k2_68-73

あれから二日経った…霧切さんとはまったく会えていない
と言うより…霧切さんの姿をまったく見る事が出来ない
朝食は僕が来る頃にはすでに食べ終えてるようだった
朝食後、学園中あちこち探してるけど…未だに見つける事は出来ない
…こうなった原因は間違いなく例のウソ発見器だ

「モノクマの奴…」

僕は…霧切さんの事を大切な人だと思ってる
いつも冷静で殺人が起きても顔色一つ変えず、捜査をする彼女
でも…僕は何度も助けられている。今までの学級裁判だって彼女がいなかったら…
それに…僕自身が…彼女を放っておけない
しかしその場合、あのウソ発見器は本当の事を言うと反応すると言う事になる
つまり…霧切さんは僕の事を…

「………確かめるんだ、霧切さんに会って…直接…!」

僕は霧切さんに会うために行動に出た
とにかく他の皆に聞いてみよう。霧切さんがどこにいるのかを

「苗木、また霧切ちゃんを怒らせたの?」

霧切さんの事を聞くと朝比奈さんはすぐにこう聞き返してきた

「うん、ちょっとね…と言うかまたって…」
「だってそうじゃん。もしかして…怒らせたのって一昨日?」
「な、何で知ってるの?」
「普段表情を変えない霧切ちゃんがひどい顔してたよ…まったく、よっぽどひどい事したのね」

……否定できない。でも、だからこそ…

「…霧切ちゃん、最近いろいろ調べまわってるみたいだよ」
「え?」
「本当にあちこちで見かけるから…私も今何処にいるかまったく分からないんだ」
「…そっか、ありがとう。朝比奈さん」
「ちゃんと謝って…仲直りしなさいよ!」
「うん!」

とにかく、また学園をあちこち探してみるか………

「あれ?苗木っち、どうしたべ」
「あ、葉隠君、霧切さんがどこにいるか分からない?」
「霧切っち?う~ん、ちっと見当がつかねぇべ…探してんのか?」
「うん、ちょっとね…ここ二日間霧切さんに全然会えてなくて…」
「そりゃおかしな話だべ。苗木っちを見た時は霧切っちもそのすぐ後に見てるんだけども…」
「え?」
「まぁ、見つからないんなら仕方ねぇべ。俺の占いで霧切っちの場所を…」
「…ありがとう、葉隠君。僕もう行くね」
「え?ちょ…俺の占いで…」

手を伸ばす葉隠君を置いて僕は再び歩き出した
朝比奈さんの証言によると霧切さんは学園をあちこち移動しているらしい
そして葉隠君の証言によると僕を見た時、霧切さんもすぐ後に見ているらしい
………そうか、そう言う事だったんだ

葉隠君は僕を見たすぐ後に霧切を見たと言っていた
と言う事は霧切さんは僕の後をつけているんだと思う
おそらく僕に会わないように僕を監視するため…
以前と違って朝食を僕より速く食べるのもそのためだろう
朝比奈さんは霧切さんをあちこちで見たと言っていた
それは霧切さんを探す為に学園中のあちこちに行く僕を尾行していたから
だから僕の考えが正しければ彼女は僕を尾行しているのだからある程度僕の近くにいるはずだ
……ならば僕に何かあればきっと霧切さんはすぐに駆けつけてくれるだろう
それならと僕はドアを開けて自分の部屋に入る…よし…行くぞ

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

僕は悲鳴をあげてドタッと倒れた。
今回は我ながらいい演技だったと思う。勢いよく倒れたので結構痛いけど
倒れて気絶したふりをしていると…予想通り、彼女が部屋に入ってきた

