あたしは何にでも飽きっぽい。
そんなあたしがここまでやったんだ。頑張ったほうじゃない?
お姉ちゃんを殺し、クラスメイトを殺し合わせ、そして―――あたしも、死ぬ。
別に死ぬことは怖くない。むしろ生きてて最大の絶望を感じれるんだから最高じゃない。
「江ノ島さんっ…待ってよ!」
おしおきに移行する直前、苗木誠があたしに言った。
あたしは聞こえなかったふりをする。何なの、こいつ。何でまだあたしを…
「ねえ、ボクは君に死んでもらおうなんて考えてないんだって!」
「おい苗木、お前はそいつをかばうのか?」
「ね、ねぇ…止めなよ…」
「でもよー、朝日奈っちだって憎いんじゃねえのか?だってこいつのせいでオーガは死んだんだべ?」
「そ…それは…」
「やめなさい、今ここで私たちが喧嘩しても意味がないでしょう?」
「ギャハハハッ!あーははっ、まこちんはぁーどーっちなのさぁーん?」
結局、こいつらも脆い馬鹿な人間なんだ。偉そうに言ったって、みんな誰かを殺そうとした。
絶望に、感染した。
「江ノ島さんっ!」
伸ばしてきた苗木の手をあたしははらい、椅子の上に立つ。
そして大きく深呼吸をし、叫ぶ。
「では改めて…
さあ、始まりました!ドッキドキワックワクのおしおきターイム!」
今まで使用したおしおき道具が次々とあたしを襲う。
けど、そんなものでは死なない。だってあたしは「超高校級のおしおき」を受けるのだから。
あたしは強欲で我儘で自分勝手で最低な人間。
そんなあたしを苗木誠、あんたは受け入れようとしてくれた。
バッカみたい。だから嫌いなやつだった。あたしは絶望なのに。最初から絶望なのに。
希望とは相反する存在。だから苗木、あんたとは分かり合えない。無意味なことなのに。
なんで、好きになっちゃったんだろう。そう気付いた時にはもう最後のおしおきだった。
苗木が受けて、生き残ったおしおき。でもあたしは生き残らない。確実に死ぬ。
無意識にモノクマを抱きしめる力が強くなる。それは死ぬ恐怖ではなく、怒りだった。
何で苗木はそんな哀しそうな目であたしを見つめているの?本当に嫌い。
嫌いだったくせに好きになってしまった。それに気付くのがあまりにも遅かった。
これも、絶望。身体がずしっと重くなって息苦しくなる。それが、快感。
プレス機の音が大きくなる。死が近づいてくる。
きっと目にも当てられない無様な死体になるのだろう。どうせ最期なら、想おう。
好き。あたしは苗木のことが好き。
世界中の誰よりも苗木誠の事を愛してる。大好き。
初めて会った時の苗木、今でも忘れられないよ。おどおどしていて、とっても可愛かった。
だからあたしは思いっきり抱きしめたよね。こっそり胸を強調して。
その時苗木は顔を真っ赤にしてあわてて離れた。
そして何でか謝った。あははっ、何も悪くないのにね。
苗木、あんたはこれからいっぱい絶望することだろう。
けれど「希望」のあんたは何があっても立ち向かうことだろう。仲間と共に。
それは何とも思わない。勝手にすればいいじゃない。
けどさ、忘れないでよとか願ってもいいかな?あんたには最低なイメージしかないだろうけど。
苗木、好き。大好き。愛してる。
ああ―――
苗木のことを
好きになるの
飽きた
最終更新:2011年07月14日 21:36