初デート

まずは、オードソックスに自己紹介から始めたいと思う。
ボクの名前は苗木誠だ。
訳あって、休日にとある人物と二人きりでいるんだけど…

「ねぇ、霧切さん?」

ボクが呼んで振り向いたのは、霧切響子。
実は、ボクと彼女はなんやかんやで付き合うことになったのだが…

「何?」

ごらんの通り、彼女は無愛想な人だ。

「いや、あのさ。本当にここでいいの?」

ボクたちがいるのは、市立図書館。
はっきり言って「あれ」には向いていない場所だ

「どういう意味?苗木君が『どこか好きなところに行こうか』と言ったんでしょう?」
「そうなんだけど…」

ボクはデートのつもりで言ったんだけどな…
言い方が悪かったか、と一人後悔していると霧切さんが言った。

「ねぇ、もしかして図書館が嫌いなの?」
「え、ち、違うよ!そんな事ない!ボクも小学校の頃からよく使ってたし…」
「そう」

そう言うと霧切さんは図書館に入ろうとする。

「あ、ちょ、待って!」



待って、と止めたのは別にいい。
けど…止め方は別にあっただろう。
でも、ボクは慌てて霧切さんの腕を掴んで思い切り引き寄せた。
そう、お分かりだろうか。

「…」
「…」

どっちがどっちの3点リーダーだったかは分からない。
ただ、お互いずっと黙っていた。―抱き合うような体形で。

「―――ごめんっ!!」

ボクは慌てて体を引き剥がす。
そして、これでもかというほど頭を下げる。
……しばらく頭を下げていたけど、何も反応がない。
おそるおそる頭を上げるとそこには…

「き、霧切さん…?」

ボクの目の前にあったのは、顔を真っ赤にした…なんていうのは嘘で、
そこには無表情の霧切さんの姿があった。

「えーっと、霧切さん…?」

あまりにも微動だにしない霧切さんに不安を覚えて、ボクはそっと霧切さんに触れようとした。
が、触れるその瞬間。

「――!」

霧切さんは何かを叫んで、走ってどこかへ行ってしまった。
呆気にとられたボクは「追いかける」という選択肢が思い浮かばずに、ただ立ち尽くすのみだった。

―どれだけ時間が経ったのだろう。
我に返ったのは、すでに夕刻の時だった。
そんなにずっと立ってたのかと自分の精神力に関心しつつ、携帯に目をやる。
そこには、1通のメールが来ていた。
誰からだろう、と見るとそこには「霧切さん」という名前が映し出されていた。
慌ててないようを確認すると、そこにはこう書かれていた。



(今日はごめんなさい。
 どこに行くかというのは、
 あなたの意見も聞いておくべきだったわ。
 でも、あなたもあなたよ。何とは言わないけれど。
 また、日にちを調整して二人で出かけましょう。
 またね。)

と。

「…返事、しないとな。」

ボクはそう言いながらも、あの時の霧切さんを思い出す。
あの時、霧切さんは何かを叫んでいた。
何を…?
ボクの記憶力と推理力を合わせて導き出された答えは…

「ばか」

そんな訳ないと思いつつも、あらゆる推理をしても答えは同じだった。
あの時、霧切さんは「ばか」と叫びながら逃げたのだろうか。

「―っ!」

みるみるうちに自分の顔が赤くなるのを感じ取った。
そして、ボクは慌てて携帯で電話をかける。
その相手は、言わなくても分かるよな。


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