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「全部、知ってたんです。苗木君が諦めずに最後まで頑張ってくれる事も全部。だから全然、辛くなんかなかったんですよ。だって、私、エスパーですから。」
僕達が作ったロボット?のウサミがモノクマを倒して僕達を助けてくれた後、僕は皆と玄関ホールに向かう前に舞園さんと少し話をした。
舞園さんと話している時、僕の頭の中を様々なものがよぎった。
身に覚えのない記憶、舞園さんをここから出すという約束、彼女と力を合わせて一緒に脱出するという僕の決意…。
舞園さんは、きっとこの結末は物凄い確率で迎えることが出来たんだろうと言った。
パラレルワールドというものが存在するのなら、ここではない何処か別の世界で、僕は舞園さんと約束をしたのだろう。
そこでの僕は、舞園さんとの約束を果たすことが出来なかったのかな?
僕か舞園さん、或いはその両方の身に何かが起きて、ここから一緒に出る事が叶わなかったのかな?
考えたところで答えが分かる事ではないけれど、確かな事が一つだけある。
それは、僕達15人が誰一人として欠けることなく、この閉鎖された希望ヶ峰学園から脱出出来るという事だ。
今、玄関ホールにある重く冷たい鋼鉄の扉の前に、僕達15人は立っている。
わけがわからないまま始まった特殊極まりないこの学園生活は色々大変だったし、モノクマを陰で操っていた黒幕の正体を始め色々謎は残っているけど、皆揃ってここから脱出できることが僕は素直に嬉しかった。
ウサミがモノクマから奪ったスイッチの蓋を開き、僕の指がボタンに触れようとしたその時、どこからか声が聞こえてきた。
それは微かで、よく聞こえなかったが、確かに人の声だった。
(―――。)
「え?」
「苗木君、どうかしましたか?」
「舞園さん、今何か言った?」
「いいえ、何も。」
「今、誰かの声が…ううん、やっぱり何でもない。」
「?」
僕の隣で、舞園さんは不思議そうな表情で小首を傾げる。
僕の気のせいじゃなければ、今の声は…。
「おい苗木、何をボサっとしている?さっさとスイッチを押せ。」
「ご、ごめん十神君。じゃあ皆、いくよ。」
後ろに居る十神君に急かされて僕がボタンを押すと、玄関ホールに警報が鳴り響き、学園の入り口を固く閉ざしていた鉄の扉のロックが外れてゆっくりと開き始めた。
開いていく扉の隙間から外の空気が流れ込み、蛍光灯のものとは違う光が差し込んでくる。
僕と舞園さんは、いつの間にか手を繋いでいた。
僕の手を握る舞園さんの手は温かかったけど、やはりまだ不安が残っているのか、小さく震えていた。
舞園さんを安心させてあげようと、僕は繋いでいる手に少し力を入れて彼女の手を握る。
すると、舞園さんも僕の手を握り返してきた。その手はもう、震えてはいなかった。
この手は絶対に離さない。離したりなんかしない。
とても長い時間僕を待ち続けてくれた舞園さんの手を、離したりなんかするもんか!
外の世界に通じる扉が開かれ、僕達はここから新しいスタートを切る。
この先の人生、何が待ち受けているのかは分からないけど、どんな困難や絶望にぶち当たってもきっと乗り越えられる。
強い絆で結ばれた仲間達と一緒なら、舞園さんと一緒なら、絶対に大丈夫だ。
今の僕にはそんな確信がある。
扉が完全に開き、僕達が外への第一歩を踏み出そうとした時、さっき聞こえた声が再び聞こえてきた。
今度はさっきと違ってハッキリと聞こえた。
(ありがとう。私との約束を、果たしてくれて…。)
誰一人振り返る事無く、僕達は希望ヶ峰学園を後にする。
こうして、僕達の希望ヶ峰学園での生活は終わりを告げた。
終わり
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