって気付いたのかな~と思って…」 「…あ」 「だって、瞼に書いてあるから見れないし…鏡使ったにしても洗面所にしか鏡はないし、でも霧切さんは起きてからずっとこの部屋にいたし…何で分かったのかな~なんて…」 「……エ、エスパーだからよ…」 「えっ?」 「エスパーだからよ!」 「え…?えっ…!?」 「…何でもないわ!!」 「で、でも…」 「ナン・デモ・ナイのよ!!じゃあ、私は寝るから…書類の整理は任せたわよ…!」 ものすごいスピードでそれだけまくしたてると、やたらと顔を赤く染めた霧切さんはあっという間に寝室に入っていってしまった。 「…何だったんだろう…今の……って、え!?書類の整理は任せたって…!ちょっと、あと何枚あると思ってるの!?霧切さ~ん!!」 いくら呼んでも霧切さんからの返答は来そうにないし、書類の量も尋常じゃなかったので、結局ボクは徹夜で1人で書類整理をすることになった… しかも、その日に限って霧切さんの寝相が荒ぶったのか、妙に寝室からジタバタと音がした。 そのせいでボクはあんまり書類整理に集中できず、結果的に殆どの仕事を翌日まで持ち越してしまい、ボクは皆から大顰蹙を買った……                                                                             【完】

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