kk6_473-477

※ED後の時間軸だと思って下さい


 コンコン

苗「霧切さん…起きてる?」
霧「…何か用? これから寝ようと思っていたところなのだけど」
苗「ごめん。少しだけ、話をさせてほしいんだ」
霧「……」

 ガチャ

霧「…入って」
苗「うん…お邪魔するね」
霧「手短に頼むわ…明日も早いから。それで、何の話?」
苗「……昼間のことだよ」



 -------昼間-------



葉「どどどどうするべ!? このビル完全に包囲されてるべ!」
十「チッ、数が多すぎるな…」
朝「あのモノクママスクの集団…どこから湧いてきたの!? ていうか、これちょっとヤバくない?」
葉「ちょっとどころじゃなくヤバいべ! あああああああもうおしまいだぁ!」
苗「目的地まであと少しなのに…!」
腐「ど、ど、どうするんですか、白夜様!?」
十「黙っていろ…今考えている…!」
葉「こ、ここはもういっそ土下座してだな…!」

霧「…私が囮になるわ。連中を引き付けておくから、あなた達はその隙に脱出して」
苗「え!?」
十「…お前一人で、奴ら全てを引き受けると言うのか? そんなことができると思っているのか?」
霧「できないと思うなら最初から言わないわ。統制のとれた集団ではないし、撹乱するにはむしろやりやすい相手よ」
苗「だけど、そんな…危険過ぎるよ!」
霧「別に戦うわけじゃないわ。それに、危険というならこのまま手をこまねいているのが一番危険よ。わかるでしょう?」
朝「あ、あのさ、囮なら私がやるよ! この中で私が一番足速いしさ!」
霧「失礼だけど…朝日奈さん。危険に慣れているのも、冷静に行動できるのもあなたより私の方だと思うわ」
朝「それは…そう、かもしれないけど…」
葉「まてまてまて、こういうことならジェノサイダーの出番じゃないんか?」
腐「いいいいいきなり何言い出してんのよあんた!? 男なら『ここは俺が』くらいのこと言ってみなさいよ!」
葉「それは無理な相談だべ!(キリッ」

霧「…これ以上は時間が惜しいわ。それじゃあ」
苗「ちょ、ちょっと待って! やっぱり一人じゃ危険だって! せめて僕も一緒に…」
霧「…気持ちは嬉しいけれど、足手まといよ」
苗「でも…!」
霧「心配しないで…犬死にする気はないから。十神君、皆の誘導をお願い」
十「おい、まだ話は…!」
霧「…また、会いましょう」
苗「き、霧切さんっ!」


 ------------------


苗「…霧切さん、なんであんなことしたの?」
霧「何故って、それがあの状況を打開する最善の方法だと考えたからよ。他に何か代案があったわけでもないでしょう?」
苗「…それは…」
霧「別にいいじゃない。こうして私も、あなた達も、皆無事に逃げ延びることができたんだから」
苗「……」
霧「怪我一つなく、ね」
苗「……」


霧「話はそれだけ? なら…」
苗「…でも」
霧「何? まだ何かあるの?」
苗「それって、運が良かっただけだよね?」
霧「……」
苗「本当は霧切さんが一番よくわかってるでしょ!? 無事に帰ってこられたのは本当にたまたま、運が良かったからだって!」
霧「……」
苗「霧切さんは怪我一つないって言うけど、でもジャケットは切り傷だらけだし…それに髪の毛。三つ編み、あいつらに切られたんでしょ?」
霧「刃物が掠めただけよ…ジャケットも髪も、切られて痛むものじゃないわ」
苗「だけどっ……」


霧「…そうね。あなたの言う通りよ。私が無事だったのは、単に運が良かっただけ…」
苗「それがわかってて…無事には済まないかもしれないってわかってて、一人で行ったの?」
霧「ええ…そうよ。さっきも言った通り、それが最善だと思ったから」
苗「そんなのっ…ちっとも…!」
霧「…『先に進むために危険を避けては通れない』。
  実際…あなたが危険を冒して私を罠から救ってくれたからこそ、私達はこうして学園から脱出できた。
  そして今度は私の番だった。それだけのことよ」
苗「そうだとしても…それで本当に死んじゃったら…!」


霧「…もし、命を落とすことになっていたとしても…私は後悔しなかったと思うわ」
苗「…え?」
霧「あなたは『希望』。私達だけでなく、もっと多くの人達にとっての希望になれる人…私はそう信じている。
  そんなあなたを救えるなら…私は、命を捨てることになっても惜しくはない」
苗「……命が惜しくない……?」
霧「一度あなたを見殺しにしかけてしまった私には…丁度いい罪滅ぼしだから」
苗「何だよっ……そんな……もう終わった話……!」
霧「あまり大きな声を出さないで。他の皆が…」

苗「撤回して……!」
霧「……」
苗「撤回してよ! 今言ったこと全部!」
霧「…私は自分の思うところを、できるだけ正直に話しただけよ」
苗「だったら! 思ったことを撤回して! 『命が惜しくない』だとかっ……『罪滅ぼし』だとかっ……そんなこと、僕は!」
霧「一度心の中で決めたことを、曲げるつもりはないわ」
苗「っ……!」
霧「あなたにとっては余計なお世話かもしれないけれど、でも私はそうしなければ…」
苗「…霧切さん…!」

 グィツ

霧「…離しなさい、苗木君」
苗「口で言ってもわからないなら…!」
霧「苗木君…あなたが腕っ節で私にかなうとでも…」

苗(ギロッ)
霧「!(ビクッ」

霧(体が…動かない…)
霧(怖い…? 私…苗木君のことを怖がっているの…? 何故…?)


