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霧「ラブレター…?」

舞「そうなんです…でも、名前が書いてなくて」
朝「ああ、あるよね。気持ちを伝えたいだけだから返事はいらない、ってやつでしょ?」
セ「いわゆる自己満足、というやつですわね」
江「いや、断られるのが嫌だから自分で予防線を引いた、っていう場合もあんじゃん?」

舞「みんなはこういう時、どうしてます?」

霧「…こういうとき、というのは…その、ラブレターを貰った時、ということ?」
舞「? そうですね、もらったラブレターに名前が書いていなくて…」
セ「どうもしませんわ。返事もいらないのでしょうし、手紙もそのまま捨てます」
朝「え、捨てるのはちょっと酷くない? あたしはせっかく書いてくれたんだし、取っておくよ」
江「っつーか、いちいちそういう手紙に目通す暇ないし、まず読まないわ。男なら直接来いっての」

霧「…あの、みんなは…ラブレターをもらったこと、あるの…?」

舞「え? そ、それは…あります、よね?」
セ「…霧切さん、もしかして貰ったこと…」
霧「! あ、あるわ。もちろん」
朝「だよねー。霧切ちゃん可愛いし、モテそうだし」
セ「ですわよね。クスクス…」
霧「……」



霧「…というわけよ、苗木君」
苗「いや、全然わけわかんないけど…」

霧「…恥ずかしながら告白すると、本当は私…ラブレターというものを貰ったことがないの」
苗「そうなの?」
霧「ええ…というか、現代に存在しているモノとすら思っていなかったわ」
苗「そ、それはちょっと言い過ぎじゃないかな」
霧「みんながいる手前、見栄を張ってしまったのだけれど…」

霧「最近の高校生が恋愛に対して積極的なのか、それとも…私がラブレターを貰えるような魅力的な存在じゃないのか」
苗「うーん、それはないんじゃない?」

霧「……どういうこと?」
苗「え!? だ、だから…」
霧「あなたにとって私は、ラブレターを送る価値があるくらいには、魅力的な存在だと…そういうこと?」
苗「え? あ、あの……うん」
霧「…そう。嬉しいわ、ありがとう」
苗「…なにこの羞恥責め」

苗(…でも、確かに霧切さんって美人だし、可愛いし、それに頭もよくて…魅力的ではあるんだけど)
苗(クールと言うかミステリアスと言うか高根の花と言うか、気軽に手紙を書けない雰囲気があるよな…)

霧「ところで、苗木君は?」
苗「僕?」
霧「ラブレターを送ったり、もしくは受け取ったりしたことはないの?」
苗「僕はないよ…それこそ、霧切さんの言うような『魅力的な存在』でもないし」
霧「そう? …世間の女子は、みんな見る目がないのね」
苗「え…?」
霧「なんでもないわ。けれど…そう、みんながみんな、ラブレターの経験がある訳じゃないのね」

霧「……ねえ、苗木君」
苗「…今度は何?」

霧「あなた、私にラブレター書いてくれない?」

苗「ぶふっ…!」 

苗「ちょ、ちょっと何言ってるのか…」
霧「ダメかしら?」
苗「いや…ダメっていうか…」
霧「ラブレターを貰うということが、どんなものなのか…体験してみたいのよ」
苗「…なんか、色々と違う気がするんだけど」
霧「ラブレター童貞のあなたが、ラブレター処女の私に送れば、二人いっぺんに経験出来るし…お得だわ」
苗「もうちょっと他の言い方なかったの?」
霧「発情期の女子高生をなめないで」
苗「思春期。発情期じゃなくて、思春期。訂正して霧切さん、ただちに」

霧「……その、どうしてもあなたが私にラブレターを書くのは嫌だ、というのであれば…無理強いはしないけど」

苗「え…いや、その…嫌ってことは、全然ないんだけど…」

霧「じゃ、明日までにお願いね」
苗「え、えぇー…」
霧「ふふ…楽しみに待ってるわ」



――翌日――


苗「い、一応書いてきたけれど…なんか、恥ずかしいな…」
苗「直接渡すのも緊張するし、ベタだけど下駄箱にでも入れておこう」ガチャ パサッ

苗「…あれ、霧切さんの下駄箱に…手紙?」

苗「……僕はまだ入れてないし…これって」
苗「どう見ても、ラブレターだよね…しかも、何枚も」

苗「……」

苗「…こんなに貰ってるなら、僕の書いたラブレターなんて…必要ないよね」
苗「……なんで嘘ついたんだろ、霧切さん」
苗「あはは、ちょっと真剣になって書いたのが馬鹿みたいだ…」
苗「霧切さんくらい美人なら、そりゃラブレターだって貰うに決まってるじゃん」

