HappyHalloween SS

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 10月31日。  日本ではここ数年の間に特に浸透しつつある、ハロウィンの日。 簡単にまとめてしまえば、仮装をして「trick or treat」だなんて人に言って回ってお菓子をもらう。 ただ、それだけなんだけどみんなイベント事が好きだった。 「……恥ずかしいけど、やるって決まったからな」  僕は頭にオオカミの耳、手には結構リアルな感触の肉球の付いた手袋をつけて鏡の前に立っていた。 後ろにはフサフサと、結構立派な毛並みの尻尾もある。狼男の仮装だ。 これは全部僕が用意したものじゃない。耳と尻尾は左右田先輩と松田先輩そして不二咲君が開発したもので、どうやら僕の感情に伴って動くらしい。 ちょっと前に猫の同じようなやつをテレビで見たことがあるけど、それよりも機械っぽさが無いというかリアリティが高くて、 かなりすごい技術が使われているだろうことが、僕にもわかる。そのリアルな尻尾が、今も力な下げに揺れている。 僕の「恥ずかしい」という気持ちが尻尾に表れているみたいだ。 「えっと、確か6時開催だったかな?」  僕は机の上の招待状を広げてみた。 『6時に食堂にてハロウィンパーティ開催 全員強制参加 必ず仮装して来ること!  食べ物は用意してあるのでお菓子はいらないよ!』  要点だけが書かれていて分かりやすい。  強制参加って言うけれど、十神君や霧切さんも仮装してくるのかな……? 「……まだ1時間前か。そうだ、霧切さんにお菓子でもねだろうかな」  ちょっとした悪戯心だった。「お菓子はいらない」って招待状には書いてあるから、霧切さんも用意してないと思う。 だからいつもからかわれているお返しに悪戯でもしようかな、と思ったけど何をするかは決めてない。 とりあえず僕は廊下に出て、霧切さんの部屋のインターホンを押した。  すぐに、ドラキュラの仮装をした霧切さんがドアを開けて僕を部屋に入れてくれた。 「苗木君、どうしたの? まだパーティーまで時間は――」 「霧切さん! Trick or Treat!」 「……」 ――あ、あれ? 何かまずかったかな? 「わかったわ。はい、甘いの」 「えっ――んんっ!?!?」 ――キ、キスされた!? 霧切さんにキスされた!? いつも僕からなのに!? 「甘かったでしょ?」 「う、うん……」 「私さっきコーヒーと一緒にチョコレートを食べていたのよ」  あんなことをしておいて霧切さんは全くの無表情だった。 どうしてそんなに冷静でいられるのか分からない。 「そういえば、苗木君は……狼男かしら? 随分可愛い狼男ね。 物凄い勢いで尻尾が振れているけど、そんなに嬉しかったのかしら?」  クスクスと肩を揺らして霧切さんが笑う。恥ずかしくて僕は死にそうなくらいだ。 「それと、私はドラキュラなわけなのだけれど……苗木君は知っているかしら?」 「え? 知ってるって何を?」 「狼男の天敵って、ドラキュラなのよ」 「へっ?」 「パーティまで1時間あるわね」 「うん」  霧切さんの言葉に脈絡がない気がして、僕は少し戸惑った。  けれど霧切さんは構わず続けた。 「私は苗木君に甘いものをあげたわ。だから、私もいただかなくては不公平よね」 「え? え? 霧切さん、何を……」  じりじりと僕に詰め寄ってくる霧切さん。 すると、霧切さんにドンっとベッドへ突き飛ばされた。バランスを崩して僕はそのまま倒れこんでしまう。 すぐに起き上がろうとしたけど霧切さんが素早く、僕の上に馬乗りになって動けない。  ここまできて、僕はようやく霧切さんの言いたいことが分かった。 ――悪戯されるのは僕の方だ。 「言ったでしょう? 狼男の天敵はドラキュラだって。だから苗木君は私には適わないのよ。でも、やさしくしてあげるわ。 ふふ……仮装したままというのもなんだか、興奮するわね」 「き、霧切さん!? この時点で全然優しくなんかなっ――ひぁっ!?」  霧切さんの手が、スッと僕のお腹の所へ入ってきた。そして腰の辺りを撫で回し始めた。 「耳がピクピクしているわ。可愛い……」  霧切さんが僕の頬に空いている方の手を添える。そして僕の耳元に口を寄せて言った。 「苗木君、ありがたくいただくわね」 「ちょっ!? 待って! ちょっと待ってよ、霧切さぁん!!」  必死で叫んだけど、全然待ってもらえなかった。 「さて、6時前だし食堂に行きましょうか」 「……霧切さん、今日いつにも増して強引だね」 「そんな格好で来られたら、いくら私でもその気になるわよ。言ったでしょ? 随分と可愛いって」 「可愛いって言われても……」 「そういえば苗木君」 「何?」 「狼男の天敵はドラキュラだと言ったけれど、実はドラキュラの天敵も狼男なのよ」 「も、もうその話は良いよ!」  ハロウィンパーティはこれからだというのに、僕は心身ともに疲れ切ってしまっていた。   ――Trick or Treat ! 僕はこの言葉を使う時、慎重になることを心に誓った。 おわり! -----

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