「苗木君!?どうしたの?苗木君!?」

彼女は僕をゆさゆさ揺らす。その揺らす手を僕は掴んだ

「っ!?な、苗木君?」
「やっと捕まえたよ、霧切さん」

逃がさないように霧切さんの手をしっかり掴む
手を掴まれた霧切さんは…何とも言えない表情で僕を見ていた
でも次の瞬間にはいつも見ている無表情の霧切さんになっていた

「……ごめん、騙すようなやり方をして…でもこうでもしないと霧切さんに会えなかったから…」
「…死んで欲しいくらい大嫌いな私と何か話す事でもあるの?」
「大嫌いなんかじゃないよ!僕は…この前の誤解を解きたいんだ!」
「…貴方が私を大嫌いじゃないと言うなら…私は貴方の事が大嫌いと言う事になるわよ」
「それは違うよ!霧切さん、『僕が霧切さんの事を大嫌いだ』って考えてたんでしょ?」
「……ええ、そうよ」
「つまりそれって『霧切さんが僕の事を大好き』だから出てくる台詞だよね」
「っ!?」

霧切さんは一瞬だけ目を見開き、すぐに辛そうに伏目になった

「…実際はよく分からないわ。でも…他の娘と苗木君が話していると不安になるのは本当だし、暇な時に苗木君の事を考えているのも本当…」
「霧切さん…」
「もしかしたら…自覚がないだけかもしれないわ。でも…苗木君が私の中で大きい存在なのは分かってる」
「……………」
「だからこそ…苗木君が私を大嫌いと言う事になるのよ」
「違うよ!僕は…」
「利用する価値があると判断して私に近づいた。油断させる為に私に近づいた…」
「僕はそんなつもりで霧切さんと話していたんじゃないよ!大体モノクマのウソ発見器だよ!そんな…」
「そうね、あのモノクマの用意したウソ発見器だもの。何かあるかもしれないわね。でも…」

霧切さんは掴まれていない方の手を胸の前でぎゅっと握り締めた
霧切さんが人に深入りしない、させない事を誓った、あの手袋…
…きっと彼女は信じる事が未だに怖いんだ。そして信じられている事を信じきれない
こうなったら…証明するんだ!僕が…霧切さんをどう思っているのかを!
その為に…モノクマのウソ発見器はおかしい事を証明する!

「モノクマ!出て来い!」
「この前は僕が出たら邪険にしたくせに…苗木君は勝手だなぁ」
「モノクマ、この前のウソ発見器で僕と霧切さんに同じ質問をして欲しい」
「別にいいけど…あのウソ発見器はちゃんと動いてるよ?何も変わらないと思うけどなぁ」
「そうだね、そうかもしれない…」

僕がそう言うと霧切さんは一瞬だけ悲しそうな表情になった
でもそれは一瞬の事で霧切さんはいつものような無表情に戻った

「ふ~ん、まぁボクは別にいいけどね。で、霧切さんは?こんな面倒な事やるの?」
「…ええ、構わないわ。苗木君、逃げないから手を離して」

霧切さんは一瞬だけ僕を見てモノクマにそう答えた
そして僕は言われたとおり霧切さんの手を離す

「では早速…ウソ発見器ぃ~!ではまず霧切さんから行くね」

そう言ってモノクマは霧切さんにウソ発見器をつけた

「この前と同じ、質問には全ていいえで答えてください」
「分かったわ」
「では最初の質問です。霧切さんは苗木君が大嫌い?」
「いいえ」

ウソ発見器は反応しない。モノクマは質問を続ける

「次の質問です。霧切さんは苗木君が他の女の子と話していると不安になる?」
「いいえ」
(ビィー!ビィー!)
「次の質問です。霧切さんは暇な時は苗木君の事を考えてる?」
「いいえ」
(ビィー!ビィー!)
「最後の質問です。霧切さんは苗木君の事を異性として大好きである」
霧切「いいえ」
(ビビィーーー!!!)

反応は全て前回の時と同じ…

「ほらね、何にも変わらなかったじゃない」
「……ええ、そうね…」
「じゃあ次は苗木君だね」
「ああ、分かってるよ……霧切さん」
「……何かしら?」
「僕は…『霧切さんに』ちゃんと確かめてもらいたいんだ」
「…………苗木君…」
「霧切さん、ここまで言えば…分かるよね?」
「はいはい、お喋りはそこまで。苗木君も前回と同じ、質問には全ていいえで答えてね」

モノクマはウソ発見器を僕に着け、そう言った
あとは霧切さんを信じるしかない…
モノクマのウソ発見器がおかしい事を分かってもらうには霧切さん自身の協力が必要なんだ

「では最初の質問です。苗木君は霧切さんの事が大嫌い?」
「いいえ」
(ビィー!ビィー!)
「次の質問です。苗木君は正直霧切さんが気色悪いと思ってる?」
「いいえ」
(ビィー!ビィー!)

