皮肉な話

…体が寒い…
…視界がかすむ…
…その中でゆっくりと広がる小さな光…
…そうか…僕は記憶を奪われて…

…僕は皆と出会う前から皆にあっていた…

「セレス殿が風邪で休み?」
「らしいべ、極寒の中のカキ氷食い大会に賞金の百万円目当て俺と出場してな…
優勝したはいいもののその場で風邪引いてぶっ倒れちまった。
にしても皮肉な話だべ、最下位の俺が風邪を引かずに優勝者のセレスっちが
風邪引くなんてよぉ。」
「…フン、馬鹿は風邪をひかんと言うからな。
そのほうが世紀末的な馬鹿の貴様らしい。」
「ひでーべ!!立ち直れなくなったらどうするんだべ!!」
「…まぁまぁ…
それより…セレス殿、今頃どうしているのでしょうか…」
「…心配なら是非見舞いに行くべきだ。」
「しかし、僕はセレス殿の家が分からないですし…」
「…ハッハッハ!そこは風紀委員長の僕に任せたまえ!
風紀委員の責任として、このクラスの皆の住所は網羅している!」
「おぉっ、助かりますぞ!
このお礼はいつかきっとするであります!
例えば…好きな娘がかぶったときは真っ先に僕のほうから降りちゃったり
なんかして!」
「…そんなことあるのかなぁ…」

       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「えーと、確かこのあたりがセレス殿の家…きっとギャンブルでもうけているから
豪邸に住んでいるのでしょうなぁ…って、ここらへん小さな家ばっかじゃん!!
しかし、教えてもらった住所の通りにだとこの当たりのはずでありますし…
…もしかして、この安広って苗字の家だったりして!!」
ガチャ
「あれ?安広さんが出てきたであります。」
「…あら、あなた何しているの?」
「あ、どうも、僕、山田一二三というものなんですけど…」
「山田一二三…聞いたことがあるわ。
いつも多恵子のわがままを聞いてくださるそうね。」
「…多恵子ってだれであります?」
「…あら、あなたと同じクラスじゃないの?」
「…ひょっとしてセレス殿のこと?」
「…セレス?
あぁ、あの子が読んでいるお気に入りの小説の主人公の名前ね。
たしかヴァンパイアたちと西洋のお城に住む話だったわね…
あの子、学校で自分のことそう呼んでいるのね。」
「…はぁ、そうみたいでありますな…」
「ふふ、多恵子なら、今部屋にいると…」
「余計な事言ってるんじゃねぇ…ビチグソがぁ…!!」
「…セレス殿…」
「あら、起きて降りてきたのね。」
「…母さんが余計なこと言うから…ダサい自分の名前がばれちまったじゃ
ねぇかよぉ…!」
「…セレス殿…顔真っ赤ですぞ。
足取りもなんかおぼついているみたいですし…」
「…うるせぇ…それより恥ずかしい秘密聞きやがって…
ただじゃ…ゲホッゲホッ…」
「ほら、しんどいなら部屋に戻ってなさい。」
「うぅ~…」
「…部屋に戻っていきましたな。
…にしても、セレス殿普段はあんな喋り方なのですか?
学校ではお嬢様らしい喋り方なのに…」
「…きっと分かれた元ダンナの血筋ね。
あの人、大酒飲みで口が悪くてギャンブルばっかりして負けているから
離婚しちゃった。あの子もギャンブル好きだけど、皮肉にも、
あの人とは違ってギャンブル運だけは強いのよね…」
「…はぁ…」
「…それで、勝った取り分の半分をうちにまわしてくれてるんだけどなにせ
貧乏だから、すぐなくなっちゃってね…
もう半分はあの子が頑張って貯金してるわ。」
「…そうでありますか…」
「…それはそうと、あの子のお見舞いに来てくれたのよね。
部屋は奥だから、遭って励ましてやってよ。」
「…はい。」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「…失礼するであります。」
「…」
「…お見舞いに果物を持ってきたであります
早くよくなって学校に来れたらいいでありますね。」
「…馬鹿にしているんでしょう。」
「…へ?」
「…学校ではお嬢様を気取っているくせに…
…実際はこんな貧乏な家にすんでいる事を…
…内心馬鹿にしているんでしょう?」
「…いえ、別にそんな事は…」
「…フン、どうだか…」
「(まずいでありますな…話題を変えないと…)
ところで、ギャンブルで得た金の半分を貯金しているとか…」
「…お城のためにね…」
「…へ?」
「…わたくし…お金がたまったら…世界中のイケメンたちに
ヴァンパイアの格好をさせてはべらせ…西洋のお城に住もうと思っているの
ですの…お母様と一緒に。」
「…何故?」
「…こんな貧乏な家がいやだからに決まっているでしょう?
鈍い人ですわね…」
「…はぁ…」
「…それに…貧乏なために苦労したお母様に裕福な暮らしをさせてあげたい…
そういう思いもありますわね…」
「…やさしいですね、セレス殿は。」
「…あなたに褒められても嬉しくもなんともありません。
…どうせ、あなたは私の夢もくだらないと心の底で笑っているのでしょう?」
「…そんな事はございません、セレス殿の夢は立派だと思いますぞ。」
「…ふん、どうだか…」
「…それよりも…先ほどは、あなたの恥ずかしい本名を聞いてすみません…」
「…よろしいですわ、もう過ぎたことですし…
…どうしても反省したいと言うのなら私の言う事を聞きなさい。」
「…わ、分かったであります…」
「…今後一切、私から離れていくのはなりません。
…秘密を知るものとして、あなたが言う素晴らしい夢を持つ私を見本として、
これから一生私だけを見てください…よろしいですわね。」
「はい、約束するであります。
約束を破ったら殺されることもいとわないほどに約束するであります。
…なんちて☆」
「…ふぅ…相変わらず面白い人ですわね…」
「…いやぁ、それほどでもないですぞ、セレス殿…」
「…本名を知っているんだし…もう堅苦しくセレス殿と呼ばなくていいですわよ。
安広多恵子殿…そういってくださったほうが堅苦しくも無くていいですわ。」
「はぁ…それじゃそう呼ばせていただきます…安広多恵子殿…」
「…ふふ…なんだか、あなたの優しそうな声で呼ばれると面白いですわね…」

