k17_394-395

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冬休みを利用して一人でお祖父ちゃんの家に遊びに行くことになったけど――。 「……っくし!」 ドアを抜けた先の空は鉛色で、雪が降りしきっていた。 僕の住んでいる関東では普段見慣れない光景なので、じっと眺めているとポケットに入れていた携帯電話が震え出した。 慌てて取り出し、ディスプレイを覗いてみると"お婆ちゃん"と登録していた電話番号だった。 「……もしもし、お婆ちゃん? 誠です。うん、今着いたよ。……えっ、この大雪で迎えが遅れる? うん、わかった……」 到着したばかりなのにツイてないなぁ――。 そんなションボリした気持ちで携帯電話を仕舞う。 するとカラコロ、カラコロと何かを引きずるような音がこっちに近づいてきたのだった。 「あ……」 僕くらいの女の子が大きなキャリーバッグを抱えてこちらのホームにやってきた。 その女の子は僕の後ろにある何か――既に発車した電車を見ていた。 「……ツイてないね、お互い」 「……?」 いきなり僕に話し掛けられて首を傾げている女の子。 手に持った小冊子の時刻表ではなく、僕をじっと見ている。 「あー、その、待つんだったらあそこで待たない?」 僕が指を指した先には雨風を凌げる待合室があった。 女の子はコクンと首を縦に振ってカラコロとバッグを引きずりながら歩いて待合室の中に入っていった。 ――――― 「…………」 「…………」 待合室のベンチに座ったところでお互い会話をすることがなく、僕は緊張してしまう。 学校のクラスメイトとはまったく異なる女の子だったのもある。 白い肌に紫がかった銀髪――。西洋のお人形さんみたいだ。 何か話のきっかけはないかと考えてポケットの中を漁っていたらある物が見つかった。おっかなびっくりで尋ねてみる。 「あのさ……飴、舐める?」 「……?」 移動中の電車の中で舐めていた飴の残りがあったので、食べないか聞いてみることにした。 すると彼女はコクンと首を縦に振り僕の差し出した飴を受け取った。 僕ももう一つの飴を取り出し、封を破って口の中に入れる。 甘い――。 何でも選ばれた人たちだけが口に出来るっていうキャンディーって聞いたことがあるだけに美味しい。 口の中で飴玉をコロコロ転がしながら何気なく聞いてみる。 「もしかしてキミもこれからお爺ちゃんの家に遊びに行く予定なの?」 「……」 すると彼女は首をフルフルと横に振る。違うってことらしい。 「まさか、家出?」 これも首を横に振って違うという答えが出た。 「……秘密、だったりするの?」 「……」 今度は首を縦に振ってきた。 何だか不思議な子だなぁ――。 そんな風に思っていたら突如鳴り響く携帯電話の着信音。僕のだった。ディスプレイには先ほどと同じ"お婆ちゃん"の文字が表示された。 「もしもし? 今着いたの? ……うん、わかった。駅の改札口だね」 僕の方は迎えが着たということで、お別れの時間が来たようだ。 「それじゃ、僕は迎えが着たからこれで……」 「……待って」 荷物のリュックを背負って待合室を出ようとしたら女の子に呼び止められた。 凛とした声で思わず立ち止まってしまう。 女の子は立ち上がり自分の首に巻いていたマフラーを外し、僕の首に巻いてくるのだった。 「これ、キャンディーのお礼」 「あ、ありがとう……。でもいいの? キミは寒くない?」 「平気よ」 僕の首に巻かれた女の子のマフラーはとても軽く、それでいて暖かかった。 「マフラーありがとう。それと、バイバイ」 「……さよなら」 お互い手を振って別れの挨拶は済ませ、僕は待合室を出た。 また会えたらいいな――。 僕はそんなあり得ない現実を思い浮かべながら駅の階段を駆け上がり、お婆ちゃんが待っている改札口へ向かうのだった。 END

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