苗「僕なんかのラブレター…貰ったところで…」

―――――

霧「…苗木君、書いてきてくれたかしら」
霧「彼のことだから直接渡さず、下駄箱にこっそり入れるとか…そういうベタな方法に走りそうね」

霧「……もしかして、私…今、浮かれているの…?」
霧「無意識のうちに、彼からのラブレターを期待しているなんて…ふふっ、丸くなったものね…私も」ガチャ パサッ


霧「…あら? これは…」

―――――

霧「おはよう、苗木君」
苗「あ…おはよ」

霧「……」
苗「……」

霧「苗木君、昨日話していたラブレターのことなんだけど」
苗「……ゴメン。書いてくるの忘れてたよ」
霧「え?」
苗「あの…ご、ゴメンね」ガタッ スタスタ


霧「……」
霧「…何よ」
霧「ちょっと期待してた私が、馬鹿みたいじゃない…」

霧「……」

苗「はぁ…いくらラブレター渡す勇気失くしたからって、嘘ついちゃったのはまずかったかな…」

苗「あれ? 机の中に何か…」
苗「なんだろ…手紙?」


『苗木君へ

 放課後、屋上でお話しできませんか
 暇だったらでいいです お返事待ってます

              超高校級のモブ女より 』


苗「こ…これ、もしかして」

霧「ラブレター、というやつじゃないかしら」
苗「うわっ…! き、霧切さん…」
霧「……良かったわね。ラブレター童貞、卒業できたじゃない」
苗「ま、まだその言い方なんだ…」

苗「…っていうか、霧切さんもラブレター処女じゃないでしょ」
霧「何のこと?」
苗「…そうやって、嘘つくんだね」
霧「…? あなたが何を言っているのか、理解できないわ」
苗「いいよ。もともと僕には関係ない事だったし」
霧「……」ムカッ

霧「ところで苗木君。モブ女さんと言えば、かなりの器量良しよ。あなたにはもったいないくらいね」
苗「…知ってるよ。時々メールもするし」
霧「……なら、話が早いわね。メールで返事してあげたら?」
苗「なんで霧切さんが乗り気なのさ」
霧「精一杯の気持ちで書いてくれた手紙に、返事をしてあげないの?」
苗「…いや、だって…」
霧「だとしたら苗木君、あなたは超高校級の甲斐性無しね。もしくは、根性無しよ」
苗「……」ムカッ


苗「……返事、直接言ってくる」スタスタスタ
霧「……そう。好きになさい」


苗「モブ女さん、ちょっといいかな」
モ「えっ、あ、うん…」


霧(何よ…私のラブレターはどうでもいいのに、他の人にはちゃんと返事するのね…)
霧(……苗木君の、馬鹿)

苗(やっぱり、霧切さんは適当なことを言って、また僕で遊んでいただけなんだ…)
苗(……もう霧切さんなんて、知るもんか)

――放課後――


霧「……」ムスッ


舞「霧切さん、機嫌悪いですね…」
江「やっぱ、あんな悪戯したからじゃん?」
朝「せっかく皆で、日ごろの感謝の気持ちを込めて書いたのに」
セ「どうですか? 初めてラブレターを貰った感想は」

霧「…ラブレター? さっきから何のこと? 苗木君といい、あなたたちといい…」
舞「え? 下駄箱に入れておいたはずなんですけど…」


霧「……!!」
霧「…あれが、ラブレター…?」


セ「他の何に見えるんですの?」
江「…あ、そっか。貰ったことがないなら、ラブレターがどういうものかも分かるはずないよね」
朝「ちょっと、霧切ちゃん…どうしたの?」


霧(苗木君は、私がラブレター処女じゃない、と言っていた…)
霧(もしも彼がラブレターを書いてきてくれたなら、私は『下駄箱に入れるだろう』と予想した…)
霧(そして下駄箱には、彼女たちのラブレターが入っていた…)

霧(……)