…あのときの安広多恵子殿…いつもより笑顔でわらっていたなぁ…
…キッt心の中で秘密を分かってくれているのが嬉しかったんだ…
…それを僕は裏切って…パソコンの中の存在なんかに夢中になって…
…罰が当たったんだ…安広多恵子殿から目をそらしたから
安広多恵子殿の怒りをかって殺されたんだ…
…記憶を失っても…安広多恵子殿は…心のどこかで約束を覚えていたんだ…
…だから僕を殺したんだ…それと、卒業した際の百億円…
…あれで夢をかなえようとして…お母さんに裕福な暮らしをさせようとして…
…それもあって僕を殺したんだ…
…だから、安広多恵子殿は何も悪くない…全て僕の責任だ…

…ならば、もし学級裁判でセレス殿が犯人だとばれても…
…だれも、セレス殿を恨まないようにしよう…
「ねぇ山田。誰にやられたの!?
誰があんたを襲ったの?犯人は…誰なの?」
「犯人…犯人の名前…僕は知っている…思い出したんだ…」
(…言うんだ…安広多恵子殿を裏切った僕が全部悪い…
…だから犯人は全部の責任である僕だ…
だから安広多恵子殿をうらまないでほしいって…)
「や…やす…ひ…ろ…」
…そこまで言って僕は力尽きた…
…結局…途中までしかいえなかったな…

…僕って最低だな…安広多恵子殿を裏切った挙句に…
…安広多恵子殿をかばうことも出来ないなんて…

(…安広多恵子殿とっては皮肉な話だよな…
…秘密を知ったものがこんな役立たずなんて…)

そう思いながら僕は静かに眠りについた…
                    終わり

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