デートネタ

僕は霧切さんとの待ち合わせ場所に向かって歩いている。
待ち合わせ場所までの距離は、徒歩で数分。
時間は30分ほど余裕がある。
それまでに、僕は歩きながら今日2人で待ち合わせるに至った過程を思い返していた。

「…え? よく聞こえなかったわ。
もう一度言って貰える?」

「ご、ごめん……。
霧切さんは明日の土曜日暇かな、なんて思ってさ…」

「……」

現在僕と霧切さんは2人しかいない教室に居る。
別に甘い何かがあったわけではなく、2人揃って日直だったのだ。
そこで、僕は以前から霧切さんと行きたい…、いや霧切さんと行かないと駄目な所があったので、
良い機会だと思い、思い切って誘おうと思ったのだ。

「えーと、返事が欲しいなぁ…なんて……」

「別に予定はないけれど…苗木君からそういうことを言ってくるなんて意外ね」

「え? そ、そうかなぁ?」

「そうよ、意外だわ。
でも、たまにはこういうのも良いかもしれないわね…、
いつもは苗木君に助手として助けて貰ってるし、仕事関係なしにあなたと居るのも悪くないわ」

そう、僕はいつも霧切さんの探偵業の助手をしているのだ。
と、言っても学校内での小さな事件を、学園長からの依頼で調べるだけなので、
大きな事件を扱うわけではないが…(それでも一般人の僕からしたらすべてが超高校級であるのだ

が…)。

「よかった…、それじゃあ待ち合わせは○○駅の東口に13時で大丈夫かな?」

「ええ、構わないわ。
それじゃあ日直の仕事も終わったから私は帰るわね」

「うん、また明日!」

「…ふふ、楽しみにしてるわ」

最後は珍しく笑顔で挨拶をして帰っていった霧切さん。
普段は無表情の彼女の笑顔は大変貴重なのだ。僕もなんだか嬉しくなったものだ。
そして、そんな霧切さんとの待ち合わせ場所も目の前である。

「って、あれ? き、霧切さん!?」



「こんにちは苗木君。思ったより早いのね」

「いや、僕より霧切さんの方が早いじゃないか!
あれ、もしかして僕遅刻しちゃった?」

僕は慌てて時計を確認する。現在時刻は12時35分。
遅刻ではないようだ。思わず緊張してた体から力が抜ける。

「早かったって言ったじゃない。
早とちりは良くないわよ苗木君」

「う、うん。それより霧切さんいつから待ってたの?」

「12時くらいかしら?
あらゆる場合を想定して早く出たけれど、少し早すぎたみたいね」

「(30分も待たせちゃったのか…)待たせてごめんね、次からは僕ももっと早めに来るよ」

「気にしないでいいわよ、私が勝手にやったことだから。
それよりそろそろ移動しない?いつまでもここで話すのは少し疲れるわ」

「そうだね、それじゃあついて来てもらっても良いかな?」

「あら、苗木君がエスコートしてくれるなんて…、
さっきの”次から”発言の時も思ったけど苗木君って意外とこういうの慣れてるかしら?」

「別にそうでもないよ。
前に女の子と出かけたのなんて一ヶ月前に舞園さんの買い物に付き合ったきりだし…」

「……苗木君は本当に馬鹿正直ね。
流石の私も今のはどうかと思うわよ?」

「え?」

「なんでもないわ、なんでも。
それより、何処へ連れて行ってくれるのかしら?」

「うん、霧切さんどうしても行きたいというか、行かなきゃいけないところがあって…」

「そういう台詞で今まで数多くの女の子を墜としてきたのね…、
私もその中の1人なんて…、ひどいわ苗木君…」

「え?ちょっ!違うよ、霧切さん!
僕は別にそんなつもりは……、というか今の台詞のどこにそんな……」

「……冗談よ」

「大体今日だって……、えっ?」

「さっきの苗木君の目線と足の向きから推測すると向かう場所は南の方かしら?」

言いながら僕の行こうとしていた方向に足を進める霧切さん。
あれ?もしかして僕からかわれてた?

「ちょっと待ってよ霧切さん!」

「早くしないと置いていくわよ、苗木君」

振り返りながらそう言った彼女は、とても珍しくて、そして僕の好きな笑顔の霧切さんだった。



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