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私、戦刃むくろは双子の妹である江ノ島盾子に変装してコロシアイ学園生活を内部から見守ることになっている。
既に2件の殺人事件が起きてしまい犠牲者は4人となった。舞園と不二咲が殺害され、クロである桑田と大和田もお仕置きされ死亡。
不二咲千尋殺しの学級裁判が終わって、しばらく経ったある日のこと私たちは本物の江ノ島盾子が操るモノクマに呼び出されて体育館に集められた。
普段はこういった呼び出しをするときは前もって私に連絡するはずなのに、今回に限ってそれはなかった。気まぐれの盾子のことだから、忘れていただけだろうと思っていたが……。

「あのさー。あたしらを呼び出してどういうつもりだよ。どうせロクなことじゃないんだろ?」
「違うよー。今回はとってもいい話だよ。」

モノクマがそう言うと壇上に箱が積み上げられていく。
私が戦場で幾度となく見続けたあの馴染みがある箱が……。

「じゃーん!レーション一年分!卒業者が出たらプレゼントしたいと思います!」

なんだと……盾子め!なんて動機を用意するんだ……。
みんなも唖然としている。きっと、唖然としているフリをしてレーション欲しさに殺害計画を企んでいるに違いない。

「でもさー。レーションなんかのために人殺しする人なんているの?」

レーションなんか?この乳女が!レーションの素晴らしさがわからないのか!
いや、自分はレーションに興味ないアピールして今のうちに容疑者候補から外れようという考えか?とりあえずここは朝日奈に合わせよう。

「そ、そうだよ!レーションを巡って殺人が起きるのは戦場だけで十分だし!」
「あれー?江ノ島さんはレーションいらないの?いらないならボクが全部食べちゃおうかな?」
「い、いらねーよ!」

盾子。なぜ私に絡んでくる。
あれだけの量のレーションを見せられたら動揺して演技にボロが出るかも知れないというのに。
私の正体がバレたら計画に支障が出るのがわからないのか。

「これって動機になるのかしら?この学園生活では食料が最低限保障されている。私たちを餓えさせている状態ならまだしも、食料に困ってないのに殺人が起きるのかしら?」
「わかんねーぞ。世の中にはレーション好きな人間がいるかも知れないべ。」
「それに、レーションならモノモノマシーンを回せば出てくるよね。葉隠クンが言ったレーション好きな人でも殺人してまで欲しいと思うのかな。」
「わからんぞ。自分にとっては取るに足らないことでも、他のやつにとってはそうでないことは、これまでの殺人が証明している。レーション好きなやつなんて軍人くらいなものだろう。軍人なら他人の命を奪うことに抵抗がないんじゃないのか?」
「されど、この中に軍人なんているのか?」
「い、いるわけないじゃん!あたしはギャルだし、そういうのとは無縁だよ。」

なぜみんな私の方を見る。まさか、私の正体に感づいたのか?

「江ノ島さん。今日ちょっと様子がおかしくない?」
「え!?や、やだなー苗木は。べ、別にあたしにおかしいところなんてないっしょ。」

やばいやばいやばい。苗木は時々変に鋭いところがあるんだよ。
今までの学級裁判だって苗木中心に話が進んだようなものだし。

「そうね。今日というより、モノクマが動機を提示した後って言ったほうが正確かしら。」
「そ、そんなことないってば!冗談やめてよー。霧切が言うと冗談に聞こえないってば。」

霧切まで私を疑うのか。こういう時の霧切は苗木よりも危険だ。どうにかしないと。

江ノ島さん。貴女は本当にレーションを欲しくないのですか?」
「あ、ああ。いらないね。」
「ウソですわね。」
「はぁ!?あなた何言ってんだよ!」

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
この中の誰よりもセレスが危ないんだよ。ついでに眼が怖い。

「だって貴女ウソつくと鼻の頭に血管が浮き出ますもの。」
「え!?うそ!」

無意識で自分の鼻を触ってしまった。そして、前にもこれと似たようなことがあったことを思い出して私は自分の迂闊さを呪った。

「ええ。ウソですわ。間抜けは見つかったようですけど。クス」
「セレス!てめえ騙したのか!」
「あら?騙したなんて人聞きの悪い。朝日奈さんが同じ手で引っかかったばかりじゃないですか。それなのに同じ手に引っかかる江ノ島さんが残念なだけです。」
「ぐぬぬ。」

