kk2_708-709

あれから数年の時が立ち
絶望によって崩壊した世界もほぼ復興した。
案外世界というか人類はしぶとい。
僕は霧切さんを誘って希望ヶ峰学園に来ていた。
 正確には「元」希望ヶ峰学園跡地。

そこにあるのはただの廃墟。

 他が復興していく中で都内の中心に位置するにも関わらず
誰の手も入らず、ただ時の流れに身を任せ朽ちかけていた。
 理由は恐らくみんな目を背けたいんだと思う。絶望という忌まわしいものから・・・・・・。

 僕達が記憶を喪わされて閉じ込められたと錯覚させられた事件から、
何の因果か何度も「絶望」対「希望」の戦いの場になった。
正直僕もあまり目を向けたくなかった。
 霧切さんもそうなんだろう。
誘った時、一瞬表情が強ばったのを僕は見逃さなかったし、
今、こうして二人で学園の入り口に立ってすぐ横に居るのに話しかけ難いオーラが出てる。

「・・・・・・苗木君、貴方がここに私を誘った意図が掴めないんだけど?」

 重苦しい空気の中、僕が話しかける前に霧切さんが口を開いた。
霧切さんの性格だろう。重苦しい空気だろうが、何だろうが疑問や矛盾点、
整合性がとれない問題に直面したら迷わず挑む。
霧を晴らすために切り裂くように、鋭く。
 ここにきて曖昧な反応をすれば霧切さんは不機嫌になる。
はぐらかされるのが何より嫌いだと言う事は経験でわかってる。

僕も迷ってる時じゃない!
ポケットの中に入ってる箱の感触を確かめながら自分に言い聞かせる。

「何ていうかさ、この場所ってつらかったこと、悲しかったことが多かったよね」
自分でも確かめるようにゆっくり話す。
「友達との思い出を失くしたり、人の生き死にに直面したりさ。絶望と戦ったり・・・・・・」
何か思い出したんだろうか、霧切さんが目を伏せた。
「でもねそれだけじゃないよね?この学校での本当の意味での学園生活は短かったけど
あんなに濃密で楽しかった時間は記憶を消された程度じゃ『失われない』よ。それに・・・・・・」
言葉を切って霧切さんを見つめる。
「霧切響子さんに会えた。」
黙って僕を見つめていた彼女の目が大きく見開かれる。
「それだけでここは僕にとって凄くかけがえのない場所なんだよ。一度失いかけたけど
『再会』したのもここだし、・・・状況は異常だったけど。」
そこま話して緊張が少し抜けたのか僕は自然にふっと笑えた。
「・・・・・・まあ、そういう意味でなら私にとってもかけがえのない場所ね」
そうつぶやいた霧切さんの顔は少し赤くなっていた。
「それで苗木君はその『かけがえのない場所』で何がしたいのかしら?」
だから二人で来たのよね?とあの不敵な笑みを浮かべている。
・・・・・・気づかれちゃったかな?まあいいや。彼女に隠し事なんて僕には無理だし。
「霧切さん以前に言ってたよね?『手』を見せる事になるのは家族になる人だけだって」
もう一度ポケットの中で箱を開ける。
「随分昔の事を覚えてるのね?でもあの時黒幕を追い詰めるために皆に見せてしまったわね」
そう言ってさりげない動作で僕から目をそらす。
「そうなんだけどさ。あの時の見せるって『状況も含めて』って事だよね?」
そう言いながら僕は霧切さんの左手を取る。
「こんな風にさ。・・・・・・いい?」
彼女は顔を真っ赤にしながら微かにうなずく。
僕自身もおそらく真っ赤だろうな。
手袋をゆっくり外し、素手になった薬指に指輪を嵌める。
めちゃくちゃ緊張して手が震えた。
「二人だけの結婚式だね。」
自分でも分かるくらい声まで震えてる。
「・・・・・プロポーズじゃなくて?」
意外そうに聞いてくる。
「プロポーズ兼結婚式かな?ほらやっぱり皆の前で手袋外すのは抵抗があるでしょ?」
「神父さんもいないし教会でもなく廃墟の前よ?」
「僕は響子さんに誓うからいいよ、それにほら」
さりげなく彼女を下の名前で呼んで元学園正面の建物を指差す
「?」
「あそこの棟が倒れかけてこっちの棟にひっかかてちょっと強引だけど十字架に見えない?」
我ながら強引で単純だなあと思う。
彼女もすぐに理解した。
そして僕がここに誘った本当の意味も理解したのだろう。
「もう、苗木君の癖になm」
「それは違うよ、響子さん!」
彼女の決め台詞を遮る。
「もう、誠の癖に生意気ね・・・・・・。私も誠に誓うわ!」
照れながら宣言する彼女は本当にきれいだった。

終わり


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