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「あ…………どうしたものかしら」
「にゃぁ~」
「あなた、どこから来たの?」
私は時々気分転換にここへ来る。静かで日当たりの良い、校舎の裏側に位置する場所。
今も、時々吹く風に心地よさを感じながら木陰で本を読んでいる最中だった。過去形――
というのも、どこから来たのかは分からないけど今私の膝の上には銀色の毛色が特徴的な
猫が居たからだ。
「にゃぁん」
――ゴロゴロ……ゴロゴロ……
「……勝手に来られても、勝手に甘えられても困るのだけど」
どうやら私はこの子に懐かれてしまったらしい。私には懐かれるような要素など無いと
思うけど、それでもこの子は私が差し出した手に顔を擦り付けている。まるで、どこかの
クラスメイトのようだ。
多分この子は野良猫だとは思うのだけど、手袋越しでも分かる毛の柔らかさが気持よく
てつい、撫で回してしまう。そして、何よりこの銀色の毛――
「ふふっ……私とお揃いね」
あまり動物と戯れるような機会は今まであまり無かったし、予測できない行動などに少
しだけ苦手意識があったけれど、こういうのもたまには悪くないかもしれない。
「霧切さーん! 何してるのー? 授業始まるよー!」
「今、行くわ…………それじゃ、またね」
私が予測できない行動をするのは彼もまた同じだった。だから一緒にいて退屈しない。
「……? どうしたの霧切さん?」
「苗木君、あなた小動物みたいね」
「え? いきなり小動物扱いってちょっと酷いよ、霧切さん! あ、待ってよ霧切さん!
置いて行かないでよー!」
明日もここに来たら、あの子に会えるかしら?
― END ―
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