日ごろ盾子から残念だと言われ続けていたのに、セレスにも残念呼ばわりされてしまった。
いっそ、この場でセレスの本名をバラしてやりたい気分になったけど、本来知っているはずのないセレスの本名を知っていたら余計に私の立場が悪くなるに決まっている。

「あのー…。どうして、江ノ島盾子殿はレーションが欲しくないとウソをついたのですか?」
「いや…だって、この流れで欲しいって言われたら次の犯人はあたしで決まりって空気になるじゃん。」
「それはそうですな。ほっほ。」
「江ノ島さん……」

苗木がこっちに近づいてくる。今度はどうしてレーションが欲しかったのかっていう言及に入るな。
私も軍人の端くれ。どんな拷問にかけられたって絶対に黒幕の正体を吐くものか。

「そんなにレーションが欲しいならあげるよ。」
「えっ。」

無邪気な笑顔で私にレーションを差し出す苗木に少しときめいてしまった……じゃなくて、何でこいつは私を疑わないんだ?
レーションが好きなギャルとかありえないのに……。

「あ、ありがとう苗木。」
「どういたしまして。」
「あのさー…苗木。あんた、あたしのことを変に思わないの?」
「どうして?」
「だって、ギャルがレーション好きなんておかしいじゃん。イメージに合わないっつーか……。」
「そんなことないよ。セレスさんだって餃子が好きだしイメージは関係ないと思うよ。」

何で苗木がセレスの好物を知っているのかという考え出したら嫉妬が止まりそうにない疑問はとりあえず置いておこう。
今は苗木がレーションをくれたという喜びで頭がいっぱいだ。

「苗木……あたしがクロになってもあんたは殺さないであげるよ。」

その発言に周囲の人間全員が固まった。

「ややや、やっぱり、あたしたちを殺すつもりだったんじゃないの!あ、あんたみたいな汚ギャル最初から気に食わなかったのよ!」
「ち、違う!そういうつもりで言ったわけじゃ……。それより、汚ギャルって言うな。」
「あ、ありえねー!俺の占いによると……げ!俺に女難の相が出てるべ。あー!女のクロに狙われる展開だべ!」
「占いだから外れることもあるっしょ。あたしは殺すつもりなんてないし!」
「ひどいよ江ノ島ちゃん!私たちの命よりレーションを優先させて!それに、江ノ島ちゃんが卒業したら苗木も死んじゃうんだよ!?」
「だから、ね。例え話だから本当に殺すわけじゃなくて……。」
「殺人が犯せぬように我が死なない程度に懲らしめてやろうか…?」
「ちょ…誰も殺さないからやめてって!」

まずい。このままだと私一人だけが孤立してしまう。

「うぷぷぷぷぷ。江ノ島さんだけが容疑者というのもつまらないので、今回は副賞も付けちゃいまーす!」

すると今度は壇上に札束が積み上げられていく。

「じゃーん!ひゃっくおっくえーん!卒業者が出たときのプレゼントにします!」
「レーションなんて出さずにそれを先に出せビチグソがああああああ!!」
「まったくだべ。百億あれば借金返せて借金取りに追われる日々から解放される……あ!」

どうやら、バカのお陰で私一人に容疑が集中するという状況は避けられたようだ。


その後、盾子を呼び出してどうしてレーションを卒業者のプレゼントにしようと思ったのか聞いたところ。

「だってー。お姉ちゃんが残念なくらい動揺するところが見たかったんだもーん。」

とりあえず、一発殴ってレーション一年分を没収しておいた。
モノクマへの暴力は禁止されているけど、盾子本人への暴力は禁止されてはいない。

「お姉ちゃんひどーい。私のお陰で愛しの苗木くんからプレゼントもらえたようなものなのに!」
「もう一発殴るぞ。」
「うぅ……暴力で物事を解決しようとするなんて……残念な人ですね……。」
「お前が言うな。」

終わり


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