大変なのは

「苗木君、ダウトです」
ボクがカードを出し終えるのを、見計らったかのように発せられた柔らかな声。

嘘をつくこと、暴くことが勝利へつながるこのゲームは、まさに舞園さんの独壇場だった。

「どうして、わかったの?」
彼女から2枚手札を受け取り、たずねてみる。
答えはもちろん…

「エスパーですから」
ですよね。
クスクスと笑う彼女の隣に座る霧切さんと目が合い、どちらともなく苦笑が漏れる。

「すごい命中精度ね。本当に心が読めるのかと疑いたくなるわ」
「残念ながら、苗木君限定ですので。…はい、9です」
 霧切さんの番ですよ。舞園さんの言葉に、霧切さんはいつもの無表情に戻って、

「わたしは、10ね」

 ボクが怪しいと感じることもなく次のカードを探していると、不意に舞園さんが、

「…それもダウトです」
「…苗木君にしか通じないとさっき言っていたわよね」

また、正解だ。ボクの目には、怪しいアクションなど何も映らなかったが、舞園さんの第六感は何かを感じ取ったのか。
眉をひそめて、舞園さんからカードを受け取った霧切さんはボクに向かって、

「彼女がエスパーだと、苗木君も大変そうね」

へ?霧切さんだって苦戦中じゃないか。 言葉の意味を理解しかねて、目をぱちくりするボクに、

「本当に大変なのはあなたの方かしらね、舞園さん・・・」
彼、鈍いにも程があるわよ。そう言う霧切さんに、舞園さんは首を横に振って、

「まだ『彼女』じゃないですし、ご心配には及びません。それに、そんなところも彼の魅力ですから…」

だから何が?

ため息をつく彼女たちに、ボクはなぜか申し訳無さを感じるのだった。

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