kk3_646

「……この!」
 今、目の前にある物に踊らされていた
 誠君が作った肉じゃが……これ程までに苦戦するとは
「だ、大丈夫?」
「気にしないで」
 箸の使い方が下手くそと言われてしまえばそれまでだけど、ジャガイモがコロコロ転がるものだから少し苛々する……

「んっ…く…!」
 我慢の沸点が到達、ジャガイモを突き刺そうと思っていた所、視界の端から細長い物がその苦々しい原因を持ち上げ、私の目の前に突き出した
 つまるところ……誠君がジャガイモを掴んで私の前に運んでいたのだ
「ほら、響子さん、口開けて。あーん」
「む……あーん」
 促されるままパクリと口に含んで、何度か咀嚼し飲み込む
 甘い味付けながらもピリッと七味の辛さが利いていて醤油の風味とが鼻から吹き抜ける
 相も変わらず、腕は衰えていない。寧ろ、上達してるようにしか見えなかった
「響子さん……手伝える事は手伝うから。それに、ね? 生まれてくる赤ちゃんにも身体を大事にしなきゃ」
 彼の向ける視線の先は私の膨らんだ腹部
 太ったとかそういうのはではなく、出来た…誠君との間で、その、身ごもった。俗に言う愛の結晶だろうか……いや、どっちにしろ恥ずかしい事極まりない
 今も思い出すだけで顔から火が出そうな程に恥ずかしくなる
「ぜ、善処するわ」
「善処じゃ駄目。ちゃんと約束してくれなきゃ意味ないよ…只でさえ、響子さん無理するし」
「うぐっ……わかったわ」
 図星になってしまうか。出来る限り、迷惑をかけないように行動してるものの彼からしたら無理をしてるにしか見えないようで余計に心配を誘っている結果……まさしく悪循環、ね


「……早く食べましょ」
「うん……って、響子さん!? ジャガイモ刺しちゃ駄目でしょ! 刺し箸だよ刺し箸! マナー違反だよ!?」
「仕方ないじゃない………お箸の扱い、難しいんだから」
「あ~、もう…はい、あ~ん」
「………あ~ん」


 夫には勝てないのかも……しれない
 思い切って舞園さんみたくベッタリすればいいのかな?……いや、私らしくないと言われるのがオチね

 何がともあれ

「はい、あ~ん」
「ま、誠君、流石にお肉は食べられるから…」
「これから全面的に手伝うから、気にしなくていいよ」
「で、でも……」
「ほら、あ~ん」

 夫婦円満!
 これから生まれてくる赤ちゃんの名前も考えなきゃね



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