カップ麺の妖精

 霧切さん、一緒に映画観ない?

 ある日の休日、僕は霧切さんに一緒に映画を観ないかと誘ってみた。
霧切「いいわよ、丁度ヒマだったし、どんな映画なの?」
苗木「新作のホラー映画なんだけど・・・」
霧切「ホラー映画?」

 ホラーと聞いて彼女の眉がピクリと反応した。

苗木「もしかして霧切さんは怖いの苦手?」
霧切「・・・いいえ、たかがホラー映画なんかで私が怖がると思うの?」

 そう言って彼女は余裕の笑みを浮かべ、クスリと笑った。
苗木「それなら良かった。、じゃあ僕の部屋で観ようよ。

 僕は、霧切さんを部屋に誘い、DVDの電源を入れた。
 映画の再生が始まり、テレビから不気味な音楽が流れる・・・
 それでも霧切さんは余裕の表情を崩さず、こう言った。

霧切「フフ、あなたの怯える様子を見るのが楽しみだわ。」

 (残念、実は僕、この映画は一度観ているんだ。)
 心の中でそう呟いた。

 なぜ一度観た映画をわざわざ二人で観るのかというと・・・
 僕は霧切さんがホラー映画を観たときの反応が見たかった。
 普段凛々しい姿の彼女がどんな表情をするのか気になった。
 いけないと思いつつも彼女の様子を観察することにした。
_________

 映画が始まって15分経過ー

 霧切「・・・」
 苗木(少し退屈そうだ、まぁどの映画も序盤はこんなものだ。)

 30分経過ー
 霧切「・・・」 (そわそわ)
 苗木(映画の雰囲気に呑まれてきたのか、しきりに三つ編みをいじったり
    足を組み換えたりと落ち着きが無くなってきた。)

 45分経過ー
 TV「キャーー」
 霧切(ビクゥッッ)
 苗木(突然幽霊が出てくるシーンに驚き、霧切さんの背筋がピーンと伸びる。)

 1時間経過ー
 ガタガタッ
 「・・・」
 苗木(僕と霧切さんの距離は1m程離れて観ていたのだが、さすがに怖くなったのか
    さりげなく椅子を僕の近くに寄せてきた。)
 彼女の表情はヒドク青ざめ、冷や汗をびっしり掻いていた。

1時間半経過ー
  「ギュっっ」
  (霧切さんが僕の手を掴む・・・、彼女の手は小刻みに震えていた。)
  苗木(なんか・・・、可哀そうな事しちゃったな・・・)

  終盤ー

  とうとう彼女は耐え切れなくなったのか
  顔を伏せ、耳を両手で必死に塞いでいた。
  それでも映画の内容は気になるのか、時折チラリチラリと視線をTVに向けては
  固く目をつぶったりしていた。
  苗木(よっぽど怖いんだ、やめておけば良かった。)

  クライマックス

  苗木(ここは一番怖かったシーンだ、霧切さん大丈夫かな・・・)


  呪われた廃墟から逃げ延びた主人公たちが安堵して恋人の顔を覗き込むと、
  その顔は・・・   
  逃げ切ったはずの悪霊の顔に・・・


  霧切「~~~~~~~~~」

  今までに聞いたこと無いような悲鳴をあげ、霧切さんが僕の腕にしがみついてきた。
  僕の胸に顔をうずめ、ガタガタ震えていた。
  これはマズイと即座にビデオの電源を消し、部屋の明かりを点けた。
  苗木「霧切さんッ、霧切さんッッ落ち着いてッッ」
    「もう大丈夫だからッッ」
    ぼくは彼女を必死になだめた。

 __________    

  「・・・・・・・・」
 しばらくして落ち着きを取り戻した彼女は無言で
 僕を睨みつけていたが、その眼には涙が溜まっていた。

苗木「ゴメンッッ、まさかそこまで怖がると思わなくて。」
霧切「・・・・・・・」
苗木(ヤバい・・・、相当怒っている。)
霧切「・・・、もう二度とあなたと映画は観ないわ・・・」

  絞り出すような声でそう言い放ち、霧切さんは部屋を出て行ってしまった。

苗木(ああ、行ってしまった・・・)

 普段、気丈な霧切さんの意外な姿が観れたのは良かったが、
 彼女を激しく怒らせてしまった。
 とにかく今回の件は謝り、仲直りをしないといけない。

 __________

  それから数日間、霧切さんは一切口を聞いてくれなかったが、
  最終的に彼女の好きな探偵物の映画を観に行くということで
  なんとか許してもらえた、もちろん僕のオゴリで・・・




                         終わり


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