霧「そういうこと、ね…」
霧「苗木君も、まったくそそっかしい勘違いをしてくれたものだわ」
霧「…ともすれば、彼がラブレターを忘れたというのも、おそらく…」


苗「…放課後は屋上で待ち合わせだったっけ。そろそろ行こうかな…」
苗「…あれ、あそこにいるのは…霧切さん?」

苗「何してるんだろ、ゴミ箱なんか漁って…」
苗「……あれは、今朝僕が手紙を捨てたゴミ箱…!」


霧「……ふう」
霧「ようやく見つけた…やっぱりここに捨てたのね」

霧「苗木君のことだから、安直に近くのゴミ箱に捨てたのだろうと思ったけれど、案の定ね」
霧「…ああ、もう。ところどころ汚れてしまって読めないわ」
霧「せっかく書いてくれたのに、どうして…捨ててしまうのよ…」

霧「……よかった、見つかって」ギュッ


苗(……)
苗(どうして、僕なんかのラブレターを…)


モ「あ、あの…苗木君」
苗「あ、モブ女さん…どうしてここに?」


霧(……この声、まさか…外にいるのは、苗木君…!?)


モ「屋上で待ってたんだけど、来なかったから…探してたの」
苗「メールで教えてくれればよかったのに」
モ「…こういうのは、直接聞きたかったから」


モ「単刀直入に言うね。苗木君、私と付き合ってくれないかな…」


苗「……」
霧(……)

モ「いつもメールで悩み事聞いてくれたり、励ましてくれたり」
モ「学校でも、勉強で分からないところとか丁寧に教えてくれて…」
モ「そういう優しいところ、すごく、好き…です」


苗「――ごめん」

霧(え…?)


モ「…だよね。屋上に来てくれない時点で、覚悟は出来てたけど」
苗「いや、行こうとはしてたんだけど…でも、ゴメン。付き合えないよ」
モ「…理由、聞いていいかな」
苗「……」
モ「私に落ち度があるなら、今後の恋愛の参考にしたいし…」


苗「……好きな人が、いるんだ」
苗「すごくクールで、ミステリアスで、知的で…とても魅力的な人なんだけど」
苗「高嶺の花っていうか、僕なんかじゃ全然届きそうにないくらい素敵で」
苗「昨日なんか僕をからかって、ラブレター書いて来い、なんて言ってきてさ」

霧(…!!)

苗「…その人のことが好きなんだ。だから、モブ女さんの気持ちには応えられない」

モ「……そっか、わかった」
苗「ゴメンね」
モ「ううん、いいよ。ダメ元で告白したんだし…今度は私が、苗木君の恋愛相談に乗ってあげるから」
苗「はは…ありがとう」
モ「どういたしまして。じゃ、私帰るね」


苗(……)
苗(勢いに任せて、言っちゃったけど)
苗(まさか、教室の中まで聞こえてないよな…?)


 ガラガラ


苗「あ、……」
霧「…き、奇遇ね、苗木君。今から…帰るところ、なのかしら?」
苗「……うん」

苗「……」
霧「……」


苗「あの、霧切さん…僕、」
霧「――今朝」
苗「あ、え?」

霧「私の下駄箱の中に、大量のラブレターが入っていたでしょう」
苗「……」

霧「……舞園さん達よ」
苗「…?」
霧「一度もラブレターを貰ったことがない私をからかって、書いたらしいのよ」
苗「……あ、そうなんだ…」

霧「ホッとした?」
苗「!! べ、別に…」
霧「ふふっ…」

霧「……でも、そういうわけで…私にラブレターを書いてくれたのは、正真正銘あなたが最初よ、苗木君」
苗「…書いてきてなかった、なんて嘘ついて、ゴメン」
霧「気にしてないわ。珍しく拗ねた苗木君も見ることが出来たし、気分は良いもの」
苗「う…もう、そんな汚い手紙、拾わないでよ…」

霧「これで、私のラブレター処女はあなたに捧げたことになるわね」
苗「……その言い方だと嫌らしく聞こえるんだけど」
霧「でも、あなたの初めての相手が私じゃない、というのは少し残念かしら…」
苗「霧切さん、止めてってば…コレ、ホント誤解を招くよ」
霧「超高校級の発情期をなめないで」
苗「思春期ね。人間の場合は思春期だからね」


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