k18_173-175

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※ダンガンロンパ霧切に関連づいた話題もあるので閲覧注意してください 放課後、霧切さんと自室で勉強会を始めてから二時間が経過しようとしていた。 徐々に僕の集中力も途切れ、ペンを走らせる手も止まりテキストと睨めっこする時間の方が多くなってきた。 うーん、わからない。こうなったら――。 「き……」 りぎりさん。ちょっとここ教えてほしいんだけど――という続きの言葉が僕の口から発せられることはなかった。 と、いうのも僕は思わず霧切さんの黙々と自分の課題を進ませている姿が完成された絵画のように見えたからだ。 「どうしたの?」 僕の方を見ずに次のルーズリーフにペンを走らせる霧切さんの姿に見蕩れていた――なんて正直に言えるわけもなく、適当に誤魔化すことにした。 「……き、霧切さんにとってさ、探偵ってどういうものなのかなーなんてふと思ってさ?」 「唐突な質問ね」 「ご、ごめん」 「……ゆるぎない確固とした真実の使徒」 「えっ?」 僕が頭の中で"?"を浮かべているのがわかったのか苦笑いする。 「私個人からすれば、探偵は生き方そのものよ」 「……あっ、それが全てっていうこと?」 「そうね」 うーん。 そう考えると十神君や大神さんのように家柄の都合って解釈すればいいのかな? 「ねぇ、苗木君。私からも質問していいかしら?」 「あ、うん。いいよ」 「……"復讐"ってどう思う?」 "この問題の解答はこれでいいかしら――?"っていうような軽い感じでとんでもないことを尋ねてくるのだった。  ~ Smile Venomously ~ 「ふ、"ふくしゅう"って言うけど、勉強の方? それとも仕返しの方……?」 「仕返しの方で。あなた個人の意見を聞かせてほしいの」 「僕の意見なんてあまり参考には「苗木君のような普通の人の見解は十分参考になるわ」……うっ」 僕の意見を遮るように霧切さんが畳み掛ける。 そして手元のルーズリーフから僕のほうに視線を移す。 その瞳は曖昧な回答は受け付けない意志を宿していた。 「……率直に言えばあまりいいイメージではないね」 「そうかしら? 時代によっては"仇討ち"といって復讐が合法的に認められた風習があるじゃない?」 「そうだけどさ……。恨みや憎しみを力にしてやり遂げたとしても最後には哀しい結末しか待ってないよ。きっと」 「でも復讐を動機に人が人を殺害するケースが存在するのが事実よ。たとえ苗木君のように結末がわかっていたとしても実行に移す人もいる」 「ちょっと……」 それは何でも言い過ぎだよ――という言葉を言おうとした口は途中で止まってしまった。 霧切さんの瞳に圧倒されたからだ。 探偵として人の死を見続けたように暗く濁ったような色に視えてしまう。 「苗木君、もう少し話を掘り下げて現実味を濃くするわ」 ぞっとするような冷たい声で彼女は云った。 思わず喉の生唾をゴクリと飲み込む。 「仮に私があなたの家族を殺害したとしましょう。たとえ真実を知っていても立証できる証拠がなく、法の裁きもないまま犯人の私は今もこうしてのうのうと生きている。……それでもあなたは復讐しないと言い切れるの?」 「そんな山田君みたいな妄想「私はあなたの意見を聞いているの、苗木君」……霧切さん」 「そして恨みを晴らす絶好の機会を第三者から提供されても復讐はしないって言い切れる?」 その人を殺害させる場所も、凶器も、完全犯罪を実現できるような犯行手段とかその他諸々――。 淡々と語る霧切さんが僕は怖くて仕方なかった。 んな物好きな人達なんているわけないでしょ――って、否定できる雰囲気ではなかった。 僕が今まで過ごしてきた平穏で退屈な日常の世界では決して知ることのない霧切さんの過ごしてきた世界を、ほんのちょっとだけ垣間見た気がした。 「……それでも僕は最後の最後で躊躇ってしまうと思う」 「どうしてそう思うの?」 「復讐の連鎖で何も生まれない。死んだ家族が返ってくるわけでもないんだ」 「……そう。だったらあなたは復讐したい人に何を望むの?」 「忘れないでほしい」 「えっ?」 「自分の仕出かした罪を。償う気持ち、遺された人のやり場のない悲しみとか。その事実から目を逸らさずきちんと向き合ってほしいんだ」 実際、そんな境遇になったら考えが変わってしまう可能性だってあるけど――。 そんな風に考えていたら霧切さんがさっきの雰囲気を払拭するようにクスリと微笑んだ。 「あなたらしい答えね」 「そうだね。普通の高校生の意見として参考になったかな……?」 「えぇ。とても参考になったわ」 「ねぇ……。今度は僕からも言っていいかな?」 おもむろに立ち上がり、テーブルを挟んで真向かいに座る霧切さんの右手に両手を伸ばし包み込むように手を握る。 いきなりの行動だったのか、霧切さんは目を点にして握られた手と僕の顔を行ったり来たりするだけだった。 「な、苗木君。どうしたの、いきなり……?」 「霧切さん、思い詰めないで」 「……えっ?」 「いくらお父さんの学園長が嫌いだからってその手に掛けようなんて考えちゃダメだよ!!」 「…………苗木君、あなたは何を根拠に推理したの?」 霧切さんが首を傾げている。 けれど僕はお構いなしに話を続ける。 そりゃあクラスメイトが人の道を踏み外そうとしているなら止めるのが当然じゃないか――! 「だって、復讐なんて物騒な話題を持ってくるんだよ? 嫌な予感しかしないじゃん!」 「私が父を嫌っているのは事実だけど、犯行に結び付けないでほしいわ」 「霧切さん、只でさえポーカーフェイスが上手だから僕には説得することしかできないし! ……って」 必死で説得をしていたら霧切さんが呆れたような溜め息を吐き、ジト目で僕を睨む。 何だかみんなが戦刃さんを見るような残念な眼差しだ。 ――あれ? これって僕の思い過ごしだったりするの? 「探偵の誇りを捨てたあの人が許せないけど、手に掛けることはしないわ」 「霧切さん……」 「探偵は絶対じゃない……けれど苗木君、信じて。だからその手を離してもらえるかしら?」 「あっ、ごめん……!」 慌てて手を離すと霧切さんが立ち上がり部屋を出ようとする。 しまった、怒らせちゃったかな――。 するとドアの前で一度振り返る。 「勉強を再開する気分にもなれないから食堂でお茶にするわ。あなたも一緒に飲む?」 「うん。だったら僕が淹れるね。リラックスするならハーブティーにしよっか?」 「たまにはいいわね。お願いするわ」 こうして僕らは勉強を中断して食堂へ向かうのだった。 僕が希望ヶ峰学園で過ごした平穏な1ページの日常だった。 ――霧切さんと一緒に、食堂でお茶を飲んだ。 END

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