苗「僕は許さないよ…霧切さん。さっき言ったようなこと、もう二度と考えないって約束してくれるまで…僕は君を許さない」
霧「ゆ、許さなかったら…どうだって言うの…」

 ドンッ

霧「きゃっ!?」
苗「…おしおき、するよ。霧切さんが分かってくれるまで」
霧「おし…おき…?」



 バチンッ

霧「ひぐっ!? な、何を――」
苗「…霧切さんの命が、捨てても惜しくないだなんて…」

 バチンッ

霧「い、痛っ!」
苗「そんなこと…あるわけないじゃないか…!」

 バチンッ

霧「痛い、苗木君、痛いっ!」
苗「それで僕の命が助かったとして…僕が喜ぶと思うの!? 僕だけじゃなくて、他の皆も!」

 バチンッ

霧「ひっ!? や、やめ…」
苗「もし…霧切さんが死んだりしたら…僕らが…僕が悲しまないと思ってるの!?」

霧(思えば…苗木君が私に怒ってみせたことなんて、今まで一度もなかった…)
霧(私に無理を押し付けられた時にも、私のせいで死にかけた時にだって…なのに…)

 バチンッ

霧「あぅっ!?」
苗「そんなわけ…無いじゃないか…!」
霧(初めて…本気で怒ってるの…? 私の、ために…)

 バチンッ

霧「ひぎっ!」
苗「僕だって…君がいてくれたからここまでこれたんだ…君がいるから、今も…!」
霧(苗木…君…)

 バチンッ

霧「痛っ! も、もう許して……」
苗「許してほしかったら…」


 バチンッ

霧「ぐぅっ!?」
苗「もう絶対…自分の命を軽くみるようなことは言わないし、しないって約束して!」
霧「や、約束する…約束するから!」
苗「それと…」

 バチンッ

霧「あぁっ!」
苗「『罪滅ぼし』だとか…終わった話を持ち出すのも無しだよ。そんなこと…君が気に病むようなことじゃないんだから」

 バチンッ

霧「あぐっ!? …わかった…わかったから…もう、許して…!」
苗「…本当に?」
霧「本当…だから…もう言いませんから…。だから許して…許してください…」



霧「うぅ……ぐっ……ひっく……」


霧「ごめんなさい……ごめん、なさい……」


 ------------------


苗「……」
霧「……」
苗「……」
霧「……」
苗「あの、ごめん…なんかカッとなっちゃって…」
霧「…謝られても困るわ。あんなことまでしておいて…」
苗「…本当に、ごめん…」
霧「だから、あなたが謝る必要はないでしょう?
  謝るべきは、あなたの気持ちを省みずに独りよがりなことを考えていた私の方よ」
苗「だけど、その…いろいろと行き過ぎちゃってたし」
霧「そうね…仮にも年頃の女子のお尻を何度も何度も叩きまくるのは、少しどうかと思うわね」
苗「うぅ…それは、その…小さい頃に妹を叱ってた時のノリで、つい…」
霧「あなた、私のことをそういう風に見ていたの?」
苗「いや、そういうわけでは…」
霧「今度からあなたのこと『お兄ちゃん』と呼びましょうか?」
苗「やめてよ、もう…」
霧「ふふっ…本当に、もうすっかり普段通りのあなたなのね。怒っていた時はあんなに怖かったのに」
苗「そ、そうかな?」
霧「ええ、それはもう怖かったわ…でも、同時に嬉しかった。
  あなたが私のために本気で怒ってくれたことも、私のことを…考えてくれていたことも。
  ありがとう…それと、ごめんなさい」
苗「あー…いや、でも…今冷静になって思い返してみると、僕がさっき言ったことってほとんど言いがかりだったような気がしてさ。
  実際…あの時、霧切さんに危険なことさせずに済むような代案が僕にあったわけでもないし…」
霧「『終わった話を持ち出すのは無し』でしょう?」
苗「あ、うん…」


苗「…っと、そろそろ自分の部屋に帰るね。長居しちゃってごめん」
霧「いえ。その前に…苗木君、最後にもう一度言わせて」
苗「何?」
霧「怒ってくれてありがとう…それと、これからもよろしく」
苗「うん。こちらこそ、よろしく」
霧「私がまた何かを間違えたら…その時は、遠慮なく叱ってね」
苗「わかった。そうさせてもらうよ」
霧「でも…」
苗「…でも?」
霧「お尻を叩くのだけは、もう勘弁してほしいわ」
苗「…ごめん」


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