やはりウソ発見器の反応は前回と変わらない

「やっぱり何も変わらないじゃない。もぉ~…じゃあ最後の質問ね、苗木君は霧切さんが死なないかなぁ、と思っ」
「苗木君、質問よ。舞園さんは山田君に殺されたのかしら?」
「いいえ」
(ビビィーーー!!!)

ウソ発見器は強く反応した。僕は本当の事を言ったのに

「ちょ、ちょっと!何勝手に質問してるのさ!」
「私だけがいつも身につけているのはリボンだったかしら?苗木君」
「いいえ」
(ビビィーーー!!!)

またもウソ発見器は強く反応する。本当の事を言った僕に

「また勝手に質問を…」
「別にいいじゃない。私が質問してはいけないなんて決まりはないわ。校則でも貴方への暴力は禁止されてるけど発言の邪魔は禁止されてないわ」
「ぐぬぬ…」
「それより…苗木君の時は本当の事を言うと反応するのね、この機械」
「あら、気づいちゃった?」
「やっぱり……僕達を騙していたんだな!?」
「騙した?変な事言わないでよ。僕にとってはちゃぁんとウソ発見器だったんだからさ!」

モノクマは腹を抱え、口を大きく開いてそう言った
そんなモノクマへの僕と霧切さんの視線は冷たい

「うう、そんな目で見ないでよ…ちょっとした茶目っ気なんだからさ!じゃあね!」

そう言ってモノクマはその場から逃げ去った
モノクマがいなくなり、僕は霧切さんの方へ顔を向ける

「霧切さん、その……」
「…ごめんなさい、苗木君」
「そ、そんな、別に謝らなくていいよ」
「でも、私は苗木君を信じてあげれなかったわ」
「仕方ないよ。霧切さんの事情は一応分かってるし…」
「……………」

霧切さんは申し訳なさそうに、顔を伏せてしまっていた

「……じゃあ、霧切さん。一つだけ忘れないで欲しい事があるんだ」
「え?」
「僕はずっと霧切さんの味方でいるよ。何があっても霧切さんを信じる」
「……苗木君」
「僕を信じなくても、大嫌いになってもいいよ。でも、僕は霧切さんの力になり続ける。僕の力なんて大した事ないかもしれないけど」
「……そんな事は、ないわ」
「はは、ありがとう。だからもう…そんな顔しないで欲しいんだ」
「………苗木君の癖に…生意気よ」

霧切さんはそう言うと微笑んでくれた
……ちょっとだけドキッとした

「生意気、かな?」
「生意気よ。私に『ここまで言えば分かるよね』なんて台詞まで言うし」
「あははは…」
「………苗木君」
「何?霧切さん」
「この学園の謎を解いてここから脱出したら…苗木君に私の気持ちを伝えるわ」
「え?えぇっ?」
「その…まだ…今はちゃんと言葉には出来ないのだけれど…その時までには整理をつけるわ」

霧切さんは少し恥ずかしそうに目を伏せる
頬は微妙に赤く染まっている…やばい、かわいい

「…苗木君?」
「あ、うん!何!?」
「……その時は貴方の気持ちも聞かせて欲しいの」
「…うん、分かった。僕も自分の気持ち、霧切さんに必ず伝える」
「ふふふ…」

霧切さんはいつものような不敵な笑みを浮かべる
……やっぱり霧切さんはこうでないとな


あぁ~、むかつく。苗木と霧切の奴…生意気すぎ
あ、霧切の奴が部屋から出てきた………うわ、何あの顔、幸せそうにしちゃって…
むかつくわね、絶望させたいわぁ…あ、そうだ。霧切にはあれをプレゼントしてやろうっと
それと苗木には…私自身がいろいろしてやろうっと


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最終更新:2011年07月15日 13:08
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